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― グローセンハンク人類救済支部 ―
[ ファルケンがここへ来る途中で見たという店で、
ご希望のレーダーを買った。
説明書を読めば、この値段にしては随分高性能で、思わず首を傾げる。 ]
大丈夫、これ?
ちょっと怪しくない?
[ 気にはなったが、天使が映らないレーダーで今後も戦い続けるわけにはいかない。
僕も一応は戦闘機乗りだから、視力には自信があるけれど、目測にも限度があるのだ。 ]
言っておくけど、僕はメカニックじゃないからね。
うまく出来なくても知らないよ。
[ 断ってから、ファルケン備え付けの工具を取り出して、
説明書に首っぴきになりながら、配線を通し、
ドライバをインストールした。 ]
[ 続いて、ノートパソコンを接続して、
ファルケンの「見」た物をラプターに共有するプログラムに修正を加える。
こちら側の方がスムーズに行った。
合体してツヴァイフリューゲルになった後の処理もしてしまう。 ]
ここが移動するから、置き場所はこっちに……。
[ 合体で組み替えられる位置を考えながら、
慎重に配置した。 ]
これでいけたと思う。
起動させてみて、ファルケン。
『 ありがとう、兄貴! 』
[ レーダーに電源が入る。
その瞬間、ぷつ、と一瞬、メイン画像が乱れて雑音が入った。 ]
……ファルケン?
『 ん? なあに兄貴。
んー、周りに天使居ないから、ちゃんと見えるかどうか、確認しようがないね。 』
[ ……気のせいだったのかな? ]
─ 地中海 ─
[ 波打ち際に、僕らは尻もちをついた。
巨大な飛沫があがって、バラバラと砂浜を打つ。 ]
……ファルケン!
なにやってるんだよ!
『 今のは兄貴のせいでしょ!
ちゃんと合わせなさいよ! 』
[ ヘルメット越しに頭を抱えたくなったが、そんな場合じゃない。
ファルケンが翼を吹かして、ツヴァイフリューゲルの姿勢を立て直すのに、
僕は合わせる。 ]
[ 2人で役割分担をして1機を動かせば、
1人でやるより難しい作業も出来る。
それぞれの得意分野も活かせる。
気づくことも増えるし、思いつくことも増える。
……しかし、その利点は、2人の意思が一致しなくなった時に、最悪の欠点に変わる。。
新型機のパイロット選定に際し、相性が合う2人である事が重要視されたのもそこにある。
上半身と下半身が別々の動きをしようとしたら、
攻撃なんて出来るはずがない。 ]
……どうしちゃったんだよ。
[ ファルケンの考えが読めない。
こんなことは初めてだ。
積極的なシュテラと、消極的な僕、
意見が対立することはあっても、どういう形で対立するかは、お互いいつでも分っていた。
……でも、今は違う。 ]
5秒後に右の大天使から対応!
踏み込んで斬攻撃!
[ いや。
それもそうかもしれない。
ファルケンはシュテラじゃない。 ]
─ 地中海 ─
[ 僕はラプターで地に伏せて、海を見ている。
ファルケンは200m先で山に頭を向けている。
……こんな風光明媚な保養地で、僕らは何をしてるんだろう? ]
……報告終わったよ。
ザルツブルグの方>>+33も終了したみたい。
『 そう。 』
[ 今回の天使出現予測地が送られて来た時、
僕らはイタリアのヴァチカンを目指して飛んでいた。
一番近いのが僕らで、僕は対応を自薦し、ギア部隊の出動を断った。
その数ならば単体撃破が可能だと思ったし、
同時に別の場所でも出現予測が出ていたからだ。 ]
……。
[ ラプター内で、僕は考える。
たとえば、ファルケンを全削除したら、どうなるだろうか? ]
……何を考えてるんだ、僕は。
[ そんなことは無理だ。
感情とかそういうのは別として。
脳接続型ロボと違って、ラプターやファルケンはかなりのアナログだが、
(スイッチやレバーやペダルがやたらと多いのはそのせいだ)
それでもAIなしで動かせるほど単純な機械ではない。
ラプターにだって、喋らないがちゃんとAIが入っているのだ。
……ファルケンAIがいなければ、ファルケンは動かない。連動しているラプターにも問題があるだろう。
ましてや、ツヴァイフリューゲルはただ立つことも無理だろう。 ]
……おさらいするよ、ファルケン。
キリスト教やユダヤ教が出現する以前、
拝火教の時代から天使は文献に登場して居た。
だから、侵略者が現れてからこっち、鎖国したままのヴァチカン市国が「天使」に関係しているという推測は
間違っているかもしれない。
ただ、
「天使」の出現が欧州に限られていることには、
何か理由があるんじゃないかと思う。
関係してないなら、ないでもいい。
その可能性が消えれば、次にいけるんだ。
人狼の仕事があるし、地上では仕方ないと思うけど、
墓下ルートでは、
>この村でのバトルの基本はNPCを相手にした協力バトル!NPC相手に遠慮は要らぬ。仲間と協力して派手にぶっ飛ばせ!
