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素晴らしい闘いだった
[決闘の結末を見届けて、ゴルバとロー・シェンが立会人へ向き直れば、
ヒトガタはその表情を微笑ませた]
これが正当なる決闘であったことは俺が保証しよう
勇気あるものたちの決断に、誉れあることを
…大きくなったな、ロシェ
[落ちた言葉は唇の前で消えるほどに小さい。
クレステッドの口癖もクレステッドの用いた愛称も、このヒトガタに使う資格はないと弟はきっと言うだろう]
……
『ドワーフの技は面白かった
私はおまえたちが好きだ』
[笑みを消し、僅かに俯いたヒトガタの喉が別の声を紡ぐ。
ツィーアの核がチリン、と澄んだ音をたてた]
『して…もう、おまえたちは喰ろうていいのだな?
好きなものの死を得るのは私の喜びだ』
[重低の咆哮は、魔法兵器のもの。
最後尾といえその距離は決して遠くはない。
魔王の城は我が王を呼びながら、渓谷を動いて進み来ようとしていた]
…其方達の足で今から崖上へ逃げるのは得策とは言えないと思うが…
ここで俺と闘いながら、魔王の騎士が来るのを待つか?
立ち去れというならそうしよう
[ヒトガタはゆるく、剣の柄に手をかけた]**
[弱いものが死ぬのは魔界の常識だという。
ドワーフが人間よりも弱いことがわかったらしいから、彼らは死ぬ。ツィーアの思考は明瞭で、]
[魔王と袂を分かつ、とドワーフの長が言った時点で、彼らを殺さずにおく理由はなにもなくなった。
待機を命じられながら動き出した兵器は、我が王をその音で呼ぶ]
ドワーフだ
あれらは人間よりも弱かった
敵対するようだから喰らって良いな?
[手繰られた思念が波動を捉えると、ツィーアは嬉しげに鳴いた。
退屈は嫌いだ。特に我が王が玉座にいない時は]
早く満ちねば。アルテスの湾を広げるために?
[諾が返れば喉を鳴らすように]
そう、あれもいるぞ
天使と…レオヴィルの王族か。あれはお前が壊すのだろう
[ロー・シェンについて言及する時、ツィーアの波動は不機嫌さを滲ませた]
私に、美しい姿を見せてくれ
そこに人形がいる
負けてみても、…意味はないのだろう?
[レオヴィルの使者>>161に返すのは細い笑み。
それはロー・シェンの視線と態度が既に語ったこと]
ツィーアは其方を招きたいようだ
随分と気に入られてしまったものだね
[それが遊び相手としてなのか料理人としてか、人形を改良する素材としてなのかで彼の扱いはまるで違うだろうが]**
[渓谷を揺らす地響き、削られた岩肌が落下し砕ける大地の悲鳴。
巨大な兵器はこの渓谷にあるもの全てを踏み躙らんと迫り来る。
鉄底族の陣よりも北の方では遠く、阿鼻叫喚の騒ぎが始まっていた。
シラーから流れ来て、労せずに儲けを得ようと後方に位置どっていた亜人達が為すすべもなく巨大な城砦に轢き潰され、逃れようと南に争い雪崩れては将棋倒しとなり互いを殺していく]
[使者の男の甘やかな声>>176に、ヒトガタの笑みはいよいよ儚く細った]
十日前ならば
聞きたいと望んだのかもしれないな
[ロー・シェンの放った矢は、人形を砕いたが殺しはしなかった。
たとえ次には、呪縛された記憶ごと紛い物全てを消し去ってあげる──と言われたとしても。
今のヒトガタはもうその夢に浸ることは出来なくなっていた]
では、気をつけて行くといい
潰されないようにな
[ツィーアは天使を捕まえたいとは伝えてきたが、案内する方法など考えてすらいないらしい。
ヒトガタとしても、自ら転移魔法で連れて行くことなら出来るが…どうやら此処から立ち去ることは望まれていない。
迫る死の音の方向を軽く顎で示して、がんばれ、とそっと応援するに留める]
[ツィーアの実質的な本体であり、刈り取った死の触媒を溜め込んでいる"核"がヒトガタの胸に置かれていることは、伝えなかった。
純粋なエネルギーの塊である核を破壊するのは、恐らくあの移動城砦をバラバラに解体するよりも難しいと思う。
無力化する方法ならば幾つか思い付かないでもなかったが──どうでもいいことだ。
そもそも尋ねられてもいない]**
……
前を向いて貰えまいか
[片手剣を抜きながら、ぽそ、と小声で呟いた。
上空から舞い降りた黒竜と、その背にある魔王に、ヒトガタの眼が釘付けになっていたので。
それもほぼ真後ろを向く形に首を回された。ヒトガタにはまだ痛覚はある]
[ツィーアがヒトガタの首を元の位置に戻すころ。
亜人達と七の騎士がこの場に争いの火を灯し、鉄底族もまた完全な戦闘態勢に入り陣形を組み直していた]
…決闘の始末がまだだったな
立会人として、そこまでは俺が担おう
[首をさすっていた左手を下ろし、治癒の印を指で結んだ。
理論魔法に属性はない。
再生と体力の補充を呼ぶ魔法は、決闘に参加した四者に対して速やかに効果を及ぼした]
では、手短に死ね
