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没落貴族 リエヴルは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
― 旅立ちの時 ―
[男は、手袋をはめ、正装の姿で杖を手にし、立ち上がる。
動きは、年相応のはずだが、不自由な脚はその姿を年齢よりは上に見せるだろう]
どう考えても、
待っていそうだしな。
[靴音は、特徴的なテンポ。
膝から下、存在はあるが、感覚のない右脚。だが、状況からいけば、失わなかっただけでも上等だと言われた。]
[数年前、…とある事故により、若くして、走れなくなり、それまで見せていた明るさは影を潜めた。
だが、陽気な子供だった彼が静穏になったのは、それは怪我だけが原因ではなく、
同時期に、家自体も、王家からの呼び出しがかからなくなって、斜陽していったこともある。
そして、リエヴルが怪我をしてから2年後の秋、
父はあきらめたようにある日、ぽっくりと亡くなった。
可哀想とも世間からは見えたかもしれないが、
それなりに、家族には愛され、終わった最期は穏やかなものだった記憶がある。
それから、母は、高名な家の出であったため、父がいなくなると、実家に戻ることになった。
母は嫌がりはしなかった。なぜなら、お金がかかることを知っているがゆえに。
実質彼女は、父の家のため、自ら戻っていったのである。
今は、僅かな領地とともに、もう、形ばかりの公爵家を護る立場。それが、私、リエヴル・ブルーメントリットに残されたものである、はずだった。]
[外に出れば、彼の家の執事がそこにあった。>>14]
やあ、心配そうだね。
だが、
心配していいとは思う。
私はそんなに頼りになる男ではない。
[執事はその言葉をどう受け取っただろうか。
全くヒーローとは程遠い台詞だと自分でも思う。
彼の成人のパーティで、彼が魔族との契約で連れていかれたことを聞いたのは、
既に彼が消えたあとだった。
魔界に通常の人間ははいることはできない。
なぜなら、その出入り口は分かっていても、その世界はまるで異質だ。
だから、追うことが許されたのは、
大きな代償を既に払っているもの。つまり魔界へ入り込むことの許される脚を持つもの。
普通の人間はその魔界への一歩で、脚が違和に焼き切れるのだが、既にその神経が侵されている人間は。]
[その怪我は、彼が16歳あたりのこと。
幼馴染のフレデリクより2年ばかりはやく、全寮制の寄宿学校への顔合わせをした帰りのことだった。
馬車を使って迎えにこさせるのを断って、駅から町を抜け屋敷に向かう。
その訳は、町の中にある活版所に立ち寄り、タブロイド紙のプリントミスを漁りまわし、いわゆる、家族からは見せてもらえないようなニュースや画像を見るのを楽しみの一つにしていたからだ。]
―あの日のこと―
リエちゃんまだ帰ってきてないの?
[最近の幼馴染とは少し不穏である。
というのも、進学を迎えるに当たって、
当然良家の男子らしく、寄宿学校なるものに進むからだ。
いやだよだめだよいかないでよさみしいよ。
と言ったところでどうしようもない。
のはわかっているがわかりたくない14歳なのである。
今日がその学校を見に行ってくる日で、
でもまだ帰ってきていないらしい]
……迎えに行く。
[駅を目指して屋敷を抜け出した14歳、成金息子。
鴨がねぎとだしとなべ背負って走っているようなものだった]
― 寄宿学校の帰り ―
[活版所に向かう途中、フレデリクが迎えにきていることは知らなかった。
寄宿学校に進むことを彼は嫌がったが、ある意味、貴族としてはそこに進むのが当たり前な風潮は確かにあって。
長期の休みや、まぁ、暇を見つけては帰ってくるよ、などとお茶を濁していたのは本当だ。
けれど、その日以来、そのお約束の名門校の門をもうくぐることがなくなるなどとは思いもしなかった。]
――……
[駅から、あるく最中、駆けてくる、金色の頭。
いつまでたっても子供みたいな顔の彼が、こちらに向かってくるのを見れば、やれやれと立ち止まる。]
[その時、彼の背後から、確かに何か不穏なものが近づいてきた。
その太い腕は、彼を背後から捕まえ、そして、その身を攫おうとする。]
――……まっ
[気がつけば荷物を放り出して走り出していた。
とりあえず、速さには長けていた脚は、彼の元まで近づくのに、それほどの時間を要しない。]
おまえっ、なにを!
