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[彼がなにごとかをささやけば、ちらりと視線を向けたものの。
まぶたへと口付けが落ちてきたのなら、問いを投げたりはせずに。
撫でるようにその髪を 梳いてさしあげましょうか]
どうしても です。
[不満そうなお顔>>157をされてしまいましたから、こまったように苦笑しながら。
結局むりやりおりるはめになってしまうあたり、やっぱり彼は過保護すぎるんじゃないかしら、なんて。
うれしいような、迷惑なような]
ええ もちろん!
おにいさまとは、ドリィがうまれたときからいっしょですから。
[おにいさまとは血が繋がっていませんから、正しく言えば兄というのは当てはまらないのでしょうけれど
ドロシーにとって彼は、とっくに"家族"の一員でしたから。
……だからというわけでもありませんが、彼のつめたい視線>>158の理由などわかるわけもなく。
ドロシーは、きょとりと首をかしげます]
……?
あついだけ には、みえませんよ?
[――それに、と。
あたりを軽く見まわしながら、言葉をつづけます]
……あなたにだけ、えいきょうがあるなんて……
[不機嫌そうな表情と、いまだ流れつづける汗と。
いつもとちがう彼のようすに、ドロシーは心配そうな視線を向けることしかできません。
なにやらよろしくない状況にいることはわかりますが、かといって、それをどうにかする術も思いつけず。
それでも 彼がしゃがんでくれたのなら、そっとその汗をぬぐってさしあげましょう]
あんまりって……
このくらい、まだまだ へいきです。
[まだ数歩歩いただけだと言いますのに、咎めるような言葉には、少々 憮然としながら。
けれどいつまでたっても持ち上げられない身体に、うかがうような視線を向けます]
まって。
[つぶやく声になど耳をかさず、近づいた身体を手で制しながら。
けれど視線は彼のほうではなく、入ってきたばかりの扉へと]
いまなにか きこえませんでしたか?
[彼が"何を"しようとしたかになんて気づかないまま。
下から聞こえたかすかな音……そう、だれかが扉を開けたような、その音に。
瞳ににぶい昏さをたたえれば、警戒したようにぎゅっと手に持った兎の人形を抱きしめます。
それはきっと、彼が牙をたてようとするほんの少しの前のこと。
か弱いドロシーの制止など、彼にはまったくもって無意味でしょうから……
もし そのまま噛みつこうとしたのなら、それはむずかしくはなかったでしょう]
[開いた先に見えるのは、柔らカな金の髪。二年前に惚れ込んでカら、どれほど焦ガれテ来ただロう。
その髪はどんナに柔らカいだロう。どんナ香りガするだロう。
その肌はどんナに滑らカなのだロう。その声はきっト鈴の音のように違いナい。
そうしテ想いばカりガ募っテいき。漸く相見えた時の僕の喜びト言ったら。
それカらは、ずっト。”何時もの"ように、慕情も劣情もひた隠しテ、真摯に仕えテ来たつもりダけれど。
だっテ、だっテ。僕ガそれを見せテしまえば、她トの時間は"終わっテ"しまうカら。
――一日でも、一刻でも。ほんの少シでも長く、共に時間を過ごシたカったんダ。
だけれど、今は。まるで押さえ込んできたその情動ガ、一気に吹き出テ来テいるようで。
噫、その肌を。柔らカく張りのある幼子特有のその肌を、舐めテ貪っテそしテ齧りついテ、小さナ唇カら漏れる声を味わいたい。
大粒の藍玉は、どんナ色を映すだロう。また、あの濁った猩ガ滲むだロうカ。]
[そんナ事を、考えテいたのナら。汗ばむ身体は、自然ト動き始める。
ゆらりト身体を起こしテ、そのまま女神の身体に覆い被さるように。上ガった息は我ナガら無様で仕方なカっただロうけれど、それを気にしテいる余裕は無い。]
――……"ドロシー"。
[口をついテ出たのは、普段は決しテ呼ばない女神の名。愛おシい愛おしい僕の女神の名ではナく、"たダの"一人の幼子の名。
噫、やめロ。頼むカらやめテくれ。
湧き上ガる情動に向けテ、遠い所でそう叫んではいるけれど、果たシテそれに意味はあったカ。
このまま、流されテしまったのナら。僕はきっト、この女神ガ生きテいる事を――許せナく、なっテしまうのに。
そうしテ、薄く笑みを浮カべテ見せテ。体内トは打っテ変わっテ不自然ナまでに冷たい手のひらを她の頬へト押シ当テたのなら。
浮かべルのハ、まるデ恍惚とシた表情を――今迄、見セた事ガ無いようナ。
ゆっくりト、身体を傾けさせ。
恋シさに身を焦ガしつつも結局は触れる事の出来なカったその唇に、自らのそれを重ね合わせた。]
[なんでもない>>204と言われてしまえば、それ以上追及できるわけもありません。
ついで投げられたそっけない言葉と、憮然とした表情には キツく眉を寄せ。
――けれど。彼が倒れこんできたのなら、心配するしかないじゃありませんか]
……だいじょうぶですか?
