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[ 情報確認が済めば、偵察兵は下がらせる。
せっかく目端の利くやつだと名前を覚えたというのに、失明したのでは兵としてはもう使えない。
除隊したら、圧搾車を延々と回す馬のような仕事しかないだろう。
残念だが、それが彼の運命だ。
他に道は──]
…ああ、魔法で人助けをしたいと言ってた少女がいました。
[ 澄んだ眼差しで、将来の夢を語っていたフレデリカ。
リヒャルトの仲良しさん。]
ならば、あのコを捕まえてきて、魔法で、彼の目を治してもらいましょうか。
[ 恬淡と構想を練る。]
できないというなら、やっぱり魔法なんて無駄だから、彼女の目を潰してやります。
[ 偽物の高級グラスを塔に向かって投げ割った。*]
― 幼年時代のこと (ファミル編) ―
[ 高熱を出して寝込んだのは、ちょうど物心がつくころで、だからそれは、誰かに聞かされたのではないドロシーの最初の記憶だ。
昼も夜もわからない場所で、ずっと寝かされていた。
そのうち、すごく息苦しくなって、頭が痺れるみたいになって、でも、そのまま沈むことはできなかった。
必死で起き出すと、誰かいた。子供だ。
とても静かで、吸い寄せられるような目をしていた。]
──ぁ… きれい
[ お迎えに来た天国の人かもと思ったけれど、彼の血を飲めば元気になると言われて、傷口に口付ける。
熱を帯びた体に、それは温かいのに清涼感をもたらした。]
これなら、もっと飲めます。
[ 音をたてずにそっと啜って、舐めていたら、世界が違ってみえてきた。
力が溢れてくる。
それはどこか、借りてきたような覚束なさはあったけれど、微笑むのも楽になった。]
うん、 もう負けたりしません。
[ 彼の左手首にリボンを巻いて、その手を握って、穏やかな眠りに落ちたのだった。]
[ 目覚めたら彼はいなくなっていた。
不思議なのは、それから時々、彼の声が聞こえてきたことだ。
でも、話しかけても返事はなくて、こちらの声は聞こえていないのではないかと思った。
どうして──?
幼いなりに考えて、至った答えは、]
私の血をウルにして、彼に飲ませればいい…!
[ 一途な思い込みから、毎日、欠かさずウルを摂取するようにしたのだった。*]
教官は、私が何をしようと、皇帝の決めたことだから、自分には変えられないと言いました。
だから、私は皇帝に決闘を申し入れましたが、皇帝に「おまえは子供だから、代理決闘人を立てなさい」と言われました。
[ じっとレオンハルトを見る。
よもやの皇帝が相手である。
ちなみに、件の教官は皇子をしっかり監督できなかった上に、不意打ちで敗れるとは不覚悟であるとして処刑されていた。]
[ もうひとりの探し人については、具体的に特徴を問われれば、]
私と似たような金髪で、男の子の格好をしていました。
格好いい目をしていて、体はウルでできています。
[ 一生懸命に説明をするのだった。*]
― 宴の後 ―
[ ファミルの呼びかけに応えて天幕を訪れる。
入り口には衛兵がいたが、ドロシーを止めることはない。
中に入れば、敷物に寛ぐファミルの姿が見えた。]
これで、タンドゥアイの主だった都市はすべて帝国のものとなったわけですけど、
祭りの後は舵取りが難しいところですね。
[ 傍に行って、ドロシーも膝を崩して座る。
話をしながら、ファミルの喉元に手を伸ばして、ボタンを外す構え。*]
― 宴の後 ―
私は魔法のない世界で、可愛い格好をして、あなたに褒められれば、他にはいらないですよ。
[ ファミルの真似をして言う。]
でも、そのどれかひとつでも欠けたら嫌です。
[ 払い除けようとする手を包み込み、声音を改める。]
さっき、私に指輪を渡す際、「魔法が掛かっているかも」と言いましたね。
直近で、呪力を受けるようなことがあったんでしょう?
