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― 『世界軸』上層・影輝の間 ―
[ 聞かされた試練の内容に、案の定クラリッサは戸惑ったようだった。
ある意味最強の相手、と、言う言葉には内心で同意を抱く。最も戦い辛い相手という意味で、実にこれ以上手強い相手は無い ]
(だが、だからこそ)
[ 他者とぶつかるのでは判らない事が、この試練によって掴めるのではないか、と、そんな気がしていた ]
俺の一番の特性は硬さだからな。そこに自信を持たないでどうする。
[ あっさり言うなといわんばかりのクラリッサには>>13笑みを浮かべて、そう応じた。
その硬さに頼って来たが故に、先には不覚を取りもしたし、別の弱点もある。
しかし今は ]
自信があるからこそ、お互い全力を出せるだろう?
[ クラリッサの故郷の技術の粋を体現しているであろう銃の威力、それを受け止めると断言出来る事に喜びすら感じる ]
おう。思い切り、来い。
[ 全力で応えるという言葉を聞けば>>14強く頷いて ]
はっ!!
[ 続いて薄紫の中、響いた甲高い金属音...続いた宣言と銃声を耳にすれば>>15間髪入れず手にした長槍を、横薙ぎに揮う ]
[ しかし、クラリッサは、その槍が届く前に、射撃の反動を利用して、槍の間合いの遥か後方に一気に飛び下がり、すぐに足元を狙って連射を浴びせてきた ]
っ......!
[ 当たっても傷は受けまい、だが、連続して集中する弾丸をまともに受けたのではさすがに足元が危うくなる。
たまらず、後ろに下がれば、更に距離は空き、同時に跳躍からの一発が、飛んできた ]
うおおっ!
[ 武器狙いなのか偶然か、手元に当たった弾丸は表皮に弾かれたが、跳躍したクラリッサに追いすがろうと突き出した槍の狙いはぶれて、更に宙返りで距離を稼がれてしまう ]
やはり、身軽だ、なっ!
[ そのまま駆け出すクラリッサの後を追うように、オズワルドの足も地を蹴った ]
[ 身軽さと小回りでは、絶対に敵わないだろうが、全力で駆ければ、大柄な身体はそれなりの速力を出せる ]
はあっ!
[ そして、まだ長槍の間合いには届かぬ位置で、男は、気合と共に、槍をクラリッサに向かって投げつける ]
[ 当たらずとも、足止めさえ出来ればいい、反撃の連射が飛ぶことも覚悟のうえで、男は一気に距離を詰めようと、試みる* ]
― 『世界軸』上層・影輝の間 ―
っとおっ!
[ 槍を放つとほぼ同時に撃ち込まれた弾丸は、顔面に迫ったため、身を捻って、すれすれ避けた。実は頭部と顔面は、表皮が薄く、銃弾を受ければ無傷とはいかないかもしれない部分なのだ。
もう一カ所、銃弾が当たると少々まずい場所があるが ]
ははっ!驚いたか?
[ 投じた槍に目を見張ったクラリッサの様子に>>47男は笑う。不思議な高揚感は、これまでに感じた事のないものだ ]
[ 足の止まった相手に向かって、そのまま速度を上げて駆ける。
避けられて落ちた槍を拾う暇は無いから、とれる手段は肉弾戦のみ ]
はっ!
[ 鋭い気合と共に、クラリッサの右の胴を狙った回し蹴りを仕掛ける* ]
― 『世界軸』上層・影輝の間 ―
[ 手加減無しの回し蹴りは、クラリッサの胴を掠めたが>>63勢いが乗っていただけに、振り抜いた後は、少しばかり体勢が崩れることになった ]
ほんとに、元気な奴だな...
[ 軽くはない衝撃を喰らったはずだというのに、怯む気配もないクラリッサの様子に、思わず漏らした声には呆れたような響きが籠もった ]
ぬおっ!?
[ そのまま距離をとるかと思われたクラリッサが、逆に詰めて来た事には、今度は男の方が驚かされた。
何をする気だ?と、思う間に、小柄な身体は全身バネのように低い姿勢から見事に跳ね上がり、義体の右足による蹴りが襲ってくる ]
[ 咄嗟に身を引いたが、レアメタルの重い一撃は、顎に届き ]
くあっ!