これを優先してほしいな〜という気がするよ。
─ ヴァチカン市国 ─
[ ラプターで近くまで行ったが、かつては外国人でもパスポートなしで自由に出入りできたサン・ピエトロ広場にさえ、立ち入り出来なかった。
城壁は高く固く、解放されているはずの入口には、非武装の祝福聖装ロボが隙間なく並んでいる。 ]
……無計画じゃだめか。
[ 僕は途方に暮れる。
それはそうだろう。勢いでここまで来たものの、当ても何もない。
世界中から救いを求める人が集まっても門戸を開かなかったヴァチカンが、
今更僕の為に開いてくれるわけもなかった。 ]
[ なにかとっかかりがないかと、ラプターを路上駐ロボして、ヘルメットを脱いで、パイロットスーツのままでうろうろする。
……城壁の周りは、災禍を逃れてきただろう人でいっぱいだった。
皆、一様に疲れた顔をして、希望のない目をしている。
たとえば……。
僕らの利用価値が認められ、
ビルトシリーズが量産体制に入れば、彼らを救う事が出来るだろうか?
ジンロボを越える、時代の先を行く合体ロボ。
それが世界基準になれば……。 ]
[ 僕は首を振る。
ビルドシリーズは確かに、
パイロットとして未熟な者にでもある程度扱え、
成熟した者にはより高度に扱えるという事を目指して作られた機体だ。
……しかし、パイロット2人の意思がひとつにならなければ、
粗大ごみになってしまう脆さも合わせもっている。
きっとまだ、量産には時間がかかる……。 ]
[ そんな僕に、ひとりの老人が話しかけてきた。
腰が曲がって、髪も髭もまっ白なしわくしゃのおじいちゃんだ。 ]
『 貴方が出てきたロボは、随分痛んでいるようですが、
どうしたのですか? 』
こんにちは。
……先ほど地中海で「天使」と戦ってきました。
でも、うまく戦えなくて、かなり苦戦しました。
[ ファルケンは隣町に置いてある。
この近辺は、避難してきた外国人たちで宿が取れないと聞いたので、
宿は隣町に取った。 ]
[ グローセンハンク国を出る時に、
燃料補給と整備はすませてきたけれど、やはり本社に居る時同様とはいかなかった。
ビルトシリーズはまだ出回っていない機体なのだ。
損傷は出来るだけしないように戦いたかったけれど。 ]
『 あれは「天使」ではありません。 』
[ 老人は別な場所に引っ掛かったらしく、
そう訂正した。 ]
「天使」でなければ何なのでしょうか?
連合軍でも、大きさや危険度を、天使階級になぞらえて分類しているようですが。
『 「何」かまでは分かりません。
でも、戦い倒せるならば、「天使」ではありません。
なぜなら、人間には「天使」を倒せないからです。 』
[ なるほど、明快だ。
しかし、「で?」と言いたくなるような答えである。
それが顔に出ていたのか、老人は続けた。 ]
『 かといって自然現象でもないし、何かの動物とも思えません。
それらだとおかしい事があります。
彼らは、出現が確認された頃に、欧州のいくつかの都市を壊滅させましたね。 』
[ 僕は頷く。
その戦闘史は頭に入っていた。 ]
『 その「主要都市」の選択は、けして人口の多い順ではありませんでした。
では何かと言うと……人類の「防衛拠点」、すなわち、「戦略上の主要都市」だったのです。 』
[ 僕はハッとする。
天使の出現は、他の侵略者たちの中で、後の方だったかろうか、
先の方だっただろうか……。
どちらであれ、天使がそれら「戦略上の主要都市」を焼き払わなければ、
欧州戦線も、立て直しにここまで時間はかからなかっただろう。
そして、そんな選択をするものが、自然現象であるわけがない。 ]
『 私はあれらが「人間」だと思います。 』
[ 僕は「天使」との戦いを思い出し、慎重に答える。 ]
大枠には同意します。
……正確には、人間が操っている何かか、
人間が指示を与えているオーバーテクノロジー
……と言う方が正しいかもしれませんね。
[ 侵略者たちの正体なんて深く考えて来なかった。
僕の当面の敵は流星獣で、
彼らの倒し方、攻撃の避け方、負傷の手当ての仕方を考えるのが精一杯だった。
でも確かに、侵略者たちにはおかしな点があるのだ。
ほぼ同時代に出現したこと、
いくつか被る地域はあるものの、おおまかには住み分けがなされていること、
人類側が誘導して、うまくかち合わせた場合を除き、
ほとんど彼ら同士では戦わないことなど。 ]
でも……。
もし、彼らを操っているのが人間だとしたら、
それは「誰」なんでしょう?
[ 一番怪しいのは、まさにこのヴァチカンやローマ法王だけど。
……とは、さすがに口に出せず。
しかし、これまた顔に出てしまっていたようで。 ]
『 ヴァチカンは無関係ですよ。 』
[ 言われてしまった。
僕は肩をすくめる。 ]
『 知る力はあっても、
戦う力のない、無力な存在です。 』
[ おや?と僕は思った。
老人は、信仰心から無関係だと言ったのだと思ったら、どうやらそうでもないようだ。 ]
少し考えてことも出来たし、一度ラプターに戻って検索してみよう。
老人に向け、つい頭を下げてしまうのは、日本での生活が長かったせいだ。 ]
お話、どうもありがとうございました。
お名前を窺ってもいいですか?
あ、僕は……、
『 グローセンハンク社の、シュテルン・ディーツゲン君ですね? 』
どうしてそれを?
『 私は、ルートヴィヒです。 』
[ どこかで聞いたことがある気がする。
しかし、思い出す前に携帯端末が鳴り始めた。 ]
失礼。
[ 出てみると、ファルケンが大音量で叫び始めたのでとりあえず切る。 ]
相棒でした。あとでかけ直しま……、
[ 顔を上げたら、老人はもう居なかった。
僕は手品でも見せられたような気分で左右を見回した。 ]
……あ……、
ルートヴィヒって……大司祭の……?
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