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なっ!?
[クレステッドの影で見えなかったはずの不意打ちの炎さえ、彼>>82は易々と躱してしまった。
主従の絆を利用するために言の葉さえ操って、躱せぬならクレステッドへ、躱したとしたらソマリへ、確実に突き刺さるはずだった焔の牙は、無情にも壁にぶつかり掻き消える。
剣を弾いた衝撃と攻撃を完全に見きられた驚きに、身体に隙が生まれる。]
っ、しまった……!
[背後にはソマリの姿。
苦々しく表情を顰め、せめてダメージを軽減しようと身体を捻り、腕を翳す。]
/*
アレクシスさんは避けられるの予想外みたいに言ってますが、躱されても問題ないよーな感じで書いてました。
クレステッドが避けるか避けないかの意地悪だったのでね、そこが分からないと動けなくて混乱してしまった(ノシωヾ)恥ずかしい。
/*
私が灰になる前に、貴方が灰になりなさい。
[その時、大鎌の周囲を渦巻いていた炎が、声をかけたソマリではなくクレステッドへ向かって、蛇のように動き出す。
その後ろにはソマリの姿があったが、今はまだクレステッドの影になって、焔が動き出したことは分からないだろう。]
それ、避けたらどうなるか、分かりますよねぇ。
[動き、話から、二人の関係性を察し、追撃のように言葉を紡ぐ。
主へ危険が及ぶことを示し、にやりと笑った。]
[―――彼もまた、己よりも、ずっと人間らしい。
口腔で呟いた言葉は、彼の脇を抜けた。]
[距離を詰めたところで密やかな声が、空気を震わせた。]
―――琥珀の君、
[古い古い、石の名前。
柔らかく穏やかな色した結晶の。]
君は、優しすぎる。
[彼が呪われし血を持つならば、
きっと己は穢れし魂を持っている。*]
そうですね。
救世主でもないし、性格も悪そうです。
[普段ならば流せるような言葉>>105も、彼の生み出す風に煽られるかの如く、感情が勢いを増していく。
その象徴であるかのような焔の蛇が彼らに太刀打ちできなかったことは、己の言葉が理想論である証のようで、悔しさに唇を噛みしめた。]
……?
[彼の口の中で消えた言葉は、空気を震わせることなく、けれど微かな気配だけをこちらに伝えてくる。
反動と驚き、そして目の前の男に向かった意識が、隙を作った要因だろう。]
そんな思いをしてまで、なぜ戦う必要があるのでしょうね。
[視界に映るのは、太陽の色をした髪。
まるで天界の住人であるかのような色を持った男は、相反してひどく傲慢な言葉を紡ぎ、残酷な選択を下す。
瞳に浮かんだのは、同情と憐憫に満ちた色だった。]
ぐぅ、……っかは……!
[それとほぼ同時、僅かな髪と右の耳朶の一部が切り取られた。
痛みに顔が歪み、呪の施された血が宙を舞う。
ソマリの顔にも、幾許かの返り血がついたかもしれない。]
なぜその名を知っている。
お前は誰だ。
[これまでのどの声音とも違う冷えた音が低く響き、切り替えた大鎌がソマリを襲う。
袈裟に切りかかった踏み込みは深く、躱されようと躱されまいが、そのまま大鎌を反転させて、柄を彼の鳩尾へと叩きこんだ。
その反動を使い、二人から距離を取る。]
……っ、ん
[膝をつくことこそないが、大鎌を杖代わりに、一度荒い息を吐いた。
能力を使った代償に体力を削られ、治りの遅くなった傷からぼたぼたと赤い血が落ちる。
木の床に落ちたと思えば、そこからは場違いな淡い小さな花がいくつも咲き誇った。]
私が優しいなど、馬鹿馬鹿しい。
優しさを向ける相手すらいないのに……。
[自嘲の声は掠れ、小さく空気を震わせた。
死なないために不必要だった感情は、これまで磨かれることも汚されることもなく、己の奥深くに眠り続けているものだ。
自身さえ触れたことのない部分に手を伸ばされたような感覚がして、怯えにも似た感情が胸の内に浮かんだ。]
私の邪魔をするな……っ!
