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─宿屋・談話室─
[例の如く、起きてから談話室へ行くとシモンがいて、朝食の準備を手伝った>>0]
[多くの人の息吹が絶えて、宿屋は広くなったことを誇張するかのように静けさを搾り出す。
エルナは、ニコラスと違って捜されたのならば簡単に見つけられるだろう。外傷も頸椎を除けば殆ど無いはずだ。
エルナのことは、喰らわなかった。“渇”きが知らずの内に癒えてしまった。遂に己からは、“渇”きすらも失われてしまったのかと、他人事のように考える。ただ──]
──呪いだけは、癒えることなく、鎖のように外れない。
[この呪いだけが己をこの世に留めている。命の価値などはじめから知らず、己の命と他人の命の区別すら付かない。そんな己に、自己と他人の命の区別をつけさせるものがあるのなら、それはその呪いのみ。]
──正直、人狼探しとかどうでも良い。
[昨日、シモンが問いかけようとしたであろう質問>>5:77の答えを、心の中で呟く。もし、改めて問われることがあるのなら、やはり此方はこう答えるのだろうと。**]
どうでもいい。
[此方の回答を繰り返すシモン>>17へは、さらに此方も繰り返す。]
簡単なことだよ。はっきり言わせて貰えば、人間も人狼も大差ない。人狼を悪だと思う気持ちもなければ人間が正義だと思う気持ちも更々ない。
僕にとって大切なことは“僕に仇なす者があるかないか”だ。僕を害しようとするなら人間だろうと殺すし、僕さえ害しないのであれば、人狼だろうと関与しない。その逆も、また然り。その相手の正体なんて心底どうでも良い。
そうだね──
──もしも君が人狼ならば、僕を害そうとさえしなければ殺さずに見逃してあげよう。
[人狼など恐れるに足りないと言わんばかりの不遜な態度を隠すことなく、しかし、その様子は普段通りのまま。研ぎ澄まされた刃のような、一介のパン屋が放つようなものではない殺意を言葉に乗せて、軽く向けてやれば些か言葉の説得力が増すこともあっただろうか。]
まぁ、僕自身としては僕の命なんてどうでも良いのだけれども。
[直後に、言葉に乗せた殺気など初めからなかったかのように、痕跡すら残さずに殺気を蒸発させて、そう告げる。]
かつて、ある人に“生き続けろ”と願われた。僕にあるのはそれだけ。
自身の命に危機が迫ればその願いに従って逃れようとするし、そうでなければ何もできない。
そもそも僕は、そういう存在(もの)だ。
[と、初めて“彼女から授かった呪い”のことを他人に告げる。どうして今更そんなことを、しかも、相手がどれだけ理解できるのかも定かではないようなことを、このタイミングで告げたのかは、己にもわからなかった。]
ん、同じ人物であると思ってもらって相違ない。
[シモンからの質問>>27に応える。そういえば“彼女”は人に認知されることを嫌っていたのだが、己が今このようにして話していることも嫌うだろうか。などと考えながらも、彼女の死後に関して望まれることは“生き続けること”以外には何もなかったため、特段気にすることはない。]
命が危険に……?自覚はないね。ないから未だに“こう”なんだろう。人狼という存在に対して命の危険を感じたことがあるのかという意味ならば、感じていたら犯人探しなどというまどろっこしい真似を傍観したりしないでとっくに君達を全員殺しているという返答になるだろうね。
[続く質問>>28へは取り繕おうとすらせず、他人事のように応える。]
それは無理。もう生きろと願われているから。
ただ、その前に「死んでほしい」と言われたなら死んだだろうね。
現に、なるべく食べ物を我慢するように親に言われただけで餓死しかけたこともある。
[ヤコブの質問>>29へは「餓死しかけた」という過去の出来事も交えて返す。餓死しかけたことについては、当時あまり騒ぎにはならなかったため、彼が知っているかどうかは分からない。]
別に僕は願いに応えることを決めているわけじゃない。断る意思がないだけ。
「お前自身が生きたいと願っているのと同じなんじゃないのか?」という質問については本質的に全く異なるが、客観的に大差ないから敢えて否定する気はない。
[続いた質問に対しても、ただ淡々と返す。]
―広場―
[ヤコブに呼ばれて広場へ向かう。己とシモンから距離を取るリゼット>>32が視界に入るが、特に興味もないために露骨に無視を決め込んだ。]
……。
[その後、リーザから一連の疑いの言葉>>37>>38>>39を聞くと――]
どうでもいい。そんなものは疑いですらない。
[とだけ反応して相手の真剣さに対して残酷なまでに、それを無視する。]
