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[次の朝。昨日のこともあって、いつもよりかなり早く起きてしまった。時間で言うなら、オットーが起きるよりもほんの少し前くらいだろうか]
フランツ……。
[昨晩書斎で見た彼の表情を思い出すと気分が沈む。落ち着いてこそいたものの、彼の顔は沈んだままで。
妹のこと、彼のこと、今後のこと。そんなことを考えているととても広間に戻る気にはなれず、結局昨日は夕食も食べずに個室に戻り、そのまま眠ってしまった]
[日の光を浴びながベッドに座っていると、ふとお腹から大きな音がする。慌てて周りを見回して、ここが個室であることに気付くと顔を少し赤くする]
……お腹空いた。
[こんなときでもお腹は減る。だいたい、旅では一日食べられないこともあるから、普段は大食いになりがちだ。お腹も大きくなっている]
また、オットーが作ってくれてるかな。
[昨日の晩に彼が見せた表情を思い出しながら、広間に降りた]
フランツ!?
[広間には、茫然として何もないところをただ見つめているフランツが一人いるばかり。いつもなら起きているはずのオットーやアルビンの姿は無かった]
……何か、あったのね。
[顔を見れば、明らかに今朝何かがあった、何かを見たことは分かった。
そしてそれが、恐らくは最悪の事態。この館に"人狼"がいるということである、ということも。
それでも、確認せずには居られなかった]
じん、ろう。
[頭では考えられていても、リアリティのあるものとしては頭に存在しなかったそれが、知り合いの言葉で急激に形作られる]
じゃあ、私達の中に……?
[この館は、今完全に出入りすることが出来ない。外から野生の獣が入ってくることは、ない。
それなら、私達の中に、その人狼が居ることになる。
……全員が全員を知っている、この中に]
そん、な……。
だって、私達みんな、知り合いで、
[フランツも、ジェフロイも、他のみんなも。
……勿論、コンスタンツェも。
皆私が小さいころから知っている人達だ。
その中に、人狼なんて、いるはずがない。居るはずがない、筈だったのに]
コンスタンツェ、ちょっと待って!
[庭園に向かおうとする妹を呼び止めようとしたが、聞こうともせず飛び出した妹。叫び声が聞こえてきたのは、そのすぐ後のことだった]
旅の作家 ローレルは、学生 コンスタンツェ を投票先に選びました。
うん、そうする……
[席を立ち庭に向かおうとしたところで、妹が扉を開けて館に入ってくる。その顔は予想通り酷いもので、またも私の制止など聞こうともせずに館の奥に入っていってしまう]
落ち着かせたら戻って――
[追う前に声をかけようとフランツを振り返ると、彼は胸に手を当て、苦しそうにしている。そのときふと蘇るのは、昨晩の表情。
彼も、溜め込んでしまうタイプだ。今も、おそらく初めに"ソレ"を見つけたのは彼で。何の情報も無いまま見た彼は、きっと酷い衝撃を受けたのだろう。
それでも、私には妹を追えという]
ううん、あなたの方が酷い顔をしてる。落ち着くまでここにいるよ。
[その決断にはもしかすると、この状況で感情を抑えようとしない妹への不満も少し混じっていたのかもしれない。私だって、親にすらまだ会えていないのを我慢しているのに、なんで妹だけ。そんな感情が無かった、とは言えない]
そう、なら、いいけど。
[それでも、この状態の彼を置いて妹を探しに行く気にはなれなくて。ぼんやりとしながら、椅子に座って彼の動く様子を眺めていた]**
[フランツに淹れてもらった紅茶を飲みながらディルドレの言葉を聞く。軍服に身を包んだ彼女の言葉は残酷でも、隙の無い正論。
それでも、いやむしろ正論であるからこそ、それは受け入れがたい物で]
……疑わしい人なんて、いません。
[こんなことを言っている場合ではない。なんて、そんなことは私自身がよく分かっていることだったけれど、言わずにはいられない]
みんな昔からの知り合いなんです。疑わしい人なんて、いるわけないじゃないですか。
なによ。じゃあオットーは誰が人狼だって――
[食ってかかるように彼に言い返そうとした時、聞こえてくるのは男の叫び声。思わず立ち上がって二階の方に視線を向ける、そこにいるのはジェフロイと……私の妹]
ふ、二人とも何を、
[突然のことに身体が動かず、出来ることと言えば固まって彼らを見つめることくらい]
え……う、そ
[妹の身体が床を離れ階段を転がるのを、私はただ黙って見ていることしかできなかった。
お腹に刺さっている何かも、その周りの赤色も、閉じられる瞳も、そのすべてがある一つの事を示していたけれど、考える事を放棄しているかのように頭が真っ白になる]
なん、で、?
え……う、そ
[妹の身体が床を離れ階段を転がるのを、私はただ黙って見ていることしかできなかった。
お腹に刺さっている何かも、その周りの赤色も、閉じられる瞳も、そのすべてがある一つの事を示していたけれど、考える事を放棄しているかのように頭が真っ白になる]
なん、で、?
[旅をしていた道すがら、勿論死体を見た経験はあった。
道の途中に倒れている人を見たことも、街中で揉め、喧嘩の末に殺された人を見たこともあった。
肉親の死、身近な人の死を見たのは、今回が初めてだ]
ごめん、なさい。
[妹が走り返って来たときに、すぐに彼女を追いかけていれば。小さな不満感で選ばなかったその選択肢を取っていれば。妹がこんなことになることはなかったのに。
だから私は、縋る妹にただこれだけを伝える]
ごめん、なさい、コンスタンツェ……
[そうして、それだけで考えが一杯になってしまっている私には、妹の最期の言葉も耳を通らない]
ごめんね、ごめんね……
[抱き付いてくる妹の眼鏡をかけてやり、自らも腕を身体に絡めて。それでも、彼女の言葉は届かない]
……結構です。
[神父として、なのだろうけれど。
昔はよく遊んでいたような、そんな知り合いの亡骸を前にして直ぐにこんなことを言えるような彼に、妹は渡したくない。
いや、もう誰にも触らせない。三年もの間会わずに、つい二日前に再開して。そうして、ほんの少しの気まぐれで手を放したらもうこんなことになってしまった]
もう、手放す気はありませんから。
[そうして、"妹"を背負って階段を上る。力ずくでもない限り、誰に止められてもその歩みを止めるつもりはない]
……結構です。
[神父として、なのだろうけれど。
昔はよく遊んでいたような、そんな知り合いの亡骸を前にして直ぐにこんなことを言えるような彼に、妹は渡したくない。
いや、もう誰にも触らせない。三年もの間会わずに、つい二日前に再開して。そうして、ほんの少しの気まぐれで手を放したらもうこんなことになってしまった]
もう、手放す気はありませんから。
[そうして、"妹"を背負って階段を上る。力ずくでもない限り、誰に止められてもその歩みを止めるつもりはない]
[ジェフロイとすれ違えば、鋭い視線を送り無言で通り抜ける。そこには、つい二日前談笑していた時の関係性など何処にも存在していない。
そうして個室に閉じこもると、妹をベッドに寝かせて自らは荷物を探あさり始めた]**
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