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[ 敵手と認めた相手を捜して歩き出しながら「わかんない」と呟く娘の声に、そうだろうなと、胸の内のみで嗤う ]
お前も......帰りたいと思うなら、ここから出るまでは、自分の事だけを考えろ。
[ 相容れぬと、判っている娘に、それでも、背中越しにそう声をかけたのも、単なる気紛れ...その筈だ* ]
闇炎虎 タイガは、永劫の守護騎士 フィオン を能力(守る)の対象に選びました。
闇炎虎 タイガは、刃隠術 アイリ を投票先に選びました。
― 記憶 ―
[ 男の名を知る者は多い。大概は関わらぬ方がいい危険な相手としての認識で。
そうであることを、男自身も知っていたし、ある意味望んでもいた。
だが稀に、危険を危険と思わぬ輩が居る。そんな1人が、ディークというハンターだった ]
負けず嫌いというやつか。
[ 最初に獲物の取り合いになった時、警告の意味もあって、男は、滅多に出さぬ全力でその獲物を奪い取った。
そういった時の常で、虎としての本能が半ば以上表に出ていたから、普段は獲物と見做さない狼も、下手をすれば喰われると、感じはした筈だ ]
普通は、あれで懲りるもんだがな。
[ しかし、二度目に獲物が被った時、ディークは怯む気配も見せずに挑んで来た。
手加減したわけではなかったが、結果的に獲物を譲る羽目になったのは、少なからず、その負けず嫌いぶりを「面白い」と感じてしまったが故だとは、思っている。
獲物の取り合い程度で、決着をつける相手ではない、と、どこかで、そう思ってしまったのだ ]
今、俺の前に出て来る意味は...
[ 刀を抜き放ち、地を蹴って駆け出すと、そのままディークの胴を右手から薙ぎ払う形で刃を一閃する ]
判っているな!?
[ その刃が、相手の胴を切り裂く事は無い、と、承知している声音で言う男の顔には愉しげな笑みが浮かぶ* ]
誰が、おっさんだ。
[ 聞き逃せない部分に突っ込み入れつつ、予想通り最初の一閃を躱した相手が、鋭い動きで放ったワイヤーの軌道を断ち切るように上段から刀を振り下ろす。
断ち切れぬまでも、その動きを止めることは出来た筈だが、無論それでは終わるまい。
ディークの操るワイヤーは、正に生き物のように、彼の意のままに敵を絡めとり切り裂く得物だ。距離を空けられたままでは、男の不利は否めない ]
はっ!
[ 再び地を蹴った男は、一度、宙へと身を運び、身体を捻るようにして、路地の廃墟の崩れかけた壁の僅かな窪みに足をかけ、更に上へと壁を駆け上がる。
重力を無視したかのような動きはしかし、男の筋力のみで支えられた技だ。
ワイヤーが後を追ってくることは、無論予測の内だが、今度は避けるつもりも無い** ]
[ 文字通り、壁を駆け上がる男の後を追って蒼が奔る。鋭く細い刃と化した糸は、一度跳ね上がって軌道を変え、男の右の脹ら脛を、すっぱりと斜めに切り裂いて、朱を散らした ]
くぁっ!
[ 斬れ味鋭く裂けた傷は、傷ついた瞬間ではなく、一瞬遅れて男の身に痛みを伝える ]
貴様、も、相変わらずだなっ、くそ餓鬼っ!
[ 若さ故か、荒削りではあるが、恐らく生来、勘が良いのだろうとは、以前対峙した時にも思った。
今も又、ディークの狙いも動きも、基本的には的確なものだ。利き足を傷付けられれば、男とて、当然、動きは鈍る、が ]
だが、俺を止めるなら
[ 斬られた痛みに一瞬、足を止めれば、重力に負けて男の重い身体は下へと落ちる。しかし、ただ落ちる筈もなく、無事な左脚で壁を蹴り、同時に右手を伸ばして、ディークが引き戻そうとする糸を、その手に掴んだ ]
足の一本も、斬りおとさねばなっ!
[ 刃同様の糸はその手指をも切り裂いたが、男は、傷にも痛みにも頓着せず、力任せに自分の方へと糸を引っぱる ]
うおぉっ!
[ ディークが僅かにでもバランスを崩せば、しめたもの。左手に握った刀が、右肩を狙って振り下ろされる。
踏み堪えて、刃を避けたとしても、糸を引き寄せた勢いも借りて、ほぼ真上から落ちて来る男の回し蹴りが、続けて迫る。
蹴りを放った足は先刻切り裂かれたはずだが、すでにその傷はほぼ塞がっている* ]
[ 体勢を崩しながらも、刀の直撃を避けようと動いたディークの肩に刃は滑り、傷を刻む ]
は...!逃げ足だけは一人前になったか?くそ餓鬼。
[ 遠慮無く、腕を斬り落としてやる気で叩き付けた刃だ。傷は負わせても、相手が五体満足でいる以上、男にとっては「逃げられた」という認識になる。
しかし、浮かんだ表情は悔しさや怒りではなく、あくまで愉しげな笑みだった ]
ゆっくりしている暇はないぞっ!?
