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9人目、山岳の民 ヴェルザンディ が参加しました。
山岳の民 ヴェルザンディは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
― シュビト ―
……戻ってきたら、なんっか賑やかだなぁ、プルウィア。
[予定よりも長引いた『里帰り』から戻って、最初に口を突いたのはこんな一言。
呼びかけた相手──肩にちょこな、と乗る白い毛並みの小さな猿は異様な熱気に何か感じているのか、落ち着きない。
そんな白猿の様子に、宥めるようにその頭を撫でた後、ぐるりと周囲を見回して。
顔見知りの露店商を見つけると、そちらへとととっ、と駆け寄った]
おばちゃんお久しぶりー……あ、うん、ちょっと里帰りが長引いてさー。
それより、今日ってなんかあったっけ…………って、えー。
[軽い調子で投げかけた問いに返った言葉に、大きな瞳が見開かれた]
そっ、かあ……そんな事になってたんだぁ……。
[ぽつり、呟いて目を伏したのは刹那。
ふる、と首を振った後、まだ落ち着かない白猿の頭を撫でて]
ま、いーや。
まずは、学館に行かないとなんないし……おばちゃん、また後でねー!
[元気いっぱい、という表現の似合う笑みと共にこういうと、慌ただしく走り出す。
長く伸ばした髪がふわり、吹き抜ける風に揺れた。**]
[南島の山岳地帯。
そこは、古き在り方を守り続ける『まつろわぬ民』の住まう地のひとつ。
千年の昔、異邦人と交わる事を拒んだ彼らはこの地に移り住み、峻嶮なるその地勢そのものを壁として他との交流を断ち続けてきた。
そんな在り方に変化が訪れたのは、ここ数年の事。
古き在り方を学ぼうと訪れるもの、山岳が齎す利益を求めるもの──そんな来訪者たちとの接触。
小さな波はそれでも、長く続けられてきた営みを揺るがすほどではなかったものの。
『外』に惹かれて飛び出した一族の長の長子が、里帰り時に見つけた『それ』は、閉ざされていた山岳の民の在り方に一石を投じる切欠と十分成り得ていた]
― 回想/ウェントゥスの里 ―
へーきへーき、ちょっと外で暮らしてたくらいで、鈍ってなんかないって!
それより、あれだけ荒れた後なんだから、どこか崩れてたりしてるかも知れないし。
見回りがてら、ちょっと歩いてくるだけだって!
[そんな調子で母を振り切り、石造りの家から駆けだしたのは、久しぶりの帰郷の翌々日。
前日は急に空が荒れ、思うように動けなかった反動……と、周囲には見えたかも知れないが。
早々に飛び出した理由を知る母の表情は、どこか複雑なものを帯びていた。
それには気づかないふりを通しつつ、山間の僅かに開けた空間に、石造りの建物が寄り添う里を駆け抜けて行く。
街では目立つ、線を複雑に組み合わせた独自の紋様を刺繍した毛織物の衣類も濃い紅の鮮やかな髪の結い紐も、ここでは違和感なく馴染む。
里を抜け、放牧地を通り抜けて周囲に人の気配がなくなると一度足を止め、はーっ、と深く息を吐いた]
……ったぁく。
『一大事だから、すぐに帰って来い』なぁんていうから、どうしたのかと思ったら!
結局いつもの御説教とか、いい加減にしろっての、頑固親父……!
[苛立たし気に吐き捨てた後、ひょい、ひょい、と身軽に岩場を乗り越えていく。
ベルサリス学館で学ぶようになってから、約二年。
こんな風に唐突に呼び戻される事は多々あったが……多々あったが故に、それへの苛立ちは嵩む。
早々に出てきた理由は、この苛立ちをさっさと発散させたかったから、ともう一つ]
……昨日、かなり風荒れてたけど……あれ、なんだったのかなぁ……。
[異様に荒れた前日の空。
こんな天気の日には禍が起きる、と古い者たちは口々に言うがそんな事を気にする気質ではなく。
白の小猿と一緒に見上げたそこから、何か、見慣れぬものが降りてくるのを確かに見た]
鳥にしては大きかったし……他にも色々落ちてたみたいだし。
やっぱり、確かめないとなぁ。
[里の民にとって、空は決して手の届かぬ、ある種の神域。
そこから降りてくるものなど考えられない。
だからこそ、それに対する興味は強かった。
そも、生まれ持った好奇心の強さから『外』に興味を抱き、大騒動の果てに飛び出した……という逸話もあるほど。
一度抱いた興味はそう簡単には薄れる事はなく──結果]
んーと、確かこの辺り……って、
[岩場を乗り越え、小さな川の流れを渡り、幼い頃の遊び場の一つだった森に入った頃。
耳に届いたのは、聞き慣れぬ音と、良く知る音、二つ。
肩の白猿が警戒の唸り声を上げるのを制して、近くの木に登った]
……プルウィア、静かに。
[落ち着かぬ白を宥めつつ、枝伝いに気配を感じる方へと向かう。
気配を殺して進んだ先に見えたのは、何やら絡みついた木と、そこからぶら下がる人影と、その下に群がる狼の群れ]
…………。
[状況が何によって齎されたものかはわからない。
わからないが、このまま捨て置くわけにはいかない。
そう、判断すればあとは行動するのみ。
背負っていた愛用の弓を下ろし、矢を番えて狼の群れへと躊躇いなく放つ。
思わぬ角度からの攻撃は獣を驚かし、数回の射撃の後、群れは森の奥へと散って行った]
いよっ、と。
[狼の群れが散り、危険がなくなった、と判断すると木の枝から地面へと降りる。
弓は身体に引っかけて、木から釣り下がる人へとゆっくりと近づいて]
……やっぱり、ひとだ。
[惚けた呟きを漏らした後、ふる、と首を横に振り]
え、と。
……無事?
