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[ 先の見えぬ霧の中、白を纏う騎士は、早足で歩き続けていた ]
ヒルデが居てくれりゃ早いんだがなあ。
[ 愛馬が恋しくなるのは、基本騎兵である男としては致し方のないところだ ]
ん...?
[ ふいに、霧の一部が不自然に揺れた、と感じて、足を止める ]
[ 見知らぬ場所で油断無く構えていたから、反応は早かった。
霧の中から飛びかかってきた、真っ黒なコウモリと猿の間の子めいた異形の夢魔は、腰からの抜き打ち気味に、横凪ぎに払ったクレイモアの刃に真っ二つに斬り伏せられて、一瞬のうちに霧散する ]
時々嫌な気配がすると思ったら、やっぱりかよ...
[ 襲ってきた異形が何なのかは、男には判らない。けれど、ここに危険な存在が潜んでいるということが確信されれば、焦りは増した ]
ファミーユ...
[ 霧の向こうを睨み、案ずるその人の名を口にして、再び足を速める* ]
ん?
[ 霧の向こう、複数の気配を感じて、男は足を止める ]
人の気配、だな...
[ とりあえず近い方へと足を向け、歩みを進めると、小さな龍を肩に乗せた男と、どこか貴族然とした佇まいの男の姿が見えてくる>>*103 ]
すまない...つかぬことを窺うが、ここがどこだか御存知ないだろうか?
[ 相手の素性を詮索するよりも先に、とりあえずの疑問を投げかけてみる ]
申し遅れた、俺はジークムント・アルフィン。サイプレス王国の者だ。
[ 近付けば、相手が同国者ではないことは軍服から判断できたので、そう名乗った* ]
ユウレン水軍...シンシャ王国の王子...
[ 返された名乗りを反芻して、ぱちりと瞬く。相手もこちらの名乗る国名に驚いたようだから、この辺りはあいこといったところか ]
これは...失礼しました。知らぬ事とはいえ、ご無礼をお許し願いたい。
[ とはいえ、相手が他国の王族となれば、礼を失するのはまずい、と謝罪を告げ、一礼する ]
[ 続いてカナンが口にする夢の世界や夢幻竜といった、荒唐無稽にも聞こえる話>>*119を、男は真顔のままで聞く ]
ただ事ではないとは、思っていましたが、本当にそうだったようですね。
[ それが事実であろう事は、先に出くわした夢魔を斬り伏せた感触が何よりも強く物語っていた。
戦時に身を置く事が多い男にとって、戦いの中で掴む感触程、確かな物は無い ]
実は、俺の主筋に当たる女性も同じようにここに迷い込んでいる可能性が高いので探しています。
ファミーユ=ド=ラヴァンディエ...金髪で私より4歳下の貴婦人です...もし見かけられたら、私が探している事をお伝え願いたい。
[ 国名を聞いて驚いたということは、彼等は彼女とは出逢っていないのだろうと判断して、そう頼み事を口にする。保護も頼みたい所だが、そこまで甘えられる身分ではなかったし、王子という立場の人であれば、女性を危険な場所で放置するという事は元より無いのではないか、という内心での期待も持っていた* ]
[ カナン王子は、どうやら真面目で度量の大きい人柄らしいと、その態度や口調から知れる ]
ありがとうございます。代わりに、ということでもありませんが、俺もその夢幻竜の卵を見つけ出せるようこの先は注意してみます。
[ 誠意には誠意をもって返すのが男の主義だったから、そう約して、再び一礼した ]
では、これで失礼します。カナン王子、ラフィッカ殿も、どうか御無事で。
[ 告げて、再びファミーユを探すべく踵を返した* ]
[ カナンとゲルトに一礼して、歩き出したと思う間もなく、自分の来た方角から別の声が聞こえて来る>>*128
振り返ると赤毛の騎竜師の姿、そして少し遅れて霧の中から現れたのは、まさに探し人の姿だった]
ファミーユ!
[ 見つけ出せたという安堵から、思わず二人きりの時にしか滅多に呼ばぬ名が口を突いて出る ]
良かった、無事だったか。
[ 喜びを満面に顕して駆け寄ってくる
[ その時、耳に届いた、ごお、と鳴る、風の音。危険な予感に急かされ、男は地を蹴りながら、声を張り上げた ]
レイディ!!
[ 激しい風の音に負けぬように声を張り上げ、全力で駆けながら、腕を伸ばす。
ファミーユの腕を捉えることが出来たなら、その身を抱き寄せ吹き付ける暴風から庇わんとして ]
レイディ、大丈夫か?怪我は?
[ 腕の中に大切な人の姿がある事に、とりあえずは安堵して、問いかけながら辺りを見回す。抱き締めた腕を緩める気にはなれなかった ]
...随分と、今までとは雰囲気が違うな。
[ 心を惑わすような霧の空間と違って、静謐で清らかさや荘厳さまで感じさせる空気に首を傾げる ]
あれは、鏡...?
