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[──その冬、彼女に人狼であることを告白された後、「へぇ、そうなんだ」と反応を返すと、彼女はどのような表情を浮かべただろうか。]
――ふふっ、そんな反応をしたのは貴方が初めてよ。
[確かであるのは、彼女がとても愉快そうにしていたこと。彼女としても、此方が嘘など考えられないし、考える意思すらないような人間であることは既に悟っていた。そして、己としても彼女が人狼であることに疑いなど持ち合わせていなかった。
その上でこのような反応を示したのが余程嬉しかったのか、はたまた彼女の理想に適う反応をしていたからなのか、何れにせよ彼女に気に入られてしまったのは確かだった。]
――良いわ。空っぽな貴方に、私の願いも理想も全部あげる。生き方を、教えてあげる。私が、貴方の存在を望んであげる。
[この上なく、傲慢な押し付けだった。その上「――ああ、そうそう。ついでにこの冬の間、私をここに住まわせて頂戴」などと言うものだからとんでもない。
しかし、己はそのような要求もすべて受け入れた。それは、望まれたからか、はたまた虚ろな中にも動かされる何かがあったのか。少なくとも、己の存在そのものが望まれたことは初めてのことだった。]
[それからしばらくの間、彼女と過ごして気が付いたことがあった。当初こそは、日常の中で息をするかのように要求を向けてくる彼女に対して、依存されたのだと、そう単純に考えていた。
しかし、それは違う。恐らく彼女は当初から気が付いていたのであろうが、彼女と己の関係性を言葉に表すのなら、まさしく“共依存”だった。
彼女の細かい注文も、大雑把な注文も、全て彼女の期待を借りてこなすことで、この上なく満たされていた。一時的かつ借り物であるとはいえ、彼女と過ごしていたときばかりは、己にも“中身”が存在しているのだとさえ錯覚していた。
残酷なほどに願望の渦中へと縛り付けられている彼女と、空っぽな己が互いに依存するようになるまでに、そう時間はかからないのだった。]
[彼女は村にいる間、それが習性なのか、そうしたいと願ってのことかはわからないが、誰からも姿を見られないようにしていた。そうして事実、誰の目にも触れることはなかった。
しばらくして冬が去って行くと、彼女もまるで春を避けるかのように、村から去って行くのだった。一度だけ「引き止めなさいよ」と望まれたために引き止めたが、それでも彼女は去って行った。
とはいえ、一度生まれた共依存の関係がそう簡単に終わるはずもなく、彼女は頻繁に村を訪れるようになっていた。その最中で、どのような状況にあっても生き延びられるような術を多岐に渡って叩き込まれ、果てには一度だけ、村を滅ぼすのを見届けさせられたことさえあっただろうか。とは言っても、彼女は己に手を下させることはなかったし、むしろ「貴方は手を汚さないで頂戴」などと望んだため、本当に見届けただけだった。]
――ありがとう。これでも私、貴方には感謝しているの。
[かつて、彼女に脈絡もなくそう告げられたことがあった。別段、感謝の意を伝えたくて放った言葉ではないのだろう。恐らくは、そう伝えたいと気まぐれに自分が望んだから伝えたというだけのこと。其れに対して己は「どういたしまして」と、教わった通りに応える。そのような関係が、感情が無いなりに心地よかったし、相手も恐らく同じだったのだろう。悲しみ、怒り、喜び、憂い、様々な感情を惜しげもなく、思ったままに表現する彼女の見せる表情も、次第に笑顔が増えていっていたように記憶している。]
[そしてその日々は――その関係は――忽然と失踪するかのように、足音も無く、突如として終わりを告げた。彼女が前触れもなく、村へ訪れなくなったのだ。いや、もしかすると前触れはあったのかもしれない。しかし、少なくとも己にとっては突然のことで、自らに蓄えられた彼女の望みが瞬く間に霧散していくのを、ただ茫然と見守ることしかできないのだった。]
[その後、再び彼女が現れたのは、おおよそ一年と半年後。冬に差し掛かり、村が閉ざされる直前のことだった。]
―回想・約十年前B終了―
―談話室―
[気が付くと、ペーターとヤコブのやり取りが聞こえてきた。]
[ペーターが自分のことを気にしてくれているのは分かる。しかし、彼から少年らしくない冷たい視線が発せられている>>18のはどうにも落ち着かない。]
