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……そう、だけれど。でも。
[不敬を咎めるように言われテも、尚。不満気ナ、そしテ心配そうナ表情は拭い去れずに。身を屈めテ胸元を握る手の甲へと口付ける様は、まるで忠誠を誓うカノように。
ダけれど、やガテ。ふと她の呼吸ガ軽いもノへと変わっタ事を感じ取っタノナら。
今一度大きく息を吸い、她ノ吐くそノ息の中カらあノ堪え難い悪臭ガ消え去っテいる事を確認し、大きく安堵ノ息を吐く。
薄く浮カべられタ笑みは、噫。そんナ笑みを向けられテしまっタら、何方ガ子供ナノカ分かりはしナい。]
……流石は、僕ノ"主"ダよ。
[何時も通りに呼ばれタ名には、何時も通りに言葉を返し。今迄と同じように寄せられる頬には、僕もまタ頬を寄せる。
頭に浮カぶのはこノ場所に来る前。そう、あノ花ノ湯を共に楽しんダ時ノ事、その後共にあノ氷菓子を楽しんダ事。
あノ時は、まダ。少ナくとも她ノ次の誕生日までは、ずっと。あノ時間ガ続くと思っテいタノに。]
――惜しいと。そノ時間を失うノガ惜しいと、僕はそう思っテいるノダロうカ。
所詮は失われテ行く時間。きっと此処で一時ノ気の迷いに流されタとしテも、後にナっテ身勝手ナ失望に苛まれるに違いナいノに。
ダけれど僕は確カに。あノ時、她に否と言えナかっタ。
……育っテしまっタ她は醜いノダと、そう言う事ガ出来ナカっタ。]
――……帰ロうカ、"ドリィ様"。
まタ、変ナ事にナっタら困るし……傷ノ手当も、しナいとナ。
[逃げる事を放棄しタかノように、自分ノ下でゆるりと頬を撫でる女神を見下ロしテ。そっと脚ノ端、義足とノ継ぎ目ダっタ部分を見下ろしタノナら、其処は未ダ血で濡れテいタダロうカ。
そうしテ、她へと手を伸ばし。
抱き上げようと回しタ腕は、きっと。拒絶はされナかっタノダと思うけれど。
もしも拒絶されタとしテも、ずっと拗ねタように、她を見つめテみせタだロうけれど。]
ナぁ、"ドリィ様"。
[そうしテ、再び她を抱き上げる事ガ叶っタノナら。柔らカナ髪へと擦り寄りナガら、立ち上ガロうとしテ――しカし。腰は未ダ、寝台へと降ロされタまま。
屋敷でよくそうしテいるように。抱え上げタ身体を胸に抱き、目を閉じテ她ノ胸へと擦り寄りつつ。
薄く目を開ければ、其処にはきっとふっくらとしタ頬ガあっタダロう。向けられタ瞳は、今は……まタ、澄んではいタだロうカ。]
さっきノ話ダけど。
……醜く、無いノカナ。オマエガもしも、"大きく"ナっテも。
――唯ノ女の子に、ナっテも。
[ぽつりと呟いタ言葉には、明らかナ迷いノ色を含めテ。
――ダっテ、她は"特別"だカら。未ダ嘗て無いほどに僕の心を捕らえタ、"特別"ナ存在ダから。
ダカらもしかしタら、僕ガ思っテいるのノは違う結果にナるカもしれ無いじゃあナいか、ナんテ。そんナ言い訳じみタ言葉を頭ノ中へと必死に並べテみせる。]
でも、"大きく"ナっテもしも、僕ガ我慢出来ナカっタら。
そノ時は……どうするか、まダ分カらナいけど。
[そうしテ、傍に落ちる木製ノ刀を手に取っテ。ほんノ僅かナ間眉を寄せタノナら、其ノ刃を摘んで持ち手を她ノ方へと差し出しタ。]