君が僕を殺そうとするのであれば僕は君を殺すし、そうでないのならば僕は何もしない。
[最後にそう告げると、リゼットを意識から外す。道端の、石ころであるかのように。或いは、リゼットにそのことが伝わることもあるかもしれない。]
[微かに殺気を感じて>>48、一度意識から外したリゼットに対し、あくまで視線は戻すことなく、注意を向ける。]
……。
[この場にいる全員を手にかけてない以上は、己は命の危険は感じていないのだろう。しかし――
――この三人全員を相手にしなければならない可能性は十二分にある。
当然だ。己は誰かに信じたいと思わせるようなことなどしていないし、する気もなかった。
となると、多少の準備はしておきたい。]
――この殺意、この場で向けてくるようなことがあるならば、一人でこの場を離れる理由として利用させてもらおう。
[…は心の中で呟くと、リゼットに悟られないように、注意だけを彼女へ向ける。
もしリゼットが今この場で刃を向けてくるのであれば、少なくとも外れることはないだろう。]
……く…っ!
[リゼットが、山刀を抜きながら此方を斬りつけてくる>>53と、己はなるべく気付かれないように急所を外し、その山刀を身に受けた。]
これ……麻痺、毒…。
[しかし、実際に受けてみると、麻痺毒が仕込まれていることに気が付き、こればかりは流石に予想外だったと、リゼットの方へ振り向きながら考える。]
油断、してたよ……。
[…は即座にリゼットと距離を置くと、リゼットの視線と自身の視線を交差させるように瞳を動かす。そして、その視線を捕らえると、押し潰すような殺気を、鎖を巻きつけるように送り込んだ。]
……いや、治療が先だ。一旦、店へ戻る。
[しかし、数刻でそれを解くと、殺気は完全に蒸発させて、一人パン屋へと向かった。]
―パン屋―
[オットーのパン屋には、オットー自身も知らない“ある物”が隠されている。それは、一枚の手紙。かつて彼に呪いをかけた、“彼女”の遺した“解呪”の手紙である。]
『――拝啓。私から、貴方へ。
出会いを遂げてから時が経ち、貴方は私を、私は貴方を、いつしか依存対象として過ごすようになりました。
ところで――
――この手紙を、貴方は見つけるかしら。もしも見つけたのであれば、貴方は恐らく、この上なく、疲労している。何せ私の、この私の願いに逆らったということに相違ないのだから。
それと同時に、貴方がこの手紙を見つけるということは、私は貴方に「生き続けること」を望んだのでしょうね。貴方のことだから、貴方はきっと、私の願いに縛られると同時に解放されて、傀儡のような人生を過ごしてきたことでしょう。
いいかしら?今から私は、貴方の根幹に関わることを書く。それはあるいは、貴方を死へ導く死神のような言葉になるかもしれない。でも、それでも、私は貴方にこのことをどうしても告げたいと願うし、貴方は知るべきだと思う。
“貴方には、感情が在る。”
当たり前ね。感情が無い人間なんていないもの。本当に感情がない人間なんてものが存在するのなら、その人は動くことすらし得ないのだから。
確かに貴方は特異だし、感情が在ると言っても、殆ど無いに等しい。実際に、私は感情の存在を認めてもなお、貴方が空っぽであるという言葉を訂正する気はないわ。
貴方はね、感情が無感情のまま凝り固まって、まるで全方位から圧力をかけられているかのように動かないの。
当然よね。こうは言っても、貴方のそれは本当に感情が無い状態と言ってしまっても差し支えがない。だからこそ、貴方は様々な願いに応えて来たし、貴方自身を保つには様々な願いを受ける必要があった。
私がいる内は、貴方は私の願いで満たされていた。でも、私がいなくなってからは様々な願いが雑多として入り込んで、貴方の中身を滅茶苦茶にしてしまうことでしょう。
貴方自身は、何とも思っていないかもしれないわ。でも、貴方は決して感情が無いわけではないの。そんな多様な“もの”が自身の中に入り込んで無事なはずがないのよ。
もう一度言うわ。貴方は、疲れている。この上なく、疲労している。
どうか、考えて頂戴。貴方は本当に平気なのか。
ただ、もし貴方が自身で疲れていることを悟ったのだとしても、貴方はきっと私の“生き続けろ”という願いを裏切らない。
他ならぬ貴方のことだもの。私にはわかる。
だから、最後に遺す言葉はこれにしようと、決めていました。
ありがとう。心から。貴方様のおかげで、私は本当に救われていました。
この手紙を読んで、貴方様がどのような選択をしようとも、私は全て――
――赦します。』
―パン屋―
[思惑通り、パン屋へ戻ると己は店の奥へと向かった。治療を行うためだ。]
……っ!