[にはとても見えないが、とりあえずはそう、呼びかけてみた。**]
― 回想/南島山岳地帯 ―
ていうか、それ以外のどこの人がここにいるわけ?
[呼びかけ対する応え>>95に、緩く首を傾ぐ。
なんでそんな風に聞くんだろう、という疑問は、続いた言葉と、それを遮る音に一時的にどこかに飛んだ]
……あ。
[枝の折れる音が響き、見上げていた姿が視界から落ちる。
次いで、響いたのは鈍いわりに良く響く音]
ちょ、無事っ……!
[当たり所如何では、大変な事になる、と。
そう思ったら、警戒はどこかに飛んでいた──元からあったか、と言われると微妙だが]
おにーさん、しっかり!
[駆け寄って呼びかけたものの、どうやら向こうは答えるどころではないらしい。
一目見てわかる濡れた様子と、触れた手に感じる熱。
そこから、状況を察するのは容易かった]
おかしなとこ、打ってるとまずいし……どっちにしろ、一人じゃ運べない、か。
[状況的にも体格的にも、それはほぼ不可能で。
仕方ない、と呟いて立ち上がると、唇に指を当てて甲高い音を鳴らした。
一族の鳥使いたちが放っている猛禽を呼ぶ合図の指笛。
元々は緊急連絡手段として使われていたものだが、最近では一族の領域に近づく者への警戒の手段としても使われていた]
に、しても……。
[程なく舞い降りてきた翼に場所と、人手を寄越すように、と記した短い手紙を持たせて飛ばした後、改めて意識を無くした見知らぬ来訪者を見やり]
…………この、布と縄のお化け、なんなんだろ。
[口を突いたのは、未知の技術で作られた品への素朴な疑問だった]
[その後。
手伝いのために駆け付けた里の若者たちが渋るのを、強引な一喝で動かして里まで連れ帰り。
帰ったら帰ったで、やはりというか、待ちかまえていたのは受け入れに難色を示す古老と族長だった]
だーかーらー!
禍とかそういうのは、考えすぎなの!
そりゃ、空から人が落ちて来たとか訳わかんないけど、わかんないものを悪いものって決めつけるのはよくないんだって!
[嵐が禍を落とした、と騒ぐ古老たちに頭痛を感じながらこう言った後。
呼吸整え、改めて父を見た]
……あの人、多分、外から来た人だよ。
里の外じゃなくて、この、島の外、から。
たまに、そういう人が来ることがあるんだ、って、学館でも聞いた。
[できるだけ気を鎮めて告げた言葉に、また古老たちがざわめく。
そのざわめきは、族長が手で制した]
どこから、なんのために来たのか、とかは全然わかんないけど。
このまま、ほっといちゃいけない……そんな気がするんだ。
だから……。
[言い募ろうとした言葉は、盛大なため息によって遮られる。
言い出したら聞かない我が子の気質を知るが故か他に思惑があるのか、族長は『お前が責任を取るなら』という条件付きで、来訪者の滞在を受け入れてくれた]
ほんとにいいの!?
ありがと、父上!
[さっきまでの真面目さはどこへやら、にぱ、と笑う表情はどこか幼いもの。
ぱたぱたと慌ただしく駆け出していく背に向けられた視線などは気づく事もなく。
それからの数日は、高熱を出して寝込んだ来訪者の看病のために費やされた。
学館に戻るのが先延ばしになったのだけが唯一痛い、と思えたもののそこには目を瞑った]
[来訪者に宛がわれたのは、族長の家の一室。
石を積み上げた壁にかけられた飾り布に、魔除けの紋様が刺繍されている以外には飾り気らしきもののない質素な部屋。
そんな空間と、藁のベッドと色鮮やかな毛織物の上掛けは目覚めた来訪者に何を思わせるか。*]
― 回想/ウェントゥスの里 ―
……最近、慌ただしいな。
[来訪者に宛がわれた部屋へと戻る途中、空を翔ける伝令の翼を認めて小さく呟く]
前は、奥まで踏み込んでくるのなんて、そんなにいなかったのに。
[月に一度、山に登って来る集団が複数あるのは、把握している。
それでも、一方とは境界線を築き、互いに干渉せぬようにしているが。
もう一方はここの所、以前よりも奥地に踏み込んで来ているような感覚があった]
……そりゃ確かに、北島の連中は、結構派手に諍い起こしてる、とは聞いてるけどさぁ。
[少なくとも、ウェントゥスの一族が揉め事を起こした事はない。
故に、巡視の名目で踏み込まれるのはなんというか、納得がいかない]
何でも押さえつけりゃいい、ってんでもないだろーに。
[そんな呟きが漏れるようになったのは、学館で学ぶようになってからの事。
ともあれ、今は、と意識を切り替えて来訪者の部屋へと向かい]
んー。
うなされてる……夢見でも悪いんかな。
[来訪者の内に響く声の事は知る由もなく。
額に乗せた布を取り換えようと、何気なく伸ばした手が、不意に掴まれきょとん、と瞬いた]
……え?
な、なに、いきなりっ!?
[突然の事に戸惑う所に聞こえた言葉>>159に、上がるのは上擦った声。
常ならばすぐさま振りほどこうとするところだが、それすらも頭から抜け落ちていた]
あ、えと、ねえ。
だ、大丈夫??
[どうしたものかと思いつつ、そのまま呼びかける。
今は頭の上の小猿もどこか落ち着きなくきぃ、と鳴いた。*]
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