だから、警告した、違いますか。
[ 問うてはいるけれど、自分で確認するまで納得しないつもりも露わに、ファミルがさっき手をやっていた胸元をはだけにかかる。*]
[ ファミルの胸元には、きっちりと包帯が巻かれている。
ちゃんと手当てを受けた──というよりは傷を隠すのが目的に思われた。
手間を惜しんで、手で引きちぎる。
その先に見たものに、キッと目を細めた。]
…施術者は、死んだのですよね。
[ 術者がもうこの世にいないならば、当人に解かせることはできない。
どんな呪いかすら判別がつかない。]
あなたにこんな醜いものを与えるなんて。
[ 抉って消せるものならとばかりに、指先を震わせた。*]
これは怒って当然なんです。
[ ファミルが口にした受傷の原因も解呪の方法も、納得できるものではなかったが
彼が宥めようとしている、そのことだけはわかる。
だがら、落ち着かなくてはならないのだろう。]
…とりあえず、私の血を飲んでください。
[ 唇を噛みながら手首を差し出し、太腿のナイフベルトから刃を引き出す。*]
[ ファミルが血を飲むのを見守る。
ウルで満たされた血は元気のもとだと幼いドロシーに教えたのは彼だ。
今もそれを信じている。
押さえてくれた切り口をちぎれた包帯で結んで止血し、小さく頷いた。]
この程度でヘタったりしたら、最強皇帝の名が泣きますからね!
[ あえてツンケンと言って、それから、覆いかぶさるようにしてファミルを抱擁する。]
これ以上は文句も泣き言も言いません。
…私には、隠しても意味がないってことだけ、覚えておいてください。
あなたは大樹、私は花。
まったく別物に見えて、繋がっているんですから。
[ 「おまえの喜んでいるこえを聞きたい」などとファミルが言う相手は自分しかいないと感覚的に知っている。
どこか、ひとの喜怒哀楽に無頓着なところのある彼だ。
それは、人が虫の感情を汲まないのと似たようなものかもしれない。]
望まれて光栄です。
たくさん、聞かせあげます。
[ 背中にファミルの掌の熱を感じて、目を閉じる。*]
[ もう一方の尋人にも、心当たりがなくはないとレオンハルトが言うのを聞いて、膝をそわそわさせる。]
会いたいです。
みつけたら、私は幼年兵学校にいるから、会いに来てって伝えてください。
あ、何か、証になるもの──
[ 件の教官を絞扼するのにも使ったリボンを取り出すと、指先をナイフで突いて出した血の滴で、自らのイニシャルを綴る。]
これを、渡してください。*
― 宴の翌朝 ―
[ レオンハルトを送り出すファミルからそう遠くない位置に、ドロシーは立っていた。
今日の服装は、群青のコルセットドレスだ。
持ち上げる胸はないから、その辺は黒いマラボーでカバーしてある。
ブーツは艶出し加工のオーバーニー。
今日も精一杯、ドレスアップしていた。]
将軍、
デメララで、いい金属加工商人を見繕っておいてください。
加工してもらいたいアクセサリーがあります。
[ 子供の頃と変わらず、そんな私事を託して、先行するレオンハルトを送り出すのだった。*]
― 宴の翌朝 ―
陛下、
今後のことについて、素敵なことを思いつきました。
ロンリコ平定を記念して、マンダレーで武闘大会を開催しましょう。
古代王国でも、皆が剣闘大会を喜んだそうです。
一方で、参加する者にとっては、優秀な成績をあげて陛下の目に留まるという戦意向上にもなるでしょう。
そして、
大会の前座で、奴隷魔術士と狼の群れを戦わせるというのはいかが。*
[ 悪戯の相談をするような調子で、ファミルと話す。]
陛下が、ご自身の手で魔術士を狩りたいのは充分わかっていますとも。
そうですね、開催の許可をいただければ、私が大会の準備は整えましょう。
前座そのものもですが、この余興、魔術士が前座に出るとの情報を流し、残党が奪還に動く可能性を折込み済みです。
そのためにも、連中が、是非とも助け出したいと考えるような人物を、山狩りで捕まえて来て欲しいです。
[ そんな注文をつけた。]
ありがとうございます。
[ 計画の許可をもらい、晴れやかに微笑む。]
参戦者の選別に、猛獣の調達に、宣伝に──やることは多いですね。
新しいドレスも作らせなくては。
さあ、マンダレーに帰りましょう。
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