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[くるくると甘く喉を鳴らすようだった兵器の鳴動は、
魔将がその冠上に現れた>>57と認知すると重く低く変じてやがて止まる]
──
[目も口も、顔もない兵器は、どうやらわずかばかり機嫌を損ねたらしい。
異議を申し立てることもない代わり、しゅう、と毒混じりの煙をひとつかみ天へ昇らせて、
その後は核を以って遠隔で自律行動中のヒトガタに集中することにしたかのよう*]
─ セミヨン川 ─
疾く越えよ!南岸へ押し込め!
[幅の広いセミヨンの瀬、クレレットの橋は天然の隘路となる。
圧倒的な数で勝る魔軍の野火はここで堰き止められ、レオヴィル側南岸で争うのは足の速いもの、体躯の中程度以下のもの、橋を使わず川を渡れるものが先となる。
その傾向は、重低のゴーレムが橋を渡ろうとするにあたって強くなり、
そして主戦場から屍体を担いで北へ戻ろうとする傭兵達の逆流によって更に重くなる]
往け、往け、踏み越えよ、打ち払え!
[アンデッドの軍勢のうち、橋への道に乗れないモノはそのまま川へグズグズなだれ込んでゆく。
知性なき歩みは水に攫われ、折り重なり合うように沈み流れて、またその死骸の土手の上をスケルトンや別のアンデッドが踏み越えて。
南へ、南へ。
川付近の争いは緩慢に、しかしたしかに激烈なものへと変じていく]
…
[馬上、ヒトガタは一度天を振り仰いだ。
青い光。頭上から人間達を襲う死霊の炎。
川を越え、水滴と腐臭を撒き散らしながらかつての味方と武器を交わらせんとする、動く屍体達。
死者はそれ以上死なない。実入りがそれだけ目減りした戦場になるだろう]
……お前達、存分に暴れるがいい
ゆけ!
[ごく滑らかに凛と響いた声に従い、曲がりなりにも指揮の下にあったコボルトの隊は喚声をあげて各個突撃を始める。
この混戦、単体であっても強者ではない卑小な亜人達は、魔物戦に慣れた王国軍に次々と討ち取られながらも、勢いだけで小隊の統制を崩し、敵軍の前線を侵食しようと進んで行く]
[青肌の魔物の手綱を引いて、馬首を返す。
次々と人魔の死が花開く戦場、ゆるり廻って橋の方へ。
途中、斬り飛ばされたなにかの塊が飛んでくるのは、駈歩をステップさせて躱し。
見境を失ったかレオヴィルの軍服に反応したかのアンデッドの襲撃には、剣を抜いて肩を突き、2撃目で首を刎ねた。
魔将の玩具だがひとつやふたつくらいは壊して構うまい、どうせ殆ど腐り果てていたし]
お前達、傭兵だな
隊の長はまだ無事か
[魔軍に混じる少数の人間を見つけ、声の届く近さへ馬を寄せる。
ヒトガタから漂うのは死の香り。
腐臭のような甘さのある退廃ではなく、ひとつの命が途切れる瞬間に発される鮮烈なそれ、死を眼前に看たものならば肌で感じたことのあるものと同種の匂い]
指揮官は何方だ?
