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絵本 エレオノーレ は お兄系ファッション雑誌 めりー に投票した(ランダム投票)
[今年は図書館で新年を迎えるのだろう。なんて漠然と考えながら今日を過ごしていると、小さな女の子が「自分」を手に取って母親と思われる女性に見せた。
やがて少女よりもいくつか年上に見える少年もやって来ると、同じ女性に手にしたゲームブックを見せていて――
あれよあれよと言う間に、自分達はその親子に貸し出されて彼らの家へと招かれる事となった。]
バジルも一緒、だね。しばらくの間、よろしく。
[にぱり笑うバジルに自分も小さく微笑んで。
必要とされる喜びを感じながら、少女の腕に抱かれて彼女達の家へと連れられるのだった。]
[新しい本を借りたことで気分が高まっているのだろうか、・・・いや、きっと素がこれなのだろう。子供というのは、そういうものだ。
風呂に入ればろくに髪も乾かさぬまま、元気いっぱいにはしゃぎたて、走り回る兄妹。声は届かねどそれを叱りつけるバジル。
そんな彼らの様子に目を細める。どうやら、今年の年末年始は退屈をする事だけはなさそうだ。]
ん、ありがと。
お気に入りの、〇〇・・・?
[>>+14バジルから缶ジュースを受け取り、少し一息入れていると飛んできたそんな質問。いまいち漠然とした質問に、ううんと少し困ったように考える。]
じゃあ・・・やっぱりここは、絵本で。
「11ぴきのねこ」っていうシリーズの絵本が、私は好き。
11匹のあんまりかわいくない猫が、いろんな冒険をするの。知ってる人も多いと思う。
[そう答える物の、どこが気に入ったのかと言われると少々困るのだが・・・何故か、ずっと昔に読んで以来、今でも印象に残っている絵本だった。]
[年の瀬の夜、そろそろ良い子は寝る時間に差し掛かった頃・・・女の子が借りてきた絵本を抱きながら、母親にそれを読んで欲しいとせがんで来た。
折角借りてきたのだからと母も快く承諾し、もそもそと布団に潜り期待に満ちた眼差しを向けてくる女の子に微笑んでから、絵本を開く。
絵本にしては厚みがあったソレには、いろんなお話や童話が乗っていた。
しかし、その多くは女の子に読み聞かせた事のあるお話で・・・どれにしようかと目次を眺めていると、やがて母親は見慣れぬタイトルを発見した。
それにしようと決めれば記されたページを開き、読み上げ始める。]
「『桃太郎じいさんと灰かぶり姫。』
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
その日もいつも通り、おじいさんは山へ芝刈りに。おばあさんは川へ洗濯をしに行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、川の上から大きな桃がどんぶらこ〜どんぶらこ〜と・・・
――中略――
こうして、桃太郎はお供の犬、猿、キジと一緒に鬼を退治して財宝を持ち帰り、お爺さんお婆さん達と幸せに暮らしました。」
「鬼を退治してからしばらくして、家族や仲間達と平和に暮らしていた桃太郎。
ある日、桃太郎は魚を取ってこようと、家からほど近い海に行きました。
すると、浜辺では子供たちが寄ってたかって一匹の亀をいじめているではありませんか!
『こらっ!お前達!何をやっているんだ!』
桃太郎が叱りつけると、子供達は慌てて逃げて行きます。
ひっくり返った亀を助け起こすと、亀はぺこぺこと頭を下げてお礼を言いました。
『ありがとうございます、桃太郎さん。どうぞ私の背中に乗ってください。お礼に竜宮城へ連れて行ってあげましょう。』
――中略――
何日も竜宮城で楽しい時間を過ごした桃太郎。しかしそろそろ帰らなければ家族や仲間達が心配すると、もう帰る事を乙姫様に告げると、乙姫様は玉手箱を渡してこう言いました。
『お土産にこの箱をお持ちください。しかし、決してこの箱を開けてはなりません。』
箱を受け取り、亀の背に乗って陸に戻ってきた桃太郎。
しかし・・・箱の中身はなんなのだろうと、気になった桃太郎はなんと箱を開けてしまったのです。
すると箱から煙がもくもくと立ち込め・・・煙が晴れると、桃太郎はお爺さんになっていました!」
「とほうにくれながらも、まずは家へ帰ろうと思った桃太郎じいさん。
しかし、歩き出してすぐに、何かおかしいなと思いました。帰り道が、自分の知っている景色と違ったからです。
確かにそこにあったはずの建物が無く、何も無かったはずのところには新しい家が建っている。
不思議に思いながら歩く桃太郎じいさん。やがてたどり着いた我が家を見て、自分の家がここにあった事にホッとしながら玄関を開けました。
だけど・・・そこで彼が見た物は、変わり果てたお爺さんとお婆さん、犬、猿、キジの姿でした。
既に亡くなっている彼らの前で、桃太郎じいさんは泣き崩れました。
『僕のせいだ・・・僕ばっかり一人で、何日も竜宮城で楽しい思いをしていたから、バチが当たったんだ。』
三日三晩泣き続けた桃太郎じいさん。だけど、いつまでもみんなをこのままにしておけないと、せめて一緒の所に埋めてあげようと彼らの亡骸を火にくべて灰にしました。
5人の灰をザルに入れて、見晴らしのいい丘に埋めてやろうとそこへ向かう桃太郎じいさん。
するとその途中・・・不思議な事が起こりました。」
「風に舞った灰が枯れ木に降りかかると、なんとその木に満開の花が咲き乱れたのです!
何が起こったのかさっぱりな桃太郎じいさん。
『そうか・・・きっと、これが僕の「つぐない」なんだ。申し訳ないと思っているのなら、僕が楽しんだ分だけ、みんなを楽しませてやれって・・・おじいさんとおばあさんが、犬と猿とキジが、そう言ってるんだ。』
そう考えた桃太郎じいさんは、村のみんなの前で枯れ木に花を咲かせ続け・・・いつしか彼は、「花さかじいさん」と呼ばれるようになりましたとさ。」
「だけど・・・今までのはほんのプロローグ。
この物語は、ここからが始まりです。
桃太郎が花さかじいさんと呼ばれるようになってからしばらく。ある日、とある一家が村に来ていました。
花さかじいさんの噂を聞きつけ、一目見ようと訪れたのです。
気前よく彼女達の前で花を咲かせようとする花さかじいさん。しかし、その時びゅうと風が吹いて、撒いた灰が一人の少女にかかってしまったのです。
意地悪な姉とママハハたちは、花さかじいさんを責めるどころか、それを見て大笑い。
それ以来、少女は家族たちの間でこう呼ばれる事になりました。
――
「・・・あら、いつの間にか寝ちゃったのかしら。」
[気づけばスウスウと寝息を立てていた女の子。
その寝顔に母親はクスリと笑うと、女の子に布団をかけ直してやってから、絵本に栞を挟んで本を閉じ、そっと部屋を出て行った。]**
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