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[どれも一癖ありそうなデザインに感じられたが、「寒ければ」と気遣う言葉が響いて、一枚を手にとる。
ホルターネックのふわりとした白いワンピース。
これならば首輪が目立たないかもしれない。
(着衣の時に、首輪を外せないかと試みてみたが、どうやらロックされているらしかった)
幸い、クレステッドの身長でも膝が隠れる丈である。
翼をケープ代わりに、肩と腕に被せた。
あまり肌を露出しないのは天使の常であった。
今や、その下に魔に穿たれた肉の鞘が火照りを滲ませているとは、誰が見抜こう?**]
[新たな装いを纏った姿は清楚としてかつ煽情的だった。
薄く白い布地一枚の下に隠されているものを、想像せずにはいられない。
喉元にちらりと覗く赤は、半ば覆われたことで鮮烈さを増す。]
おまえはやはり美しい。
よく似合うよ、アルジュ。
[素直な調子で称賛を投げかけた。]
ここには空中庭園があるそうだ。
そこには地上の陽が届くらしい。
アルジュも、行ってみたいだろう?
[次に向かう場所を口にして、同意の有無にかかわらず歩き出す。
だが、途中で足を止めた。]
歩くのは辛そうだな。
おいで。
[声を掛け、手を伸ばす。
横抱きにして運んでやろう。*]
[着衣ひとつで、何かたいそうな変化があったかのように眺められた。
天使という種族はおおむね美しい。
かつ、表面的な美しさに拘泥したり、身を飾り立てることを不徳と育てられるから、
互いの間で美醜を口にすることはめったになかった。
人間界に赴く者は、人間からの称賛に違和感を覚えるというが、なるほど、こういうものかと片付けておく。
かといって、気質や仕事ぶりを褒められても、自分の手柄と考えるのはやはり独善で。
天使とは、いろいろややこしい考えをするものであった。]
[無言を通したが、堕天使は気にした様子もなく話しつづける。
中空庭園。地上の陽。
わたしが望むのは、いと高き天だ。
それに、庭園という場所は、どうしても、二人の出会いを想起させる。
そう思ったけれど、陽光を受けて、いくらかでも力を取り戻す必要はあるだろう。
堕天使の体液で養われるわけにはいかない。
それにしても、この堕天使は、こんなにひとりの虜囚にばかり構っていていいのか、と老婆心ながら考えてしまった。]
[視線を感じたのか、堕天使が振り返り、呼びかける。
伸ばされた手には、難色を示したが、不要だと告げる前に引き寄せられた。
もがく。**]
― 天獄の回廊 ―
[下ろせ、歩ける、と掠れた声で抗議するも、返ってきたのは食べ物の話だった。
こちらが対話を避けている意趣返しというより、この堕天使は目先の関心事しか取り合わないのだろう。
そういう性格も掴めてきた。
なお下りようとすれば、関節を極められ、抵抗を封じられる。
引き攣るような痛みを飲み込みながら、筋を違えても下りてやる、と上体を捻ったが、
いかんせん、体力が枯渇していた。]
[抵抗を止めたのは、堕天使の話の中に”魔王”という単語が出てからだ。
そんなものまで、ここにいるのかと驚き、先程の幻視を思い出す。
数多の下僕天使を侍らせていた尊大な男。
あれか。
堕天使が魔王についての情報をもっと漏らすかとおとなしくしてやったのに、また空中庭園に話が戻ってしまった。
ちなみに、地上の食べ物は口にしたことがない。
地上に下りたことすらなく、魔物を実際に見たのだって、あれが初めてだった。
人間については、いまだ会ったこともないときている。*]
[頭を撫でられ、よせと言ったが、堕天使は聞く耳を持たないようだった。
こちらの意図を伝えることすら不毛と思えば、疲弊はさらに重くのしかかった。
ほどなく、堕天使は小さな家屋の前で足を止める。
中には、様々な種類の草や、正体不明のものが吊るされていた。
ここが空中庭園なのか。
天界の花園とは比較にならない狭小さである。
育成されているものの種類とて ── と、思い巡らせば、花園を守っていた同胞の物静かな瞳が思い出されて、胸が切なくなった。]
[堕天使は、クレステッドが知らぬ薬草(?)の名を告げて、魔界の庭司と話をしている。
貨幣経済も、物々交換すら実際には経験したことのない天使は、堕天使が望みの品を手に入れる手法を観察した。
さしたる時間をかけずに、堕天使は望みの品を手に入れ、再び動き出す。
階段をのぼり始めたところで、こいつはどうして飛ばないのかと、改めて疑問を感じた。]
