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[いずれにせよ、決意に満ちた盟主の双眸を見とめれば、副将は顔を引き締めた。]
……へいへい。
儂ァ、若に一生付いていくって決めたンだからなぁ。
どこまでも一緒に行きやすぜ。
―――……んじゃ、ちょっくら、
―クリーク砦:現在―
[戦争というものは、マーティンは実はあまり好きではない。
戦うことは好きだが、喧嘩のように感情の儘に拳を振るえば、それで良いという訳ではない。
例え相手を倒したとしても、それがイコール勝利ではないからだ。
その裏には情勢をうまく握るべく、駆け引きがある。]
んま、そういう小難しい戦略を練るのは、若や兄者の役割だしの。
[いつだったか、チャールズから「お前の戦いには考えが無さすぎる」と説教を喰らったとき、そんな本音を零したことがある。
チャールズはそれを聞いてどう思ったのだろう。怒ったか。呆れたか。
いずれにせよ、脳筋であるこのクマがこうして副将を務められるのは、ひとえにディークであったりチャールズのお陰であったりする。
今回も来るべき全面戦争に向けてクリーク砦は準備で大忙しだというのに、この副将はそこそこ暇を持て余していた。
先の戦いにより付いてしまった、汚れや傷を落とすべく、マーティンは自慢の斧を担いで砦を闊歩していた。]
お、エディじゃねぇか。
よぉ、お前さんもなかなか良い戦いっぷりだったなぁ。
結構結構!
[春に芽吹く若葉のような、萌黄色の髪を見かけたのはそんな時だった。
副将はよく通る声で、青年の愛称を呼んだ。彼は気が付いただろうか。もし気が付かないならば、また砦のなかをぶらぶらと闊歩するだけである。
>>131 先日、久しぶりに彼と再会したとき、妙に畏まった挨拶を受けて、逆に此方が照れ臭くなったくらいだ。
「面倒臭え!固ェこと言うなよ!」と、クマのような手でわしゃわしゃと頭を撫でたのは、ついこの前。
エドルファスと再会を喜ぶのも束の間、すぐに辺境伯戦となり、ゆっくり話す機会はあまり無かったのである。//]
―タンポポの話―
[マーティンがこの話をするたびに人々には驚かれるのだが、実はこのクマにもちゃんと家庭があるという事だ。
妻はシンシア・グリズリー。今でこそ旦那を尻に敷くような、クマをも恐れない勝気な妻となったが、その昔は可憐で花のような女性だったのだ。
その昔、いつものようにラモーラルの都へマーティンが飲みに出掛けた帰り道、それを見かけた。
路地裏へ連れ込もうとする複数人の男性と、その中心に居る、花のような小さな女性を。
女性は明らかに嫌がっている様子だった。
柄の悪そうな男たちをあしらおうと抵抗するが、その力及ばず、どんどんと暗い所へ連れ込まれようとしている。]
おいおい。待たねぇか、てめぇら。
よってたかって、みっともねェなぁ?
[深く考える前に、先にそう言っていた。
自慢の斧はない、手にしているのは発泡酒の空きビンだけ。
それでもマーティンに不安は無い。
気分を害した男たちがマーティンに襲いかかるが、それを瓶と拳ひとつで跳ね除けた。
それでも多勢に無勢、倒し損ねたゴロツキの一人に顔を傷つけられた。
元々から不細工な顔だ、今更傷のひとつやふたつ増えたところで気にすることはなかった。
しかし、当時シンシアはひどく気に病み、その後、何度もマーティンに会っては傷の手当てをしてくれたものだ。
それが、シンシアとマーティンとの出会いだった。]
[息子、カーク・マーティンは母によく似ている。
顔つきも母譲りの秀麗なもの、髪色も母譲りの明るい栗毛色。
体格も母によく似ていて、決して小柄という訳ではないが、マーティンに比べたら細いものである。
しかし、カークは父によく懐いていた。
幼い頃はマーティンの歩くところ歩くところ、よく付いてきて、武術などを盗み見していたものだ。
実際、マーティンが山賊していたときも、幼い一人息子はそれを見ていた。父親が決して良いことをしている訳ではないことは、幼い頭でも充分に解っていただろう。
「ママには内緒にしといてくれや」
帰り際、盗んだ金でお菓子を買ってやり、それを口止め料としていたのは父と息子だけの秘密である。]
[息子、カーク・グリズリーは母によく似ている。
顔つきも母譲りの秀麗なもの、髪色も母譲りの明るい栗毛色。
体格も母によく似ていて、決して小柄という訳ではないが、マーティンに比べたら細いものである。
しかし、カークは父によく懐いていた。
幼い頃はマーティンの歩くところ歩くところ、よく付いてきて、武術などを盗み見していたものだ。
実際、マーティンが山賊していたときも、幼い一人息子はそれを見ていた。父親が決して良いことをしている訳ではないことは、幼い頭でも充分に解っていただろう。
「ママには内緒にしといてくれや」
帰り際、盗んだ金でお菓子を買ってやり、それを口止め料としていたのは父と息子だけの秘密である。]
アイツぁ、今頃何してンのかねぇ。
[>>95 ぶらぶらと闊歩している最中、カークからの荷物を受け取った。
随分と重いその荷物を開けると、中身は大量の絵具とテレピン油だった。「どうせなら酒を送ってくれよ」と内心溜め息を付いたのはここだけの話。
カークは戦い方も、父には似なかった。
父親とは違い、頭がよく回り、力不足はその技量で補うという戦い方を好む。
>>78 義兄から教わったという、尾行や変装の技術などを駆使し、今は諜報員のような役割を務めている。]
おい、これらを倉庫に運んどいてくれや。
[息子からの荷物を下士官に運ぶよう伝え、マーティンは再び砦内を歩き始めた。(→>>137>>138へ)*]
―クリーク砦:現在―
えっ、実践初めてだったのか?!