[ 一瞬、脳味噌を揺すられるような感覚に陥って、後ろへよろめく ]
くっそ...やってくれる......
[ 目論見通り距離を取ったクラリッサは、どう動いたか、男の視線は、右手の少し離れた場所に落ちている長槍に向き ]
...!
[ 咄嗟、そのまま、身を転がして槍を手にしようと動いた。手が届いたなら、低い姿勢のまま、クラリッサの足を薙ぎ払うように右から左へと地面すれすれの位置で槍を揮う* ]
/*
まあなんというか、割と通常営業なダイス目というか。くろねこさんが相手なので、結果はまったくわかりませんし、想定もしてないぜ(まて
― 『世界軸』上層・影輝の間 ―
[ イレギュラーな攻撃法は、放った方にも相応のダメージをもたらしたようで>>69その隙が、男の手に長槍を取り戻させる ]
はっ!!
[ 狙い澄まされた銃弾は>>70男の首の付け根の表皮の薄い部分を掠め、朱を散らしたが、揮った槍の動きを止めるには至らず、狙い通りに、射撃体勢をとったクラリッサの足を払って、転倒させる。
男は、そのまま、長槍を頭上でぐるりと回しながら、穂先を正面に向け直し、転んだクラリッサの前に踏み込んだ*]
― 『世界軸』上層・影輝の間 ―
[ 揺らがぬ瞳が男を見据える>>79龍の牙の前に身を曝しても尚、一歩も退かぬ意志の光 ]
(綺麗だな)
[ その瞳を見つめる男の胸に浮かんだのは、そんな想い ]
惜しかったな、クラリッサ...
[ ぴたりと、槍の穂先をクラリッサの胸元へ向けたまま、最後の一歩は踏み込まず、男は笑みを浮かべた ]
もう、2センチばかり中心にずれていたら、俺の逆鱗に当たっていた。
[ その言葉が示すのは銃弾の掠めた首元の傷。彼女が手にした銃を再び放つなら、狙う事は容易い筈だ** ]
― 『世界軸』上層・影輝の間 ―
逆鱗は不可蝕の龍鱗...お前が影の龍を撃った時、あいつが急に暴れ出したのは、弾丸がその逆鱗に当たったからだ。
龍族にとっては、時に命に関わる弱点でもある。
[ 首を傾げるクラリッサにそう説明する声は淡々と静かで、大分惜しかった、という言葉にも素直に頷く ]
[ やがて伏していた視線を上げて、空色の瞳が、再び男を捉え、笑みを浮かべる>>97]
(折れない、曲がらない、決して諦めない...誰よりも自由な......)
そうだな、やってみてもいいが...
[ どちらが速いか、やってみるか、と、負けん気も露わに投げられた言葉に、今度は男の方が目を伏せると、クラリッサの胸に向けていた穂先を下げ、くるりと半回転させて右脇に柄を挟む ]
だが、俺が逆鱗の事を教えた理由は、別だ。
[ 穂先を背後に向けて、攻撃の意図の無いことを示しながら、男は銃持つ娘の前に、片膝をついた ]
クラリッサ・パルティトウール、俺は、地の龍オズワルドは、お前にこの命を預ける。
[ 瞬時、銀の龍眼と、黄褐色の宝玉の煌めきが、空色を真っすぐに見つめ]
絆石の縁の為でも、世界を護る為でもない...
お前の折れない意志の輝きと、曇る事無い誇りの美しさ、その自由な魂と、共に在る事を、俺自身が望むから。
[ やがて、その瞼を、再びゆっくりと閉じ、龍は、静かに頭を下げた* ]
……そもそも、だね。
ボクは、きみにとって、『何』なんだい?
[絆石の縁が関わりないと言うならば。
余計にそこがわからない。*]
― 『世界軸』上層・影輝の間 ―
有り得ない...か?