[眉を寄せ、顎を引いて周囲を見回す仕草はごく自然なもの。
背筋を伸ばした所作は戦場にあっても均整の損なわれない、魔王が目を留めた>>47かつてのまま]*
『俺は凡庸だろう』
[かつて
隣国の親友と過ごした星降る夜、杯を重ねながら、クレステッド・アジェンタ・ド・レオヴィルは笑った。
快活で、目端が利くこまやかな皇太子だった。
その一方で切れ味の苛烈な決断よりも、あまねく耳をかたむけて最善の道を求める指導者で、
激流たる戦乱の時代よりも、平和な世でこそ偉大な賢王として国を統治したことだろう。
彼には足りなかったものがある。
第一の世継ぎである自らの命がどれほど大事なものだったか、それを守りきるという"才覚"が]
『だが、王自身など優秀でなくとも良い。
俺には優秀な友も弟妹もある。
苦難に立ち向かう時……自然と人が集まり、民が力となってくれるならば。
王は彼らに未来を示す、希望の灯でなければ。
この時代、少しでも多くの笑顔を守る王に俺はなろう──』
[その願いを彼が叶えることはない。
魔王が戯れに拾い上げた死者の記憶は、人形を成立させる素体の一部として保存され参照され、永遠に止まった時のなかにある]**
ああ、其方か
名を聞いても構わないか、傭兵の長
[馬上から降りることのない代わり、物腰は穏やかで禿頭の男を撫でゆくように声を滑らせる。
それすら得体の知れない威圧かもしれないが]
…請けた「仕事」は、戦利品を持ち帰ることだけだろうか
[血の気の多そうな親分だ。
この真っ先に斬り込みに出そうな男が指揮官であるわりに、傭兵隊の動きは中途半端。
後発である不死者の軍勢に追い抜かれるように後方に留まり、戦闘行為は少なく抑えられているよう]
[ヒトガタの視線は、マーティンという男から、その前の別の男>>137へと流れる。
そうと知れぬよう、わずかに緊張していつでも行動に移れる油断ない姿勢。
ヒトガタの主であるもならばそれを理解しないが、クレステッドの経験と記憶はバンダナの男に注意を向けて、ごく自然に微笑んだ]
いまやシメオン=カザエル・ユートエニアムの死者の軍勢が前線に届いた
こうも戦況が荒れては、屍体を集めるという任にも困難ではないか?
お前達には別の仕事を頼みたい
一度さがり、下流へ南下して王国軍の西側面に接触したいのだ
人間であるお前達に撹乱を頼みたいことだ、功績あらば魔将シメオンには私から報告しよう、如何か
其方達の奮戦に期待している
[マーティンに頷いて、傭兵達が陣を纏めるを待とう、
と、そこに魔法で拡散された声が響いた>>145]
この声…
[ふ、と唇がやわく撓む。
目を細めて朗々と続く音声を聞き、青い馬の手綱を引いた]
ドット殿、俺もついていくが良いな
渡河していない亜人を集める。あの子が面白いことをしてくれているうちに移動を済ませよう
[戦場で咲き散る死は、種の別なくすべてが北岸で沈黙する魔法兵器の触媒として、その糧よと喰らわれていく。
死せる者がそれを知ることはなく、
まして生ける者の目にも映らず、
ただ、ヒトガタの中で核がチリンと鳴き]
──…、
[魔王の座す玉座の傍、魔導の波も満足げに鳴いた。
まだ言葉にならない
[足りぬ
なれど
"レオヴィルの王族を見つけたら喰ろうていい"のだな]
/*
あといまみたらロー・シェンがめっちゃすぐそばにいた件
軍隊と軍隊が南側の陸でぶつかってると思ってたよね…?んん…?
[レオヴィルの皇子ローは砦から出ているだろうとは思考していた。
もし最前線にいると知っていれば>>166
その行動をどう認識するにせよ、挟撃など提案はしなかっただろう]
……
耳のある者は俺に集え!移動する!
