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[そーーーっと口から手を放す。
二人の時間がつづくという確信のもとに。
そうして不確かな未来の話をした。>>53
いっしょに旅に出たのならば行きたい場所の話を。
わたしが行きたい場所をヴェルも行きたいと思ってくれるだろうか。
そんな心配はちっともしていなかった記憶がある]
[だけど、心の奥底のどこかで気持ちが通じていても、
それを飲み込むことができないこともあった。
兄は確かに、「そのままでいい」と言ってくれたが、
それがどうしてなのかわからなかったのだ]
いっしょなら、さみしくはないよね? なのに……、
[だから、誰にも何も言わずひとりで、願いを叶える地へ赴こうとしたのだった。
故郷の町に背を向けて飛びながら、どうか今すぐ兄が追ってはこないようにと願った。
[追われることは結局なかったが、
何とか帰り着いたゾフィヤを待ち受けていたのは両親の叱責と、
感情を堪えたかのような兄の言葉だった。
抱きしめられているから彼の顔は見えない。それでもわかった。
きっと泣きそうになっているのだと]
ヴェル……ごめん、ごめんね。
たしかにわたしがバカだった、よ、
[同じになろうとして、結局兄をひとりにさせてしまった。
なんと浅はかな行動だったのだろう。それを今更ながらに思い知った]
うん、こんなことしないよ。
そのままでいいって言うんだから、そうする。
……うん、行くならいっしょに。
やくそくだよ。
[口にされた約束に素直に頷いた。
それはいつかきっと果たされるものだと根拠もなく信じていた――そう、あの日までは*]
―― 『神魔の領域』・滝のほとり ――
っ!
[声を掛けられとっさにその方を向く。>>96
目にしたのは鎧めいた姿――であった。
顔をすっぽりと、鋼鉄じみた質感がうかがえるマスクで覆っているため、
余計にそう思ってしまう。
響く声からして男のひとなのだろう]
同じ、花……、胸の、それと、
ってことは、…………へー、
[おもむろに相手の左胸を指さす。
表情はありありと「面倒なことになった」という感情に彩られていた。
それでもかけられた問いにはちゃんと答えるのだが]
なんともまあご名答なことで。
[ぶっきらぼうに言いながら背に手を回し、
ウエストポーチから漆黒の花を取り出して相手に見せた]
…………貴方。たぶん知ってる。
会うのは、……まあ『初めて』だろうけど。
フェアディガーって傭兵団の人でしょう。
5年前からあっちこっちの戦争に加わってる……。
そんな貴方がどうして、ここに?
貴方も花を持ってお告げみたいな声を聞いたってことは、
叶えたい願いがあるんだよね。
[さて、何故――ゾフィヤが相手の素性を言い当てられているかというと、
それは己の仕事に起因する。
『運び屋』としてのクライアントは往々にしてただの市民だが、
時折、市政をつかさどる者からの依頼が入ることがある。
この街や、あるいは友好的な街。
それらでつくられた支援物資を、戦火に焼かれた町や集落に運んだり、
機密情報が記された封書を、近隣の友好的な街に運び、
返信の封書を託され帰路についたりする、そんな仕事だ。
向かう先にどこかの軍の師団や傭兵団が残っている可能性もあるので、
いちおう彼ら――いわゆる“商売敵”の顔は覚えておいた方がいいと。
市長に言われるがまま見た資料に彼のこともまた載っていた]
[街の成り立ちが成り立ちなだけあり、
ミットヴィンターの住民は戦争を大いに嫌っている。
だが、寄せ集めの街に強固な武力――
あるいは信仰されし存在に根差した何らかの力があるわけではなく、
結局は力に頼らないと街を守れないのではないかという、大いなる矛盾にさらされてもいる。
そんな矛盾の只中にある市長に、
「やつらには町の守護を任せたくない」と言われてしまうのは、
どっちつかずと言われてしまうほど様々な国からの依頼を受けているから。>>0:121
まあ、そんな傭兵団の一人でなくとも、
兵士だの軍人だのが相まみえる相手となれば、
最終的に至る結論は今と同じだったろう。すなわち、]
……どうせろくでもないモンじゃないだろうけど。
[―――「ならばこの相手には願いを叶えさせるわけにはいかない」という意志を抱くこと。
すべては勝手な思い込みのなせるわざ。
そうして次にとった行動は早かった。
灰色の翼を大きく羽ばたかせふわりと浮上した。
羽ばたきでもって空中にとどまったまま弓を手にする。
起動、とひとつ呟けば、弓の両端からほのかに薄紫に光る弦が張られていく。
空中から相手を睨み据える、だがその挙動には答えを待つような間が確かにあった*]
―― 滝のほとり ――
有名?