[暴漢に向かい声を張り上げ、彼の身に手を伸ばした時]
[それは、
暴漢の仕業である、と後では証言をする。
確かにその暴漢は強く、後にフレデリクのことを金目当てで攫おうとした、と言った。
だが、
フレデリク自身も、わからないかもしれない。
だが、その時、僕はたしかに見た。]
――……ッ
[彼の身を護ろうとしたのは、自分だけではない。
そう、咄嗟に伸びてきた黒い鞭のような、あれは、一体なんなのだろう。
彼に誰も寄せ付けまいと放たれたその黒い閃光は、今では、魔の弾だったことがわかる。]
[そして、その黒い閃光は、暴漢の身体を打ち、僕の右脚を薙いだ。
途端に、崩れ落ちる身体。
せめてとフレデリクに手を伸ばし、倒れた暴漢からその身は奪い返し、ただ、己も支えを崩し、倒れこむ。]
――……っち
[右脚は、激しく打たれ、たしかに鈍い音をたてた。*]
リエちゃん!
[身なりのいい如何にも世間知らずは、
飛びつかんばかりの笑顔で駆け出していく。
ご機嫌斜めではあったが、顔を見たら一旦は忘れたようだ。
背後に何かいた、なんて、
まったく気づくこともないままで、
リエヴルの手から放り出された荷物に、きょとんとした。
そこで唐突に乱暴に腕を引かれたのを覚えている]
――え?
[そのあと起こった事象も、
その時は全く理解できてはいなかったのだ。
黒い影が走ったことだけは、わかったのだけれど、
それが何を意味するかなんて]
リエちゃん……!
[伸ばされた手に、引き寄せられて、
庇われる様にそのまま崩れる体を支えられなかった。
まだ子供で対して力も無くて、何も出来なかった。だから]
リエちゃん、大丈夫?リエちゃん!
死んじゃやだ!しっかりして!!
やだ、リエちゃんが死んじゃう!!
[しがみ付くように名前を呼んで、
大声で泣き喚くことしか出来なかった。
その声が一応は人を呼んだらしかった、けれど*]
― 塔の街 ―
[痛みに対しての感覚もなくした右脚で、魔界の入口に踏み込み、
そして、その身は、不可思議な次元の法則とともに、人間界から魔界へと対応を備え変えた。
そのようなことができるようになったのは、いつからか。問われれば、やはり、この怪我を負った時からだろう。
駆ける脚はなくしたが、異界へ踏み入れる脚がリエヴルのものになったのは確かであり、
そして、その人の世界の者が誰ひとりとして知ることのない秘密だった。]
>>134
――……魔界。
助けるどころか、自身が無事でいられるかどうかもわからないな。
[塔の街と呼ばれているその場所。
月光石の杖をつきながら歩く。
杖は、感覚のない脚の元を照らし、そして、彼に街の様子を詳細に見せる。]
まずは、自身を守る術と、フレデリクの行方か。
[一見、街は、穏やかな逢魔が時。
それは人間の世界に似ているようでいて、どこかしら可笑しな歪みある。
もちろん、気のせいにこしたことはない。むしろ、まだ制服を着ることのないような年齢であれば、
子供からの問いには、なるべく、回答するように心掛ける。]
[ドッペルは、どうやら話をきいていない。
呆れた顔で、歩き出す。
そう、気づくものもいるだろう。
魔物は彼をすぐに襲うことがないことを。]
――……人?
魔物以外を見るのははじめてだ。
貴方も探し人かい?
[月光石の杖をつき、正装の姿。
正真正銘、その右脚以外はただの人なのだけれども。]
残念ながら、
僕が今回こっちに渡り、あった人は貴方が初めてです。
申し訳ない。
[詫びを伝え、散り散りになっていくドッペルのなかから、彼に寄って、名を名乗る。]
僕も探しています。
金糸の友達を
僕の友人は、
僕を見れば、仔犬のように駆けてくる習性があってね。
鳴き声はすれど、姿が見える仔犬は、
彼ではないな。
[首を振り、さほど興味なさげに。また視線をジークムントに向ける。]
貴方の探し人は、司祭といったな。
まさか、結婚式に呼ばれてはいないだろうな?
[幼い頃にきかされた冗談、と思っていた話。
フレデリクは魔族の嫁になるかもしれないなどと]
ああ、ここは、魔界だよ。
君は知らずに来てしまったのかい?
[尋ねる声に答え、そこにある、人と、ちいさな魔物に首を傾げた。]
でも、それは、幸いかもしれない。
魔界という認識のもと、ここにくることは、
自然の摂理を反したのではないかという意識が生まれる。
普通の人間ならば、その境界線を自分の意思で越えるのは、大変なことだ。
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相方がいきなりお亡くなりになったようで、
こう、わりと肉体的にもいちゃいちゃするつもりだったのだけど、想定外です。
やられたな。
まぁ、毎回のことですが。
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