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[ 概ね、残り火を消し止めたと判断すると、男と騎竜は地上へと舞い降りた。 ]
この先に、殴るべき相手がいるということですか。
[ 守護者の纏う黒衣の色を思わせる漆黒の闇を、男は一瞬、険しい目で睨みつけ、ふ、と息を吐いて、先への備えを説く王へと>>185向き直る。 ]
陛下も、できる限り御休息ください。
まさか後ろに居れば、いくら消耗しても叱られないなどと思ってはおられないでしょうが。
[ ちょっとジト目だ。* ]
成る程、さすがは守護者殿ですね。
[ もう叱られている、という王の言葉に>>195小さく笑う。 ]
...あちらはあちらで、相変わらずですが。
[ 軽い調子で、闇の中へ踏み込んでいくヴェルナーには>>191人を叱っておいて、それか?と思わぬでもなかったが、一応断りを入れただけは進歩なのかと、無理やり納得しておいた。* ]
ジル殿も立て続けの大技、お疲れでしょう。無理はしないでください。
[ 何より、彼女の術はこの先も大きな頼りだから、と、声をかけたところで、抱きつくミーネの姿に>>196目を丸くする。 ]
ホーラン殿は、いつも元気ですねえ。
[ 心和んで呟いてから、そうだ、と、声をあげた。 ]
ホーラン殿、アッカーマン殿の様子を見てあげておいてくれますか?
彼の戦い方は、怪我も火傷も厭わぬ勢いなので、王の癒しの風だけでは足りないかもしれませんから。
[ 皆、実力があるのはいいけれど、無茶する率も高くて困ります、と、零して、男は、眉を下げ、ため息をついた。* ]
うん、ダーフィト殿の事です。
[ ミーネの様子に頷きながら>>213そういえば、彼は名で呼ばれる方を好みそうだな、と、思い至る。 ]
(まあ、師団長に会わせてしまえば、愛称までつけられそうですが)
[ ちなみに、男自身は副師団長になるまで「坊主」呼びだった。ダーフィトには、まさかそんな愛称はつけられないだろうが。 ]
ん?私ですか?
[ そんなことを考えていたら、了承と一緒にミーネに確認の言葉をかけられて首を傾げ。そういえば、守護者とのやりとりはしっかり見られていたのだな、と、改めて気恥ずかしくなった。 ]
私は、守護者殿に治療してもらったので大丈夫です。
先刻、働いたのは、主にシン...騎竜だけですしね。気遣いありがとうございます。
[ 事実、新たな怪我などは負っていなかったから、そう答えて笑みを見せる。 ]
[やがて、戻ってきたヴェルナーが、先に待つ者の「厄介」さを告げ、力有る言霊により、黒狼神の信が預けられた。>>209 ]
御信頼いただき、光栄至極、と、言うべきですか?
[ 軽い口調に、やはり軽く返しながら、男は一度、真っ直ぐにヴェルナーの瞳を見つめ、騎竜と共に転移門へと足を進めた。 ]
― 神域最深部 ―
[ 古く深い、闇の凝る場所。最初に受けたのはそんな印象だった。 ]
純粋なる魔、ですか。
[ ヴェルナーの説明に頷き>>212飛ぶだけの広さはありそうだと、騎竜の背に昇る。闇の咆哮が響いたのは、その時だ。 ]
......まさに、黒焔狼の分身、ですね。
[ 闇から生まれた狼達からは、門で遭遇した黒狼よりも濃い闇と魔の力が感じられる。 ]
は...
[ 小さく息を吐きながら、ぎゅ、と一度拳を握り、緩めてから、男は騎竜と共に中空へと身を運んだ。 ]
[ 狼の爪を躱し、今度はその喉首へと矢を放つ。 ]
これでふたつ。
[ 闇に消える瞬間、瘴気めいた気配が、男の前に散ったが、王よりの風と光の守護の前に消え去っていった。>>217 ]
これでは殴り甲斐がありませんね。
[ まだこれは前哨戦に過ぎないと、知った上で、敢えて広言した男の前方から、闇色の火の玉が飛んでくる。 ]
シンっ!