[ ディークが転がって距離を取るのには、追いつかなかったが、男は間髪入れず再び駆け出している。
糸を掴んだ事で半分以上千切れかける程の裂傷を負っていた右手は、まだ充分には動かない。それ故、左手で握ったままの刀を肩に担ぐ形で、一気に距離を詰めようとする。
搦手を使うなどという思考は、この男には欠片も無い* ]
成る程、なら、その口の悪さも、親父ゆずり...
[ 親父の教え、というディークの言葉に対する揶揄するような口調は、投げつけられた靴を避ける反射的な動きのために途切れた。
直後、一瞬外した視線の先からディークの姿が消え、鋭い爪を剥き出しにした狼の脚が、空中から襲ってくる ]
つあっ...!こんの...!!
[ 咄嗟に刀を袈裟懸けに揮ったが、刃が届く前に、狼の爪が右肩に食い込んで肉を抉った ]
そ、の、足癖の悪さも...親父譲りか?
[ 狼の脚は、人のそれより素早く危険だ。
男は、その動きを牽制するように眼前で刀を横薙ぎに揮う。
空気を裂くように振り抜かれた刀は、ごう、と一瞬渦巻くような熱風に包まれて、忽ち燃え上がる炎を纏った ]
全く、こんなに早くこれを使う事になるとはな。
[ 脚と右手は完治している、が、最後に狼の爪を喰らった右肩からは、まだ血を流したまま、燃え上がる刀を青眼に構え、男は歯を剥き出して笑った ]
来い、犬ころの、くそ餓鬼。
退屈を忘れられる機会はそう多くないからな。
[ いつも全力、と言われれば、当然だろう、と言わぬばかりに言い放つ ]
...に、しても、親父だの師匠だの、随分と大事に育てられた...ああ、由緒正しい?子犬らしいな、お前は。
[ そうして、犬という語が、ディークの神経を逆撫でしたらしいと知れば、くつりと嗤って、わざわざそんな言葉を重ねる。
その間にも、足元を狙って放たれた蒼糸は、炎纏う刀で地面を薙ぐようにして振り払った。
刃と炎を搔い潜った糸が、いくらかの傷を男の両手両足に残して行くが、総じて浅い ]
これで、終わり...では、ないよなっ!
[ 当然に、と、思った通り、また鋭く軌道と変えた糸が、男の身体を斜めに切り裂かんと迫る ]
だが、もう見える...
[ 立て続けに受けた糸の動きを、男の獣の目は追えるようになっていた。
襲ってくる糸に炎纏う刃を正確にぶつけ、そのままぐるりと、宙で刀を回し、刃に蒼糸を絡みつかせる ]
はあっ!!
[ 気合と共に、絡めた糸を断ち切らんと上段から刀を振り下ろすと同時、ごう、と一際強く炎が燃え上がった* ]
/*
ところで「見える」とか言ってるけど、戦闘中にディーくんがレベルアップして、見えなくなる、はありありだと思ってます(まがお
悪い、とは言わんが...
[ 大事なものが、という話は、先刻道を別れた娘も口にしていたな、と、ちらりと思い出して、僅かに苦笑する。だが、それもほんの刹那のこと ]
とりあえず、お前は、ソレに動揺し過ぎだ。犬ころ。
[ 刀に絡みついた糸から、ふいに強い気配が薄れ、刃がその一部を断ち切る感触が手元に伝わる ]
俺を本気で殴ろうと言うなら、もう少し頭を冷やすんだな。
[ 間合いの短くなった糸を手に、ディークが地を蹴るのを、迎え撃とうと、斜め下に刀の刃を流して構える、飛びかかってきたなら、そのまま斬り上げ、先に糸を放つなら、逆に搔い潜って飛び込んでやろうとの目論見だったが ]
何...!?
[ 今にも、こちらへ届くかと思った一瞬に、目前から青年の姿が掻き消え、直後、背後に、唐突に湧く気配 ]
...くっ!
[ 完全に予想外の方向からの蹴りに、即座に対処する事は出来ず、今度の蹴りはまともにくらって、男は蹴り飛ばされる形でよろける。ざくりと、狼の爪に脇腹を抉られ、地面にまで朱が散った ]
が...あっ!
[ 男の瞳が、光彩を細め、金色に染まる、刀が纏っていた炎が消えて、地に手をついた、その姿が、太い四肢で大地を踏みしめる黒虎の姿へとみるみるうちに変じていった ]
ぐる...