− 空中庭園 −
[疑問を口にするのを躊躇している間に、頭上の開けた場所に到着した。
そこは確かに、庭園と呼ぶにふさわしい場所だ。
抱擁を解かれ、露を結ぶ芝草を踏む。
ほのかに届く陽光は、天界とは比ぶべくもないものの、温かだった。
クレステッドは、堕天使からいくらか離れた場所まで歩を進めると、そっと膝をつく。 ]
Lux beatissima ──
[望むように過ごせというならば、祈ろう。*]
[祈りの間、ささやかながら光を受けて、力を取り戻す。
堕天使は祈りに追従することこそなかったが、少なくとも邪魔はせずにいた。
地上から漏れ届く陽光もまた、堕天使を焼くことはなかった。]
…、
[不意に、左手首を掴まれ、あの日のことを確かめられる。
クレステッドは小さく頷き、覚えていると伝えた。
間髪おかず、捕まれている手を振り払うと、宿したばかりの力で、掌に光の刃を結ばんとする。
自らの右手を切り落とし、決意を示すつもりだ。*]
[クレステッドの行動を阻止するために、堕天使は愚直な方法をとった。
その躊躇いのなさは親近感を覚えるほどだ。]
── 、
[もう一度、同じ話を持ち出してみろ、答えは変わらない、と、
眼差しに込めて返す。]
[いつまでも繋がっているつもりはないとでもいうように、光は立ち消えた。]
… 、
[水音を探し、水盤のある方向へ身体を向ける。
手当をしてやるつもりなどない ── ぞ。
だけど、この場所に血の匂いをさせておくのは似つかわしくないだろう。*]
[血を洗い流すよう促してみたが、堕天使は微笑して手の傷を舐めた。
そんな粗野な振る舞いを、柔らかな身のこなしでするから如何わしい。
休憩時間は終わりだと告げて、堕天使は不意に呪具を発動させた。
首に巡らされた赤革の輪が震えて、あの瞬間と同じく、否応無く四肢の力が抜ける。
こんな仕掛けが ──
虚をつかれたが、堕天使の前に這いつくばりはすまいと、意地で近くの木にもたれ掛かった。
もう少し横にずれていたら、野茨の茂みに倒れ込むところだった。]
[傾いた視線の先、カサリと枝葉に触れる気配がして、白い姿が現れる。
それは、まごうかたなき天使であった。
来るな! 危ない ──
警告の声をあげようとし、どこか様子がおかしいのに気づく。
目が…?
来たぞ、と愉しげな堕天使の声が、これも仕組まれたことなのだと告げていた。
いやな ── 予感がする。**]
[伸ばされた手に抗うも、引き起こされた。
両手を茨の蔓で括られる。
肌を突き刺す刺に、薔薇色の血が滲んだ。
翼の力が使えたならば、吊り下げられなどしないものを、
今はもがくように打ち羽ばたかせ、堕天使を打擲して羽根を乱すことしかできない。]
[それが苦痛から逃れようとしているように見えたか、堕天使は鞭のことを持ち出して揶揄する。
敵によって与えられる痛みに怯まぬため、集中力を失わないための修練として、
自らを鞭打つ行を課されたことは確かにある。
行であるから、当然、真摯に行った。
忌避すべきものでもなかった。
好ましいと思っているかと問われるならば、秩序に照らして是である。
それと、資質が関係するとは ── 考えたことがない。
傷を舐める目つきに、唇を引き結んだ。]
[その間、放置されていた形の来訪者が懇願の声をあげる。
何を欲しているのかと思えば、堕天使の指を口へ運び、啜ることだった。
それはまさに貪るという表現が似合いの、浅ましい執着ぶりで、
外聞もなく漏れる湿った音に耳を閉ざしたくも、両手を戒められた状態では叶わず辛い。
いっそ目を閉じていたかったが、堕天使に擦り寄るその肢体を間近にして、
天使らしからぬ豊満さを帯びていることに気づいてしまった。
その乳房は、飛ぶ能力を削ぐために付与された肉の枷であろうか。
魔王の仕込みだとは堕天使の弁。]
Recordare ──
[そっと聖句を投げかけたが、黒い布に覆われた目がクレステッドを見ることはなかった。
光の使徒が、こんな形で光を奪われていることへの義憤を覚える。]
[睨まれていることに気づいて微笑み、堕天使は魔王の虜をクレステッドに押し付ける。
そして、秘蹟の塗油めかして香油を注いだ。
噎せ返るような濃密な香り。
顔を背けるも、逃れることはできず。
堕天使に命じられた繊手が、クレステッドの身体にまとわりつく。
スライムのプールで堕天使がしたように、くまなく弄り、捻り。
密着する身体は、布越しに股間の屹立を感知させた。