――でも、何もできない。
[心の中で呟く。]
――心配しなくても良い。心配せずとも、彼の刃は、きっと僕には届かないから。
[少なくとも、己自身はそう考えていた。しかし、敢えてそれを伝えることもしない。]
[ヤコブの、「この中から人狼を探す方が先」という言葉には、何故いなくなった人が人狼で、期をうかがっているという可能性に思い当たらないのかと感想を持つ。自分に矛先を向けた時もそうだ。思考が固すぎる。
…には、それが真実であるかどうかはともかくとして、ヤコブがこの村に存在する人狼を探しているのではなく、“自分が疑いたい人狼”を探しているようにしか見えないのだった。]
――昼食の準備も仕込み程度にはしておこうか。
[口をついて出た言葉は、二人に関わることではなく、そんなことだった。]
―宿前―
[しばらくの間、疑心暗鬼が宿内で広がっていく様をただ傍観していたが、ふと宿の外へ歩を進める。特別な理由はない。]
――生きていることそのものが罪、か。
[エルナの言葉>>88が頭を過る。如何にも人間らしいエゴだ。]
――人間は、どうしても自分達を特別視したいらしい。ただ単に、環境に適していたからこそ繁栄してきただけだというのに。
そして今、村人同士で疑心暗鬼に陥っている人間と、村を滅びへ導いている狼とでは、どちらが環境に適応できているのだろうか。崩れた環境にも気が付かず、未だ人間が特殊であることを信じてやまない。憐れなことだ。
[本当は憐れむ感情など持ち合わせていないにも関わらず、口先だけで呟く。
もし、世界に陸が無かったら?恐らく人間は滅びるか、少なくとも繁栄することはなかっただろう。偶然、そうならなかっただけで、今人間が繁栄しているのも偶然に過ぎない。]
――今の状況なら、むしろ人間の方が余程に生きているだけで罪深い。
[心の中で呟く。別段、エルナの考えを皮肉るわけではない。もとよりそのような感情自体持ち合わせていない。ただ、手持無沙汰にそんなことを考えていた。]
[外に出て、ニコラスか誰かに会えば挨拶くらい交わすだろうか。或いは、誰にも会わなければ程無くして宿の中へ戻っていくだろう。]
―回想・宿屋前―
ヨアヒムの居場所……?
[ニコラスに尋ねられて>>100、少しばかり思案する。最近では村に様々な感情が渦巻きすぎて、感覚は大分鈍くなっていた。ヨアヒムについては宿を出て行ったところまでしか捕捉できていない。]
今は村が騒がしいから、正確なところは分からない。目的も無く出て行ったのであれば予測もつかない。
……ただ、こんな状況で、目的を持って外へ出て行ったのであれば、大方は自宅か、件の森ってところだろうね。敢えて一人で出て行ったのだから、誰かに来られることは望んでないかもしれないけれども。
[ヨアヒムの居場所が分からないのは本当で、完全に予測だった。]
ん、どういたしまして。
[お礼を言われたためにそう返し、宿へと戻る彼の姿を見届ける。]
――話したいこと、か。
[最後に、雪さえも凍てつかせるような声色で呟く。まるで、空間に広がる冷気が、その瞳から発せられているかのようで。己自身は、ただひたすらに渇きを感じていた。]
―宿・談話室―
[誰にも見られないように、コップ一杯の水を用意して飲み干した。飲んだ水は生き物のように体内を巡り、渇きを潤す。そして――
――潤いを上書きするように、嘲嗤うように、潤いが“渇”きに喰い荒らされていった。]
――ああ、もう限界か。
[心の中で呟くと、それに呼応するように内なる獣が目を覚ます。時々目にする赤色の月のような眼光が煌めきを増して、凍てつく視線が鎖状となって、己の中で交錯する。
――“声”が、聞こえた。「生き続けて欲しい」と。
かつてかけられた、願いという名の呪いは瞬く間に身体を満たす。渇けど渇けど潤す意思は芽生えずに、しかし、限界に達すれば彼女の願いが意思として、己に宿る。
――我ながら随分と遅い目覚めだ。
と、やはり他人事のように考えた。]
/*来たら凄いことになっててびっくり。
てか、PL視点混ぜ込まれてるところについては表ではどこまで突っ込んで良いんだろう。突っ込むとしたらシモンとヤコブを人狼に仕立て上げるくらいしか思いつかないんだけど。
ペーターの証言が嘘でも、ペーターが狼側である証明にもジムゾンが無実である証明にもならないよね。もみ合ってその中で殺しちゃったけど怖くなって事故に仕立て上げちゃった可能性とか?