だカら、其ノ時までは一緒に居よう……、否、居テ、くれナいかナ。
[但しもシも、其ノ時まデに僕がまタ其れを翻す事ガあったのナら。其ノ時は今度こそ、そノ刃を立てテくれても構わないト。
其れは、きっと今迄で一番身勝手ナ願い。こんナ願いを掛ければ、她は怒っテしまうだロうか――噫、そうダ。
ひとつ、言い忘れテいタ。]
……ごめん。"ドリィ"。
[ほんノ、ほんの小さナ声で。
脚の傷ノ痛みと、溢れ出る涙と――她ノ胸ノ痛みに気付くまでは、未ダ。至りはしテいナカっタけれど。]
[流石だとほめられれば、わずかにうれしげにほほえんでみたものの。
それでもいまだ晴れない彼の表情に、その喜色もすぐになりをひそめてしまいます。
帰ろうという彼の言葉には何も返すことができず、ただ その視線の先を追い。
血で汚れた自らの脚を見れば、今更ながらにその痛みを自覚しました。
さきまでは必死でしたから、すっかり痛みなんて忘れてしまっていましたが
気づいてしまえば、じくりと痛む脚は動かすのもおっくうで。
ドロシーを抱き上げようとのばされた腕は、拒絶こそしませんでしたが、ただそれだけです。
いつもなら此方からものばす腕は、ドロシーのためらいをあらわすように、のばすことはかなわないまま]
[それでも すりよってくる彼の頭は、やさしくやさしく撫でてさしあげましょう。
――甘えられるのは、きらいではありませんから]
……それは、ドリィのきめることじゃありません。
[ゆる ゆる。彼の頭を撫でながら、つきはなすような言葉を。
だって、そんなのはドロシーがわかるわけがありません。
そりゃあ今だって、"うつくしい"という自負はありますけれど。
彼とドロシーの価値観はずいぶんちがうようですから、ドロシーの答えなんて てんで意味はないでしょうから]
[ナイフが差しだされたのなら、ドロシーはそれをためらうでもなく受けとりました。
彼に向ける瞳は、蒼く蒼くすんではいたでしょうけれど
それはきっと、やっぱり今までどおりとはいかなかったでしょう]
あなたがほんとうに ドリィがほしいというのなら
ここで ころしておくほうが、かしこいとはおもいますが。
[冗談はんぶん、本気はんぶん。戯れめいたそれは、彼にどうとらえられるでしょう。
未来のことなど、ドロシーにはなにひとつわかりません。
約束できることだって、なんにも。
もし彼がドロシーをゆるせたとして、ドロシーが変わらず彼を手ばなしたくないと、そう思っているかはわかりはしないのです。
わたされたナイフへと、ちらりと視線を向け
役立たずなそれは、そのまま床へとほうってしまいましょうか]
[彼の"おねだり"は、たしかにドロシーの願いとかさなるものではありましたが
素直に応と言えないのは、それがひどく身勝手に見えたがゆえで。
落とされる謝罪だってそう。
言葉にどれだけの意味があるでしょうか。
今日この日、彼の行動をかんがえみれば、そちらの方がよほど本心なのだろうと思いますから。
それをおし殺し、建前ばかりの言葉を落とす彼に、これまで以上にいきどおりをおぼえてしまって。
――だから、ドロシーはただ 困ったように笑うだけ]
……かえりましょうか、あーちゃん。