[しかし、己は麻痺毒の所為か一瞬よろけると、かつて“彼女”が「決して開けるな。開けたとしても、中のものは見るな」と告げて寄越した箱を引っかけて落としてしまうのだった。]
……これは、手紙…?
[その中に入っているものを確認すると、己は何を思ったのか彼女の願いを破ってその手紙を開いてしまった。
その内容>>57>>58>>59を目に留めると、己は一瞬何が書いてあるのか理解できなかった。しかし、数秒も経ったならば内容が文字列から意味を持った文字群として昇華され、己の頭の中を侵して行っただろう。]
どう、して……。
[…は虫の息のような声量で呟くと、思い立って店の裏手の窓を破り、彼女の墓前へと向かうのだった。
それは、この村と外界を繋ぐ道の付近にあり、かなりわかり辛い箇所にあるが、己の足跡を追えば辿り着くこともできるだろう。]
―ある人の墓前―
これは、どういうこと……?
[…は麻痺毒のことも忘れてしまったかのように、返事のない相手へと疑問を投げつける。
しかし、己の言葉は体を成しているだけの空虚なもので、自身は既に手紙の内容を把握し――納得していた。]
そうだ……確かに、君がいなくなって、僕だけが傀儡のように遺されて。でも、日々抜けていく“君”という存在を埋めるために、様々な“もの”が僕の中へ入り込んできた。
君の純粋な願いだけで埋め尽くされていたのに、僕の中身には悪意も善意も区別なく、入り混じって叫びを上げ続けている。
そうだ、無事なわけがない。
[何ともないと、思っていた。でも、この手紙の所為で、自覚することによって、それはとてつもない矛盾として己の中を蹂躙し始めた。]
なら、どうして君は僕を置いて、命を絶ったんだ……っ!!
[それは、彼が生きてきて初めて上げる、叫び声だったかもしれない。もしも近くまで誰かが来ていたのなら、聞こえてしまうくらいに。]
……いや、違う。
[しかし、少し経つと、己はすぐに平静の声色を取り戻し、呟く。]
君の言うとおり、もし僕に感情があると認めるのであれば、僕はきっと、これまでずっと、君に――感謝していた。
そうだ。本当はずっと、お礼が言いたかったんだ。
[…は告げると、言葉とは矛盾するような普段通りの無表情を向ける。]
ありがとう。そして――
――赦してくれて、ありがとう。
[…は内容とは裏腹に、挨拶でもするかのように告げると、己の胸を自身の爪で貫いた。]
[世界が横転する。見える縦の楕円に映るのは、彼女からの手紙と墓だった。
――最期の月は、漸く白く雪色に見えた。]
―回想・約十年前D―
[その日の空は、溢れ出した彼女の願いを揶揄するかのように、涙を雨の雫として溢し、世界を覆い尽くしていた。]
[朝、彼女の姿は店から消えていた。]
――嫌な、予感がする。
[己に感情などありはしないが、どうしてか、何か異質なものが這いずり回っているかのように、胸に嫌な感触が走るのだった。
己はその感触を振り払うように首を左右に振ると、丁寧なことに足跡すら残していなかった彼女の向かう先を感覚で察知し、真っ直ぐに向かう。その先に、彼女がいた。
その姿に、どこか喪失感を覚えたことは、今でも覚えている。降り頻る雨は彼女の頬を、肌を滑り堕ち、或いは染み込むように絡み付く。目元は宙(そら)に奪われてしまったかの如く前髪に隠されて、その前髪は、その生命力の全てが奪われてしまったかのごとく萎びてしまっていた。]
――来ないで。
[彼女は、此方の姿を認めるまでもなく、呟くように拒絶の意思を向けてきた。そう、願われたら、従う他ない。]
――……女の子が来ないでと言うときは、来て欲しいということなのよ。覚えておきなさい。