[ 目前にある丸い大きな物体に視線を向けると、自分達の姿が映っていたが...その表面に、ふいに揺らぎが生じて、別の人影が浮かび上がった ]
[ それは、男に良く似た面差しの、銀の髪の女性。神官の白い長衣を着た細身の姿は、美しくも、どこか儚く見えた ]
は、はうえ...?
[ 女性の姿をじっと見つめた男の口から、呆然と言葉が零れ落ちる* ]
『キース...大きくなったわね』
[ 鏡の中の女性、今は亡きジークムントの母親は、優しい笑みを浮かべて、幼い頃の呼び名で息子に語りかけた ]
『逢えて嬉しいけれど、貴方はここに長く居てはいけません。すぐに戻りなさい』
[ 儚げな面差しに似合わぬ、凛とした口調だ*]
本当に母上、ですか?
[ 鏡の中からの言葉を耳にしながらも、信じがたいものを見た驚きに、呆然としていた男は、呼び掛けるファミーユの声に>>+92我に返って、その手をそっと握る ]
...ここが俺達の居るべき場所ではないのは判ります。だが、俺は、生涯
[ その為にこそ、今ここに居るのだと、そう言って ]
ここから二人で戻れる方法を知っていますか?
[ 母の面影に問う瞳に迷いは無い* ]
『そう、ファミーユ様があなたの運命の人だったのね』
[ ジークの言葉に頷く顔を、ファミーユも覚えてはいるだろうか?まだ子供だったディークを連れて領地へと挨拶にやってきた女性の、当時のままの姿だ。
彼女は、微笑みをファミーユへと向け、恭しく一礼する ]
『どうか、キースをよろしくお願いします、ファミーユ様。あなたがこの子の支えとなって下さった事、とても嬉しく思います』
[ それは、彼女を護ると言ったジークの言葉が、彼女を支えとして生きる、と同義だと理解する、母親ならではの言葉と言えた ]
『ここから出る方法は願うこと、そして信じること。今の貴方になら出来るはずよ、キース...』
[ 優しい微笑みを彩るように青い月光が揺れた** ]
[ 鏡の中の母の一礼にファミーユが答えると>>+102青い光の中で面影が微笑む。嬉しげに、けれど僅かに寂しげに...
夢と幻のこの世界で、これは確かに本当の母なのだ、と、その微笑みを見て改めて感じた ]
願い、信じる...解りました、母上。
[ 渡された言葉にしっかりと頷き、笑みを浮かべる ]
俺はこの先も、迷わず進んでいく。どうか案じずにいてください。
[ 見守ってくれとは言わなかった。母にもまた、自由になって欲しかったから。
母の面影は、解っているというように、ひとつ頷いて、光の中に姿を消した ]
さあ...
[ 抱き寄せたままだったファミーユを促し、共にこの空間を出る道を探そうとした時、鏡の中に別の姿が現れる...傍らに居る愛しい人と瓜二つの、けれど男には全く違って見えるその姿 ]
...!
[ 瞬時、彼を睨むようにして、ファミーユの前に出ようと動きかけたが、ファミルがちらりと向けた視線を見て、男はその動きを止めた。
ファミーユに害を為せば、斬り捨てる、と、散々に脅し付けたせいか、生前は男に対する恐れと嫌悪を隠そうともしなかった彼の瞳が、今はその色を拭い、静かに凪いでいるように見えたからだ ]
(死してしまえば、剣など恐れるに足らない、か...)
[ どこか苦笑するような想いで、ファミーユが兄に語りかけるのを聞く>>+104 ]
ああ。
[ そしてファミーユの言葉>>+105に頷いてから、背を向けた鏡の中の青年に、もう一度視線を向けた ]
...お前の事は嫌いだったが、この手で斬らずに済んで良かったと思うぜ、ファミル。
[ 静かにかけた声に、彼がどんな顔をしたかは見えなかった ]
行こう、ファミーユ。帰らなきゃな。
[ そして、二人寄り添うように歩き出してすぐに、青い光は夢のように消え、気付けば霧の空間へと戻っていた]
少し明るくなったか?
[ 暗い場所から戻ったせいだろうか?と辺りを見回すが、どうやら本当に見通しが良くなっているようだった** ]
その短剣は?
[ ファミーユの示す短剣に>>+110その由来を尋ねれば、それがこの世界での護りとなったことを教えられる]
そうかシンシャの騎竜師の...俺もシンシャの王子に助力を約束したからな、今度は二人で夢幻竜の卵を探そう。
[ きっとその先に彼等とも再会出来るだろうという予感があった。
そして、見上げるファミーユの顔を改めてじっと見つめ、まだ握ったままでいた手を持ち上げて、そっと指先に唇を寄せる ]
見つけるまで心配で死ぬかと思ったぞ。帰るまでは、もう二度と離れないでくれよ。
[ 囁くように言ってから、霧の中を歩き出した* ]
考えてみると、こうして二人きりで歩くのも、けっこう久しぶり、か?
[ 常に騎士として傍らには居たけれど、領主という立場のファミーユは外に出れば、常に人に囲まれていて、屋敷の中以外で二人きりになる事はそうそうなかった ]
...案外、いい機会だったかな。
[ くすり、と笑って、そう口にした時、黄昏色の光が前方に見えた** ]
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