こんなところでなく、ベッドをさがしたほうが……、
[ああ、彼とはじめて会ったときも、こんなふうだったかしら。
ドロシーは抱きしめてくる彼の背を撫でながら、そんなことを考えます。
あの時はまだ、お屋敷の床だったからいいですが。
ほんとうなら、こんなほこりっぽい場所にねそべるなんて、いやなんですよ?
とはいえ つらそうな従者を、ほうってなんておけませんから。
多少のことは、我慢してさしあげましょうね]
[ゆるゆる、と。その背を撫でる手は止めず、此方からも すり寄るように。
彼の様子がおかしいのは きっと、具合がわるいから心細くなっているんでしょう。
考えてみれば、故郷からはるか遠くによび出された彼は、正しくひとりぼっちなのです。
彼には、ドロシーしかいないのです。
そんな彼がこうやって"あまえて"きているのですから、はねのけてはかわいそうというもの。
多少痛くっても、やっぱり。我慢してさしあげましょう。
彼が身体を起こしたのなら、よくなったのかと顔をほころばせようとしたのですが……
けれど 聞こえてきた荒い呼吸音に、眉を下げたまま]
なんですか、あーちゃん。
[いつもと呼び方がちがうことには、気づいていました。
そして それが、主をよぶには似つかわしくないものだということにも。
それでもそれを受けいれたのは、彼が弱りきっていると信じているからで。
心細さからくるあまえなのだと、むしろそれをあいらしく思いながら。
返す言葉は、瞳は。ひどくやわらかいものだったでしょう]
[彼が見せたことのないその表情の意味を、ドロシーはしりません。
だって そんな表情、彼だけでなく、他の人のものも見たことはありませんでしたから。
だから、近づく唇も拒むことはしませんでした。
――しっていたら、きっと。
必死になって、彼の下からのがれようとしたのでしょうけれど]
……よしよし。
きょうはなんだか あまえんぼさんですね。
[相手が従者とはいえ……いいえ、だからこそ。
歳上の男性にあまえられるという経験は、なかなかあじわえるものではありません。
うかれてしまうのも、しかたのないことでしょう。
此方からも頬に手をそえ、一度はなした唇を追うように軽く口付け。
なだめるようにほほえみをおくります]
あーちゃんには、ドリィがいますからね。
さみしくなんか ないですよ。
[だからはやく、いつもの"あーちゃん"に もどってくださいね]
[僕の不敬ナ態度に対シ、きつくきつく眉を寄せながらも>>209。僕の身体が傾いだのナら、直様心配そうに向けられる藍玉の瞳。
そシてそこには、一欠片の恐怖も、疑いもありはシない。
背を撫デる手だっテ、気遣わシげに掛けられる言葉だっテ。她は、何時もト何も変わらナいのに、シカシ僕はその言葉には何も返せナいまま。
それは、酷く心地良いもの。だってそれは、僕ト她が過ごシて来タ時間が、幸せナものだっタという証。
だから她が上げタ小さナ小さナ悲鳴>>210はほんの寸刻、細めタ目の中に戸惑いの色を――それも直ぐに、掻き消されテ行っタだロうけれど。
――噫。こうも乱暴に、爪を立てられテ、尚。未だ止まらぬ背を撫でる手は、幼娘故の無知さカ、或いは――僕への、揺るぎナい信頼なのカ。
逃げるデもナく、寧ロ此方へト擦り寄るように寄せられる身体には、伏せタ顔は酷く、酷く歪んだ事だロうけれど。]
