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― 『世界軸』上層・時の広間 ―
頼む...
[ すでに、『永劫』から目を離さず、隙を探るオズワルドは、龍眼を見るクラリッサの感慨には気付かぬままで、彼女が銃口を構える気配を感じ ]
お...?!
[ 次の瞬間、身軽に空中へと飛び出した小柄な身体の動きに目を見張った。
同時、空中から竜の右翼に向かって、六連射が放たれ、竜の口から、ギャーという耳をつんざくような鳴き声が上がる。
声と一緒に、『永劫』は、撃たれた翼をばさりと羽ばたかせ、開いた口から、ごう、と蒸気のようなブレスを空中に向けて吐き出した ]
クラリッサ!!
[ 男は警告の声をあげながら、地を蹴って、長槍を構えたまま、竜に向かって駆け出す ]
おらああああっ!!
[ 大きく雄叫びあげて、竜の首目がけて長槍をを突き出す。
己の動きに竜が気を取られてくれれば重畳。槍が龍の喉を貫けるかどうかは二の次といった動きだ* ]
うん、わかったー。
……まってて、ねー。
[待っている、と返された声の響き。
それから感じたもの、そしてそれがもたらしたものは無自覚、家族以外には聞かせた事のない緩い響きをコエに宿す。
寝ぼけているが故の作用も確かに大きかった、けれど。
絆石に初めて触れた時に感じた安心感に似たものを感じていたから、というのが、一番の理由だった。
寝ぼけているが故に、自覚ないけど。**]
― 『世界軸』上層・時の広間 ―
[ クラリッサが、器用に空中でトンボを切ってブレスの直撃を避けた、までは、見えたが、その後は目に入らない。
背後から咳き込む声が聞こえたのは気になったが、そちらを案じるよりも、竜を引き付けるほうが先だ ]
これが今の俺の仕事だからなっ!!
[ 最初に突き出した穂先は、気付いた竜が首を振った事で狙いを外れ、その緑色の鱗を僅かに削るだけに留まる ]
まだまだっ!
[ 踏みつぶそうとでも言うのか、足を、男の方へと踏み出す竜の動きに、笑みを刻んで、一旦引いた槍を、その足裏に向かって突き上げる。
並の槍なら竜の足の圧力で折れるところだろうが、龍牙は、龍の骨と牙で出来た長槍だ。
圧に耐えて、龍の足裏に突き刺さり『永劫』はまたギャーという甲高い苦悶の声をあげた* ]
― 『世界軸』上層・時の広間 ―
[ 『永劫』の足を貫き、その声が響き渡るのを耳にすると、男は再び槍を引いて、そのまま、竜の背後へと回り込もうと駆け出す、横目にクラリッサの動きを確認すると、丁度一発の弾丸が放たれたところ ]
何......?!
[ 竜の近くに居た男には、それがはっきりと見えた。
翼に弾丸が当たる寸前、目に見えぬほどの早さでその翼が動き、弾丸は空しく壁にめり込んだ。
継いで放たれた五連射も、悉く避けられてしまう>>136 ]
(「時」の竜とは、こういうこと、か)
[ 得心した男の左の黄玉には、竜の身体がその都度、異彩を放つのが見える ]
クラリッサ?!
[ 竜の羽根が起こした突風が相棒に向かう。
どうにか踏み止まりはしているが、このままでは埒が開かない ]
どうしても...楽はさせてもらえない、か...
[ 呟き落とすと同時に、長槍を頭上に掲げ、オズワルドは、大きく息を吸い込んだ ]
オオオッ!!
[ 咆哮の如き声を迸らせ、槍の柄を、頭上から床面に思い切り振り下ろす。
床を龍牙が叩くと同時に左眼の黄玉が煌めき、どん!と、一瞬大きな音を立てて、床全体が地震のように大きく、ぐらぐらとうねり揺れた** ]
― 記憶 ―
[ 人間だった母は、当然に龍族よりも寿命が短く、龍眼を欠いた長子を育てる事に生涯全力を注いだがために、男に弟妹は出来なかった。
その事が、余計に重い責と孤高を男に運命づけたのだが、それはそれとして(例によって表に出しはしなかったが)そもオズワルドは兄弟姉妹というものに密かな憧れを抱いている。
それ故に、最初に小さな獣人の探検に付き合った時には「弟がいたらこんな感じだろうか?」と、どこかでその感覚を楽しんでもいた ]
女の、子?
