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[ 二つ名を気恥ずかしそうにするジルに>>177男はいやいや、と手を振った。 ]
ジル殿の場合は、その術の美しさが、貴女自身の美しさと重なるからこその二つ名でしょうからね。胸を張られていい。
私なぞ、元々の名付けの理由が、夜明けの空に取り残された月のようにぼんやりしてるから、ですよ?
[ 名付けたのは北部師団長だった。今でこそ、銀の竜が霧氷を纏う美しさの方が世間に認められているものの、最初の理由はそうだった、と、男は名付けた本人から聞いている。
13年前、色々な意味で、取り残されてぼんやりしていたのは事実だったので、まるで反論できず、結局そのまま二つ名として定着してしまったとか。 ]
精霊師の援護あっての騎竜師、精霊師を守りきれてこその騎竜師でもありますからね、礼には及びません。
それに騎竜師は確かに広範囲の敵を相手取れますが、それだけに、一点集中での守りには不向きです。空で一点に止まるのは難しいですから。
貴女のような優れた近衛兵が、陛下を守ってくださっているからこそ、後顧の憂いなく、私も飛べる。
[ 向けられた礼の言葉には、そう返して、胸に手を当てる。 ]
この先も、どうかよろしくお願いします。虹霓の精霊師殿。
[ わざと、そう呼んで浮かべる笑みは、悪戯めいていた。* ]
[ 王の前を辞してから、真っ先に探したのはイングリッドの姿だった。騎馬兵のような相手との本格的な戦闘は初めてであろうと案じていたからだ。 ]
イングリッド!怪我はありませんか?
[ その姿を見つけ、どうやら無事であったと知ると、ほっと息をつく。 ]
いきなり魔獣どころではない連中がでてきましたからね。こんな状況で怯まず戦える貴女はやはり頼もしい。...女性にこんな言い方をしては失礼だったかな?
[ はは、と声立てて笑うと、途中で拾った矢を 7(10x1)本、イングリッドに手渡す。]
でも、やっぱり気をつけて欲しい。君には無事に帰らなければ行けない場所があるんだから。
[ 最後はやはり、心配性のおじさんめいてしまうのは、もはや仕様かもしれない。* ]
― 神域への門 ―
[ 懸案事項と、気になっていた相手の無事を確かめると、男は騎竜の側へと戻る。
やがて、休息を終え、出立の号がかかると、男と相棒は再び空へと身を運んだ。]
あれが神域の門か。
[ 地上ばかりではなく、空の上にも、門の向こうと、こちら側を分ける力が働いているのが分かる。これが結界術のようなものだとすれば、確かに神の手になるとしか思えない。 ]
門番がとち狂ってるって...
[ 感心している場合ではないのは、現れた黒狼の姿と黒衣の剣士の言によって知れた。>>194
それにしても目にした瞬間、誰かに似てると思ってしまったのは、何故なのか? ]
シン、私は下に降りる。上から援護を頼む。
[ 倒すだけでなく鍵の回収をと言うのなら上空からの攻撃だけでは取りこぼしが怖い。直接対峙するべき、と判断して、男は騎竜を降下させ、その背から地上へと飛び降りた。 ]
まず、ひとつ、と!
[ まっすぐに額を貫いた黒狼の姿が消え、黒光りする小さな石の欠片が落ちる。
それを手にする間にも、横合いから別の狼が飛びかかってきた。 ]
わかってはいますがっ...!
[ 身を捻りながら狼の胴を蹴り、一旦間合いを取る。 ]
回収しつつ戦うというのはなかなか、厄介ですね、
[ 今度は少し大きめの石が落ちたのは、幸いだったか。上空からクルルと、励ますように鳴く相棒の声に、男は軽く手を振って、次の狼を倒すべく駆け出した。 **]
― 神域への門 ―
[ ギンセイの民にとって黒い狼は守護神の現し身という認識に近い。故に、この状況に戸惑いを持つ者も多いようだったが、男にとって、それは無縁の感覚だ。
相手が例え、黒狼神の本体であろうとも、守るべきものを守る為なら一切の斟酌は無用。
それが為に神罰を被るならば、それもまた我が身ひとつで引き受ける...その教えをくれた人が、まさか本尊の所在を知った上で豪語しているとまでは、気付いてはいなかったが。 ]
(とはいえ、躊躇無く働けるのは、私も、少しは変われたということかな?)
[ 残月の名の意味を前向きに読み取ってくれたジルの言葉を思い出して>>220小さく口の端に笑みを刻む。 ]
...と!
[ 背後から飛びかかって来た狼の背を急降下した騎竜の爪が捉えて引き裂き、同時に男が繰り出したレイピアが、その腹を貫く。 ]
ありがとう、シン...!
[ 再び上空へと舞い上がる相棒に礼を告げて、手にした小さな石の欠片を胸ポケットに仕舞った。
改めて見渡せば、視線の先で、王の援護を見事に生かしたイングリッドが、三頭の黒狼を仕留めたのが見える。>>262 ]
お見事!
[ これ程凛々しい娘に、心配だけを押し付ければ確かに鬱陶しいだけだろうと、先までの自分の態度を少々反省しつつ、男は賞賛の声を投げた。 ]
[ 槍と剣を縦横に使うダーフィトと、次々と術を工夫して自分より大きな敵とも渡り合ってみせるミーネ、王自身も幾らかの欠片を手にしたようで、着実に黒狼の数は減っているように見える。 ]
...とはいえ、これで終わる、とも思えませんね。
[ なんとなく、だが、そんな気がした。 ]
[ 男は周囲を警戒しつつ、王の方へと徐々に移動する。 ]
...?