[動揺に瞳が揺れ、声が僅かに震える。
服の下の血玉を片手で握り締め、これしか術を知らぬかのように二人を睨みつけた。
足元に咲き誇る花々は新たに零れる血のせいで、赤く赤く濡れている。**]
―――その葛藤はこの血統由来か。ベルンシュタイン。
[囁く声が、今度こそ彼の姓を間違えず呼ぶ。
強すぎる癒し、彼の一族に羨望と嫉妬を燃やした多くの民草。
唯人は彼を理解出来ない。
魔物ですら、奇跡の力を畏怖するのだ。
恐れぬのは精々変わり者と名高い野茨公とその傘下ばかりか。]
慈悲で出来た身体か。
魔物となっていなければ―――、
君の呪いを、笑い飛ばしてやれたのにな。
[彼の身は生まれた時から慈悲で出来ていて、
己は心は生まれてから非情を覚えた。
お互い、家には苦労する。などと、笑い合い損ねた。
来なかった未来など、今は考えない。
ただ―――、きっと彼は、彼自身さえ省みず、
慈悲を示す時が来るのだろうな。と、何処か遠くの思考が巡った。
何故なら、彼もまた、持つ者。
高貴なる義務を神から背負わされた、癒し手なのだから。*]
― 地下 ―
貴方と同じだと言うのは大変遺憾ですが、お互い様という奴でしょう。
……気に入りませんね。
[己に満ちる血は、人どころか魔物さえ殺める。
持ち主の意思は、そこに介入できない。
だからこそ、似通う結果をもたらす彼>>151の非情さに、どうして止めようとしないのかと、反発してしまうのだろうか。]
理解と納得は違います。
……逃げたいと、思ったことはないのですか。
己の柵がない場所へ、誰かの手を取る未来を夢想したことすらないと?
[力強い言葉>>153に、瞳に浮かぶ憐憫は憂いに変わる。
己にはあった。
この身に宿る血をすべて捨て去って、過去の遺恨から逃げ出したいと思ったことが。
時を経てそれは、諦めに覆われてしまったのだけれど。
彼は、強いのだろう。
故に瞳は、羨望と嫉妬の色が混じる。]
[ソマリ>>153が被った血は、差別なく彼の身に呪を齎した。
身の内に取り込んでいないだけ害は少なく、中毒症状も起きないであろうが、それでも人の身には過ぎた甘露>>154。
昂ぶりに震える右腕を見て初めて、己の罪を知った。
野茨公が戯れに血を得たことはあれど、男自身が誰かの身に創造を与えたのは、これが初めてのことだったから。]
――っ!
[反応の遅れること数瞬、隙を逃すまいと大鎌の柄がソマリ>>155に叩きつけられる。
細腕と言えど魔物の力、壁に叩きつけられる衝撃は決して弱くなかっただろう。
床に花を想像しながら睨みつける瞳は、畏怖すらも溶かして。]
ふふ、慈悲などと。
そんなことを言うのは貴方が初めてです。
[戸惑いも恐怖も越えた先、そこにあるのはいつも諦念だ。
戦場に似合わぬ穏やかな笑みを浮かべ、肩を竦める様子は、どこか楽しそうにすら見える。]
過ぎた薬は毒となる。
そもそも薬ですらないこれは、人間の身にも吸血鬼の身にも不要で邪魔で害悪な、ただのゴミですよ。
[欠けた身体を、足りぬ力を、沈んだ命を、救うのではなく、想像する。
これはたかが一つの生命には過ぎた、神の力だ。
故に代償は大きく、遺恨は細い背中に重くのしかかる。]
いつから呪は、"まじない"から"のろい"に変わってしまったのでしょうね。
[誰にも打ち明けることのなかった思いがぽつり、空から落ちた一番雨のように落ちてきた。
ソマリの言葉に笑って、困ったように眉を下げる。]
もし私が人間ならば、貴方の非情を少し肩代わりすることもできたのでしょうか。
私たちが同じなら、そんな世界が、あれば……。
[そこまで言って、緩く首を横に振る。
在りもしない未来を描くのは、愚か者のすることだ。]
