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純血種 アプサラスは、野茨公 ギィ を投票先に選びました。
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ここまでいぢわるお母さんが動揺するとは思わなかったわ……言葉が出て来なくなってる。
シメオン怪我してないのに。
そうか、怪我してないからだわ。
怪我してたら心配してる事を気づかれて、何か色々考えさせそうだから平然としてる。
……まさかのここでデレ。まさかの。
[主の気が息子へと逸れ、監視からも外れれば、蝶はするりと進路を転じる。
燐粉で探知の印を城内に撒き終えた後は、ふわりと気紛れに飛び続けていたが、俄かに羽ばたきを強めて真っ直ぐ何処かへ]
[やがて辿り着いたのは、地下礼拝堂。
迷わず金髪の男を目指し蝶は舞い、その右腕に翅を休めようとする]
……、勿論、覚えておりましたの。
[本当なのですよ?と付け足す声は少しきまり悪そうに。
覚えていたのは事実だが、さっきは頭から抜け落ちていた。
嬉しげに細める彼の瞳に、こちらも自然と頬が綻ぶ。
けれど、心配しないよう言い含められれば]
……そう、仰いましても。
心配なのは、心配なのですもの…
[いつもなら、食い下がりはしないだろうに。何処か子供染みた反応を返して、余裕のある笑みにまた少し眉を寄せ]
お会いしたばかりですが、お優しい方なのはすぐ分かりましたので、
……お友達のような気になっていたのかも知れません。
[爆発の少し前。漸く平静を取り戻しつつあった術者は、完全に遮断していた蝶との感覚の糸を手繰る。
伝わるのは、無意識に縁を繋いだ男の気が少し弱まっているのと、彼に迫る同族の気配。
常は余裕を漂わせる曲者めいた男が、静かな憤りを湛えている。
軽やかに優美に戦う城主と彼の戦いでは感じなかった、恐れに近い感覚が肌を擦れ]
…………、
[月夜の宴主の名前くらいは、あの場にいるだけでも直ぐ知れた。
だから本当は、あの時名前を呼んで、どんな顔をするのか見る事もできたのだ。
初めてその名を口にしたのは、傍にいない今になって。
次に顔を合わせても、その名を呼ぶことなどないのだろう]
[どこかへ気を逸らしていた女は、ジークムントの声で漸く事に気づいた。
粉が爆ぜ炎が揺らめいてみえたのは、ジークムントの、そしてシメオンの背の後ろから]
――……、シメオン…
[ああ、やはりと微かに泣きそうな顔を浮かべ、その名を口内で呟く。
ジークムントの声に痛みが混ざった気がして]
――…私、は大丈夫…ですが…
貴方は、ジークムント…っ?
[蝶が届けた、戦いの隙間に紡がれた男の声。
優しい声音は、「気になる人」に向けられるものなのだろう。
二回目の約束が果たされなかったのは、自分があの晩行かなかっただけではなく。彼も其処には居なかった故。だから、自分の筈はない]
……加護も、祝福も。
あげられないの。
私じゃ、あげられないのよ。……何も。
[――そう思うのに、戦いの中で彼が求めた物を持ち合わせないのが何故か悔しくて、視界がゆらりと霞んだ。
他の生とはどんなものだろう、そう思いを馳せる事はあっても、魔として生まれた身を悔やんだことはないのに。
男の指先に誘われた蝶は、花と見紛うたように翅を閉じて暫し留まり、やがて高く舞い上がった*]
[ジークムントの唇が幾つも紡ぐ、美しくて優しい気遣い。
何処か慣れないのに、真摯な声が何度も自分を労わる]
……ジーク、あの……、
[困り果てたように騎士を窺い、言い差した言葉を飲み込んだ。
血を吸わせようとする息子とのやりとりを聞けば]
……あの、もしも気にされなければ、だけど。
私の血でも、構わないと思うのだけど…?
[躊躇いがちに囁いたのは、何処となく気恥かしく。
彼なら断るだろうと思えど、何か差し出せるのならと]
[ジークムントの愛称を呼んだ事へ指摘を受ければ、そろりと口元を手で押さえ>>98]
……あ、ごめんなさい…
そう仰って下さるなら、いいのだけど…
[――取り繕ってきたものが、ここまで脆くなるとは思っていなかった。
何時もの自分なら言わないことばかり、この唇は零し続けている。
息子に刃を向けられようと、幾らでも笑える自信はあった。事実そうしてきたし、彼に何かあった時の自分も、想像はしていた。
まさか、こんなに動揺するとは思わなかったのに。
思いもかけなかった再会が、すぐそこにある事も、惑う心を揺らがせるばかりで。
妬かれると窘められれば、目を丸く見開いて]
……え?
どうしてギィ様が…ああ、私に対してなら妬きそうね。
この子が妬く訳ないでしょう、そんなこと。
もし妬く人が、いるなら――……
[一瞬浮かんだ、顔もよく知らぬ男。
打ち消したばかりなのに、何故そんな事を考えたのかと緩く首を振り]
……ギィ様に悪いから、止めておきましょうか。
何かお返しできればと思ったの、
もしうちの息子で足りないようなら、その時改めて?
― 少し前・二階個室 ―
[ジークムントが部屋を辞す前にと、口を開いて]
――ごめんなさい、ジーク。
せっかく貴方が、塔まで送り届けて下さったのに。
不用意に出てきてしまって。
……助けて下さって、本当にどうも有難う。
[柔らかな視線の先には、銀髪の騎士。
心からの感謝が向かうは、黒衣の青年にも]
― 少し前・二階個室 ―
[ジークムントが武器庫へと向かうのを見届けてから、密やかに息を整え、唇を引き結ぶ。
避けたかった事態を自ら招いた自分に、内心毒づきながら。
庇ってくれる彼らの傍には、事が差し迫らない限りは、近づく心算はなかったのに。
護るべき存在の前で、ジークムントやギィのように、強く振る舞える者も居る。
護りたいものに面して、理を見失う者もある。
――己がどちらに属するのかは、二年前に思い知ったというのに。
望まぬ種を揺り起し、自ら枯れぬよう、目の届く所にいるよう、呪で縛ってまで掌中で育む程に]
[また一つ、零したことを悔いる種に思いを馳せる。
――どうか、城に棲まう闇を隈なく照らすより、相容れぬものと行き過ぎてはくれないだろうか。
聖将としての意志に満ちた声を聞けば、叶うまいと悟りながらも。
唯それだけを願わずにはいられない。
呪の種を宿した男と、二度目の約束を果たす時が訪れるなら。
禍根を巡らせ、身中深く蝕み――
手ずから摘み取るほか、選べなくなる。
赤い水と灰を苗床に、実を結ぶ花はないと知るから]
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