[ 避ければ後ろの王や、他の仲間に向かうかもしれぬと、騎竜のブレスでの相殺を試みる、 ]
[ 霧氷のブレスは、火の玉とそれを吐いた狼までも飲み込んで粉砕し、後には、煌めく霧だけが残る。 ]
...いや、それにしても、調子が良過ぎませんか?
[ ヴェルナーの言霊を受け取った時に、何かが騎竜にも影響を与えたのは判ったが、自分への影響よりも、さらに極端な気がする、と、呟けば、クルルル、と上機嫌な相棒の声が返った。** ]
[ ここが神域であるからには、元々は清浄な空間であったのだろうと思うけれど、今の様子は闇の渦巻く混沌の場だ。
けれど、その混沌に飲まれぬ意思が光と風に包まれて闇を切り裂き、討ち払っていく。 ]
いい加減に、終わりにしてもらえませんかね。
[ 男が視線を向けるのは、祭壇に蹲る闇の塊。しかし、そちらに意識を向けただけで、敵意を剥き出しにした黒狼が、騎竜の羽根目掛けて飛びかかってくる。 ]
シン!
...まあ、あちらも同じことを思っているのでしょうけど。
[ それでも、ここは押し通る。騎竜師の意思に応えて白銀の竜が、力強く羽ばたいた。 ]
…気合が入りすぎましたかね?
[ 微妙に急所を外した矢に、苦笑が漏れたが、騎竜師の手ぬかりは、相棒のブレスがしっかりとフォローしてくれた。** ]
[ 翠の風が、闇の狼を文字通り吹き散らす。>>276 ]
さすがです、が、また無理をされていないでしょうね?
[ 少しだけ闇が薄れた気のする空間で息を吐きながら、男は案じる顔で、王の様子を伺った。* ]
[ 王の言葉を聞いた騎竜師は>>286黒と白の剣が、瘴気を集め、喰らっていくのに、ちらりと視線を向け>>284、周囲の闇の狼がほぼ片付いているのを確かめると、ふわりと、王の前に降りた。 ]
守護者殿の護りは確かかもしれませんが、飲まれそうに成る程、お辛いなら「大丈夫」ではないですよ。
[ 無二の存在であり、国という大きな責を負った王の気持ちが判るとは言わない。けれど、13年前、失ったものの大きさに押しつぶされそうになった、その想いの一端だけは重なるはずだと思うから。 ]
...陛下、ここが片付いたら、北部師団の砦に、一度おいでください。
陛下を乗せて飛ぶことができたら、シンが喜びます。
師団長も、泣いて喜ぶでしょうしね。
[ 風の魂を持つ若き主君の心が少しでも、自由になればいいと、願う男の心に沿うように、騎竜がクルルル、と、優しい声で鳴いて、王の頭に首をすり寄せた。* ]
陛下がせっかく成人されたのに、共に飲む機会が無い、と残念そうにしていましたから、酔っ払いに絡まれる事にもなりそうですけどね。
[ 笑う王に、冗談めかして告げてから、紡がれた感謝に、>>294男は、静かな一礼を返した。* ]
[ やがて黒衣の守護者の声が、再び響く。>>295 ]
抑えながら鎮める準備ですか...あちらも、また無茶を......と、言っても仕方ありませんね。
[ それこそ、彼にしか為せぬことなのだろうとは、理解できる。
相変わらずの気軽さで、先んじて駆け出したダーフィトの背を見やり>>300、男は騎竜の背に戻った。 ]
では、行って参ります。陛下。
[ それは、信じて皆の帰りを待って欲しいという言霊。だからといって何もせず、ただ待つ王ではないだろう。
けれど、皆の帰り着く場所は、きっと貴方の元なのだ、との、思いを込めて、男は微笑み、中空へと羽ばたく。 ]
......やはり、並ではありませんね。
[ 巨狼の正面、まだ距離はあるが、その瞳を捉える位置まで舞い上がると、男は感じる圧に、こくりと喉を鳴らした。
あれを、人の身が滅することは出来ない...本能がそう告げる。 ]
...時間を稼ぐなら、今度は。
[ ぐ、と、拳を握りしめ、男は騎竜と共に巨狼の頭上へと飛んだ。 ]
シン、歌って。
[ ぐるぐると、巨狼の気を散らすように旋回しながら、白銀の竜は、これまでの鳴き声とは違う、高く澄んだ声で歌い始めた。 ]
『ru...rururu...ruru』
[ その歌声に応じて、竜の纏う白く冷たい霧氷が波打つように広がり、巨狼の視界を妨げんとする。 ]
ほら、こっちだ!