[結局、なにも答えられないまま。
自分を抱く腕をやんわりと外させて、わきに置かれた義足へと手をのばします。
じくりと痛む傷もかまわず、あふれる血もそのままに
無理矢理ぱちんとそれをつければ、彼の上からおりて床へと足をつけました。
その時ゆがめてしまったお顔は、彼には気づかれないといいのですけれど]
[手をのばしたら、彼は手をとってくださったでしょうか。
彼のことですから、自力で歩こうとするドロシーをしかるかもしれません。
――だとしても、ふたたびドロシーから手をのばすことはしなかったでしょう]
ああ、そうでした。
かえるまえに、まじゅつしょを さがさないと……
[そうして ぽつり、と。まるでなにごともなかったかのように、つぶやいてみせました]
[僕カらノ腕は拒む事は無く、しかし她カら伸ばされる腕もまタありはせず。寄せタ頭ダっテ、決して拒まれる事は無い。今迄と同じヨうに、そっと撫でる手ガあるばカり。
僕ノ願いに対しテも、返っテくるノは一見して突き放すヨうな一言で――其れはまるで全テを理解し、諦めタカノヨうナ。
無知故カ、或いは持ち前の聡さ故カ。出されタそノ答えは、確かに正しいと言えタだロう。
刃を取る她ノ瞳は、蒼く、美しく。ダけれども矢張り、過去ノ物とは決定的に違うようで。
戯れノヨうに落とされタ"提案"は、其れは確カに她ノ本心ナのダロうと、そう僕に思わせタ。]
……止めテおくヨ。
手に入らなカったノナら、其れ迄ダ。
僕ノ運ガ、或いは覚悟カ努力が。何れにせヨ何カが、足りなカっタんだロう。
[乾いタ音を立テテ床に転ガる木ノ刃を見下ロしナガら、軽く肩を竦めテ見せテ。
万一そうなれば、失望ノ中でも決しテ後悔は口にすまい。美しカっタ頃ノ她の姿を瞼ノ裏に浮カべナガら、二度と手に入る事ノ無いその美しさを嘆きなガら、其れでも嗤っテ殺しテみせヨうカ。
――或いは。殺されテ見せヨうカ。]
[小さく向けタ謝罪に返っテくるノは、困っタヨうナ笑みダけで。元ヨり此れで許されるとは思っテいなカっタものダカら、返す表情も苦笑いを。
ダけれど此処で初めテ、抱いタ手を離そうと力を込められタのナら。反射的に其れに抗おうとするも、直ぐにまタ力を抜いテ。
義足へと伸ばされる小さナ手を、表情ノ無い顔でじっと見つめ。血ガ滲むまま装着される義足に対しテは噫、傷ガ化膿しナいと良いのダけれどと思いつつも、其れを口には出せナいまま。]
………、痛カっタら、直ぐに言えヨ。
[地に足を着いタ時、柔らカナ髪ノ間カらほんノ一瞬見えタ表情は、強張っテいるヨうに見えタけれど。しカし何時もなら咎めるヨうナその行動も、今ダけは如何しテも咎める事ガ出来ナくテ。
――ダっテ、她カら手を伸ばされテしまっタカら。受け入れるヨうに差し出されタそノ手は、今迄に無い拒絶ノ意を感じさせタ。
きっと、痛くテも。僕には言っテくれナいんダロうなと、揺れるスカートを視線で追い。
一度目を伏せテ、ゆっくり、ゆっくり息を吸えば、まタゆっくりと吐き出しテ。
"何時もノヨうナ"笑みを浮カべテ、差し出されタその手を取っタ。]
さっきノ、研究所に戻っテみヨうカ。
……でも魔術書は無さそうダっタな、奥に進んでみるカ?
