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― モーザック砦 ―
その辺の雑兵を捕えて聞き出しても構わないけど、
[よく考えるまでもなく、潜入には不向きな面子だ。]
…お前にも何か被せておくべきだったねえ。
[フード3人組というわけである。
危惧の通りに一人の兵士がアイリを見止めた>>155のは、そんな現実的やら暢気やら分からぬ返答を僕>>149に返した直後であった。蒼白になった兵士の叫びは途中で無残にも断ち切られるが。]
あれのことだ。
騒ぎを知れば出て来ようよ。
[探すより呼びつけるのが早いと。
兵らを見殺しにする者ではあるまいと魔は笑って、人ごっこをやめた魔は、闇の刃を辺りに散らした。]
[当初、襲撃者たちを押しとどめんとした兵らは果敢に襲撃者らへと立ち向かい、その果敢な無謀さのツケを己の命で贖った。赤紅が舞う、それに漏れた兵らは魔が自ら闇を振るって刈り取った。
その傍ら、フードを被った女は夢の中にあるかの如く佇んでいる。]
確かにここでは、あまり面白くもない。
[そう返したのは、廊下などという狭苦しい空間が、魔の美意識をあまり良い方向に刺激しなかったためである。結局のところ、三者三様の意図が合致する形となった。
足元に死体が転がれば、それは魔の手によって屍兵とされる。
つい先ほどまでの人間がアンデッドとなり、次は己もそうされるのやも知れないのだ。その脅威というより不気味さに少し兵が引く。
いや、それもまた計算の裡だったか。
戦いの場は次第に演習場へと向かっていた。]
― モーザック砦・演習場 ―
[演習場へと入れば、”目当て”が現れるのも時間の問題か。
無論現れずば、死体と屍兵が増えていくばかりである。]
「ひ…!やめろ!!」
[事実、幾つかの場所では「出来立て」の屍兵と兵の無残な戦いが起きていた。砦には聖水の用意もある>>157
故に被害が広がりすぎるということはなかったが、それでも砦の外の魔軍の侵攻まで始まってきてしまえば、未だ砦に戦火至らずとはいえ、兵らの浮足立つも無理はなかった。]
──── 飽きたな。
[いい加減、雑魚で遊ぶのも飽きた。
魔は手近な負傷兵へと手を伸ばす。
逃げようと足掻いた兵は、空しく魔の手に捕らえられた。]
ヨセフはどこだい?連れておいでよ。
それとも…お前も屍兵になって案内するかい?
[多少手間だが精神支配でもしてやろうか。やっぱり手軽な屍兵では知性が失われて仕方がない。
そこまで小物を手に思考してると、兵が狂った。恐怖のあまりに意味の分からないことを叫び散らし、遂には白目を剥いた兵を興味なさげに放り出しながら、魔は些か不機嫌に*口を結んだ*]
やっと出てきたか。
もう飽きて全部壊そうかと思い始めていたところだよ。
[あながち冗談でもない風で、魔は漸く姿を現したヨセフに笑顔を見せた。
そのついでに、何を勘違いしたのだか、勇敢にも飛び掛かって来た兵士の亡骸をぽいと別の兵士めがけて投げ捨てる。屍はうぞりと起き上がる風を見せたが、それはすぐに聖別された剣を持った別の兵士によって鎮められた。
嫌悪と怒りの視線を事も無げに受け、魔は獲物へと笑う。]
目的?ふ、ふふふ。
ロー・シェンの出来を披露しに!……なんてね?
まあ、まだ連れてきてはいないんだけど。
あれはやっぱり、素晴らしい素材だよ。
仕上がったら是非とも諸君にお目にかけよう。
お前たちもどうだい?
頭と仰いだ人間が、お前たちを殺しに来るなんて素敵だろう?
その時はきちんとお前たちにも見せてやろうねえ。
[言葉の後半は砦の兵士に向けてだ。
わざとらしく嫌味たらしく、魔は兵たちを見回した。]
今日はちょっと材料が足りなくなって、その補充にね。
そりゃあ、お前たちの皇子さまだ。
あんまり不細工な加工をするわけにはいかないだろう?
… ああ、ヨセフ。これが気になるかい?
そうそう、───ほら。
行っておいで。
お前が会いたがっていた”ヨセフ様”だよ。
[ヨセフの視線の先を追って、魔はフードを被った女へと顔を向けた。そのフードを手で取り払ってやる。
その下から出てくるのは、青褪めた女の顔、ただ他のアンデッドよりは美しい──…温かみさえあれば生きているかと思わせられる、死人形である。
ただ、その肌は冷たく血の色はない。死人の色だ。]
[女は、放たれればふらりと夢遊病患者の如くに歩き始めた。
足取りはふわりふわりと、ただそれはこれまでのアンデッドとはやや様子が異なる様子で、何か呟きながらヨセフへと向かう。
傍に寄れば彼は聞くだろう。家族の名を呼ぶ、妻の声を。]
どうだい?
”そのままの形で会えるように”と願われたんだ、
それをきちんと叶えてやったんだ。優しいだろう?