[>>156 エドルファスの告白にマーティンは目を丸くした。]
初めてにしちゃ上出来よ。
儂ァ、てっきり手練れかと思ったぜ。
[先の戦いでの彼の働きは、副将の目から見ても、見事なものだった。
ブロードソードを駆使し、敵を鮮やかに切り裂く姿は、美しかった。
視界の外からの攻撃に対しても鮮やかに身を翻し、剣を躊躇いもなく抜いたときには、その力量の確かさを思い知ったものだ。
軽鎧を外す様子を見やりながら、そんな風に賛辞を送った。]
[>>159 続く、エドルファスの言葉にはがっはっはと豪快に笑う。]
おいおい、戦いの最中に手ェ止めちゃ不味いぜ?
[半ば冗談だろうけれども、その言葉を窘めるように肩をぽん、と叩いた。
真っ直ぐな称賛に対しての、照れ隠しのようなものでもある。
マーティンとしては軽く小突いた程度だったけれども、しかし、力加減を抑えられたかどうかは知らない。]
おう、野稽古でも何でも教えてやらァ。
何なら、カークも一緒に誘うと良い。
[稽古の約束には、勿論と頷く。
序に、エドルファスが息子と親しかったことを思い出し(>>162)、そんな事もひとつ付け足す。
>>79 多少は老いた身といえど、まだまだ息子に負ける気はしていない。その昔、ディーンやチャールズ達とともに稽古した日々を懐かしく思う。]
エディもこれから州都に向かうンか?
[>>25 盟主へと仰いだ指示はその後どうなったのか。
副将はその成り行きを知らない。
質問の形で投げかけられた言葉ではあったが、この青年も当然出征に行くのだろうと。
ある程度の確信を持って、副将は彼に尋ねた。//]
―マーチェス平原:交戦中―
[>>54 チャールズが敵将へと駆けていく。
その背中を見送りながら、マーティンはその巨躯を敵陣へと向ける。
草原に確りと仁王立ちし、斧を両手で構え、睨みつける姿は樋熊のようだ。]
ほう、
―――……その生意気は儂を倒してから言いな。
[マーティンの後ろ、自由を謳うラモーラルの王国旗がはためく。
大地の緑と空の青、血の赤に塗り分けられた地の上で
[盟主や老将のように、国を奪われた訳では無い。
それでも自分を倒し、更生の機会を与えてくれたディーンに一生付いていくと決めたのだ。
その為の、盾になるとも。あの森で誓った。]
奇遇だなァ。
儂も、お前さんを行かせてはならない理由があるのさ。
[>>180 白銀に輝く鞘から、太刀が抜かれる。
よく磨かれた剣に、剣士の精悍な顔が映る。
まだ若い。しかし、強い意志をもった火を灯していた。]
――――……お前さん、名前は?
[大振りの斧を構えながら、マーティンは剣士に尋ねた。]
お前さんがあの世に行く前に、
この儂が覚えておいてやるよ。
[これから起こり得る戦闘に、血が湧き上がるのを抑えられなかった。*]
―マーチェス平原:交戦中―
[銀の剣に照らされた青年は、精悍な顔つきをしていた。
大振りの斧を構え、威圧的な物言いをしても、怯むことなく言い返してきた。]
クレステッド・フォラータ
――――確かに覚えておこう。
[凛とした声と決意に応えるべく、確りと副将は頷いた。
そして、此方もまたよく通る声で名乗りを上げる。]
儂ァ、マーティン・グリズリーだ。
一応こんなんでも、解放軍の副将を務めているんでな。
若の願いは、儂の願いってな。
儂の、この斧と力は、その為に在るのさ。
[己が名とともに、在り方を同じように告げた。]
[――――斧と剣が、覚悟とともに交錯する。]
………ほォ、なかなか
[白刃の攻撃を受けるがため、真正面から斧を構えた。
キンッ、と鋭い刃の音が平原に響く。
巨大な斧に確かな手応えを感じる。
まだ若く、身体つきもマーティンよりは細いのにも関わらず、その力に内心驚いた。
構えるのがあと少し遅ければ、確実に怪我を負っていただろう。]
しかし、―――そんなンじゃここは通れねェよ!
