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っあ‥っ!
[>>0ソフィヤが護衛として付けていた傀儡には気付かず、花瓶を振り上げた無防備な腹部に蹴りが入れられる。
ガシャンと花瓶は大きな音をたてて砕け散るが、それがソフィヤにダメージを与えるに至ったかを知る余裕すらなく私はその場で崩れ落ちる。]
か、は‥‥あ、アイリーー。
[痛みに意識が朦朧とする。階段の上にあったアイリの気配が怒りに任せ迫ってくるのを感じる。]
アイリ、の‥バカ‥。
[アイリを逃がすための必死な抵抗が無駄になってしまったことに小さく恨み節を吐きつつ、踞りながらどうにか形成を転じるにたらしめたことに小さくほくそ笑む。]
[膝を折り倒れたままの状態で、ぴしゃっと飛沫が壁を伝う音を聞く。
血のーー匂い。
傷を負ったのがアイリではないことを察知し安堵したのも一瞬。
その一撃が能力者を戦闘不能にまで追いやれなかったことが最悪の事態を招いてしまう。]
ぐ‥‥ぁ‥‥っ!
[激昂した様子のソフィヤに突っ伏している体を押さえつけられてしまう。その体勢は生かすも殺すも、彼女の掌の上。
ーー今にも喉笛をかっ裂いてしまいそうな勢いで押し当てられた花瓶の破片。首筋を温かいものが走る。
殺意の波が今、確実に私へと向けられようとしていることで、察した。彼女は駆け引きなどするつもりは毛頭ない。]
ダメっ!こいつの言うことなんて聞いちゃダメ!いいから‥‥私のことはいいからっ!!
[体を肺ごと押し付けられ、声を振り絞って叫ぶ。二人とも殺されてしまうくらいならば、せめてアイリだけはーー]
[私の懇願にもアイリは剣を振るうでなく、立ち尽くす。アイリの迷いに業を煮やしたソフィヤの手に力がいっそうこもる。]
‥‥‥っ‥!
[ーー死、盲目の世界よりも更に深い闇を目前に、私は思う。
ー力さえあれば、死なずに済んだのだろうか。
ー力さえあれば、アイリを守ることも出来たのだろうか。
ー力さえ‥‥‥あれば!]
ーーーー!
[脳の髄が歪む、頭が割れてしまいそうな程の痛みと目眩が襲ったかと思うと映すはずのない瞳が、瞼の裏に微かな光を灯す。
そしてーー血が蒸発してしまうほどに熱く滾り、己の魂に刻み付けられた力と、その代償を感じ得る。]
ーーねぇ、能力者さん。
貴女は、本当の"恐怖"を知っている?
[静かに語りかけた私の表情には、死を待つ羊のそれではなく、余裕の色さえ浮かべた不敵な笑み。]
知らないなら、私が教えてあげる。
ーー刮目しなさい。
そして、奈落へと沈みなさい。
[途端、私の手の甲に生じた裂け目が大きく開かれ紫紺に光り輝く瞳をぎょろりとソフィヤの方へと向ける。
その瞳を覗いてしまえば、ソフィヤは深淵に誘われ、そして脳裏に刻み付けられるだろう。
四肢を引きちぎられ、内臓を抉り取られ、役者の命である顔を原型など止めない程にズタズタに切り裂かれ、それでも死という安楽の地へと辿り着けない恐怖。
与えたビジョンはほんの一瞬、彼女が怯めば思い切りその体を跳ね除けるがはたしてーー]
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