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――と、
[玄関の呼び鈴が鳴る。
男は首を捻ったが、分厚い上着を羽織って階下に降りた。]
神父さん。
こんばんは。
[来訪者は教会の神父だった。
扉を開けると吹き込んできた冷たい風に顔を顰め、取り敢えず玄関に入って貰う。
普段の穏やかそうな顔には、安堵と焦りが見えた。]
…え、
[神父から告げられたのは、ブリザードの知らせ。
普段とは規模が違うのだという。]
それじゃ、俺も――
[神父だけでは大変だろうと申し出たが、避難所に向かうまでの道程程度でいいという。
せめて何か温かな飲み物を…と言う言葉は、また避難所でと断られる。
その様子を見るだけで、事態の深刻さが察せられた。
そうして控えめに研究所の教授が死亡した旨を伝えられる。
詳細は語られないが、神父の沈痛な面持ちからはそれが凍死ではない事が分かった。]
お気をつけて。
あの、これカイロです。持っていって下さい。
[カイロを押し付けた後に神父を見送り、男は自室に戻って手早く着替える。
水は一応出たが、水道が凍りそうな程に冷たかった。
お蔭で頭が確りと働いてくる。
途中で両親から電話がかかってきて、これから避難する旨を伝えた。]
…それじゃあ、またな。
ヴィア姉に宜しく。
[電話は其処で切る。
男は膝まで覆うスタッフジャンパーを取り出して袖を通した。
内側にボアの入った帽子と防寒用の手袋を身に着ける。
リュックサックの中にはアルミシートやラジオ。備蓄の食料とフリースの毛布などの非常用の道具が一通り入っている。
沸かしておいた湯で珈琲を淹れて一杯飲むと残りは魔法びんの水筒の中に入れた。
カイロを一つ開封してジャンパーのポケットの中に入れる。]
――よし、
[大きめのオレンジ色のリュックサックを背負い、防寒の長靴を履いて、玄関の扉を開ける。
吹き付ける風に目を細めると、男は外に出た。]
すいません、起きてますか!
ブリザードが近づいてるみたいなんです。
早く避難をして下さい!
[幾つかの扉を叩いて訴えたが、反応は殆どなかった。
昨日の昼間に訪れた老人の家を叩いたが、それも同じ。]
――…ッ。
[寒さで唇が戦慄く。
――このまま外に居たら自分まで凍死してしまう。
そんな不安が胸を過る。
男は数瞬の後にもう避難したものと判断し、避難所の方へと向かう。
懐中電灯で照らしながら歩く視界は悪い。
蛍光ブルーのジャンパー姿は道行く人に見えたかどうか分からない。]
/*
いくらほのぼのしても、
雪が多いとこならある程度備蓄してるとは思うんだけど。
実際どうなんでしょう。
多分、避難が遅れて取り残された人が多いんだろうな。
/*
雪中行軍。
多分、距離的には乗り物に乗る程じゃないかなと。
調べ物したとこで頂いたんだけど、多分ベンチコート的なアレですね。>スタッフジャンパー
― →避難所―
[時間的にはもう早朝だが、太陽が姿を現す気配はない。
ジャンパーの裏にはボアが着いているとはいえ、猛吹雪に晒されて体力が徐々に奪われていく。
足の悪い老人には、避難は困難なのではないか。
やはりもう少し待っていた方が良かったのではないか。
そんな考えが頭を過る。]
…ッ…。
[男は眉間に皺を寄せ、唇を噛みしめる。]
[牧師は彼方此方の家を回っていたようだった。
とっくに避難しているのかもしれない。
…だから避難所に行って確認してからにしよう。
そう考える事にして男は長靴で雪を踏みしめる。
老人が冷え切った家屋の中で命が潰えようとしているとも知らずに。*]
―避難所―
[避難所に灯りが付いているのを見て、男は安堵の息をつく。
手袋で覆われた手で扉をノックする。
施錠されていないようなら自分で扉を開けて、
されていないなら開けて貰うまで待つ。
中に入る事が出来れば、冷え切った身体は暖房の効いた部屋の温かみで弛緩し、
何より人がいる事にほっとする。]
…おはようございます。
吹雪が酷いから避難しろと牧師さんに言われて…。
[それだけ言うと、どっと疲れが出た気がして男は少し中に入ったところで床に座り込む。
人数が少ない事に気付く心のゆとりはなかった。**]
――ッ。
ヴェルザンディさん、か。
[男が我に返ったのは、ヴェルザンティの立てた豪快な扉を開ける音。
彼女は何処かから越してきた人で、店の客の一人でもある。
美人だが、しっかりしている人だとは思っていたが、そんな一面もあるとは。
男は目を白黒させる。]
[室温は入った時よりも寒々しく感じた。
急速に温度が下がったというよりは、外があまりに寒かったのだろう。]
…これ、もつのか?