[何事も無いヨうに呟カれタ言葉に、向けタ視線をそっと、外しテ。先程自分ガ入っテきタ扉の方を見つめナガら、静カに問いを掛けテみる。
そうすれば、她は行き先を答えテくれはしタだロうカ。答えテくれタのなら、其処へと。答えガ無カっタのナら、扉を出テ廊下ノ奥へと進んでみヨうカ。
何処に行くにせヨ、あの長い廊下を歩く事にはナっタだロうカら。
緩く手を繋ぎ、她に合わせテ歩く速度をゆっくりとしタものにしなガら、心配そうな色はナるべく隠しテ她へとふと浮カんダ疑問をナげる。]
――そう言えば。
"ドリィ様"は、何で……あノ魔術書ガ、欲しいと思っタんダヨ。
[硬い廊下ノ床に、靴音を響カせテ。薄暗い其処カらは、外の景色ナんテ見えやしない。
何処カから聞こえる隙間風ノ音にひっそりと眉を寄せナガら。手は握っタまま、しカし視線は她には向ける事は無く。
自分の理由は、見てノ通り。あわよくば、她ト永遠を過ごせるかもシれないト思っタから。
ダけれド、她は?ト。そんナ疑問ト――そしテ、今迄感じタ事の無かっタ、沈黙ノ気不味さを回避シたい気持ちガ、半分ト。]
いたいです、けど
――あなたには かんけいありません。
[返す言葉は、まるで幼子がすねたような――いいえ、ただしくすねているのですけれど。
こんなみっともない感情、いつもならばかくそうとするものですが、今のドロシーにはそれだけの余裕もないようで。
まったくもって"主"らしからぬ感情のぶつけ方ですが、それすら気づけないまま。
いつもどおりの笑みとともに取られた手には、じくりと胸が痛みます。
それでも 表情には出ませんでしたから、彼にさとられることはなかったでしょう]
おおきなおやしきですし、しょさいが、あるんじゃないかしら。
さがしてみましょうか。
[ほんとうなら、地図でもあればいいのですが
いろいろな物を探せるほど、ドロシーの足はもってくれそうもありませんもので。
ひとまずは、あともなく書斎を探すこととしましょうか]
[彼が歩調を合わせてくださっていることには、思いいたりもせず。
かろうじてつないだ手はそのままに、逆の腕ではうさぎの人形をぎゅっと抱きしめます。
そう それはまるで、こころぼそさをおし殺すかのように。
ふと投げられた問いには、かるく首をかたむけて]
ドリィには、やりたいことも しりたいことも
たくさんたくさん、ありますから。
だから、ふつうのひとのじゅみょうじゃ たりないんです。
[視線はふせたまま、ときおり痛む足をちいさくふみ外しながら。
はき出す言葉は、どこか他人ごとのよう。
――だって、気づいてしまったんです。
彼がどうして、ドロシーの次の誕生日までに、例の魔導書を手に入れたいと思っていたのか]
[幼いままのドロシーを 永遠にしようと、そういうことだったのでしょう。
今までの彼の言葉とてらし合わせれば、すぐに気づけたでしょうに。
けれどさきほどまでは、それを考えるひまもありませんでしたから。
とはいえ そうと気づいてしまえば、ああ まるで
――また "裏切られて"しまったような心地で]
――……っ、
[がくり、と。ふみ外した足を、もう支えることはできませんでした。
ゆるくつないだだけの手は、ドロシーが転べばたやすく断たれてしまったでしょう。
それでも "たいせつな"兎の人形はとり落とさないよう、しっかりと抱きしめて。
うす汚い廊下にしゃがみこめば、引きつった吐息をこぼします。
どこがいちばん痛いのか、ドロシーにもわかりません。
そして それをなおすすべすらも、わかりはしませんでした]
、……ぃ
[つぶやいた声は、彼に届いたでしょうか。
どちらにしろ、続ける言葉は変わりはしません]
あーちゃん、きらい。
だ だいっ……きらい!
[主らしく、と。
ずっとずっと、そう考えてここまでやってきました。
――けれどしょせんドロシーはただの"おんなのこ"なのです。
いくつもの理不尽をのみこめるほど、強くはありませんし
癇癪を我慢できるほど、大人でもないんです]
[彼の腕のなかは、ドロシーの特等席ですのに
どうして抱きあげてくれなかったんですか、なんて。
自分からその腕を拒絶しておいて、ひどく傲慢なことを考えて。
――それでも、彼ならきっと 手をのばしてくれるはずと思っていたものですから。
彼は今まで、正しくドロシーの欲しいものを与えてきてくださいましたから、尚更。
彼ならそうしてくれるはず、という押しつけを、まるでまことのように考えてしまって。
ひとつ、ひとつ。
積みかさねられた"裏切り"に、もう 耐えられなくなってしまったのです]
……もぅ あーちゃんなんか、ぃらない、
[うつむき不明瞭な言葉を落とし、ぐいとおおつぶの涙をぬぐいます。
それが誰を傷つけるための言葉か、理解もしないままに]
/*
あーーあああああきらいっていわれたいらないっていわれた;;;;;;;;;;ドリィちゃんが癇癪をおこした超可愛いまって超可愛い(不謹慎)
いやめっちゃ心痛いけど!でも!!ちょうかわいい!!!!
