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僕は、大丈夫です。掠り傷ですし。
[ 反対にゾフィヤに無事を問われればそう返して、皆に大きな怪我はなさそうだと判断すると、ほっと笑みを浮かべた。 ]
良かった。技の加減が出来なくて、仲間に怪我をさせたなんてことになったら、卒業どころじゃないですから。
[ やがて、オクタヴィアスと巨狼の会話の内、関門突破の認定と、先へと進む承認を巨狼が口にするのを聞くと、カレルは、巨狼の前に進み出て、胸に拳を添え敬意の一礼を送る。 ]
承認頂き、感謝します。
[ 認めてもらえたのは、皆で力を合わせた結果、最後の一撃を入れることになったのは偶然と、カレルは思っている。だから、ただ、それだけを口にした。 ]
もっと厄介...
[ その後に語られた、この先の関門については、ぽつりと呟いて風竜と目を合わせるに止める。
なんとなく、そんな気はしてた、というのが、正直な感想だった。** ]
― 魔獣の領域 ―
あ、はい、念のためお願いします。
[ グレートヒェンに怪我の治療を勧められると>>162カレルは、素直に頷いた。この先も荒事が続くだろうという予感はあったから、できる限り体調は整えなければという判断だ。 ]
そうだ、援護をありがとうございました。
おかげでびっくりするほど力が出たし、アークも無事で済みました。
[ 治療の合間に、そう感謝も告げておく。実際、グレートヒェンとユリアの援護が無ければ、一撃で巨狼を殴り飛ばすのは無理だったろう。 ]
[ そもそも、上空で隙を窺っていた自身より、間断無く攻撃を続けていた同輩達の方が消耗は激しかったはずだ。その点一つとっても、自分の手柄とはとても言えないと、カレルは本気で思っていた。しかし殴り飛ばした巨狼に、思わぬ礼を告げられ、オクタヴィアスに賛辞を貰って>>143おろりと、目を泳がせる。 ]
いえ、その...本当に、みんなのおかげなので...でも、お役に立てたのなら、嬉しい、です。
[ のぼせたように頬に朱を昇らせ、漸く、そう口にしたカレルの横で、風竜の方は、ピュルル!と高く鳴き、無邪気に『凄いでしょ!』と自慢する様に胸を張っていた。** ]
[ やがて、暫しの休息を挟んで、再び先へと促すオクタヴィアスの声。>>144彼に対して、明らかに名残惜しさと親愛の情を見せる神域の守護者の様子と、それに答える騎竜師の姿は、カレルの心に、静かな切なさと、神話の一幕を目前にしたような不思議な胸の高まりを呼び起こした。
それが、何を意味するのかを、正確に知ることはできぬまま、再び光の門が開かれる。 ]
― 天翼の領域 ―
わあ...!
[ 先の経験から、心身共に油断無く光をくぐったのは、同輩達と同じ。けれど、広がる空を目にすれば、カレルの口から出るのは喜びを隠せぬ声だ。>>145
頭上からのし掛かる怒りの圧にも、最初は気づかぬ程...いや、気付きはしても、二の次にする程には、周囲の光景に心奪われている。 ]
ピュルル!
[ そのままきょろきょろと辺りを見回しそうなところを、押しとどめたのは風竜の警戒を促す鳴き声。 ]
あ、うん、ごめん。
[ 呆れた目を向ける相棒に、小さく囁いて、カレルは、改めて頭上の六翼の竜と、オクタヴィアスの問答に神経を向ける。>>146 ]
話は出来ても、結局殴り合うんですね。
[ 話の中身を聞けば、どうやら、これは、相手の矜持の問題らしいと見えた。先刻の巨狼の相手が苛立ちを鎮める為だったようだが、今度は、美しく気高い六翼の竜の矜持を、ねじ伏せねばならないらしい。 ]
地上の者には任せられないというのでしたら、僕ら騎竜師は天と地を結ぶ絆を継ぐ者だと、解ってもらうしかないんですかね。
[ ぽつりと零してから、カレルは自らの瞳と同じ色の空を見上げ、風竜の背に身を置いて舞い上がる。 ]
はっ!
[ 突き下ろすように迫った槍を跳ね上げ、カレルの剣は、そのまま、翼人の鎧の胴を薙ぐ。ばさりと、白い翼が散ってそのまま、空の下方に吸い込まれるのを見届け、カレルは、声を張った。 ]
アーク!上だ!!
