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[脳裏に過る残像は、遥か昔の、忘れ去られた過去の一場面。
平和な村。穏やかな日々。
村外れに咲き誇る花々の只中で、妹のように慈しんでいた少女に、花冠の作り方を教えた事があった。
そう、あれは丁度、こんな白く小さい可憐な花で。
――あぁ、なのに少女の面影を、どうしても思い出す事ができない。
ちくりと胸を刺す感情に、微かに目を瞠った]
[アレクシスと二言三言囁きを交わす。彼の失態について知れば呆れた表情を見せるも。
見知らぬ天使―シメオンと名乗る者>>12へと注ぐ視線は外れず。
アレクシスに拾って貰った花冠を握る手に力を込めた。ふわりと香る草の匂い。]
……、申し遅れました、シメオンさま。
私はオクタヴィアと申します。
主のお導きにより、天へと召され、今は捕虜たちの世話係として働かせて頂いておりあmす。
[口ごもる様子>>17にほんの一瞬。一瞬だけ瞳を輝かせた。
ロングスカートの端を持ち、腰を折り自己紹介をする。
せめて名前でも―。]
[けれどもオクタヴィアが思っていたのとは違ったようだ。
先程名を名乗る際も視察をしていたと言っていたではないか。
希望が落胆へと変わるが、穏やかな微笑みの裏に追いやった。]
そうでしたか、長い間お疲れ様でした。
地上に居る間は、迷える人々を導き、主の御心を説き、導くことを使命とし世界を廻っておりました。
道理で見覚えがあると。広い世界、どこかでお逢いしたのかもしれません。
[まるで牽制するかのように差し出された可能性。
けれども否定できる要素はないし、自らの記憶も勘違いである可能性がある。]
では、私はこれで失礼いたします。
[曖昧な笑みを浮かべ、凝視してしまった事への非礼を詫びると、天使たちの会話を邪魔しないよう、花冠を持って庭園から去った。
後でシメオンに話を聞きに行ってもいいかもしれない、そう考えながら。**]
[早くに父を亡くしたオクタヴィアは、母の女手ひとつで育てられた。
幸い村は人情味あふれる者が多く、服の修繕など縫物をすることで日々の暮らしの糧を得ることができていた。
しかしその分オクタヴィアにかける手は少なくなる。]
[忙しくも娘の為にと手を尽くす母親の背を見て育ったオクタヴィアは、決してわがままを言わなかった。
けれども、人恋しさと寂しさはどうしても拭えなかった。
村には自分と同年代の人間も少なく、居たとしても男子ばかりであった。
彼らは戦争ごっこと評してはそのへんに落ちている枝同士をぶつけたり、木に登ったりと活発に遊んだ。
オクタヴィアはついていけず、よくからかわれていた。
隣に住む子を除いて。]
「わぁ、きれい、すごい、おにいちゃんすごい!]
[天界の草原は、あの村の近くにあった草原とよく似ていた。
この季節一面に咲く白くて小さな花。可憐ながらも力強く天を向く花。二人でよく其処に遊びに行ったものだ。
…そうだ。母親とあまり遊んだ記憶がなく、周りも男子ばかりだった自分がどうして花冠の造り方を知っていたのか。
教えて貰ったからだ。]
「おにいちゃんは、ほかのこみたいにいじわるしないから、すき。
いっぱいいろんなことおしえてくれるから、すき。
ねえ、おっきくなったら、わたしがけっこんしてあげてもいーよ!」
[じゃれつきながら、笑いながら。おませな女の子は一方的にそんな戯言を紡ぐ。
けれども子どもなりに真剣だったのだ。
何も変わらぬ平凡な毎日が続き、大人になって、好きな人と一緒になるのだと。
炎が村を包むその時まで、根拠もなく信じていた。]
[庭園から去った後も、シメオンのまなざしが頭の中から消えない。
同時に脳裏を過ぎったセピア色の記憶が、歩を進める傍らついて回る。
いくら足音を立てて歩いても、離れてはくれない。]
……他人の…空似よ。
[呟く声は物悲しく、風に乗って消えた。
痛む胸を摩るしか、虚しさを和らげる方法を知らなかった。]
湿布、でございますか?
…よろしくお願いします
[ そこまでの手当が必要か分からないが、オクタヴィアと話せる機会ができればと了承してしまった ]
―→上級天使の執務室→―
[地上で主を敬う人間たちが、その成り立ちに深く関わったと謂われるカード。
遊びに用いる事で主の愛や素晴らしさを説く…などという大それた事はできないが、こうした身近な物にも主はおられ、主の愛や加護が存在するのだと教えることで、主を毛嫌いする捕虜たちも親しみを持ち、やがては心を改めるのではないか。]
ありがとうございます。
[と、収容施設と捕虜の管理を任されている上級天使に願い出ると、暫し迷う素振りを見せた後、木箱に入ったトランプを授けてくれた。
箱を開けて見ると何の変哲もない、ありふれている絵柄のものだ。
上級天使の執務室から出て、収容施設へと向かう。
その腕には花冠が通されている。]
―収容施設・ユーリエとフェリクスの牢の前―
ユーリエちゃん、起きてる?