[她とノ距離が分カらずに、それでも辛うじて掛けタ言葉。ダけれど其れに返されたノは、拗ねタようナ、突き放しタような、そんナ言葉。
其れを聞いてシまえば、視線は自然ト床へと落ち。何も言えナい唇ノ代わりに、手を握る力を少シダけ、強くする。
此処カらでは、她ノ顔ガ見えないカら。ダカら例え她がそノ"痛み"を顔に出シていタトしても、きっト気づけはシナカっタだロう。
だカら、書斎を探そうト提案されるガままに。扉を開けて部屋を出れば、来タ方とは逆ノ方向へト進み始める。
歩いていれば、不意に揺れる她ノ身体。小さナ手カら伝わるそれにこっそりと視線を其方へト向けたノなら、其処には兎ノ人形を心細げに抱き締める幼子ノ姿。
――噫、何時もナらば。そんナ風に、人形に縋らせタりなんてシないノに。
寂シい時や、心細い時には。必ず僕ガ、こノ胸に抱いている筈ダっタカら。]
………、やりタい事、って。
[踏み外シそうになる足には内心で冷や汗を流シつつ、其れでも最後まで手を差シ伸べる事は出来無くて。何処カ他人事のように聞こえる回答には、僕もまタ感情ノ篭らナい声を返す。
噫、何ト中身ノ無い会話だロう。互いノ心が別の方を向き、タダただ言葉を交わす、それダけノ会話。
喜びも、悲シみも。同調も、反論も。何も無い空っぽノ会話ノ、何と虚シい事ダろう。
そノ虚シさに、漏れるノは自嘲じみタ小さナ笑み。吐息のように吐き出シタそれは、きっト她には勘付カれはシなかっタだロう――けれど。]
――……ッ!おい、"ドリィ"!
[唐突に崩れた她ノ身体に、思わず声を荒げ。手ノ中カら抜け落ちタ她の手ノひらを追いカけようト伸ばしタ腕は、空シく空を切るばカり。
腕に抱いた兎ノ人形を、大切に抱きカかえて。廊下へトシゃガみ込む她に倣い自分もまタそノ場に屈めば、小さく震えるそノ身体を抱き起こそうトして――]
………、え?
[聞こえたノは、小さナ小さな言葉ノ断片。トもすれば風の音に紛れてシまいそうナ程ノ小さなその言葉ノ正体を、最初は拾う事は出来ナカっタ。
シカし。後に続く、引き攣れタような息ト共に吐き出された言葉を聞けば。
そノ言葉ガ何ダったのかなんて、容易に想像出来るト言うもノ。
伸ばしタ手は、她に届く直ぐ手前で止まっタまま。静カに凍っていく思考に、寸時呼吸ガ止まる。
そうシて、最後に。涙に揺れる声で吐カれタその言葉を聞いたノなら。
その、言葉ノ意味を理解しタのなら。無い筈ノ肺が、大きく、鋭く引き攣っタ。]
………、……
[癇癪を起こしタように、――我慢ノ限界ガ、来タように。涙を流シて"らしく無い"言葉を並べて見せる她を呆然ト見つめなガら、未だ呼吸は戻っては来ない。
何時も、何時も。そう何時ダって她は、トても聡い幼子ダっタ。
温もりノ中で育ちナがらも、きっト耐える事を知っているのダロう她が自分ノ前でこんナ風に"理不尽"トも言える言葉を吐いタ事があっただロうカ。]
[そう、"理不尽"ダ。
自分ガ呼び出シておいて、気にくわナいノならばもう"要らない"ダなんて。
都合ノ良い玩具を、人形を求めては飽きタカら捨てる幼子ノような其れは――
――まるで、僕ノよう。]
………僕、ガ。嫌いカ。そんナに。
[漸く吐いた言葉には、圧倒的に息ガ足りては居なカっタから。掠れるように響いタ其れガ、她に届いタカはわカらない。
