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[飛び上がろうと足に力を込めたその時、メルヒオルの周囲に光の壁>>*4が競り上がる]
!? くっ……!
[光の壁が伸びる先には、くるくると回る矢があった。
床を蹴り、足場を作って駆け上がるが、光のドームの完成の方が早く、メルヒオルは中に閉じ込められてしまった。
拙い、と本能が危険信号を発する]
[突破叶わず、足場が消えて床へと逆戻りした頃、光のドームの中に異変が起こった。
舞い踊るように現れ出した、光の羽根と花弁>>*5。
傍から見れば幻想的なそれは、確かな意志を持って牙を剥いた]
おおおおおおおお!!
[乱舞する羽根と花弁は容易に避けられる数ではない。
それでも逃れるべく、光の壁すらを足場にして駆け回る。
次々と身を裂き行く刃は、メルヒオルの身体に幾重もの傷を生み出していく。
そんな中でも光の壁を駆け上がり、その頂点となる位置まで来ると、己の血で紅く濡れたランスの切先を、くるくると回る矢を目掛け突き出した]
[この空間から脱出せんと繰り出した一撃。
それが届くか否かの間際で、必殺の一矢がドームの外から飛来する]
《ドンッ》
[少なくない衝撃がメルヒオルの身体を揺らす。
真珠色の尾を引いた矢は、ドームの頂点で動きを止めたメルヒオルの胸の中央を確かに貫いた]
───── かはっ
[矢の衝撃で肺から空気が全て出てしまうような感覚を覚え、呼吸が止まったかのような感覚を得る。
数多の傷、その上に傍目致命傷と言える一撃を打ち込まれ、メルヒオルの身体は遂に力を失った。
右手から滑り落ちたランスと共に、光の羽根と花弁に刻まれながら再び舞台の上へと落ちていく。
落ちたメルヒオルの身体は、力の限界を示すように元に戻っていた*]
[舞台へと落ちるまでの間、意識は途絶えていた。
それを呼び覚ましたのは、落下による背への追撃と]
………しん で ない
[舞台へと降り立った者>>*9からの呼びかけ。
声を返すものの、直ぐに起きられるほど負傷は軽くなかった]
かんたん には しなな い
すぐ なお る
[途切れ途切れの声。
その言葉が真実であることは、ヴィンセントの目にも明らかだろう。
深い傷が数多並ぶ中、いくつかの浅い傷が少しずつ治癒を始めていた]
…きみ は、 竜 なの?
つくられ た?
ぼくと おなじ?
[いくつかの問いかけ。
何かを確かめるようなそれは、相手に何を思わせただろう**]
[問いに返るのは否定>>*14。
それを聞き、複雑な想いが綯い交ぜになった息を零した]
召喚師 と、竜 の あいの 子
……そ、か。
本物 なんだね。
[純粋ではないにしろ、ヴィンセントの身に宿るのは紛うことなき竜の腕。
蜥蜴の腕が精々の己の腕を持ち上げ、ぐっと握り込んだ]
─── あげる。
飲めば、治癒が早まる。
[握り込んだ掌を広げ、ヴィンセントの方へと持ち上げる。
掌にあったのは、紅色の小さな粒が2つ。
メルヒオルの血を凝縮して固めたものだ]
つぎ、あるでしょ。
やすまなきゃ。
[勝ち負けのことは口にせず、かと言って、頑張れなどという応援も素直には出来ず。
ただ次の舞闘のことを告げて相手を促す。
メルヒオル自身は、もう少しだけ休めば、観覧席に移動するくらいのことは出来るようになるだろう*]
まけ、ちゃった……
[ぽつ、と声が零れ落ちる。
落胆の色はあるものの、強い悔恨などはなく。
呼吸を整えるように長く息を吐き出した]
やっぱり、ぼくは失敗作なのかな。
にせものだから、ほんものには勝てないのかな。
[脳裏に捨てられた時の記憶が甦る*]
なんだ、負けてへこんでるのか?
