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― 光の御船 ―
補填効率は…、ふむ。
これ以上の上昇は難しい、か。
[あまりに量の補充を優先しすぎれば、質が犠牲となる。
下級天使など消耗品だが、あまりに脆いのも考えものだ。]
このままで良い。
一軍は編成次第、箱舟へ留めおけ。
御子らの眠りを妨げなどさせぬよう。
[上級天使らを留め置くことはしなかったが、
箱舟がまるで無防備で捨て置かれているわけでは、無論ない。
大天使が再び遥かなる高みの船に戻った後、
さほどの時を置かずして天使の一軍が箱舟へと降下した。
光の天使らの加護の輪は、
やがて白く輝く繭の周辺を光で淡く覆うだろう。
それはあたかも、それ自体が奇跡の顕現にも似て。**]
[天のいと高きところ、清浄なる神の木にそれは実る。
人の形を成す命の種子、聖なる神の種。
あたらしき人の子を、完全なる人を宿す生命の木に。
その種子を預かって、地上に降りた。
赤子の形に姿を変えた種子は、あたたかで柔らかかった。]
[あの子は覚えていまい。
天の樹から離されて、不思議そうに天使を見上げてきた子は、
小さな、その小さな手を差し伸べて来たのだ。
その手に触れた時から不思議な心地がした。
何故だか、心までがぽかりと温まったような気がした。
あの時に繋がれたのだろう、この絆は。
あの時に、小さな手に繋がれてしまったのだろう、この心は。]
( ────… 繋がっているよ )
[今も。あの頃>>2:=27と同じに。
糸は、光の糸は───、心は。今もなお。]
( だから、泣くのはおよし )
[愛しい子。と、繋ぐ響きは宇宙をこえて、
かつての幼子にも響いたろうか。
そうして語りかける、天使もまた───…]
( お前に 会いたかった )
[本当は。
本当は…会わぬままあれば良かったのかも知れぬ。
地上に撒かれた希望の種、
これは人の子が不遜を為さずに地上にあったなら、
種は芽吹くことなく、そのまま人としての生を終えただろう。
天使降臨の奇跡が顕現することはなく、
人々は、依然として無知なる幸福の裡にあったのだろう。]
[けれど。]
[人の子らはやはり、大いなる過ちを犯した。
そのあまりなる無知と思い上がりは、粛清されるに値する。
既に裁定は下された。
人間は地より粛清されねばならぬ。
それが、いかなる悲嘆と苦しみの先にあるのだとしても。
人の子らには不服だろう、不満だろう。
地に満ちる嘆きと混沌の渦は、
人として育てられてきた、愛し子をも巻き込むだろうか。
苦しむだろうか。……悲しむ、だろうか。]
──── 良かった、と。
お前に会えた幸運を喜んでしまうこの心は、
天の御使いとしての道を外れてしまうだろうか。
自らの心で、この争いを……
人の子の不遜をさえ、喜びの裡に捉えてしまうこの心は。
わたくしには天の軍を率いて地に赴き、
人の子を粛清し神の声をあまねく地に響かせる使命があり、
……───お前との再会など、
取るに足りぬ”ついで”に過ぎぬ。
そう、分かって … いるのだが な。
[独り言に返る音はない。
この声は誰にも響くことはない。
そうと知るがゆえに、柔らかなこころは、
隠されることなく零されていく。]
今度はあべこべだよ、マレンマ。
[囁き落とす声は柔く、やさしく。]
今度はわたくしが、お前を待つ番だ。
[深い眠りに落ちた子の安らぎを破らない音量で。]
待っているよ。だから、
…… 早く、目覚めておいで。
[優しい子守歌の如く。
囁いて、大天使は祈るように目を伏せ微笑んだ。**]
― 光の御船 ―
[輝ける御船の中、大天使の姿は箱舟を…繭を見下ろしてある。
地上近くに目を向ければ、動く光の姿が幾つか、
流石に当初の大規模な攻勢ではないものの、
そこかしこで人の子への小規模な”救済”は為され続けている。
それに対する反撃も、また。]
……───、
[囁きに似た吐息が僅かに空気を揺らした。
音は音にはならず、大天使は無意識のように
銀の首飾りを手に握っている。
僅か、苦笑が零れた。]
……。
[ゆるりと首を横に振る。
そうして、再び地上へと視線を落とした。
輝ける御船の中、再び天使はじわじわと増え始めている。
人の子らがどう思うにせよ、再び出てきた折には、
万軍の光の槍が、不遜なる頭上に再び振り下ろされる*筈だ。*]
船を増やしている───…?