[戦場への渡河にとりかかれていない闇の亜人達は、愚鈍かあるいは後方で互いに殴り合って過ごしていたようなモノ達。
ヒトガタは頓着しない。
凛と響く声は彼らに欠片ほどの統制を取り戻させ、ノソノソと貧弱な武器を手に集まってくる。
先行する傭兵達から距離を置いて、小部隊も川沿いに南西へ。
一度天を振り仰げば、猛禽の群れが川の北へと飛び来たっていた]*
[また幾つかの些細な命が死へと転化した。
河岸の景色が煙と火の斑に染まるのを、顔のない魔法兵器が視ることはないが]
──
[低く唸る駆動音と共に、地這竜がじりと身を起こす。
核が離れている今、その動きは鈍いが。塔に滲む魔法の光は明滅を繰り返した。
風の運ぶ黒煙によって、光り輝く魔王の御姿が覆い隠されるのが不愉快だとばかり]
火攻か
[僅かに眉を寄せて、クレステッド皇子の姿したヒトガタは後ろを振り返った。
其処彼処で燃え上がる肉の炎柱から、風下に佇むクレレットの街へ視線を廻らし]
…
お前たち、傭兵隊が道を作ったならばすぐに続け
上流から流れ火が来る
[配下の亜人の群が興奮して騒ぎ出そうとするを低く窘めて、丸太で即席の橋を架ける人間たちへ馬を寄せる]
あの場を離れた故に、命拾いをしたようだ、ドット殿
だが急いで渡らねばどうやら挟撃どころではないな
[手伝わせよう、と笑みを浮かべた。
器用とは呼べない愚鈍の衆だが、闇に染まる前はドワーフやエルフだったともされる亜人、ギィギィと小競り合いをしながらも丸太を掴んで川へと運ぶ程度の作業をこなしてみせる]
[油と炎が流れに沿って迫り来る。
それよりも早く、迅速で確かな指示で道橋は生み出されたようだった。
ヒトガタは橋ではなく馬魔の脚で川と炎を渡ろうと、南東の岸を望む]
……、
[紛い物の指が手綱を引く。漂流物を避けて跳ぼうとしていた馬が嘶いて後肢で立ち上がった。
川の中程、橋桁となっていたなにかが崩れ、人間の影が幾つか、そして遅れて渡ろうとしていた亜人の大半が雪崩を打つように川へ滑り落ちていく>>206]
チ、 来い!
[ チリン
場違いなほど澄んだ音色、
馬を叱咤する声だけはごく滑らかに烈しく響く。
そして、上流から駆け下るごとき災厄>>197が瞬く間にセミヨンの瀬を死色に染め上げた]*
─ セミヨン川中流域 ─
[北方の山脈で育まれた水は、フェール湿地の地下水を受けながら南西へ進み、そして南へ進路を変える。
緩く左へ曲がる川の河原、浅く砂利の堆積して拓けた場所に、幾つかの影が落ちていた]
……
[ヒトガタは首を振り、濡れた銀色の髪をかきあげる。
炎に焦げ、焼け崩れた左腕が蠢いた]
汚してしまったな…
[悄然と呟く声にチリン、と音が重なる。
壊れたヒトガタの輪郭はやがて元どおりに埋められていく、生命体とはあきらかに素体の異なる魔性の質も、焦げて油染みついた衣装は再生しない]
……
[河原には焦げた亜人とアンデッドの残骸、そして水に浸からない位置に転がる人間が幾つか。
新たに得た死の数を数え上げる。
塵芥のような死を数多喰らっても、まだ兵器の器を満たす触媒には足りない。もっと、──]
戦場へ戻る
少し、目先の餌を追って遠ざかりすぎた
[乗っていた馬は流されたか、渡りきって逃げたか、いずれにせよ惜しいことには、まだ死んではいない。
河原へ我が手で引き揚げた人間たちの方へ一度視線を巡らせる。
腰に穿いた剣に手をかけることはせず、]
回復してやろう
[魔将シメオンの配下たる傭兵団は「全滅させていい」の範疇外。
かつて皇子クレステッドの修めた論理治癒魔法を再現する呪文と印は、呪者の属性が大きく変質してもそのままに、あるいは桁の違う効果を齎しただろう。
軍服の泥を片手で払いながら足を上流へと向けた]
[ チリン
満ち足りない、
もっと質の良い死をと体内で核が囁く。
レオヴィルの王族を先んじて欲する競争者の出現>>211>>226を兵器は理解し、疼くようにヒトガタを苛んでいた]
……そうだな
傭兵団の「参謀殿」…其方の命絶える折には、その死を貰い受けよう
/*
一度は言ってみたい悪役セリフ
かいふくしてやろう!
がリテイナーの打診受けた瞬間に思いついたやつだったので…
死してなおおそろしい俺!
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