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さっき、ヤコブ達が話してた人か。
[イングリッドの名前が出ると、やや緊張した声になった]
えっ……?
なんだって?テオドールを……?
どういうこと?
[また予想だにしない言葉を聞いてしまった。
一体彼女は何をヤコブに話したのだろう]
[暫しの沈黙のあと、思念を送る。
その声はやや固い]
ヤコブの考え方はわからなくもないよ。
ただ、救うというのがテオドールを倒さないってことなら……。
まずそれを、他の人たちに納得させられる?
騎士団だけならいいとしても、彼が民間人を狙ったことは事実で、そこを考えておかないと、襲われた人たちには不満が出るんじゃないかな。
あとは、その人は救いたいと思っていても、テオドール本人はどう思ってるのかも気にはなるけど……これは本人と接触して確かめる他はないのかな。
どうやったら救えるのかということも。
[ふと、横あいから声が聞こえる。
それに耳を傾けると、少し困ったような声があがる]
その……俺も命を救うだけじゃないとも思ってるんですが、ヤコブにとって救うことは、命まで含むのかどうかも含めて、ヤコブがどう思ってるのか、確認したかったんです……。
俺は、やっぱり心情的にはテオドールを救うってのは難しいかなって思うところもある。
あいつのせいで犠牲になった人がいる以上はさ……。
でも、ただあいつを倒すだけじゃめでたしめでたしにならないのかなってのも思ってた。
ソマリアラン様が昔教えてくれた歌みたいに。
ん、なんか意見ってほどじゃないかな。
ヤコブの話を聞いて、俺も……ヤコブと似たようなことを思っていたんだ。
門を閉じてめでたしで終わりたければ、テオドールを救わないといけないのかもって。
それが、イングリッド・ミランの望みと同じなのかだとか。
生命を救うことに繋がるのかは、結局テオドールと会ってみないとわからなそうなんだけどさ。
― カレン ―
[カレンに戻ると、念の為に再度治癒を人馬ともに施された。
それからすぐに次の戦いの準備に取り掛かる。
シェットラントの実力をもってすれば、ポータル設置に成功すると微塵も疑っていなかった。
その準備の合間。
やはりラクシュの側にいて、熱心に馬体を洗っていた。
その間、ラクシュに語るのは昔話]
俺の父さんは俺が小さい時に死んじゃったんだけど、俺と同じように騎士団員でさ。
あんまり小さいんでよく覚えてなかったから、母さんによく父さんの話をねだってたんだ。
その中でも俺が一番気に入ってる話があるんだ。
父さんが魔物に襲われていた少年を守るって話なんだけど。
その少年を護った時に、その子にどうして?って聞かれたんだ。
父さん、それ聞いてちょっとびっくりしたんだってさ。
父さんにとっては、それはすごく当たり前のことだったから。
ただ、その子……。それを聞いた時、自分は護ってもらう必要なんてないのにって顔してたように見えたんだって。
だから父さん、その子にどうしても伝えたくなったんだって。
騎士が民を護るのは当然のことだって。
その護る民の中には、その子も入ってるんだって。
……俺、その話を聞いた時に、自分も騎士になりたいって思ったんだ。
父さんのように当たり前のように誰かを護れるようになりたいって……。
俺がそう思ったこと。ラクシュに聞いて欲しかったんだ。
[知るはずもなかった。その少年が瞬槍の二つ名を持つラクシュの乗り手だったことを]
[時折ローズマリーの様子を見に顔を出す。
何かを語りかけることはないけれども。
まだ息があるのを確認すると、安心して立ち去る。
ただそれだけだった]
[意地でも家には戻らなかった。
そこで私情を挟んでしまうのが嫌だった。
そうしているうちに、母はすでにペンホールズに避難しているという情報が飛び込んできた。
一瞬だけ、ほっと安堵のため息をついた]
[真っ先に向かったのはラクシュのところだった。
この賢い黒馬を譲り受けた時から、一緒に見届けると決めたのだ。
置いていくなんてことは考えられなかった。
そうして準備を済ませると、見張り塔へと向かった]
そんな……!
そんなこと、言わないで下さい!
[あの時は簡単に任せて欲しいといえた。
だけど、悲鳴のようなものの後では、同じ言葉はすぐには返せない]
― カレン・見張り塔 ―
[何もないはずのところに、その門は確かな存在感を持って存在していた。
薄く透き通っていて、手を伸ばせば反対側に潜り抜けられそうなのに。
同時にとても重厚な造りのようにも見える。
だが見たこともない魔法に驚いてはいられなかった。
それより聞こえてきた"声"のほうが重要だった。
ただ残りの3人は、"声"も聞こえずに、ヤコブの様子に何があったのかと心配そうに見つめていた]
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