『汝の願いは勝利のみであったか?』
だいたい、勝てば本物だなんて、そんな単純なものでもねーだろ。
[ 自分を偽物と呼ぶ、メルヒオルの真意を知るわけではない。けれど ]
お前が自分をどう思ってようと、俺を呼んだのは、お前だけ。お前が俺の唯一の「主」だ。忘れんなよ。
…お前と俺も、結局、似た者同士みたいだけどな。
[ ぽつりと、声はどこか切なげに響いた。* ]
……うん。
[ありがとう、と言われて>>*16、上手く言葉にならず、ただ頷くだけになり。
粒が無くなった手をゆっくりと下ろす。
ふ、と短く息を吐いていると、近くにツェーザルがやってきていた>>+14]
ツェーザル。
[動くにはまだ辛い身。
メルヒオルを抱き上げようとする彼に手を伸ばし、彼の服の一部を握り締めた。
そうしてメルヒオルはツェーザルの手で舞台の外へと運ばれて行く*]
……わかんない。
でも、勝てば、”ぼく”というものの証明になったのかな、って。
[問い返された、願いについては首を横に振ったものの。
己というものについての疑念は以前から残ったまま]
ぼくは、竜を人工的に作ろうとして出来たって、言われてて。
作ったひとにしてみれば、出来損ないの失敗作だったんだ。
それで、捨てられて。
しばらくは継ぎ接ぎの獣の姿のまま彷徨って。
ようやくこの姿になれるようになったんだけど、”ぼく”は何のために生きてるのかが、わからなかった。
それを見つけるためにこの闘いに挑んだってのは、言った通りなんだけど。
[そこまで言って、考えるようにしばらく間が空く]
……ぼくが望んだものは、勝ち負けで得られるものじゃないってことは、何となく、分かってた。
ぼくは、”ぼく”である自信が欲しかったんだと思う。
失敗作と捨てられても、ぼくとして生きていく証明。
─── きみを喚んだことで、それはもう得られてたんだ。
[ツェーザルが、忘れるな、と言ってくれた内容こそが、その証明。
メルヒオルを『
人との交流に問題があったが故に抱いていた願いは、全てを受け入れるように接してくれていたツェーザルが既に叶えてくれていたのだ]
― 月の舞台外 ―
[ヴィンセントへと渡した『薬』は無事、彼の竜>>12にも渡った模様。
こちらに黙礼してくる様子を目に留め、柔らかく口端を持ち上げた]
折角の舞台だもん、全力出せるようにしなきゃ。
[その手助けをすることは、勝ち上がった彼らに出来る唯一のことだったから。
素直に出来ぬ応援の代わり、と言ったところだ]
[もう一組からの拍手の音>>6は届いていたが、身体を動かせぬ故に反応する余裕は無かった。
メルヒオル達と入れ代わるかのように舞台に立つ彼ら。
次の闘いで此度の舞闘会の勝者が決まる。
熾烈な戦いが始まるであろうことは、場の雰囲気が物語っていた*]
[身体を動かさずにいれば、治癒は徐々に進んで行く。
ツェーザルに抱えられ移動する間も傷は塞がっていっていたが、胸に受けた深い矢傷が塞がるには時間がかかりそうだった]
[個別領域の草原へと着けば、最初にしたように大木の根元に横たえてもらう。
胸の傷に障らぬよう、仰向けに寝転がってしばしの間治癒に専念した**]
ふうん、だから「竜」の偽物か。
[ メルヒオルが問わず語りに口にした出自を、変わらぬ軽い口調で受け止め、竜は目を細める。 ]
その竜を作ろうとした奴は失敗したのかもしれねえけどさ、お前自身が竜として生まれようとして失敗したわけじゃないんだろ?だったら失敗したのはお前じゃないし、お前は最初から竜の出来損ないじゃなくて、別の生き物だ。
偽物なんかじゃねえよ。
[ ある意味とんでも理論だが、竜は大真面目だ。 ]
出来損ないっていうなら、俺の方がそうかもな。
[ ぼろりと、紅と碧の鱗が、竜の腕から剥げ落ちる。剥げた部分の鱗は再生せず、青白い肌が見えるようになっていた。 ]
さっき、闘ってるうちに、全部思い出したんだ。
俺には、同じ卵から生まれた片割れがいた。
竜としての力はほとんど全部、俺の片割れに備わって、俺はただ、竜郷の片隅で生きてるだけ…
きっと、そう遠くないうちに、力尽きて消えるはずだった。
ある日…いつだったかは、もう思い出せねえくらい前、片割れは舞闘会に召喚され、消滅寸前まで魔力を使い切って、小さな宝石になって戻ってきた。
片割れの記憶と、残った力を封じ込めたそれを俺は取り込んで、それからずっと眠ったまま、消えるはずだった命を繋いでいた。
……お前に呼ばれるまで、一度も目覚めることなく。
メルヒオル…俺は、ずっと、竜郷を出て、自由に空を駆ける事を願ってた。
お前がその願いを叶えてくれたんだ。**
[「竜」の偽物。
その言葉に対して頷きを返す。
出自が原因で竜に劣等感を持つ、と言うことはないのだが、憧れに似たものは抱いていた。
ただそれも、ツェーザルの言葉で「竜」の偽物という意識から、個としての自信に転化されていく]
…うん。
ぼくは、ぼくだ。
ありがと、ツェーザル。
[とんでも理論だったとしても、救いとなる言葉]
ツェーザルが、出来損ない?
