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─ ツィーア ─
……っ!
[チリン チリン。
膨大な力と飛翔の魔力が、アーデの胸へ注ぐ]
[核が鳴る。
魔法兵器の内側から、世界を揺るがす轟音が響いた]
[ ツィーアが翼を広げた。
崖がまた崩れ、舞った砂埃がそのまま天へ伸びていく。
半ばで斬り落とされた射出翼が12対、
そして眩い魔導の光を湛えた、風を掴み大気を歩む翼]
──
[ツィーアの巨体に、顔があったなら。
それは竜の咆哮のようであっただろう。
城砦を背負った地這竜のごとき魔法兵器は翼で渓谷を撃ち、羽ばたきによって風を起こし、
そして大地から解放され
緩やかにレオヴィルの空へと浮かび上がる]**
─ 夜明け前 ─
[沐浴槽を出た人形は、薄青に銀糸の衣装をまとう。
手を顔の前に翳した]
[クレステッドの記憶を参照して造形されていた手は、今は内側の光が滲むかのような透明感を備えていた。恐らくは改良の結果として。
少し指が長く、手首の骨が太い。
たぶん、ナールが連れてきたあの騎士>>2:302の特徴が混じっている]
アーデか。俺は、アーデ
[昨日まで曖昧で、遠く恐ろしかった世界が今は何の変哲もないものに見えた。
漠然とした不安が薄れたぶんだけ他の感情が強くなっているのも感じる。
人形に名をつけた魔王の意図を思った]
[瞑想しているのだろう魔王の元へ、と定位置を求め歩き出そうとした人形の前に、
いきなり小規模な転移の魔法が発動した。
チリン、と核が鳴る]
なんだ?
[自由落下を始めるペアカップ>>170を受け止めて、周囲を見回した。
お茶っぽい匂いの液体が入っている。だけらしい。
そして下る、飲め!という命。
嫌な予感がした*]
─ 厨房 ─
『何度も言わせるな』
[我が王と離れることはない、と返す音色はつまらなさそうなもの。
机の上でぐにぐにと蠢く魔力の塊に集中する沈黙の後、掌サイズの長耳双子の形を作り出した]
『精霊界?行ったことはない
その世界は美しいか』
[小さな双子は「キライ!」と言った時の顔をしている。
そのうち、塊はずんぐりむっくりで手に槌をもった、ドワーフっぽい形になった]
[舌までお茶を送り出した後>>179ツィーアは感想を述べる]
『お茶というのは良い香りで刺激的な味だな
人形が吐き出したから、人には向かないのか?』
[1%の甘辛さに、アーデはコメントを残さなかった。
掌サイズのお土産は、やがて拳大のただの球形に変わる]
『くれてやろう。お前を帰すとは言うていないぞ』
[渦を巻くような独特の模様をした珠は、チリン、と鳴る。再現度が高い実物大模型──ツィーアの核──を天使の前へ転がした]
[ロー・シェンの名が振動としてツィーアに伝われば、兵器の波動は明らかに不機嫌なものになる。
我が王に傷をつけた
あれは我が王を壊そうとした者
外で遊ぶという天使を、触手で縫い止めはしない。
ドワーフの厨房の外は、拍動し蠢くツィーアの体内]
『壊さぬよう、壊されぬよう遊ぶ
ああ、気をつけよう』
─ 上空 ─
[朝日を浴びた世界は美しい。
我が王が笑った。
王が飽きるまでは、この世界に終末をもたらしはしない]
『アルテスの中心を潰せば良いのだな?
ゆこう』
[夥しい死の花が咲くだろう。
くべられる死はツィーアを満たし、光となる。
渓谷地帯に落ちる影の形は、翼もつ異形の船]
[ツィーアよりも高みから、
玉座へと注ぐ英雄の嚆矢>>164]
…、
[アーデは天を仰いだ。
疾駆するグリフォンを捉え、眼を細める。
控えていた後ろから動き、玉座の前方へと立った。
抜き放つ剣は扱いやすいクレステッドのものから、騎兵の扱う大型のものへ*変異する*]
─ ツィーア体内 ─
[延々続く回廊に、褒められたのと同じ核模型──ただし直径30倍はある──を天使の気配めがけて転がした頃。
不意に上がった声>>192が壁を振動させた。
双子?そういえば]
『嘘つきでライバル と言うたか』
[嘘をついた覚えはツィーアにはない。実は人形の素体とあの双子は知り合いだったのかもしれないと思考。
ならば嫌われていたのもやむなしか、と都合のいい解釈をした]
『あれらは王にばかり懐いた。
人形は嫌いだったのだな』
― 玉座 ―
[グリフォンの翼。
衝撃波をかいくぐり飛び降りる人間の影が陽光を弾く。
アーデは先に跳んだ太陽の皇子には目を向けなかった。
あれを叩きのめし引き裂くのは魔王の楽しみで、アーデの役目ではない。
気紛れな核には、人形を壊したくなければ余所見をさせるなと言い含めてある]
こちらの台詞だな
[滑空する獣の背から着地した黒の男を見て、軽く重心を下げた]
だが、ここは魔王カナン・ディ=ラーグの玉座
頭が高いぞ
[途端、ヨセフが膝をついた床が裂ける。
男を中心に呑み込むように開いた穴へ、騎士剣を構えて跳躍した。
振り下ろす刃は空中。
移動城砦内部、上層階へと落下する浮遊の中で斬り掛かる]*
― ツィーア上層・広間 ―
[落ちた先は広い空間。絨毯のようなものが敷かれ、歪な装飾で飾られたそこは広間というに相応しい場所だったが、今は壁のどこにも扉らしきものがなかった]