[それが誰の願いかは言わず]
こないだのアレは気に入って貰えなかったようだからねえ。
受け取っておくれ───、君の妻だ。
[女は、ゆっくりと歩みながら抱擁を求めるように支えを求めるように、両の腕を彼へ差し伸べている。
彼か彼の傍らの副官がそれを脅威と見做せば、女はあっさりと斬られるだろう。ただ、女はその手に何も持ってはいない。
魔は、今はもう心底楽しそうな表情で親切めかした口をきき、死した女とヨセフとを眺めていた。*]
…… へえ?
[女が、そのままヨセフのところへ行くのに、魔は少しばかり驚いたような顔をした。あのまま男の首でも締めるのだろうと思っていたのに、まさか抱き寄せられようとは。]
思ったより悪くない出来だったかな?
[そんな独り言を落とし、首傾ける。
もっとも、そんな暇はなかったわけだが。]
おっと。気の短い男だな。
もう立ち直ったのかい?
[ふざけたような口調のまま、男の剣をかわさんと身を翻す。
時同じくして殺到して来る刃は、僕がここには至らせまい。]
お前も同じく並べてやろうというのに。
[やはり勝手を並べて返す手には、先日と同じく漆黒の刃が握られている。それを刃合わせて切り返すようにして振り抜いた。
大きく動けば、ざわと背後から微かに魔力が零れ落ちる。
やはり塞がるには少しばかり時がかかる。構わず笑った。//]
― モンテリー砦・演習場 ―
増えやしないよ。お前が大人しく来るならね。
約束したっていいよ?
[からかう口調で続ける。魔は、息を切らすことがない。だから動きながらも舌は止まらない。
弾いた刃は、そのまま回転するようにして戻って来た。
驚くべき力、そして技量の高さだ。面白そうにそれを観察していたが、その速度に避けきれぬと知ると、魔はやはりそれを受け止めんとする挙に出た。今度は腕ではない。刃に闇を凝らせ、大剣をその場に留めようというのだ。]
お前にまで──…
使いたくはなかったが。
[そうして、少し動きが止まればその場に放り投げられるのは黒い魔石。ロー・シェンの時と同じく、術を仕掛けて捕らえんというのだ。]
…… 闇に蠢く 歪なる者どもよ
[詠唱に入れば刃を振るうまでの暇はない。
これを使いたくなかったのは本心から、流石に今、この大規模な術を連続して行使するのは魔将の身にも負担が大きいのだ。
それでも敢えて手を打つのは、それだけ目前の獲物を認めた証。
ざわりと魔の気配が濃くなる。それを、ただ人の子なれば魔の術の為にと思うであろう。光の子の裂いた傷跡の、そこより漏れる魔の命と知らずに*]
[続けざま放たれるローキックを交わさんと、身体を引く。
ぞわりと、魔の気配はまた濃くなる…けれど。
…ず。と、大剣は闇の枷から外れ出る。
一連の、ほんの短い間の出来事だった。*]
[呪が途切れてしまったのは計算外だ。
これではまた最初からやり直しになるではないか。
舌打ちする思いで身体を引く。
この男は、あのロー・シェンとはまた違う小技を使う。
良く鍛えられた正当な戦士の技だ。
気迫と共に大剣が振り下ろされる。
それを再び受け止めんと翳した腕を───]
… な、 に ?
[ず。と貫いて、刃は魔を切り裂き下へと落ちた。]
[信じがたい。そんな表情で己の身体を魔は見下ろす。
常には身体をすぐ再構成するはずの闇が、薄くなっている。
魔力が散って、身を保つのに追い付いていない。
不意に、背から零れ落ちる魔力を意識した。
目前の獲物をそっちのけで、振り返る。
あの男に…ロー・シェンにつけられた傷だ。
些細なことと見縊っていた。まさか、これが原因か。]
─────── は
は、ははははは … 面白い
面白いじゃないか 人間
面白いぞ。人間風情が────…
我を … … 破る か
[魔の身体は、今やもう目に見えて崩れ始めている。
傷口は黒くくすんで、そこからぼろぼろと形を失い始めていた。
だが魔は顔に笑みを貼り付け、赤い瞳は爛々と輝いている。]
良かろう───…
よか ろう、ヨセフ
モンテリーの王族 ヨセフ
そして、レオヴィルのロー・シェン
闇の記憶に その名 ……残そう ぞ
────は。はーーーははははははははは!!!!
ヨセフ
貴様が──…闇に 堕ち来る日を
… 楽しみニ
待ッテ ………
[にやりと赤い双眸が、ヨセフその人のみを映し歪む。
そうして、耐えかねたように遂にそれすらも崩れ落ちる。
闇が砕けて広がれば、そこに残る形は何もなかった。
ただ。膨大な魔力が砕け散る様は、その”死”は死を喰らう魔法要塞には知れたろうけど。]
[魔が──魔将シメオン=カザエル・ユートエニアムが”死”を迎えた、その直後。その魔力により保たれていたものは破壊の時を迎えた。
即ち、アイリ・ファタリテートの首枷。
そしてロー・シェン・アウルム・ド・レオヴィルの胸の楔。
更には、座した一人の死人形まで。
漆黒の魔石はどちらも一瞬にして熱を帯び、その次の瞬間砕けて散った。それと同時に、彼らを縛る魔力もまた消え失せる。
支配の霧が晴れれば、彼らの精神に残る傷もありはすまい。
ただ。死しても証残すように、彼らの首元と胸元には、それぞれ黒い魔の痕跡が刻まれ*残った*]
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