[>>214 内に抱える焦りと不安が、クレステッドの太刀を鈍らせていた。
その白刃を弾くようにして、斧を振り上げる。
態勢を崩したクレステッドの身体目掛けて、そのまま真っ直ぐ斧を振り下ろした。
まともに喰らえば致命傷を負うのは確実だ。
しかし、その大振りの斧は傷を与えることなく、大地を大きく抉るだけに留まった。]
若と兄者の―――……
大事なときなんだ。
儂が壁にならなくってどうする、ってなァ。
[目の前の剣士にその呟きは果たして聞こえたかどうか。
それはマーティンの覚悟が滲んだものだった。
さて、クレステッドとの会戦は何処まで続いたか。
副将を倒すことは叶わずとも、いずれは不意をついて、ここを抜けることは出来ただろう。
>>136 しかし、クレステッドが敵将を救うことは叶わなかったか。
その死に目に会うことが出来たかどうか。果たして。**]
―クリーク砦:現在―
がっはっは!
おいおい、照れてンのかぁ〜?
[>>267 エドルファスの少しつんけんとした態度に、マーティンは再び豪快に笑った。
上機嫌にクマの手でばんばんと、エドルファスの肩を叩こうとしたが。
次は、もしかしたら避けられてしまったかもしれない。
じゃれ合いといえど、マーティンの拳は、やはり痛いものだから。
続く言葉には深く頷き、]
そうだな。
儂らに護れるものなんざ、限られている。
[そう言って大きく腕を広げた。
2メートルもある大男の両腕は、丸太のように太い。
しかし、その大きさにも限りがある。]
でもなァ、大切なものはひとつでも多く守れるように……
努力することは決して無駄じゃねぇよ。
[ぱん、と力強く両手を叩いた。]
[―――全てを護ることは出来ずとも]
[―――この両腕に納まる幸せは、決して零すつもりはない]
[>>268「州都に向かうのか?」という問いに、エドルファスは真っ直ぐ頷いた。]
そうか、宜しくな!
[若くとも、腕が確かなこの青年ならば、ともに戦うことは心強い。
大船に乗った気持ちで付いて来いと云わんばかりに、マーティンはにかっと微笑んだ。]
なぁに、心配すんな!
面倒臭ぇことは、皆、兄者が何とかしてくれるだろ!
[そう言って、殿を護ってくれる老将のことを想った。
自分と違って思慮深く、戦術に長けたチャールズだからこそ、ディーンも安心して任せることが出来るのだろう。
マーティンがいつも何の不安も無く前線で暴れることが出来るのは、ひとえに彼のお陰である。]
儂らはただ、若の言うことを聞いてりゃええ。
若の言うことを信じて、恐れず、戦うまでさ。
[もし不安そうな色をその双眸に映したなら、そんな風にマーティンは言った。副将の双眸には、確かな自信と信頼が映っていただろう。]
[>>269 そして幾らかの会話をしたのち、エドルファスは一族に挨拶をしてくると言う。
おう行ってこい、と頷いて、]
そう言えば、サシャは出征に行くンかねぇ。
あンときの弓は凄かったなぁ。
よくあんな暗いなかで、一発で仕留められたものよ。
[そう言って思い返すは、クリーク砦襲撃の出来事。]
[>>84 ディーン・ヴァンデラーら率いる独立解放軍が宵闇に紛れて、砦へと近付いた。
物陰に隠れながらの移動だったので、マーティンの巨躯は大層不利であった。
ゆえに、マーティンは最後尾に付き、一連の出来事を眺めていた。
充分に近付いたとき、ディーンはとある一点を指し示した。
塀の一番高い部分、一人の兵が緊張した面持ちで立っている。見張りの兵だろう。
目視できる距離とはいえど、まだまだ遠い。
あれ程遠いところ、しかも夜に、弓矢なんて当たるのだろうか。
マーティンは疑問に感じていた。
しかし、そう思った次の瞬間。塀から見張りの兵は消えていた。
すぐ前を見やると、弓矢を構えた少女の背中が見えた。]
[サシャ・カリュオン]
[キュベルドンの森に住んでいる、森の民の一人である。
まだマーティンが山賊であった頃、彼女にも色んな意味でお世話になったものである。
何の因果か、彼女が狩人の称号である「熊殺し」を得たと聞いたとき、マーティンは妙な気持ちになったのを覚えている。
彼女は聞くところによると、幼いときに掛かった病のため、聾唖者になってしまったそうだ。しかし、まるで喪われた聴覚を補うかのように、視力は非常に良いそうだ。
サシャの宵闇でも違わぬ確かな腕のお陰で、この砦は陥落したのである。]
もしあいつが残るンなら、ちっと挨拶しておきてェな。
[そんな風にひとりごちながら。
彼女は今頃どこに居るのだろう。
もし会えるならば、一言くらい、労いの言葉を掛けてやりたいものだ。]
ンじゃ、儂はそろそろ行くぜ。
エディも短い時間だが、しっかり休めよ。
これから忙しくなるからの。
[>>269 そんな風に、エドルファスに声を掛けると、マーティンは踵を返した。*]
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