[ だから発熱したクラリッサを運び込んだ治療師の老龍の元で、診療のために服をはだけられた姿を見て、誤認に気付いた時には、少々呆然とした。驚きのあまり、義体の存在の方に気付くのが遅れた程だ ]
[ だから発熱したクラリッサを運び込んだ治療師の老龍の元で、診療のために服をはだけられた姿を見て、誤認に気付いた時には、少々呆然とした。驚きのあまり、義体の存在の方に気付くのが遅れた程だ ]
『若、嫁入り前の娘の肌を、そうまじまじと見るものじゃありませんよ』
[ 治療師にも、クラリッサは子供にしか見えなかったようで、男の目前で治療する事自体は躊躇いもしなかったが、熱にうなされる娘を凝視する男に対しては、そんな風に揶揄い混じりの言葉がかけられた ]
あ、いや、そうか...すまん。
[ 言われて僅かに顔を赤くした男に、老龍は、珍しいものを見たという顔を向け、治療が終わると、どこか優しい笑みを浮かべて手招いた ]
『この娘の手足の仕掛けは、治療師にはどうにも出来ませんが、どうやら身体に力の負荷がかかっているようです。回復を促す術はかけましたが、ゆっくり休ませてやらねばいけません』
そうか...うん、親父に話して、うちで休ませる。
『はい、出来れば清浄な気の通る部屋を選んでやってください。それと薬湯を定期的に飲ませるように。気の流れを正して回復を早めますから。水分を摂るのも忘れず』
ああ、気をつける。
[ 事細かに出される指示にいちいち律儀に頷いて、最終的に男は再び自らクラリッサの身体を抱いて長の屋敷に運び込んだ ]
こいつの世話は俺がする。
[ 看病のための世話係をつけようかという父に、即座にそう断りを返した理由は、なんとなく、クラリッサが自分の義体を多くの目に曝すのを嫌がるのではないかと感じたのと......自身が、誰にも任せたくないと思ってしまった気持ちが半々 ]
俺が連れて来た以上は、俺の責任だから。
[ そう口にした理由は、ほぼ言い訳だ、と、父には読めていたかもしれない ]
[ そうして、クラリッサの熱が下がり、意識がしっかり回復するまでの数日、オズワルドは、殆どの時間をその傍で費やした。
離れていると、自分自身落ち着かなかったし、気のせいか男が傍に居たり、魘されている時には、その手を握ってやった方が、彼女の様子が安らぐようにも見えたのだ ]
『行かせて良いのか?』
[ やがて回復して、再び旅に出るというクラリッサを見送った後、父には、そう尋ねられた。
すっかり見透かされているな、と思いながらも、オズワルドは首を振り ]
あいつは、自由だから。
[ 如何に離れがたいと思ったとしても、縛るつもりも、閉じ込めるつもりもない。と、そう答えた ]
それに...
[ これで終わりではない、と、その時からずっと、どこかに確信はあったのだ** ]
― 『世界軸』上層・時の広間 ―
[ 大地から離れた場所で、地を揺らす術を使う事は、龍の身にとっても大きな負荷となる。
けれど、うねり暴れる床の上で、オズワルドは微動だにせず、天井に穂先を向けた龍牙を維持して、眼前の竜を睨み据えていた ]
効いたか...
[ 幾分安堵したような声が漏れたのは、竜が翼の使い方を変え、床から浮き上がろうともがき始めたのを目にした時>>146
間を置かず、背後から龍の眉間に向かって撃ち込まれた銃弾に、思わず笑みが浮かぶ ]
いいぞ。
[ バランスを崩して、ずしんと地響たてて床に落ちた『永劫』の様子を目にしながら、男はまだ動かない。
術の行使によって乱れた気脈を整え、再び力を集中するために、じっと耐えている ]
[ コエを交わさずとも、今はクラリッサが、敵を引き付け、適う限りの手段でもって虚の竜の力を削ごうとしている事を知っていた。
時を操る龍相手に、遠距離攻撃はトドメを刺す手段とは成り難い。
だから、その後は、己の役目の筈だ ]
[ 空中で分裂した散弾が、竜の左右の翼を広範囲に穿ち皮膜を破る>>147
翼の力を奪われた竜が苛立ちを露わに、クラリッサに向かって大きく口を開いたのが見えた ]
ク......!
[ 名を呼びかけて、飲み込む。この事態は彼女にとっても想定内、先にも咄嗟にブレスを避けたクラリッサなら、まともに喰らうような事は無い筈、と、信じ ]
...?!
[ そう信じて、意識を自らの内に戻した瞬間、僅かに右手の絆石が、熱を帯びたように感じた。それは、まだ、弱く不確かな感覚ではあったけれど、すっと、乱れていた気脈が楽に整うのが判る ]
(これは、絆石の力か...?)
[ 思い巡らす間は一瞬、ブレスを吐き出した『永劫』の口に、怯まず連射を叩き込みながらの、クラリッサの声が耳に届く>>148 ]
おうっ!!
[ 応えと気合を、同時に込めて、腹の底から声を出し、オズワルドは、もう一度、長槍の石突きを床に打ち付けた ]
[ 同時、床を踏みしめた足元から、ぼこりと、岩の塊が盛り上がり、忽ち、太い石柱となって、男の身体を上へと持ち上げていく。
猫のような身軽さを持たぬ龍は、足場を自ら産み出す事によって、その身を敵手の頭上へと運び ]
ハッ!!
[ 長槍の柄を両手と右肩で固定して、ブレスを搔い潜った弾丸を受けて暴れる竜の上へと飛び降りた ]
[ 狙うは、その首の付け根。可動域を得るために、表皮が薄く、太い命脈も通る筈の場所 ]
グアァー!!