[影よりの報に、大天使は眉を顰めた。
地上の様子を眺め遣り、顎を引く。]
良い。それらへは、わたくしが当たる。
シメオン、アディリエル。
そなたらは、己の務めを。
[人の子の砦に潜むという影へも、きびとした諾が返る。]
― 光の御船 ―
………あれか。小賢しい真似をしてくれる。
いかに数ばかりを増そうとも、空を飛ぶなど叶わぬものを。
[地上を見遣れば、影の報告にあった通りに、
地上や中空に幾つかの船団らしきもの>>160が見て取れる。
それらへと向け、白い指先が示された。]
あれら不逞なる船団に裁きを下せ。
再び空を舞うこと、許してはならぬ。
[そうして幾つかの下級天使らの群れが、
それら偽りの宇宙船へと向けられた。
だが。
そうした動きが天使らの手勢を散らしたには違いなく、
黙示天使の得られたはずの加勢は、その数を減らすことになる>>164]
(それにしても、)
[二人の天使に警告を告げたのは我ながら。
もしや、人の子を尤も侮っているのは我ではないか。
そんな疑念が大天使の心に僅かなる影を落としている。
見下ろす地上に近く、繭の近くに人の子の船が見える。
アディリエルの対する、あれが件の船だろう。
天使らの光も見える。………、が。
本来よりも手薄であることは事実で。]
…………、出られるだけの者を集めよ。
[未だ”生まれたばかりの”天使に、さしたる力は期待は出来ぬ。
けれど今は、それすらも貴重な戦力となりそうだった。
指示を下し天の声を投げるのは、眼下へと向け。]
アディリエル。 足りるか?
[投げたのは、ごくシンプルな問い。
出来るか出来ないか、ではない。
出来ることは既に”知っている”
けれど、今は手勢の薄いことも分かってる。
足りぬというならば、それは光の天使の責ではあるまい。]
/*
定期的に天使陣営が私を殺しに来るよね
シメオンもなーーーーー
ほんと、相応しい主でありたいですね…(顔覆いながら
…………、なに。
[聞いたのは天の声。
小さな悲鳴のようにも響くそれに、
大天使は整った眉の形を僅かに歪めた。]
───── 出るぞ!
[大天使の号令に、数多の下級天使が付き従う。
地上から見上げたなら、圧倒的な光が半ば質量となって、
箱舟へと降りかかるかのようにも映っただろうか。]
アデル、アディリエル、
持ちこたえよ。
すぐにそちらへと行く。
だからそれまで、
[苦しげに響く声に、常になく大天使の声色も変わった。
このままでは、光の天使は、
自らを天に捧げてしまうのではあるまいか。
そんな予感が、大天使の翼を急がせる。]
───── 戯けたことを!
[どこか宥めるような、
止めるような声に返ったのは短い一喝だった。
ぴしりとした声が、白き翼の天使を打つ。]
そなたは我が翼、我が腕ぞ。
その為に力を振るわんとして、何とする。
…アデル、アディリエル。名を与えし光の子よ。
お前もまた、我の愛しき子のうちなれば。
[諫めるように激しい口調は、やがて穏やかなものとなる。
彼の裡に動いた心は知らず、語りかけるは我が裡のこと。]
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