[しかし、直後に彼女はいつものように理不尽な願いを向けてきて、己は当然のようにそれに応える。
間近で見る彼女は、しかし、そのいつも通りの姿からはかけ離れてしまっていた。彼女に望まれて、彼女の前髪をかき分け、その瞳を覗き込んでみたならば、その願いの溢れる様を表していたかのような輝きは失われ、矛盾する願いに引き裂かれる苦痛を帯びて濁っていた。]
――私ね、貴方に会わないと決めてから、ただひたすらに、毎日の日記をつけるかのように、人を喰らったわ。私自身の、貴方を喰らいたいという願いを、その血で塗りつぶそうとして。
――でも、ダメだった。貴方を喰らいたいという願いは日々強まり、それと同時に、喰らった人の数に比例するかのごとく、貴方を喰らいたくないという願いが強まっていった。
[語る彼女の口調は、その苦しさが色として見えてきそうなほどに痛々しく、その様子は、死期を悟った猫のようだった。]
昨日も言ったけれども、君が望むなら僕は――
[彼女の様子に誘われるように、己は昨日も告げた言葉を彼女へ向けようとする。しかし、その言葉は彼女の稲妻のような、張り詰めた怒号に遮られる。]
……嫌っ!!絶対に、そんなの……っ!!
――私は、貴方を失いたくないっ!!
――貴方がいないと、生きていけないのよ……。
[最後は弱弱しく、それでいて、語る彼女の瞳は此方に何かを訴えかけてきているかのようだった。]
――でも、私の願いは貴方を奪おうとする。どんなに上書きしようとも、その上から黒色として塗りつぶしにかかってくる。そのたび、私の心は引き裂かれ、心の隅々から壊死してしまうような感覚に陥る。
[彼女はそこまで言うと、その冬の月明かりのような爪を、彼女自身の胸へと向けるのだった。]
――ごめんね。もう、限界なの。
[そう告げながらも、彼女は死の間際まで此方のことを心配した様子で]
――どうか、貴方はずっと生き続けて頂戴。そして、私のお墓を作りなさい。
[こんなときにまで我儘だった。必要としてくれる人を失う此方を、生かし続けるための呪いの言葉だった。更には「そして、そうね――」と付け加えると、]
――毎年、初めて出会った日。この村が外界と断絶される日には墓参りに来なさい。
[「生き続けろ」という呪いに更に効果を上乗せしてくるのだった。
そうして最後に、彼女は普段通りの太陽のような笑顔を見せると、その胸に爪を突き立てて、命という名の願いの水源を断絶させるのだった。
その後、己は彼女の墓を彼女と出会った場所の近くに作り、最期の願い通り、毎年外界と断絶された最初の日には墓参りをした。とは言っても、その墓参りの内容は指定されなかったため、挨拶する程度であったが。
彼女の呪いは彼女の目論見通り、己を生かし続けることとなる。それを迷惑ともありがたいとも思うことなく、ただ、それだけを己の中心に据えて、生き延びた。]
[何度も主張するようだが、これは悲劇的な話ではない。彼女は多くの人を殺したし、多くの人の人生を滅茶苦茶にした。台風のような人だった。
そんな彼女が、自分自身の願いに耐え切れずに、自らの命を絶った。全ては彼女の願いがもたらした結果であるし、そこに同情の余地など、或いはないのかもしれない。
ただ、彼女が命を散らしてから一つ、気が付いたことがある。
――この世には、彼女の生きた痕跡が驚くほどに存在しない。
そう、探せば探すほど、彼女の生きた証が残っていなかったのだ。この村に限らず、彼女は姿を見せることを嫌っていたのだから]
だから、僕は――
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