堕天使にも備わっていたあれだ。
そして、今はこの身にも育とうとしている肉の槍。
この相手と戦うつもりはないというのに、熱がそこへ集まってゆく。*]
/*
Recordare ── 思い出してください
聖句っていうより、ラテン語なだけではという突っ込みはなしでw
レクイエムの一節だよ
/*
クレメンスさんとこも調教張り切ってるなあ♪
入れっぱなし遠隔操作ヒドい(褒めてる
回廊で目撃されたこと、把握してるけど、PCは気づく余裕なかったのでスルーごめんよ
そのうち、他のペアとも邂逅あるかな。
皆、忙しくてそれどころではないかもだけどw
/*
・股間のあれは起動する武器
・負けたら突っ込まれる
・突っ込まれるとエナジードレインされる
・でも気持ちいい
・ぴったりはまるのはあまりない
・先端から、なんか液体を発射もする
・その液体は飲むと回復に使える
今、クレステッドにできてるのはそんな認識
[相変わらず要らぬ雑学を披露しながら、堕天使は片手間に熟れた果実を弄んだ。
堕天使の指先に嬌声をあげる同胞の媚態を肌で感じ、耳元で聞かされ、
もらい泣きのようにこみ上げてくる喘ぎが口を突きそうになる。
そもそもが同じ天の光から生まれる天使は、共感能力が高い。
秘薬の介在する今、その範疇は肉体感覚にまで及びつつあった。
クレステッドが知る”快楽”は堕天使の足下にも及ばず、
まだまだ相手にならぬと莫迦にされるのは、了見しがたい。
戦いの場に連れ出された者として、というより ── ずっと、この元天使に憧れてきたゆえの心の機微が、対等以上であることを認めさせたいと無意識に逸ってしまうのだ。]
[堕天使は、目隠しされた天使の翼を掴んで引きはがす。
魔王の所有に関わるものを随分とぞんざいに投げ出すものだ。
その発見よりも、翼の付け根から耳元へと走り抜けた甘美な震えに、
鈍痛に混じる腰の疼きに、気を奪われてしまう。]
ん…っ
[傷を負ったわけではない。
なのに何故、このタイミングで堕天使の質量を思い出してしまったのだろう。
あれが、中にあったときのことを。]
[堕天使は、さらに別の魔物を召喚する。
外見だけで判断するものではないとはいえ、如何にも低俗そうな魔物だった。
それが同胞へと襲いかかったことに怒りを掻き立てられる。
純白の羽根が、泥濘にまみれて地を掃くのも正視に耐えない。
それでいながら ── 身体中が、もっと、と刺激を求めてしまう。
これは、なんだ。*]
[いかに唐変木なクレステッドといえど、目の前で繰り広げられているのが、相手を成敗するための戦いでないことは察知した。
聖なる者が、魔から何かを得ようとする、
これはあまりに放埒で ── 神の御心に外れた行為である。
自分の上司たるナサニエルとその副官が同様の欲望に身を焦がしているはずだと嘯く堕天使に、
クレステッドは、ぎこちない体勢から蹴りを放った。
届かずとも、愚弄は許さないという意志を示して。]
[けれど、言葉にして注がれた毒は、脳裏を離れなくなる。
自分の中に、嫉妬の気持ちはなかったろうか。
“ナサニエル”が頼りにするのが自分であれば良かったのにと。
目を閉じてしまえば、そこで縺れ合っている両者の息づかいと重怠い翼の擦れ合う音、生温かな体液が混ざり合う匂いを、別の面差しに変換するのは実に容易い。
共感の魔術を通して、官能のなんたるかを浴びるように追体験しつつある今、
むしろ我が身にとの誘惑に抗し難いほどだった。
身体を動かして気を紛らわせようとすれば、手首に食い込む茨の痛みに失明天使が喜悦を迸らせる。
ああ ── 痛いのが、快感なのだ。]
[前戯だけでも目眩がしそうだったのに、結合が果たされれば、もはや臨界を超えてしまう。
肉の歓びを汲み上げる経絡は目覚め、連鎖するように爆発的につながり、身体を駆け巡った。]
── … んあ っ !
[それは、神の御前ですら経験したことのない法悦だった。
オーガズムに達するという感覚を知り、クレステッドは愕然とする。
これは… こんなものが、 どうして
現実には他者の肉体に起きたことであるが、認識だけで、もはや無垢には戻れないものはあるのだ。
この先、堕天使に交わりを求められたら、どうなってしまうのか。
これまでのように、強制的なエナジードレインだと信じることは、もうできない。
── 揺らぐ。*]
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