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領主補佐 ギィは語り手 に投票を委任しようとしましたが、解決不能でした。
領主補佐 ギィ は 主計官 ラートリー に投票した(ランダム投票)
[そしてさらに一週間ほど時間は過ぎて。
ふたつの領地の合併が行なわれ、ギィは書類の上では既婚者となった。
もっともいまだ婚礼は行なわれず、二人、顔を合わせる事もできないでいる。
領地の合併とはいえ、すぐさますべてをひとつにと言う訳にはいかないらしい。
まずは目前の冬の対策を。
ひとつになった国は手を取り合い、それに立ち向かう。]
[館に呼んだ商人は、ギィの目の前にいくつもの品を広げている。
見せてくれと頼んだ品物は扇。
扇ぎ、涼を取る為だけではなく、装身具のように、または小道具として、季節を問わずに女性が扱うものだ。
女性への贈り物がよく分からず、相談し、もらった返事。
なるほど、ギィが想像もしてなかった品物が書かれていた。
あとのひとつは既に注文済みだ。もうまもなく届くだろう。こちらは冬に備えてのもの。]
珍しい柄だな。
[ひとつの扇を手に取り、開いてみる。
模様自体はシンプルだ。縁も派手ではなく、淡い紅色の一色。
ただ、中ほどの透かし細工が、花に止まる蝶を描いている。
閉じれば花の絵。中途に開けば花はさらに咲き、完全に開いたなら蝶が現れる。]
薔薇か?
[商人は頷く。
曰く、異国で作られたもので、この辺りでは手に入らないデザインのものだと。
横から覗き込んだ母が、「もっと艶やかなものの方が良いわ」なんて口にするのを、横目で見た。]
母上は派手過ぎるんだ。
[返答は「貴女が地味過ぎるのよ」だったが。
それを無視して、手に取った品物を商人に示す。]
これにする。
[商人は、やりとりの間、ギィの姿をちらりと眺める瞬間がある。
常に男装していたドラクロアスの一人娘が、今は女の格好で過ごしているのだから、珍しいに決まっている。
父は、最初にスカート姿のギィを見て、たっぷり4呼吸は言葉を失った。
使用人の中には、あからさまな驚きの顔でギィを凝視するものすらいた。
それに比べたら、ちらりで済むだけたいしたものだ。]
[壊れぬように厳重に包装させ、ようやく選んだ贈り物を手にいれる。
母はもう少し商人から買い物をするとの事だが、ギィはそこで自室に戻った。
ようやくアプサラスに贈り物ができる。
自室の机の上には、手紙と――頼んでいたもうひとつの贈り物があった。
急ぎ、手紙の送り主を確認する。
そこに彼女の名前を発見すると、ペーパーナイフを取るのももどかしく、開封する。]
[中身を読んで、思わず片手で顔を覆った。]
……先走って、答えてしまっている気がする…。
[手紙に記された言葉。それの返答は、先日送った手紙にすべて書いてしまったような、気が、する。]
……恥ずかしい……。
私はどれだけ気が急いているんだ…。
[落ち着くべきか。
次の返事を待つまで、手紙を送らないでおくべきか。
いや、でも、せっかく贈り物が用意できたんだ。
せめて、これを送るだけでも。
そう己に言い聞かせ、椅子に座り、ペンを取った。]
我が伴侶 アプサラス殿
手紙を拝見した。
今も恥ずかしさで頬が火照る。
私の気持ちを、すべて見通されている気がしているよ。
貴女の懸念、貴女の疑問。
私は既に先の手紙で殆ど答えてしまっている気がする。
貴女が言う通り、私達の手紙は入れ違いばかりだな。
何を書けばいいだろう。
ペンを持つ前は、落ち着こうと思っていたんだ。今は初めて恋文を書く少女のように、何もかも書きそうになっている。
刺繍は、母上から合格を貰って、ようやくヴェールに刺し始めた。とても緊張するね、これは。
歩き方はまともになってきたようだ。スカート姿でも歩き難いとは思わなくなった。
婚約の話を始めて聞いた時、確かに何かが欠けたような気持ちになった。
今はそんなものは微塵も無い。
私の中は、色々な感情でいっぱいだ。不安もあるけれど、それすら嬉しく感じるんだ。
手紙を読んで、もうひとつ、新たな喜びを得られた。
子、と。
その言葉に、目が覚めるような思いがした。
私は自分が親になる事などないと思っていたから。
貴女と共に、私達の“子どもたち”を慈しみ、守っていきたい。
父として、母として。
大きな家族になるのだな、私達は。
とても素敵だ。
また長々と書かぬように、今日はこれぐらいで筆を置こう。
愛をこめて
ギレーヌ
[先の手紙で書き損ねた言葉を、今度は添えて。
便箋の色は薄く薄く紫の色。]
[続く便箋が一枚。]
追伸。
同封の品、宜しければ貴女の身近に置いていただけないだろうか。
扇と、もうひとつ、鹿皮の手袋だ。
扇は異国の品と聞いた。シンプルだが凝った透かし模様だろう? 蝶の羽根が美しい。
手袋は、私が仕留めた雌鹿の皮で作らせた。
柔らかく、手袋を嵌めたままでも指を動かしやすい。これからの季節に、使ってくれ。
[手紙を書き終え、贈り物も添えて配達を頼む。]
……気に入ってくれると良いが。
[地味だと母に言われたが、もう少し華美なものを選ぶべきだったか。
自分が選ぶと実用性を優先してしまう部分がある。
それとも女性には宝石や装身具の方が良かったか。
送り出してからもぐるぐると。]
……ダメだったら、次に頑張ればいい。
[まだ私達には時間があるのだから。
手探りでやっていけばいいのだ。
ゆっくり、ひとつずつ。]
[他にも届いた手紙を読む。
狩りに幾度も訪れた第一領地。
落ち着いたら、そこへ訪れるのも楽しいだろう。
できるなら、美しい伴侶を伴って。
誘いの言葉に笑みを浮かべて読み進め――]
……?