[她の心の中まデは、覗く事は出来ナい。シかしもしも、覗く事が出来タのナら……她のその思考に、或いは涙すら流シタのカもシれないけれど。
甘えている自覚ナど、微塵も無くトも。噫シかしきっト甘えるトはこう言う事ナのだト、ぼんやりト考えタ事だロう。
初めテの口付けが受け入れられタ事には、喜びト、そシて其れよりも大きナ恐怖ト、驚愕ト。
離れタ唇を追う様に贈られタ拙い口付けには、更ナる恐怖ト、情愛ト。
――そシて。こうしテ口付けを交わシても尚、欠片も濁る事の無い她の姿への、大きな安堵を。]
………、寂シいヨ。
[宥めるようナ言葉に思わず零れタのは、酷く情けナいそんな言葉。熱デ朦朧トしタ思考は、她の自分を撫デる手によっテ、一欠片の理性を取り戻シてくれる。]
…………、
"ドリィ様"は、もうすぐ……誕生日、だロう。
[僅カナ逡巡の後、静カに、静カに言葉を紡ぐ。あの黒光の影響カ、はタまタ先程カら頭に響く”声”の所為カ。思考を奪う程に上がる熱は、抗いがタいものだけれど、シかし。]
僕は、小さナ……オマエ位の歳の幼娘が好きナんダ――そう言う、性癖を持っテる。
耐えられないんだよ、惚れタ相手が、醜く育ってシまうなんテ。
……だカら僕は、…、その日。
オマエを、殺すつもりだっタんダ。
[吐き出しタのは、ずっト秘密にシていタ想い。上がっタ息でトぎれとぎれになりながらも何トカ伝えタその言葉を、她は果タしテどう思っタだロう。
半ば自嘲気味に浮カべタ笑みと共に再度近づけタ唇は、今度こそ拒まれてはシまっタだロうカ。]
[寂シい、――そう、寂しくテ堪らナいトも。別れの時が、決まっている事が。
そシてそう思いつつも、この想いを曲げるこトの出来ナい自分が酷く、口惜しい。
こんナ事を思うのは、初めテだっタけれど。
だけれど、何時ものように。その首を捩じ切り、不死の存在トするカ。或いはそのまま、自分の心の中デ永遠に”生きて”貰うのカ。
今まデ平然ト取っテきタその選択肢に対シて、今にナって迷いが生じてシまっタのは――きっト。甘やカすように僕の背を撫でる、この小さな小さナ手のひらの所為。
僕は此れでも、幼娘には優シいんだ。そこそこに義理堅い所もあるんだ。
――だカら、ト。名残惜シさを噛み殺シ、荒ぶりそうになる情動を押し殺し。女神を抱いタ腕を、そっト、離す。]
さっきカら、酷く暑くテ……頭が、回らないんダ。
最初は、……オマエを僕ト、”同じ”にしようと、シタ。
次は、オマエの”純潔”を奪おうとしタ。
次は……きっト、オマエを殺シてしまうヨ。“そういウ”接吻を、シてシまっタカら。
………、“ドリィ”、オマエは僕の、女神なダヨ。
[――だカら、どうカ穢されナいデ。
そのまま僕カら、逃げテくれないカ――遠い、遠い。僕の手の届カない程、遠くまデ。]
[口付けを受けいれられた彼は、ただ喜んでいるというふうには見えなくって。
それが少々不満ではありましたが、それでも 此方からも口付けをおくってさしあげて。
……それにしても。これまでだってキスはしたことがありましたのに、彼はどうしてこんなお顔をするのかしら。
さびしくないと言っているのに、返ってきたのはなんとも情けない言葉。
それがおもしろくなくって、すねたような表情を向けていましたが……続く静かな口調に、文句もなにもかもを飲みこみます。
ああ、だって。彼の口からこぼれる言葉は、まるで懺悔のよう。