[ 不機嫌そうに喉を鳴らした銀の縞持つ黒虎は、たっと地を蹴り、己を傷付けた相手へと飛びかかる。
獣の姿となっても、性癖はそのままに、真っ向からの力技。だが、虎の牙と爪は、ある意味刀よりも凶暴な力を持っている* ]
[ 男が黒虎の姿を見せるのは、そう珍しい事ではない。街に入る時以外は、殆ど虎の姿で暮らしているから、むしろ、こちらしか知らない、という、アイリのような人間の方が多いかもしれなかった。
だが、逆に、普段獣形であるからこそ、戦いの最中にその姿に「戻る」というのは、男がそれを本気の戦いと位置づけた証拠でもあった ]
グルゥウッ!
[ とはいえ、それを、今、男自身も意識はしていない。手負いの身で獣化した瞬間から、思考よりも本能が勝ち、ただ目の前の獲物を狩ることしか考えてはいなかった。
眉間に打ち下ろされた打撃は、避け切れなかったが、衝撃に怯むどころか、怒りの唸りをあげて、その腕に喰らいつこうと牙を剥く ]
ガアッ!!
[ その牙を躱して、黒虎の身体の下に敢えて潜り込んだ男の拳が、腹を突上げ、傷ついた脇腹を更に痛めつける。一際大きく咆哮をあげ、のたうつように身を震わせた黒虎は、己の身体の下に在る敵手を押し潰さんと、全身の体重をかけ、その両肩を前肢で押さえつけながらのしかかった** ]
グルル...
[ 獲物を捕らえた虎は、睨み上げてくる飴色の視線の強さに、機嫌良く喉を鳴らした ]
...このまま、喰ってやろうか?
[ 至近に迫る虎の頭に、そんなシュミは無いと、顔を顰めるディークに向かって、本来なら獣の口からは発音できぬ筈の人の聲で、揶揄うように囁き、ぐい、と押さえつける前肢に力を込める。
より深く鋭い爪を食い込ませるのは、甚振るつもりではなく、それだけ相手の動きを警戒しているからだ。
力を抜けば、いつ擦り抜けられるか油断ならない。そんな予感がある......その予感を裏付けるかのように、痛みに負ける事を拒む意地っ張りの声が耳に届いて ]
くくっ...
[ 黒虎は金の瞳を愉しげに細め ]
ガアッ!!
[ 次の瞬間、牙を剥き出して前肢の下のディークの右肩に喰らいつこうとする。牙立てるために前肢の爪が肩から外れ、ほんの刹那の隙を生むのは承知の上だ* ]
ガウゥッ!!
[ ディークの右肩に虎の牙が食い込んだ刹那、半ば予想の通りに、振り絞られた声と放たれる蒼の糸 ]
グアッ!
[ 肩の肉を食い千切る勢いで、埋められた牙は、獣の背で乱舞する糸が、その黒と銀の毛皮を裂き、更にその下の肉を切り裂いて幾筋もの朱の線を描くと同時に、引き抜かれる ]
グォオオオッ!!
[ 糸の動きを避ける、というよりは、その糸に挑みかかるかのように、吼えて、黒い虎は宙へと身を躍らせる ]
ガウッ!
[ その瞬間、不規則に舞う蒼を払おうとした右前肢に、ひゅっと巻き付くように動いた糸に、肘の辺りから先がすっぱりと斬り落とされ ]
グアアアッ!!
[ 虎の咆哮が空気を震わせ、その身体全体が、ごう、と熱気を噴き上げて、激しい炎を燃え上がらせた。
黒と銀の獣の姿は、烈火の輝きに、完全に飲まれ、轟々と燃え立つ炎の塊が、ディーク目がけて跳ね上がり、中空から一直線に降ってくる* ]
/*
思い切り、腕、落ちてますけどね。後で拾うからね。うん、たぶん。
[ 切断苦手だったのでは? ]
[ たぶん、一昨日むげにん観たせい...(目逸らし ]
/*
ちなみに、炎=激情なので、攻撃喰らって感情が昂ると炎が出る感じなのです。冷静な間は出ない。
そして炎を纏ってしまうと、かなり消耗するので、あとでとってもお腹が空きます。
[ 炎は、虎の激情そのものを顕して、狙い定めた相手に一直線に奔る。
その進路を塞ぐように、蒼の糸が編まれ、防御の網を造り出すが、その様も、虎の目には留まってすらいなかった。
炎の中、ほとんど形を喪った虎のそこだけはくっきりと浮かんだ金色の瞳が見据えるのは、ただ、幾度もの交差の中で、一度も諦めず怯む事も無い若き狼の姿 ]
ディークッ!!
[ 蒼の網に受け止められ、僅かに動きを止めた炎から、朗々と呼ぶ声。それは、どこか愉しげに、まるで遊びに誘うかのような響きを帯びて ]
行くぞっ!!
[ 蒼の網は炎を散らし、その内に在る黒い虎の姿を浮かび上がらせるが、全ての火を消すには至らず、その網を押し切って、炎の虎は再び身を躍らせる ]
ガアッ!!
[ 咆哮、そして、牙にまで焔を纏う虎が、迎え撃たんとする飴色の視界に飛び込み、蒼い糸を操る左腕を狙って喰いつこうとする* ]
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