[ヒトガタの体は跳躍して、鉄底族の中へ突っ込んでいく]
─
[空間の歪みを感じ取る]
──
[渓谷を削り、瓦礫で埋めながら進む魔法兵器の速度がやや遅くなった。
魔の波動がうねり、獣が喉を鳴らすような音を立てる]
『来た』
[顎を開いたツィーアの内部で誘う光が走るのは前回と同じ。ただ、より不穏に蠢く気配に満ちていた]
─ 魔都シラー ─
[各地に築き上げられた物々しい監視塔。
その時、塔にいたのは殆どが人間だった。
奴隷に奴隷を監視させ、奴隷に家畜を虐げさせる。
人間同士に上下を作り不信と絶望を増やしていく、シラーを纏めるオークにとっては当然の統治術。
反抗勢力との小競り合いこそあれど。たまに取り逃がす程度のことは些細だと判じていた。
家畜は殴れば悲鳴をあげる、いつも通り。いつも通り。
闇の中で響く鈴の音>>5:42にも、監視塔に配置した奴隷達が口ずさむ歌>>4:265に注意を払いもしなかった]*
『ディーク』
[腹の中にある気配。
声を振動として読み取り、その名を繰り返す。
ずると壁から生えるのは、先日はなかった滑らかな触手。
動物性でも植物性でもない巨大な鞭は、淡く光る舌を広げて気配の下に広げた]
『花瓶?なんだ
"料理"か?』
[動く小さな何かに誘われるように、空中の光がゆらゆら動いた]
─ 渓谷 ─
[深い霧と瘴気、そして死が満ちる谷。
鉄底族のハルバードの前には、群れ集る亜人達など無力に過ぎない。
ドワーフにとってもっとも脅威となるはずの魔王直属の騎士達は、銀月牙を相手にその数を減らしつつあった。
だが]
……っ!
[ぐあん、という轟音と共に、強固な陣を組んでいた鉄底族のうちの一体が輪から弾き飛ばされる。
そのフルプレートに覆われた体躯は亜人の群れへと投げ出され──起き上がる隙をとらせまいと殺到する有象無象によって瞬く間に見えなくなった]
は…
[軽く息を吐き、
振り下ろされる斧槍を視界に捉える。
豪速のそれを受け止めることはせず、風をひとつ吹かせた後にはヒトガタはドワーフの戦士の背後]
…、
[するりと伸ばされた手は兜の横から女の耳を掠め、
三つ編みと繁った髭を切り落としながら首筋へ短剣を突き立てた]
[斃れる戦士を離れたヒトガタの軌跡は、鉄底の強固な檻を流れる水のように、
すり抜け掻い潜って、また懐のあいた戦士を見つけ出すと体当たりを加えた。質量の差を無視した衝撃はドワーフの体躯を宙へと舞い上がらせる。
そして振り返りざま、目の前の戦士の肩上へと飛び上がって鎧の隙間へ片手剣を柔らかく挿し込んだ]*
─ Z ─
『休むのではないのか?』
[ディーク、の代わりに落下してきたのは軽い感触。
先日ヒトガタと共に訪れた西の平原で、匂いを嗅いだ"花"とそれが同じものだと思い当たるまではかなりの時間がかかる]
『美しいものは不要だ
だが贈り物ならば、受けよう』
[ブーケを拾い上げた別の細い繊手がそれを矯めつ眇めつするように揺らし、
やがてそれを壁の一部にあった装飾のくぼみへ挿した。
凹みに物を置くのは、我が王がやっていたことの真似だ]
『それで、遊びに来たのだろう
遊んだらお前を裂いてみよう、好いな』
…よそ見をするなと言っているぞ…
[小声の呟き。
降りしきる血霧を躱して跳躍しながら、瞳は魔王の姿を探している。
嗜めるような言葉を紡ぎながら、ヒトガタの意識はロー・シェンの動く姿を追ってもいた]
……
[ガツ、盾を砕かれたドワーフがたたらを踏む、その頭上を飛び越えた]
──殺せばいいのか
[ツィーアの核が涼やかに鳴った。
ヒトガタの動きは人よりも馬よりもずっと速い。
ひとつ、ふたつと鼓動を盗むように霧の中を駆けて]
─ Z ─
[魔王カナン・ディ=ラーグによって重い封印をかけられたまま、凪の面を覗かせている魔導炉。
その上に光──魔の光ではない天のいろが輝いた]
『ああ、 天使』
[魔導の波動は声を紡ぎ、音を揺らす]
『何故だ?
すべてを無くすためだけに私は生まれたのに』
[翼もつ者に、足場はいらないだろう。
触手は滑らかな肌を広げるのをやめ、鞭のごとく撓って天界人へ伸びた]*
話したいこともあった
クレステッドではなく俺の、怨嗟を
[娘から視線を銀の月へ向ける。
それを拾い上げることはせず、左手を宙へ上げた。
何もない空に 半透明の鎌を生み出す]
……だがもう殺す
[あの胸をアイリの月が貫いた時──
記憶は鮮明に何度でも、死の瞬間を繰り返してきた。
ヒトガタはその記憶を参照し、再現する。
振りかぶる死の鎌は狂わぬ軌跡で 娘の背を指した]
[鎌を握る指が震えた。
兄上、と記憶の通りに呼ぶ声がする。
顔を上げないまま、喉を引き攣らせた]
……無理だ
俺は
ロシェ──逃
[囁くような、記憶の再現。
月の背に、銀の月が飲み込まれていくのを薄青の瞳が見つめていた*]
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