まぁ、こっちが考えすぎなだけか。
/*てか、やっぱりPL視点の混入を避けるって難しいよね。と、直近の流れ読んで色々。
何でこんなどうでも良いこと呟いているかと言うと、どうやって入っていくか掴みあぐねているから。さて、どうしようかなぁ。RP村のコアズレってガチ村以上に難しい気がする。
パン屋 オットーは、少年 ペーター を投票先に選びました。
パン屋 オットーは、旅人 ニコラス を能力(襲う)の対象に選びました。
―ヨアヒムの部屋の前―
[ペーターに関わる騒動を尻目に、談話室を後にして、ヨアヒムの部屋の前まで移動する。論理も何もあったものじゃない。と、侮蔑するような言葉でも置いていこうかと考えたが、生憎と誰かを侮蔑できるような感情など持ち合わせていなかった。談話室でもほとんど気配を絶っていた己の移動に気が付いたものは、恐らくいないだろう。あの場は既に、“死”が圧倒的な存在感を誇示して、支配をはじめている。]
……。
[ヨアヒムの部屋には今、ニコラスもいるのだろう。話し声が聞こえる。もしものことがあるならば、すぐにでも突入を決め込もうと、感覚を研ぎ澄ませる。]
[…はそのまま、ヨアヒムの部屋の前でしばらくじっとしていただろうか。或いは、己の存在に気が付いたヨアヒムが招き入れてくることもあるかもしれない。とにかく今は――
――ただひたすらに極限にまで溜めこんだ“渇”きが辛かった。]
――ニコラス。
[もしヨアヒムが迎え撃たなければ、音も気配も無く、まるで陰から具現して来たかのごとく、己が幼馴染の背後へ現れるだろう。声をかけなければ、瞬く間に、一つの吐息と共に、その息吹を摘み取れたかもしれない。それでも、何故か声をかけた。それに対して、彼はどのような反応を見せるだろうか。]
/*ニコラスさんありがとうございます……(;_:)
でも、赤で「行っても良いかい?」的な感じでヨアヒムに聲を聞かせるのが正解だったのかなーと今更ながらに。RP難しい。
――心得ている。
[「汚すなよ」と言われれば>>218、清流のような声色で応える。放たれた声は夜闇の鎖に絡め取られるかのように、影へと溶けて消失した。]
悪いね。既に知っているかもしれないけれど、僕は気の利いたことが言えないんだ。
――僕には感情が存在しないから。
[近寄りながら、呼吸の一部であるかのように、まるで店で接客しているかのように、平然と告げる。告げられた声に、ニコラスはどのような反応を示しただろうか。]
せめて、君が苦しまないで散ることを願うよ。
[口先では告げるものの、実際にはニコラスに対して何かを願うことなどできないのだった。そのような感情は持ち合わせていない。
己は先日ヤコブに対して放ったような殺気>>2:170をニコラスへ向けようと、その瞳を覗き込む。しかし、それはすんでのところで思いとどまった。
窓から差し込む光が彼の髪を、肌を滑り、雫のように堕ちていくかのように見えるのだった。艶美な月の光のようで、それでいてどこか禁忌めいていて、感情を持たないなりに、殺気などという無粋なものを向ける気にはなれなかった。
――それならそれで、構わない。
殺気はあくまで戦闘行為の手段の一つでしかなく、殺意すら持ち合わせない己には不必要なものだった。]
――さようなら。
[別れを告げる声は、彼にはどのように聴こえただろうか。まるで平時であるかのような声色に、殺気さえ込められていないその声は、或いはこの場に於いて殺気以上に無粋なものかもしれない。殺意を帯びない殺しほど恐ろしいものはないと、かつて教わったことがある。
別れを告げると、己は空間の波長と合わせるように、夜闇と一体であるかのように、この場で流れる月明かりと呼吸を同調させて、遂にその意識を刈り取るのだった。
頸椎の辺りへ手刀を一閃だけ落とし、窓から外へ躍り出ると、今度はそこを抉り出す。途端に、密度の高い血と“死”の香りが鼻腔をくすぐるのだった。この一瞬で、コップ一杯の水を飲み干すのにも満たない煌めきの中で、果たして彼はどこまで意識を保っていたのだろうか。]
僕にかけられた呪いは誰にも解けはしない。解かさせやしない。
[最後に鎖状の約言を呟くと、宿から少し離れた森の中で夢中になって貪った。空っぽな自身の中身を埋めるように。“渇”きを潤すように。]
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