[フェリクスに食事を届けた際には眠っているように見えた為声をかけなかった、その向かい側の牢の中にいる少女に話しかける。
彼女が此処にいる理由は、担当となった日に聞かされていた。
最初こそ純粋無垢な容姿と性格に本当に魔物かと途惑ったが―
主を信じ愛すれば牢から出してあげられるかもしれない。
そう考え直すことで、自らを奮い立たせていた。]
ふふ、これを見て。
[純粋な笑顔に頬をほころばせて、腕に通していた花冠を檻の隙間から差し入れた。
小さな白い花で作られたそれは、丁度彼女の頭に乗る位の大きさ。]
花冠よ、綺麗でしょう。
ユーリエちゃんにあげるわ。
今度、作り方を教えてあげるね。
とっても簡単よ。
[喜ぶ様子に目を細めると、ポケットの中から四葉のクローバーを出した。]
これ、なんだかわかる?
このお花の葉っぱよ。
この葉っぱはね、普段は三枚しかないんだけど、時々こうして四枚になる物が出るの。
これを見つけた人には、幸運が訪れると言われているわ。
それはね、十字架に似ているからなのよ。
主は、とても身近なところに居て、いつも私たちを見守り、そして幸運を授けてくださるのよ。
[これもあげる、とクローバーを檻の隙間から差し入れた。
首から下げられたロザリオのネックレスが揺れる。]、
この葉っぱはね、普段は三枚しかないんだけど、時々こうして四枚になる物が出るの。
そしてこれを見つけた人には幸運が訪れるというわ。
なぜかというと…。
[首から下げているネックレスの先には、ロザリオが吊り下げられている。
それとクローバーをそれぞれの手に持ちながら、ゆっくり語りかけた。]
主が私達の罪を背負い、代わりに処刑された際に用いられたのが十字架なの。
けれども主はその三日後、死に打ち勝ち、蘇られた。
そこから十字架は、主の尊さと奇跡の象徴とされているのよ。
だから形が似ているクローバーにも主の慈悲と加護があると信じられているの。
これもユーリエちゃんにあげるわ。
貴女にも主の加護と幸運が訪れますように。
[クローバーを檻の隙間から差し入れた。]
[幼子にはまだ難しい話だったかもしれない。>>45
けれど、気持ちという見えないものを感じ取り、感謝するその素直さがあれば、いつかきっと。
小さく頷いてみせて、そして再びポケットに手を入れた。]
じゃあ、さっそく幸運をあげるわ。
これ。
[先程上級天使より貰い受けた木箱の蓋を開け、中に入っているトランプを見せた。]
トランプ、知ってるかな。
わからなければ、フェリクスさんに教えて貰ってね。
[様々な絵や文字が書いてあるそれは眺めているだけでも暇つぶしになるだろう。
木箱ごと檻の隙間から差し入れた。]
他に何か欲しいものとか、してほしい事はある?
[立ちあがると、フェリクスに差し入れたトレイを回収する。
引き止めなければ、そのまま立ち去るつもりだ。]
[トレイを持ち収容施設から出る。
どこか陰鬱な影が覆う建物内とは対照的に、いつでも日の光は照っていて、眩しさに足を止めた。]
…え?
[その時だった。
不思議、としか言い表しようのない存在が目の前へと。>>54
一度薄れた為、疲れ目かと自分の目を擦ったが、次の瞬間にははっきりと姿を現していた。
知っている天使は何がしか人間と似通った姿をしており、魔物もまたそうであるか、完全に異形の者ばかりであったが為。
人間の子のようで違い、薄い翅を震わせる存在に、瞳を見開き硬直した。]
…。
[けれども。]
…貴方は、天使さま?それとも妖精?
[一向にこちらに害を加える様子はなく、また纏う雰囲気も天使の清らかな物とは違う―
一度だけ謁見した主の、まばゆく太陽のようなオーラに近かった。
こちらへと寄ってくる所作は幼ささえ感じて、おずおずと近寄り話しかける。]
ここに用があるの?
[白い翼がなくても訳あって出さない者もいたことを思い出す。
また妖精は悪戯好きではあるが、悪事を働かないのであれば天界に遊びに来ることを許されている者もいた。
そのどちらかだろうと考え、そして自分が出てきたところに用があるのならばと、横へ足を踏み出し、路を開けた。]
/* みなさん、綺麗にまとめていらして、余計な描写がないのにしっかりと情景を浮かび上がらせていて、素敵です。
余計なものばかりつけやがってこの!この![自分のロルを布団叩きでべしべし] */
[指示されたのは、天よりも高い―空。
太陽の恵みがさんさんと降り注ぐ。
そこにおわしますは、ただ唯一―…]
…えっまさか、
[けれども嘘をついているようには見えず、再び困惑する。
と、近づいた分だけ離れたが顔が近づく。どうしたのだろうかと動向を見守っていると、鼻をひくひくさせていた。
小動物を思わせる動きに呆気にとられる。]
[正体と意思を掴みかね、おそるおそるその肩に手を乗せようとすれば怯えられ、距離を取られた。
黙ってその手を下ろそうとすると、再び近づき、鼻先を寄せられる。
故郷で近所の人が飼っていた子犬を思い出し、僅かに笑みがこぼれた。]
わかったわ、貴方は蜂ね?
[嗅いでいるのはあの花の匂いか。
恐らくはあの草原から辿って来たのだろうと。
手は一対足りない上、色々とおかしな点はあるが、とてもしっくり来た。少なくとも今は。
彼が満足するまで、そうして手を差し出す。]
貴方にも、主のご加護があらんことを。
[けれどもいつまでもそうしている訳にはいかない。アレクシスに湿布を作ってやらねば。
その手で十字を切り、胸のロザリオに宛て恭しく礼をする。
相手が虫であれ何であれ、情と礼を以て接する。それが彼女の信条であった。
引き止められなければ再び一礼して、その場を*去って行った。*]
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