[ クラリッサの零したぼやくような声に>>129頭を上げてオズワルドは首を傾げる ]
容易いわけじゃなかったぞ。これでも結構勇気を振り絞ってる。
[ そんなことを全くの真顔で言うのは、相変わらずと思われたか ]
持ち上げ過ぎも何も、正直に感じたままを言っただけだ。
それは確かに、お前は俺より小さくて、膂力は弱い。
だが意志の強さでは負けてないだろうに。
それに、俺に傷をつけたのは、この世の生き物の中でお前だけだ。
[ 男としては、虚竜は生き物に数えていないから、そう言って ]
そんなお前が、俺と並び立てないなんてことは、それこそ『有り得ない』
[ 更に、きっぱりと言い切ってから、普段は見せないクラリッサの表情>>130に、目を瞬かせた ]
『機』の力が自然じゃないなんてことはないだろう?
お前の足も、その銃も、自然の中から産まれた鉱石や、火薬のエネルギーを練り上げ、組み上げたものだ。
自然の中から、力を取り出し、その力を借りる...精霊術や魔法と、やり方は違っても、同じ術だと俺には見える。
[ どこまでも素直な声音は、詭弁でも何でも無く、男が、本気でそう思っている証拠とは伝わるか ]
龍は確かに、生まれつきの力が強いから、それ以上を求める事の少ない種だ。だが、それは停滞と、命の澱みにも繋がる。
そんな古き種の対極に、お前やお前の故郷の者達のような、現状に留まる事を良しとしない、常に新しい可能性を探し、産み出し続ける新しき種が居る事こそが自然の摂理そのものじゃないか?
[ そして、対極であるからこそ、尚強く、惹かれたのだろう、と、男は、そうも感じている* ]
俺にとっての、お前、か?
[ 心に落とされた問いに、男は暫し、言葉を選ぶように、沈黙して ]
この世で一番大切なもの、だな。
[ 返したのはやはり、素直な答え、と、 ]
俗に言っていいなら、惚れた女だ。
[ するりと、そんな台詞を付け加えたのは、そろそろ色々誤摩化し辛くなってきたからに他ならない* ]
……ふぇ?
[ぽそりと投げた問い。
それに返ったのは、物凄く素直な答え]
あ、え、と。
…………え?
[今何聞いた、何言われた!?
そんな困惑を宿したコエが零れて落ちる]
大切、って…………ていうか、惚れた……て。
……ぁぅ。
[一生言われる事はない、と思っていた類の言葉をさらっと言われて、困惑が先に立つ]
ぁー……もう。
だからなんでそーやって。
こっちの予想を簡単に踏み越えてくるのっ……!
[想定外だ。色々想定外過ぎる。
言われた事も想定外だけれど]
……嬉しいじゃないか、ばぁか。
[そんな言葉がするっと出てきた自分にもちょっと──いや、かなり驚いた]
[ 男はどこまでも、自分に正直に心を伝えた。...が、本人もとい龍としても、これは初めての経験だった ]
(......親父の気持ちがようやく解ったな......)
[ 龍の身で、人の娘を妻にするために『命懸けで求婚した』と言った先代に、しみじみと共感したのも、仕方がないところ ]
......嫌がられたらどうしようかと思ったぜ。
[ どうやら、気持ちは違わず受け止められ、受け入れもされたらしいと、解って、心底から安堵の吐息をついた ]
― 『世界軸』上層・影輝の間 ―
...て、おい、大丈夫か?
[ いろんな意味でオーバーヒートしたらしい、クラリッサの様子に>>148男が慌てて立ち上がり、歩み寄ったのと相前後して、神子の声と癒やしの風が煌めく宝石の星空の下に届く>>152 ]
やっぱりな...
[ 最後の難関、と、神子の言った『虚』との戦いは、男には予測済のものだったから、そこに動じる事は無く ]
早く戻ってメンテナンスした方がいいな。
運ぶぞ?
[ そう宣言すると、拒否権など無いと言わんばかりに、さっさとクラリッサの小柄な身体を横抱きにする ]
見届け御苦労だったな。神子殿には、全力もって『虚』は防いでみせる、と伝えてくれ。
[ そのまま歩き出しながら、その場に控えていた薄紫の仔竜に声をかけて、中層へと続く階段に向かう* ]
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