[蛍光ブルーのコートの肩を抱き締める。
避難所は地下施設もあるらしい、とは避難所が建てられた際の住民への説明の時に聞かされていた。
若い者が覚えておいた方が良いからと、父親に押し付けられたのだ。
見える範囲にはコンスタンツェやエレオノーレ、ヴェルザンディ達がいたか。
かなり少ないようだが、殆どの人間が地下の方に避難しているのだろうかと首を捻る。]
――エレン。
[エレオノーレが男の方に近付いてくる。
市販の薬よりもよく効くと、母親は彼女から薬を買っていた。
彼女の事は幼い頃から知っている。
男が成長するにつれ、昔のように話す事はなくなってしまったけれど大事な幼馴染だった。]
…?
俺、別に病気じゃないけど…。
[掌に乗っているものは薬のようだった。
具合が悪そうに見えたのだろうか。
男は大丈夫だと返したのだが、そうではないと首を振り、彼女は白い錠剤を渡してきた。
その数は2錠。]
[語られた言葉。
彼女の真剣な眼差しに男は目を細める。]
…エレンの話を、疑うわけないだろう。
貴重な薬をありがとう。
他の人にも配らないといけないんだろう。
俺は大丈夫だから行って来て。
何かあったらちゃんと相談しろよ。
[薬は有難く受け取る事にして彼女を送り出す。]
[彼女の背を見送って、掌の薬を見つめる。]
…2日か。
[これで2日もつのだろう。
男はエレオノーレの事を信じている。
けれど2日で家に帰られるのだろうか。
薬とて無限にあるわけではない。
薬の在庫が無くなってこのまま――]
[男は悪い想像を振り払うように首を振ると、ぎゅっと拳を握りしめた。
1日1回。就寝前に。
男は心の中で唱えると、それをリュックサックの中に入れていたジップロックの袋の中に入れてコートの内ポケットに仕舞った。]
[牧師の事についてコンスタンツェらが話しているのを聞いて男は目を伏せる。
水筒を取り出して、紙コップに注ぐ。
まだ温かいので湯気が立つ。]
――あの、珈琲ありますけど誰かいる人はいますか?
[そんな風に呼びかける。
欲しいという人間がいれば分けるだろう。
容量は500mlではあるが。]
[温かな珈琲を飲んで男は一息つく。
改めてリュックサックの中身を確認する。
リュックサックの中にはアルミシートや電池・手回し式のラジオ(ライト付き)。
片手で食べられる栄養バーと缶詰を中心とした2人が5日越せるだけの食料。(手分けして持っていく事を前提としていたのでもう1セットは家の中である)
ペットボトル入りの水が2本。
フリースの毛布。タオル。
救急セットやウェットティッシュ。
筆記用具とガムテープ。紙製の食器。
ジップロック付きのビニール袋などが入っていた。]
[爪やすりや、缶切り、栓抜きなどが付いているツールナイフ。
非常用の道具のセットを購入した際に付いていたそれに指先が触れてどきりとする。
小さいとはいえ、刃物だ。
男は無言でそれを奥にしまい込む。
その顔は少しだけ蒼褪めていたかもしれない。
ナイフを使う機会なんて、そうそう訪れない。
特に一瞬考えてしまったような事には――。
男は自分に言い聞かせ、周囲に視線を巡らせる。]
――…!
[地下から上がって来たマレンマの姿には目を剥き、研究所で教授が死んだ事を思い出す。
まさか、と思う。
彼の普段の様子からはそんな恐ろしい事に関わっているなど想像も出来ない。
信じたくなかった。]
…あ、あの。
食糧なんか確認しておいた方が良いんじゃないでしょうか。
皆さんまだ何も食べていないでしょう?
[この場合、取り纏めるのは軍の人間だろうか。
その時、ディルドレは未だ到着していなかったので単純にそう考える。
ベルガマスコの機嫌はどうなっていたか。
遠慮がちに何か仕事があれば手伝うと口にした。
何か他の事に意識を移していたかった。]
/*
探した感じ、ツールナイフは割とセットで付いてるっぽい?
積極的にバトルする心算はないです。
小市民だし。
むしろ鬱ルート進んで自殺しに行くかも。
[>>181珈琲を所望する声に顔を向ける。
昨日公園でも会ったコンスタンツェだった。]
あぁ、コンスタンツェ。
…どうぞ。
零さないようにな。
[紙コップを取り出して、彼女の分を注いで手渡す。
砂糖の入っていないブラックだ。]
――牧師さん、まだ外に?
[窓の方に視線を遣りながら問いかける。]
…俺も、牧師さんに声を掛けられなかったらここまで避難出来なかっただろうからさ。
本当に感謝しているんだ。
[吹雪は収まる気配がない。
数件の家を回って歩いた男でさえ凍えそうだったのだから、カイロを渡したとはいえ牧師が無事である保証はない。]
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