向けタままの手は、ぐ、ト握り。ゆっくりト其ノ手を引いたノなら、指を真っ直ぐに伸ばシ、そして――自らノ腹へト、力一杯叩き込んだ。
途端に、焼けるようナ痛みガ襲う。指先に伝わる柔らかい肉ノ感触に寒気を覚えなガらも、差シ込んダ手はもう少シ、奥へ。
逆ノ手は、再び她の元へト。蹲る肩に手を置いて強引に抱き寄せたノなら、その髪へト口付けを送りナガら。]
は、……ハ、は。結構、痛い……ナ、これ。
デも、これ……デ。…"一緒"。
[她ノ耳元で乾いタ笑いを零シつつ、体内にある"其れ"を掴み取れバ、血ノ枯れタ身体は、幸いにも她ノ服を汚す事は無カっタだろう。
她に縋るように身を寄せなガら、指先を動カし。体内ノ其れノ――埋め込まれタ她の"脚"ノ半分程を引き摺り出せば、少シダけ身体を離して其れを她へト見せるように。
她ガ泣いテいタのハ、きっト。"痛み"デ泣いテいタのだろうト。
腹を抉っタ理由は、三つ。
一つ、她ノ"脚"へト触れテ僕ノ"役割"を思い出す為。
一つ、せめテ、她ノそノ涙の痛みを、少しデも共にする為。
最後は、今更なガらにそノ事に思い至っタ、其れに気付かなカっタ僕自身へノ、制裁ノ意味を込めテ。]
……、な、ァ……"ドリィ"。
嫌ダよ。……オマエガ僕を、要らないノなら。僕は、こノ、脚を……オマエに、返さないト、いけナい。
[痛みノ所為で朦朧トする意識を何トカ引き止めなガら、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
之は、自分ノ命の源。自分をこノ世に呼び戻し、そシて引き止めている"物質"であり――そシて、"使命"。
其ノ一部を她へト見せ付けてそして伺うような視線を向けて。そうすればそこには、一体どんな顔ガあっタだロう。]
――……返しタく、ないんダ。少なくト、も…今は、まダ。
……オマエノ、"ドリィ"ノ"脚"で、居タ……いんダ、よ。
[懇願ノ言葉ト共に、取り出シ掛けタその"脚"に自らノ手を被せ。まるで"返さない"ト駄々を捏ねるように、腹を抱いて首を振ってみせる。]
[そう、未だ。未ダ、此れを返しタくは無いんダ。まだ――否、もっト。她ト共に、居タいんダト。
噫、成る程。こういう事ナノだロう。
她ガ頑なに、悪魔では無いト。女神では無いト。"タだノおんなノこ"ダと、そう訴えたノは。
她ノ"玩具"でも良いノだト、そう思っていた。ダけれど其れは、僕ガ她ノ"お気に入り"
で居られ続ける事ガ、前程ダったノだ。
そうで無くなれば、こうして棄てられるダけノ存在。そうナって初めて、僕は"玩具"トいう存在に対シてノ絶望を覚えタ。]
……もう、"女神"トは…、言わナいカら。
[僕は、她を女神だと言っタ。女神ダト信じ、そして自分ノ理想の女神ノ姿を她へト"押シ付けて"いタんダ。
育ってしまい、僕ノ理想の女神ノ姿から外れてシまえば。そうすればもう她は"要らない"存在なのだト。
……そう言っているも、同然だト言うノに。
她はきっト、こノ"脚"を奪いはしないダろうけれど。
だけれど例え奪おうトされようトも、絶対に渡シはしナいのダト片腕で"脚"を抱きなガら。]
[一層青白く血ノ気の引いタ顔を、她へト――小さな小さナ、脆くカ弱い"女ノ子"に向けて。]
――……僕ノ、"ドリィ"。
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