なんだろう、これは。
[手紙に描き添えられた図を眺める。
鎧姿の人間?
首を傾げて悩む。]
剣と盾を同時に扱うのなら、皮鎧の方が軽く動きやすいが…見た目がなぁ。
戦わぬなら薄く加工した金属を用いるのが良いが…はて。
[勇ましい姿を勧めたと言う事なのだろうか。
悩むが巧く読み取れず。
手紙の主の筆圧の薄さが少し気になるものの、同封されていた祝いの品――海の涙に息を漏らす。]
……しまった。
アプサラス殿に伝えておくべきだったか。
[ふたつの真珠は、ギィとアプサラス、二人に向けてのものだろう。
少し悩んだものの、次に伝えようと決めた。]
[もう一通。
気さくに話して欲しいの言葉に、あの時の男の顔が浮かぶ。
今は隣領土となった領地の、次期領主。]
三本勝負か、いいな。
[その勝負を終える頃、新たな友人になっているかもしれない。
その前に。
その頃、隣はどういう領地になっているのだろうか。
男と、その妻となる女性を考える。]
良い付き合いはこちらも望む所だな。
[今は花嫁修業に専念しろと父も気を使ってくれているが、いつまでもそうはいかない。
花嫁修業の合間合間に、補佐としての役目は果たしている。
領民と言う子どもたちを守るために、この領地を守り、豊かにしなければならない。
まだまだ学ばなければならない事は、たくさんあるのだ。
父からも、そして新たに父と呼ぶべき人からも、学びたい。]
〜 愛しい妻であり夫であるギレーヌ様へ 〜
改めて妻とか夫とお呼びすると照れてしまいますね。
本当は直接お会いした時にお呼びしたかったのですが、
先にしたためておいて良かったと思います。
他の誰でもないギレーヌ様だけの為の呼び方です。
書いている頬が秋の葉より赤くなった気がします。
やはりギレーヌ様とお呼びした方が馴染みますね。
前置きが長くなりましたが、お手紙拝見いたしました。
私の手紙が届くよりも早く出されたと自惚れさせていただきます。
ギレーヌ様のお心を聞けて感謝と喜びに私の胸は震えております。
あなたと一緒に歩めることが嬉しくて仕方ありません。
私の言葉がギレーヌ様のお心を少しでも良い方向に
向ける手助けが出来たのなら幸いです。
お会いする時を楽しみにしております。
お父様がスカートを履いて歩く様子を想像したら
少しおかしくなりました。
エレガントに歩くのは少し難しいとは思いますが
ギレーヌ様なら大丈夫です。
常にご自分は新芽の様に柔らかく、傷付きやすいと思いながら
指先にまで気を付けて見てください。
馬の上から見る世界は、あなたの隣で駆ける世界は
どのように見えるでしょうか。
命の尊さに私は更に成長出来るでしょうか。
どんな事も二人でなら大切に過ごせるでしょう。
祭りの踊りも一緒に踊りましょう。
楽団ではなく、農家や職人の方たちが楽器を鳴らすので
リズムはバラバラですし、音も取るのは難しいでしょう。
ですが皆舞踏会の様なすました顔ではなく、
本当に楽しそうに笑いながら踊るのです。
その輪の中で一緒に笑って踊りましょうね。
百合の花に重ねてくださるなんて光栄です。
あの花の様に気高くあろうと思います。
私はアゲハ蝶の刺繍をしています。
黒は使えないので金と白金の色を使っておりますが、アゲハ蝶です。
ご存知でしょうか。
アゲハ蝶は光の境を飛ぶそうです。
昼と夜の間を飛ぶ蝶の様に、私たちは領土の境を越え一つになり、
女性と殿方の二つの境をひらりひらりと舞いましょう。
一点残念が事があるのです。
お母様が蝶のモチーフから私が手を加えることを許して下さらないのです。
なんでも絵心は成長しなかったとかで。
仕方ないので今度ハンカチーフに私なりの刺繍をして
贈らせていただきますね。
この刺繍の糸がずっと伸びて、ギレーヌ様に届けば
良いのにと思っております。
子供の様な我儘ばかりでごめんなさい。
それでは花嫁修業頑張ってくださいね。
愛しています
あなたの夫であり妻であるアプサラスより
[取り留めなく思いついたまま書き連ねた便箋には
同封したものを際立たせる白を使って。
薔薇の香から一枚、一番良い形の花弁を封筒に。
赤いハートの形をした花弁に思いを込めて。]
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