…、
[タン、と軽い音を立てて人形も着地する。
起き上がる男との距離は大股で5歩。
騎士、という単語に瞬いた。 紫毒族ゴブリンの戦闘記憶の方が闘い易ければそれを選んでいただろう。
大剣の構えは、レオヴィル騎兵のそれを参照したもの]
名は
[瞼を半ばまで閉ざし、間を置く。
伏せた銀の睫毛が頬へ影を作った]
― ツィーア下層〜中層 ―
[殺意に満ちた珠は、上に飛び乗った天使の足の下で転がる>>207]
『なんと』
[回廊の天井で魔導の光が煌めき走った。
球体は見事なバランス感覚の操者を乗せて曲がりくねった道を駆け抜け、回廊をループさせていた結界具を弾き跳ばし、階段を駆け上り。
そのまま猛然とした勢いで突き当たりの壁へ大激突――する瞬間にパッと消えた]
『私を壊すなというのに』
[楽しげな光を灯らせながら、ツィーアは不条理なことを呟いた]
[人形と男の間に降り積もる沈黙。
アーデは薄く開いた唇を閉じて、
自分の胸へ一度触れ、
小さく笑い声を立てた]
お前の、その性格…改めた方がいいのでは?ヨセフ
[男の名を呼ぶ声はまるく穏やかなもの]
だが、ありがとう
実態がどうあれ俺はお前を親友と思っているよ
今は――これからもお前を忘れずにいられる気がしているんだ
その言葉の全ても、忘れまい
[低い唸り声が広間の床から響いた。
人形の傍らに生み出されるのは半透明の、巨狼の写し身]
お前を殺すのは
辛いな
― ツィーア下層・回廊 ―
『あまり動いて、零れぬだろうな』
[後で採取するから零すな、と我が王の釘刺しを思い出したよう。壁から伸びた細い触手で天使の気配のあたりを探り、触った]
『何?――玩具の素体だろう。
私にはまだ動かせぬものだ』
[そんなものにかかずりあっているうちにそろそろロー・シェンが死ぬのでは、と考えるが]
『壁を壊すのか?悪さをすると仕置きを受けよう』
[言外に、そこに入り口はないのだと教え。
一斉に壁一面に棘が生える。
びっしり並ぶそれらには相変わらず容赦ない殺意が煌めいていた]
ならば安心することにしよう
[黒の男に、人形への決定打はないと踏んでいた。
魔法を使えない騎士だ。物理攻撃への耐性ならば死にたくなるほどにある。
ならば時間稼ぎか。ロシェは魔王を相手にしているのに?]
…お前と本気で手合わせ出来る日がくるなんてな
[近接戦闘ならばクレステッドよりもヨセフの方が全てに於いて勝っていた。
今も、駆ける動き、慣れた得物ではないだろうに流麗な剣の振り流しは、基本に忠実で実直でありながら眼を瞠るほど美しい]
はっ
[人形は牽制を素直に受けて、後方に下がって薙ぎを躱す。
巨狼の爪が床を掻き、男を挟むように短く向きを変えた。
狼牙族の戦闘術。大きな違いは、人形はオークよりも遥かに速いということ。
牙を剥く狼の方へ向け、追撃をまともに受けるように騎士剣を振った]
― 下層 ―
『そうだったか』
[天使も素材のひとつ、なるほどその通りと納得する>>239
だがこの先の部屋は固定された構造で、出入り口はないのが通常]
『押し入ったとて、ディークよ
無理に中のあれらを動かそうとすれば死ぬやもしれぬが、喰ろうていいのか?』
[採取後も活かしたままで眠らせておくために、ツィーアの魔力は素体の方へも多少流れていた。
殺意の壁は気配を探り、棘を揺らす]
――
[牽制に続く追撃はなかった。
ヨセフのロングソードは後方、巨狼の排除を望む。
金属の砕ける音]
、
[狼の写し身は男の剣をその牙で噛み砕こうとし、半ば以上はそれに成功した。そしてそのまま頭部を断ち割られて、半透明の躯を崩し消えてゆく。
人形の振るった剣は篭手に当たり――やはり半ば以上、男の防具を破壊した後、斬撃の方向を逸らして上方へと流れた]
[流れかけた剣を腕の力で強引に引き戻し、
更に持ち替えて軌跡を変え、
ヨセフへ斬り下ろす――]
[その刃が男の首の根へ吸い込まれる直前で、止まった]
… ぁ 、
― 下層 ―
[天使の交渉に、壁はそよぎ]
『む…』
[我が王の元へ、傷つけようとする者をこれ以上近付けることはできない。
ツィーアは我が王が消耗していることを理解していた。
旧き魔法兵器に封印を施し直すことは容易ではない。
巨なる魔法兵器を空へ浮かべることは容易ではない。
誰にもなし得ぬはずの奇蹟を、その力と才だけで成し遂げる者。
いつか共に空を飛びたいという願いを、叶えてくれた者]
『……では、壊して入るがいい』
[棘が消え、壁自体が薄く変じた*]
[殺したくないと思っていた。
エルフの民を迎え撃った時も、
人間の難民を襲撃した時も、
鉄底族と対峙した時も、
クレステッドを殺した娘にさえ。
けれど人形が逆らうことはない。
今も、ヨセフの剣がもし彼の大剣であったなら、この一撃を止めてくれただろうにと。
この腕に どうか止まれと念じながら、]
――
[止まった姿勢のまま、沈黙と眼差しだけを親友へ注ぎ。
アーデの顔が歪んだ]
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