[俺の方が、と語り始めるツェーザル。
再生せずに鱗が剥げたままの肌が痛々しい。
その場所を労わるように、そっと手を伸ばす]
……そ、なんだ…。
そんなことがあったんだね。
……そっか、だからもう一人、竜の姿が見えたんだ。
今もツェーザルと一緒にいるから。
[もう一人の声も聞こえたことがある。
今もツェーザルの片割れはツェーザルの中で生きている、そんな気がした]
[初めて聞く、ツェーザルの願い。
自分のことで手一杯で、彼の話を聞けずにここまで来た。
その願いが、叶えられていたと知り、メルヒオルは目を円くする]
ぼくが、きみを召喚したから……。
ぼくが起こして、喚んだから。
ツェーザルは自由に飛べたんだ。
そっか……そうなんだぁ。
[ツェーザルの願いを叶えたのは自分。
その事実が心を温める。
ふわふわしたこの感覚が『嬉しい』という感情であるとは、今は気付かぬまま]
……ね、ツェーザル。
このままこっちに残る気、ある?
ぼくは、”ぼく”であることについては自信を持てた、けど。
生きる意味をまだ見つけてない。
一緒に、探して欲しい。
[舞闘会が終わった後も一緒にいて欲しい、と。
目線だけで見上げるようにして願う*]
― 個別領域 ―
[草原に聳え立つ大木。
その下で寝転がり、休息を取ることしばし。
傷の治癒は進み、重症だった胸の矢傷も内と外の両方から塞がっていく。
完治にはまだ時間がかかるが、動くには支障がない程には傷は治癒していた]
ツェーザル、傷の具合は?
[魔力やメルヒオルの血が必要であれば分け与えようと問いかける。
既に流れた血では治癒の効果はない。
ヴィンセントに渡した時のように凝縮したものならば話は別だが、治癒効果があるのは鮮血の時だけだった。
血を求められるなら、最初に与えた時のように小型化したランスで指先を突く心算*]
見えたのか。ほんとに?
[ もう一人の竜の姿が、と言われて、竜はぱちりと瞬く。 ]
長い間に、もう俺とあいつは殆ど一つに溶け合ってるんだけどな、時々、あいつの記憶に俺が引っ張られたりもするんだ。
[ 口調が変わるのはそんな時なのだと、それも、先刻思い出したばかりだったが ]
姿まで見えたっていうなら、あいつの記憶以外の魂みたいなものも、ちっとは残ってるのかもしれないな。
なんか、ややこしいけどよ。
[ ぼやくように言いながら、竜の紅い瞳には嬉しげな光が灯る。 ]
俺とあいつは、もともと一つだったから、意志も好みも同じなんだ。
あいつもお前を気に入って、姿を見せたいと思っのかもしれねーな。
[ やがてメルヒオルの口にした問いと願い。 ]
いいぜ。
[ それに返る答えは、常のようにあっさりと軽い。 ]
俺たちはほんとに似た者同士だ。
竜郷の隅っこしか知らない俺と、生まれて間もないお前…きっと、世界の事も殆ど何も知らねえ。
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