[ 魔獣の領域と逆に、殴るべき相手は上空に在る。ならば、先駆けに駆け上がるのが今度の役目と、風竜は高みを目指す。 ]
[ 風の刃に翼を斬られ、また一人、白い戦士が空に墜ちる。それを見た戦士達が、数人まとまって、風竜へと迫ってきた。 ]
狙い通り、かな。ちょっと危ないけど。
[ 呟けば、大丈夫と請け負うように、風竜が、ピュルルと鳴いた。 ]
うん、頼むよアーク。できるだけ引きつけて。
[ いくら、飛翔力を誇る風竜でも、一息に六翼の竜に届きはしないと、カレルには分かっている。それでも上空を目指すのは、仲間達が少しでも戦いやすいよう、有翼戦士達をひきつけ、分断して各個撃破に持ち込むためだ。 ]
助かったよ、アーク!
[ 剣を振り抜いた隙を狙って矢を射かけようとした相手を風竜のブレスが両断し、そのフォローに、カレルは笑顔で感謝を向ける。
命がけに近い空の追いかけっこだが、相棒と共に青空を駆け抜ける事は、カレルにとって生きがいと言ってもいいもので、自然と笑みは屈託のない明るさを宿らせていた。 ]
そろそろ、片付いて来たかな?
[ 追ってくる有翼戦士を、ひとまず躱して旋回し、仲間達の様子を見る。実体の無い相手に苦戦している者も居るが、フォローし合っての戦いで、着実に敵の数は減っていた。 ]
もう、一息...!
[ ばさりと、聞こえた羽音に見上げれば、一人の有翼戦士が真上から急降下するのが見えた。 ]
...っ!!
[ 相手の槍が届く前に、剣の切っ先は、その胸を貫いたが、急降下の勢いのまま落ちて来た戦士の体がカレルを潰すようにのしかかり、重みで風竜の羽ばたきも鈍って高度が落ちていく。 ]
アー、ク!いいから振り落として!
[ 声に応じて、ぐるりと横向きに回転した風竜の背から、翼人が落ち、ついでにカレルも落ちかかる。 ]
うわっとっと!!
[ 辛うじて、風竜の胴にしがみつき、ほう、と息を吐いた。 ]
アーク、大丈夫?
[ 背によじ登り直して、問いかけると。 ]
ピュールー
[ 大丈夫じゃないのは、そっちでしょ、と、長い溜息のような聲が空に尾を引いた。* ]
う、わあ...御機嫌斜めって感じですねえ。
[ 風竜の上で体勢を立て直し、威嚇するように翼を広げる六翼竜を、カレルは改めて見上げる。>>235
オクタヴィアスの魔法の光と、声が続けて届けば、その光に宿る力に触れて、思わず瞬く。 ]
え、これ、凄すぎませんか?
オクタヴィアスさん、本当に、無理してるのでは?
[ 案じる視線を向けるものの、今は、そこにかまけてばかりもいられない。カレルの後を追うように、高度を上げてきたハンスとヤコブを視界に捉えると、カレルは、二人に大きく手を振って、空の六翼竜を一度指差し、続いて、風竜の翼を指差した。 ]
行きます!
[ 魔獣のように足を止めるということの出来ない翼持つ竜を、止めるなら、狙うのはまず翼だと、伝えようとした意は届いたか。どちらにせよ、彼らならば効果的な策を見出すはずと信じて、風竜の力強い羽ばたきと共に、再び空を駆け上がり始める。 ]
― 天翼の領域 ―
[ 風の刃が白い戦士の翼を散らした直後、ハンスと鋼竜が、大きな動きで右へと旋回し>>250角度を変えてヤコブと闇竜も風を六翼の竜に叩きつける。>>253
その頃には、シェンとゾフィヤも攻防一体の陣形を取って、後に続いていたろうか。>>247
グレートヒェンと花竜から送られた白花の香りが騎竜師達の背を後押しする。>>243 ]
右に、集中...ですねっ!
[ シェンの声は、カレルには聞こえなかったが、彼の判断に準じた騎竜師達の動きは納得のいくものだったから、迷いなく、その策に乗る。 ]
うっわ!
[ わざと六翼竜の正面を横切ってから右へ旋回しようとした時、咆哮あげて大きく羽ばたいた六翼から生じた乱気流に巻き込まれて、空中で錐揉み状態に陥った。 ]
アーク、頑張って!