……悪名の間違いじゃあない? それって。
[相手の言葉に眉を跳ね上げて皮肉気に笑ってみせる。>>159
やがては、確認が済んだか相手に確かめることもなく、
二種のきらめきに彩られた漆黒の花を元通りにしまってしまう。
お披露目の時間は済ませたと言いたげに、だ]
[相手の顔はフルフェイスマスクに覆われて見えない。>>160
とはいえ詳細を教える気はない、という意志をなんとなく感じてはいた。
それから]
(へー……ちょっとは憤慨してる、のかなぁ。
それとも……、)
[あるいはほんとうに、世界を害さない程度のまともな願いを抱いているというのか。
少し考えて、やがて改めて眸に対抗の色をあらわにした]
さあ、どうだろうね……。
でも、仮にわたしが貴方の言うところの「まともな願い」を口にしたところで、
引き下がってくれるとでもいうの? ……違うんでしょう。
[その言葉をもってして――議論は、交わることのない方へと向かいつつあった。
あくまでも戦う、という決断を示すように、
翼がばさり、と大きな羽ばたきの音を立てる]
…………かかってくればいいよ、
もう、覚悟はできてるんだから。
[カシャカシャという金属じみた音が、>>161
この場所がもたらす瀑布の音の合間に聞こえていた。
ゆえに、油断のないように弓に矢をつがえた。
弓を持った左手を手前に……右手を奥に]
[その音の出所は彼の身体からであるようだ。>>*6
さりとて彼は武器を持たぬ。音とともに武器が顕れてくるわけでもなし。
ただ、左腕を向けてこっちを指さしてくる。
過去に得た情報の通りなら相手の四肢そのものが武器だ。
ただの指差しではあるまい]
コード:アクセル!
[声をあげ、羽ばたく。
自らの時間感覚のみ加速した中に自らを放り込めば、
周りのスピードは相対的に遅く見える。
その中にあっても銃弾は相応に速い。
息をのみながらも相手の右側面に回った。
直後、加速の効果が切れる。
分かっている。人体に対しての時間操作、一度使えば見込める効果は高いが長続きはしない、
連続してかけようにもその間隙を狙われかねない、これは諸刃の剣――
だからこそ早めに有利を取りたいところではあるが]
っ!
[ともあれ器物に対してかけるのであればその点心配しなくてもよい。
ゆえにそうする。
ふいに白い羽根があらわれ、つがえた矢に吸い込まれるようにして消える。
そうして加速の効果を得た矢を相手に向かって放ってもなお、
ゾフィヤの動きは止まらない。
射撃と当時に翼を揺らし移動を始めた。
目指すのは上から大量に流れてきた水のたゆたう場所。
いくらか足場にはなる岩が点在している。それを飛び伝って追ってこいとでも言うかのようだ*]
[“あの日”――故郷が攻め立てられ双子が引き裂かれた日。
それを乗り越えてからの最初の2年は、家族を探すための当てもない放浪の日々だった。
だが成果は得られず。
ミットヴィンターに流れ着き、そこで得た伝手を存分に活用しても、
やはり手掛かりはなく。
しかして片割れの生存、それだけは確固たるものだと思っていた。
根拠を訊かれてもまあ、「なんとなくそんな感じがする……」としか言えないのだが。
だが、生きていたとしても、己の知る兄とは変わってしまっているだろう。
そもそも本当に生きているのか? 単にそうだと信じたいだけではないのか]
[だが『いつかきっと』という思いを捨てないまま、
兄とともに行けたかもしれない場所を一人で辿って、
ついにこの地まで来てしまった。
一人足を踏み入れたこの地には今、己の知らぬ機鋼の音が響いている。
彼はいかなる経緯で機械仕掛けの手足を――こうして操っているのか]
(気になる? どうして?
属性が同じ、……かもしれないから?)