[ 輝く黄玉の気と、男自身の覇気を感じた竜が、降って来る殺気を振り払おうと、時を早めた長い尾を揮う。
硬い鱗で覆われた尾の一撃は、当たれば、龍の表皮とはいえ、完全に無傷で済むとは思われぬが、それを避ける気も、その余裕も、男には無い ]
オオォォーッ!!
[ 皇龍の咆哮と共に、龍牙が『永劫』の首を深く貫く。
相前後して、竜の尾の先が、オズワルドの背を薙いで、一文字に切り裂かれた背中から、紅い飛沫が宙に散った** ]
/*
実は前に疾風の子でやろうとしたことをここでやったというね...
多分、相方にはバレバレである。
しかし喰らい斬り(喰らい突き?)は、ろまん。
/*
とても全方位にマメで、相変わらずの気遣いっぷりだなメレディス。
半ひきこもりが申し訳なくなるレベル。
ひっそり占い結果も楽しみにしてます♪
[ こことあそこは、ほぼ確実に中身判ってる気がしてますのです。外れてたら後で謝ろう ]
/*
そして今頃、秘話にコピペミス発見...。
恥ずかしいログがますます恥ずかしくなr......
穴掘って埋まっておこう...・゚・(ノД`)・゚・
― 『世界軸』上層・時の広間 ―
[ 背を切り裂かれた痛みは、すぐには襲ってこなかった。それ程、目前の敵を倒す事に集中していたのだろう ]
ふ...う...
[ 『永劫』の名を冠する虚の竜の時が止まり、その巨体が地に伏した>>208その後、深々と竜の首を貫いた長槍を掴んだまま、詰めていた息を吐き出した。途端、ズキン、と痛みが走って顔を顰める ]
ってえ......!
[ 普段硬い表皮に護られて傷を受ける機会が少ない故に、痛みから傷の深さは判断つかない。意識を保っていられるということは、それほどの深手ではないのだろう、と想像がつく程度だ ]
(やばい...)
[ 意識に浮かんだのは、傷そのものへの懸念ではなく ]
あ、ああ...うん。
[ 駆け寄って来たクラリッサの声に眉を下げると、長槍を抜いて、竜の背から胴を滑り降り ]
尾の先が、かろうじて届いただけだからな...そう、深い傷じゃない、と、思う。
[ 傷を見せろ、という相棒の前に>>209素直に背を向けて座り込みながら、オズワルドは言い訳めいた口調で言った。
少し肩を落とし、若干背を丸めた様子は、これまでに無く、悄気た様子に見えただろう* ]
...いや、背中だから、自分では血も見えないしな。
[ 笑顔がこわい>>224と、久々に思った。ちなみに以前に同じ事を感じたのは、仔龍の頃に亡くなった母親に対してである、というのは余談として ]
......すまん。
[ せわしなく揺れる尻尾を見れば、ますます眉が下がったが ]
いっ......!?
[ 問答無用の勢いで塗られた薬は大層染みて、虚竜より、こちらの方が難敵なのでは?と、本気で思ったりもした。
もちろん、口には出せなかったが ]
[ そうして、血止めを終えたクラリッサの口から、ぽつりと零れた声に>>226男は、思わず振り返り、そこに乗る感情の色を聞き取ると、片膝を立てて、相手の正面に向き直り視線を合わせた ]
今度の怪我は俺の油断だ。
二度と、こんな無様はしないと、お前に誓う。
[ 真顔でそう宣してから、ふと、表情を緩めた ]
ありがとう、クラリッサ。お前の腕と存在に、俺はいつも助けられてる。
この先も、よろしく頼む。
俺も適う限り、お前の助けになれるよう尽くす。
[ 口調は硬いが、声音は柔らかく響いた ]
― 『世界軸』中層 ―
[ クラリッサの方も、ブレスの影響を受けている筈だったから、暫く、その場で休息し、やがて一度きちんと治療も必要だろうという判断で、中層へと戻る事となった ]
おい、生きてるか?
[ 背中の傷を本格的に治療してもらった後、通りがかりに、机に突っ伏したメレディスの姿を見かけて声をかける>>219
相変わらずの無愛想だったが、本気で案じている事は伝わるか* ]
無事ならいいが、無理はするなよ。
[ 起き上がって笑う男に>>241忠告めいた言葉を投げる。ものすごく判りにくいかもしれないが、僅かに声音は和らいでいた ]
試練か、まあ、あまり良い予感はしないな。
[ 今まで全く気にも止めていなかったが、神子が、その内容を告げるのを遅らせるにはそれなりの意味があるだろうと思っていたから、メレディスからの疑問には、そんな風に答える ]
どんな試練だろうと、必要なら乗り越えるだけ、だがな。
逃げては、本当に護りたいものは護れない。
[ 続けた言葉は、地脈の守護者として生きてきたオズワルドの信条であると同時に、本当に大切だと思うものを、見出した男の、芯から生じた意志でもあった* ]
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