[ 風纏う竜は、逆に風の影響を受けやすい、それを制するのが騎竜師の腕とは解って居るが、経験不足の弱味か、今のカレルは騎竜から振り落とされないようにしながら相棒を励ますのが精一杯だ。 ]
ピュルル!
[ ようやく乱気流から抜け出した風竜が、鋭く警戒の聲を上げたが、一歩遅く、偶然にか狙ったものか、六翼竜の長い尾の先が、カレルの背を打ち付けた。 ]
くあっ!!
[ 走った衝撃と痛みは、オクタヴィアスのかけた術の力によって癒えて行くが、カレルの身を案じた、風竜は攻撃の軌道を一度離れて高度を取る。 ]
だい、じょうぶだよ、アーク。
[ 脂汗を拭って笑みを見せれば、風竜は『ピュールー』と、疑うような聲をあげた。
貴方の大丈夫はあてにならない、と、伝わる意志に、カレルの表情は苦笑に変わる。 ]
本当に大丈夫。僕らはひとりじゃないんだから。
[ きっぱりと口にして、首を叩くと、漸く納得したのか、ばさりと羽ばたいた風竜は、再び六翼竜へと向かう。 ]
ハンスさん!ヤコブさん!タイミングを合わせましょう!
[ 近づいて口にしたのは、集中攻撃の効果をより高めるための方策。
闇竜のストームで六翼からの乱気流を相殺し、翼の動きを鈍らせる鋼竜のブレスと、切り裂く風竜のブレスを同時に放つ。白花の力を借りた今なら、あの壮麗な六翼竜にも届くはず、そして、 ]
僕らが、隙を作れば、シェンさん達ならきっと突破できます!
[ 彼らの力なら、六翼竜を落とすことすら、きっと出来る。一切の迷いなく、カレルはそう言い切った。** ]
/*
んんん?ハンス、右側から行くって言ってたから右翼狙いと思ってたけど、正面から右だから、左翼狙いって事だったのかな?済まねー、私も読み違えてたわー
向かって右ってことにしとこうね!
はい!お願いします!
[ 願いに、ハンスとヤコブから同意の言葉を得て返す声は明るい。
カレルにとっては、ハンスもヤコブも、自分には無い落ち着きと実力を持った尊敬すべき学友だ。
それは、シェンやゾフィヤ、グレートヒェンにも同じように抱いている気持ちで、彼等と共に空に在る事自体が喜びでもあったけれど...
こうして、提案した策を認められ、共に信を預け合える事には、更なる嬉しさと誇りを感じる。 ]
[ それは、兄の影、或いは代替、そんな風にしか親族からは見做されず、それでも、ただ空に憧れ、空を目指した少年が、騎竜師となって得た、大切なもののひとつ、だった。 ]
[ 三人の狙いを汲み取ったシェンが、ゾフィヤに指示を残して、騎竜の力を解き放たんと構えに入ったのが判った。
届いた濃紅色の花弁が、騎竜達の気を研ぎ澄まし、その感覚に同調する。重なる共鳴は、互いの呼吸すらひとつに重ね、やがて、一点に絞られる。 ]
アークッ!!
[ ヤコブとハンスの声が耳に届いたのと>>298,>>239カレルが風竜の名を呼んだのは、ほぼ同時。
闇竜の嵐が乱気流を制し、鋼竜のブレスと花竜の蔦が、三翼を絡め取る。同時に放たれた風竜のブレスが、動きの鈍った翼の風切り羽根を、ざっくりと刈り取れば、六翼の竜の羽ばたきが止まった。 ]
...!
[ それでもなお、空に留まる六翼竜に、灼熱の炎の流星と化したシェンとエルナトが挑み掛かる。>>296
その激しさと、力強さ、そして美しさに目と心を奪われ、護りの雪に包まれる中>>299カレルは、ただ息を呑んで見つめていた。* ]
[ 爆発的な力で六翼竜が岩場に叩き落とされた余波からは、雪と、危険を察知した風竜の素早い回避が守ってくれた。 ]
大丈夫ですか、シェンさん?
[ オクタヴィアスが、地に伏した六翼竜に近づくのを見ると>>306カレルは風竜を促して、シェンの側に降り立ち、声をかける。 ]
ピュルルル!
[ 風竜の方は、御機嫌なエルナトに、凄かったね!と、呑気に賞賛の聲を贈っていた。* ]
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