[ 高度を変えながら、頭に向けて矢を放てば、致命の傷は与えられずとも、気をひくことは出来るだろう。** ]
[ 竜の歌によって広がる霧氷は、竜の感覚器の一部と言っていいもので、その背に在る騎竜師とも繋がっている。
そのため、視界を霧氷が閉ざしても、竜と騎竜師が目標を誤ることは無かった。 ]
あちらは、ジル殿に任せておけば安心だな。
[ 彼女が王の側に控えた>>314と知れば、そちらへ向けていた気を、眼前の巨狼と、挑み掛かる仲間たちに集中する事にした。
王の結界に守られ、力を高められて、イングリッドの矢と、ミーネの操る大剣が、巨狼を襲い、ダーフィトの槍と剣が、更に肉迫する。>>316 ]
相変わらず、ダーフィト殿も、かなりの無茶だな。
[ 男自身を含め、ある程度は距離を取って戦っている他の四人と比べ、巨狼の爪を掻い潜るような戦い方には、背筋が寒くなるような心地がする。 ]
シン、ダーフィト殿の方に寄っていて。
[ いよいよ危ないとなれば、直接救援に入ろうと、騎竜に指示した途端、そのダーフィトの鋭い声が響く>>318 ]
精霊術...?いや、魔道具か?!
[ 直後に巨狼を撃った雷光と、絡みつく蔦に男は目を丸くして、それから、くっと喉を鳴らして笑った。 ]
......これはますます、他国には渡せなくなりましたね。
[ むしろ、あの腕の上に、あんな規格外の道具を持つと知れたら、場合によっては、危険視され、他に渡すくらいなら消してしまえと判断されてもおかしく無い。
...という、自覚が、彼自身にはあるのかどうか。
変わらぬ軽い調子で巨狼の背に剣を突き立てる様からは>>326まるで読めないが。]
ダーフィト殿!
[ 巨狼の背から炎が噴き上がると同時に、飛び降りたダーフィトに向かって>>327騎竜は滑空する。 ]
大丈夫ですか?!
[ どう見ても、火傷のひとつやふたつ増やしていてもおかしくない。そんなタイミングに見えたから、案ずる声を投げた。* ]
ギリギリ、ですか?
[ 笑うダーフィトの様子に、本当に大怪我はしていないようだと、安堵しつつも>>338男は、呆れたような目を向けた。 ]
あなたの「大丈夫」も、少々当てにならない気がしますね。
[ 言葉と同時に、竜の纏う霧氷の一部が、ダーフィトの方へと流れ、火傷があれば、その部分を冷やすように包み込む。 ]
軽傷であっても甘く見るのは厳禁です。あとでちゃんと治療してください。
[ なんだか、先刻どこかの守護者に似たようなことを言われた気がするが、棚にあげておいた。* ]
[ ダーフィトの声に応じたヴェルナーが、双剣を収め、動きを止めた巨狼の元へと跳ぶ。 ]
あれが...黒狼神の、真体、ですか。
[ やがて現れた、紅い光をまとう、漆黒の狼>>343...ここまでに遭遇した黒狼とも、闇の巨狼とも違う、圧倒的な気配に息を呑む。 ]
[ 初めてヴェルナーに会った時に感じた、身の竦むような恐れは、この強大で、深い深淵を体現したような存在に対するものだったのか、と、知らず、拳を握りしめたが ]
...そ、う、ですね...
[ すぐ側で、何の恐れも感じさせぬ声が紡いだ言葉に>>347ふ、と、力が抜けた。 ]
ええ、綺麗です。
[ 闇の狼を喰らい尽くした、その姿は、美しい闇の焔そのものだ、と、男は頷いて、じっと、その姿を見つめた。 ]
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