(でも……あれこれ考えてる場合じゃない……、 今は)*
/*
ロル落としながらだいたいテンパり気味の独り言を発しているのがナカノヒトだ あんまりにも深夜になるとおとなしくなるが
[放たれた矢は右腕で受け止められ地面へと落ちていく。>>*26
いくばくかの衝撃を与えたのだろうが、
その度合いを相手の様子から確かめることは難しいだろう。顔は見えないし。
ともあれ水場の上で羽ばたきながら相手を見据える。
右手を掲げれば水色の羽根が四枚虚空より降り落ちる。
おおよそ小ぶりのナイフくらいの大きさのそれは、
相手を迎え撃つようにゾフィヤの周囲を回っている]
[その時、相手が足をつける地面、
そこに彼を中心として円形の砂ぼこりが舞った]
――浮いた!?
[有利を取ると思うにはまだ甘かった。>>*27
足に仕込んだ機構――をフル稼働させ、
疾走というよりは滑空といった様相で地面を行く。そして水際で――飛んだ。
距離的におそらく次も銃だろうと踏み、水色の羽根を操作する。
銃口と同義の彼の左手の指先にできるだけ目を配ろうとするが早い。
とっさに自分の真正面に来るように置かれる四枚の羽根]
とま……って!
[銃声が鳴る。
水色の羽根に触れた弾はぱたりと動きを止めて、落ちる。
一方羽根も砕け散る。それが立て続けに四回起こった。
だが相手の手数は五発。
止められなかった一発が、即座に左後方に飛び退って距離を開けようとしたところに襲い来た]
[銃弾が羽根を掠めていく。
撃ち貫かれなかっただけマシだが衝撃は少なくない]
……すごいね。その、身体。
いや、すごいって言っちゃっていいのか……、
[大きく息をついて体勢を立て直し再び矢をつがえる。
白の加速光をまとった矢を一射]
わたしにはこーいうことくらいしかできないし。
――コード:リピート。
[矢を射かけた動きは一度。
だが、その動きを一部真似るように、矢が次々と顕れ放たれていく。
相手の足元を狙うかのような六連射。
避けられた矢は一部水に落ちて、思いのほか派手な飛沫をあげたことだろう]
[ゾフィヤは今まで明確に困惑をあらわにしたことはなかった。
脳裏にちらつく“彼”と司る属性が同じであること。
“彼”があの日を生き延びたならば――このように機械便りになっているのではないか、と想像を抱いたこと。
符号はいくつかあれど、だ。
だが、己の能力に対し「やるじゃないか」と言われたその時、>>*48
明らかに表情が崩れた]
な、何を言っているの……、
わたしは、そのう、相まみえてるやつだよ?
調子狂っちゃうじゃあないの……!
[ちょっとは笑っている。
声の調子からそれだけはわかってしまったのだから余計そうも思うというもの。
それに弾丸を止めて被弾を最小限防いだだけでは『勝ち』にはならない。
このままではまた、何も為せないままだ]
…………。
ほんっとに……、さあ、
思い出しちゃったよ、遠い昔に離れ離れになったひとの、ことを……。
[感情を半ば殺そうともくろみながらの六連射。
向けた矢のひとつが当たった手ごたえはある。>>*49
当たらなかった矢が落ちてあげた水しぶきが目くらましになってくれたらしい]
……へー、ああ、そうか。
[腹部を抑えどこか苦しがるような様子にひとつ、頷く。
四肢と違って生身の個所は弱い。ならばそこを一思いに狙えばいい]
(とはいえ相手も全力で避けてくるだろうし……)
[攻め手を考える。やがて一息をつき、笑った]
ならば追いついてみなよ……。
[翼をはためかせかく乱するように飛び回る。
自らへの加速はまだ使わない。切り札を切る時は誤ってはならないのだから*]
まあ、何……お礼だけは言っておく。わたしは律儀だからね。
[詭弁めいた言葉はさらりと流したのだった。
まさかこんなことになるとは……という思いも置いて、飛び回る。
ただ相手の姿だけはなるべくとらえられるよう意識をして]
(さあ) (どうくる)
[宣言の声とともに彼の身体はまた宙へと舞った。
爆発的な加速を前に彼女はためらわなかった]
――コード:アクセル。
[白の光がうっすらとまとわりつく。
急速に動きが鈍くなっていく周りの景色。飛ぶ黒、
あとは軌道を読んで迎え撃つだけに思われた――だが]
なっ……!
[そこに加えられたのは鎧をすべて取り去るという一手であった。
ようやくと相手の顔が見られる。否――それだけではない]
(灰色の) (翼……)
[見覚えのある色だった、何よりも]
くっ、
[選ばなければならなかった。
ゆえにまず、つがえていた矢に白ではなく黒の羽根を降らせた。
そうして次に矢を……撃ち放った。5(20x1)*]
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