ぽつぽつ と落とされる"想い"を、ドロシーは正しく理解することはできません。
けれど 彼に愛されていたことと、殺されるところだったということはわかったでしょうか。
……それでもそれは "理解"とは、ほど遠かったでしょうけれど。
その唇を受けいれてしまったのは、なぜでしょう。
ずきずきと胸が痛むのは、此方の信頼が裏切られたからと、それだけでしょうか]
――……おおきくなったドリィは みにくい ですか。
[ あなたのそばにいるのに ふさわしくないですか。
――つむぐ言葉は、主人から従者へ向けられるのとは、まったくもって似つかわしくない言葉で。
どういう想いでその言葉を口にしたのか、ドロシー自身にもわかりはしません]
それなら、どうして。
ずっといっしょにだなんて、いったんです。
[その瞳には、もう かがやきすんだ蒼など存在しません。
どろり、と。ひどくくすんだ紅がひろがって、おおきな雫がひとつこぼれ落ちました。
昏い紅は、蒼とまじりあうことなく。
相反する色はよどみ、ただ にぶくひかるだけ。
それでもそこからこぼれる雫だけは、ただ 清らかにすんでいました]
[はなされる手を、追いかけることはできません。
彼の言葉を最後まで聞くこともせずに、するりとその身体の下から抜けだして。
兎の人形を強く強く抱きしめながら――そのまま、研究所からかけて行きました。
あそこで彼を"土くれ"にもどすのは簡単だったでしょう。
いいえ もしかしたら、なんらかの力に邪魔をされて、それは不可能だったかもしれませんが。
どちらにしろ、ドロシーには彼を"壊す"ことはできませんでした。
それは、死霊術師にとってはあってはならない未練で。
パパやママが知ったのなら、きっと 怒られてしまったのでしょうけれど]
――いやだよう。
いやだ……、あーちゃん、
[あてもなく走り続けながら、だだをこねるみたいに言っても 返ってくる言葉なんて、あるわけもありませんのに。
ドロシーにはまだ、それすらも理解できないことで]
ずっといっしょにって、いったのに……!
[恨みごとは、だれもいない廊下に反響するだけ]
[――ドロシーは ぼろぼろこぼれる涙をぬぐい、どこか隠れる場所はないかと やみくもにあたりを見まわしました。
薄暗い廊下に聞こえるのは、ドロシーの走る不規則な足音だけ。
いいえ、もしかしたら彼の足音も、聞こえているのかもしれませんが
それを聞きわけるだけの余裕は、今のドロシーにはありません。
走って、走って、はしって――、
走る間 いくつ目かの扉が目に入れば、あわててその部屋へと身体をすべりこませました。
急に走ったせいか、義足の接合部がぎしぎしと痛みをうったえていたためです。
どうやらここは 寝室のよう。
おおきなきらびやかな調度品の中に、おおきなベッドがひとつ。
ドロシーは痛む足を引きずりながら、その下へともぐりこみます]
は はぁ、はあ……、
[あらくなる息を必死に押さえながら、視線は警戒するように入ってきた扉の方へ。
……彼が本気を出して探したのなら、きっと。ドロシーを見つけることなんてたやすいはずです。
それでも扉が開かれないことをただひたすらに祈って……ドロシーは、ぎゅうと人形にすがりつきました]
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