[二人の間に永遠とも言える静かな時間が過ぎ、その淡い色をした瞳>>156を湖面のような黒が見つめていた。
しかし彼>>157の気が驚きで揺れる隙を見逃す程、甘くはない。
仲間を持たぬ男は、周囲の気配など意にも返さなかった。]
やはり貴方は、れっきとした人間ですよ。
[穏やかで優しい、柔らかな声だった。
気が逸れた瞬間を見計らい、大鎌を器用に振り翳す。
かまいたちが幾重にも彼へ襲いかかり、その後ろから死神に似た黒髪の男が、血の大鎌をソマリの身体目掛けて、横一閃に薙いだ。]
我が名はアレクシス。
私の願いは、ようやく見つけた私の居場所を奪わないで欲しい。
それだけです。
ただ、それだけです。
[大鎌が薙がれる瞬間、地下の空間に小さな願いが響いた。
故に迷いのない攻撃が、容赦なく叩きつけられる。]
[交わした眼差しが、微かな弱さを。
義務の底に眠る本当の人間らしさに揺れた。
アレクシス、君と俺はきっと同じ咎を持つ。
俺が未だ、人であるなら―――。
きっと、君も人間だ。
…――ソマリ。
貴方とは、もっと違う形でお会いしたかったですねぇ。
[ソマリ>>220の声は凛と響いて、己が心の内を振るわせるには十分な力を持っていた。
彼の名をなぞるように囁いて、悲しみで縁取られた笑みを浮かべた。
それは夢だ。叶わぬ願いだ。
選べなかった過去は、どんなに手を伸ばしても届かない。
己が身に宿る血でさえ創造できぬ、ショーケースの向こうの玩具。]
だから、死んでください。
[大人は玩具をねだらない。
ひどく冷えた残酷な声が、憐憫も畏怖も羨望も嫉妬も掻き消して、暗く平坦な瞳が微笑む。
そこに躊躇は、欠片もなかった。]
――ふぅっ!
[鋭い息と共に横に薙がれた大鎌は、彼の太陽の髪と皮膚をいくらか奪う。
筆で描いたように白い服へ朱が走り、魔物の舌が唇を舐めた。]
まだ、終わりませんよ。
[もう一歩、そのまま追撃に踏み込んで、彼の肩へ左手を伸ばす。
その手に捕まれば、圧倒的な握力が彼の骨を砕かんとするだろう。
彼>>232の予測と違ったのは、口から覗く牙が、彼の首筋に突き立てられようとしたことだけ。]
――!
[叫ばれた声に意識を戻せどもう遅い。
ソマリという餌に食いついた愚かな魔物は、クレステッドという剣に大きな隙を見せていた。]
[袈裟がけに振り下ろされたクレステッド>>235の剣は、男の背中を大きく切り裂いた。
その衝撃にソマリへ寄りかかる形となり、本来の利き手である左手は、彼の肩の骨を粉砕せんと握り締める。
牙は血を吸うより前に痛みへ喘ぎ、首筋へ深い牙痕をふたつ残すのみ。
そこから溢れる血液を僅か舐め取って、ソマリごと身体を反転させ、クレステッドに対する盾にする。]
――、
[ソマリの眼差しにもう、瞳を揺らすことはなく、何か囁いた後、ソマリの身体をクレステッド目掛けて強く押した。
後退し踏ん張ったところで背中の傷口の痛みに呻きを漏らすも、歯を食いしばって大鎌を追いうちのように投げつける。
自己治癒能力の弱った身体は、耳と背を傷に大きく震えた。]
私と貴方は似て非なる者。
貴方は私の為に私が人間であればと言い、私は貴方の為に私が人間であればと言う。
私は魔物である事実を悔いたことはありません。
だから一生、貴方とは交わりはしないのでしょう。
[眼差しの向こうにある感情は分からない。
けれどこれまでの言葉から、彼が人間であることを良しとするのは理解出来た。
だから男は拒絶する。
仲間も同胞も必要としない。
ただ彼に幸せであれと願い、己は別の道を歩むのだ。]
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