[ 途中、守護者を遠巻きにして唸る黒狼達の様子を目にすると>>248微妙な顔で首を傾げたが、口は開かず。 ]
[ 二本の矢が貫いた二頭の狼から、落ちた欠片はひとつだけ。 ]
少しばかり、落ち着きませんね。
[ 胸元に収めた四つの石の纏う闇の気配が、その落ち着かなさの元だろうとは予想がついたが...それよりもっと、本能的な悪寒が、男の底には潜んでいるようだった。* ]
[ ふわりと辺りに広がって、傷ついた者達の痛みを和らげる術の気配。>>276
男が感じて居た悪寒も、同時に鎮まっていく。 ]
ホーラン殿ですか、綺麗な気だ。
[ 彼女の素直さがそのまま術に変換されたかのような澄んだ気に、男は、深く息を吐いた。 ]
[ 同じように、術の恩恵をうけたジルが、傷を負ったイングリッドの方へ向かうのを見ると、男は王の目前へと足を進めて、こちらは引き受ける、と、軽く片手を上げる。
その行動が、幸いしたのかどうなのか。 ]
陛下、あれは、あんなに大声で宣して構わない話ですか?
[ 自分でも驚きが少ないことに、むしろびっくりしたから、多分薄々そうじゃないかと感じていたのだろう。
自らを『魔精霊・黒焔狼』と名乗るヴェルナーの言葉に>>282男の口から漏れたのは、ため息混じりの主君への問いかけ。 ]
あと、ぶんなぐっていいですか?
[ 殴る対象が、王なのか守護者なのか、主語が抜けているのは、わざとだ。* ]
[ 驚かないのか、という、王の言葉に>>297男は小さく笑った。 ]
驚いていますよ。
守護者殿が人間ではないことを、私は確信していましたし、陛下が黒狼神の神子王と呼ばれる事も知っていたのに、何故、名乗られるまで判らなかったのか、と、自分の迂闊さにびっくりです。
[ ピースは目の前に散らばっていたのに、それを敢えて繋ぎ合わせようとしなかった。恐らくは無意識に抱いて居た畏れ故に。 ]
[ 次いで暴露の理由と、口止めはする、との言を告げられれば、大きく吐息をつく。 ]
これが必然であったなら、他国の者や兵ではない民は同行するべきではありませんでしたね。
彼等を信用しないわけではありませんが、いきなり、こんな大きな秘密をぶちまけられたのでは、むしろ気の毒です。
......ここは、私自身の甘さも反省するべきですが。
[ 実力行使も辞さないとなれば尚更、きちんと気付いていれば、止めていたのに、との想いが強い。 ]
とはいえ...やっちまったものは、今更ですし、守護者殿も覚悟を持ってのことでしょうから、この話はここまでにしておきます。
なぐってもいい、というお許しも頂けましたし。
[ 素直に殴られはしない、という言葉には、むしろ嬉しげに目を細めた。 ]
[ 王との会話の間に、果敢に力試しに名乗り出たのは>>308先ほど癒しの術を皆に届けたヴィルへルミネ・ホーランだった。 ]
先を越されましたね。
[ そう呟いたものの、男は今、守護者と殴り合う気にはあまりなれずにいた。
先を思えば加減しないわけにはいかず、しかし加減はしたくもさせたくもない、と、どうしようもなく思ってしまっていたからだ。 ]
どうか御武運を。ホーラン殿。
[ しかし彼女なら、己のような屈託を持たず、真っ直ぐな想いと力を黒狼神と呼ばれる精霊にぶつけてくれるに違いない。
触れた力の一端の清らかさを思い出し、男は心からの声援を口にした。** ]
/*
まじで、ほんとめんどくさい子で申し訳ない。忙しいのにごめんなさいですよ。
こうでもしないと、名乗り出ない理由がなかったんや...orz
[ ここが黒わんこ本人との一騎打ちだと思ってなかったらしい ]
[ 自分の落ち度、という王の言には>>320男は首を横に振った。 ]
そこは、私を含め、事情を知るか察する事の出来た臣下が気配りすべきところです。
陛下が全てを負われる必要はありません。
守護者殿の方は、そもそも人の世の理以上の意をもって動かれているのでしょうしね。
[ 多少とも勢い任だったのでは?という、疑いは拭えないが、まあ、そういうことにしておいた。 ]
...にしても、出立前に、もう少し打ち明けておいて頂ければ、という恨みはありますが。
[ そうそう打ち明けられるものでもないのだろうとは察したうえで、男は殴りたい理由を、そんな単純な言葉に置き換える。
王のなまぬるい視線にも>>321返るのは涼しい笑顔だ。
相手が、それを喜ぶだろうなどと聞いたなら、さすがに顰め面になっただろうけれど。 ]
[ やがて、守護者とのやりとりを経て王の側へと立ち戻ったジルから送られた礼に>>325男はいや、と首を振った。 ]
私は戦闘以外では役に立ちませんからね。この程度のフォローは当然です。
[ 怪我のことを問われれば、見た目にも解るだろう、軍服の裂けた数カ所を軽く摘んで、笑う。 ]
擦り傷だけです。私は傷の治りが早いですから大丈夫。
それより、御自分の身を大事に、力を温存してください。
守護者殿の言葉通りなら、恐らくこの先は、もっと「ヤバイこと」になるでしょうから。
[ そう告げて、入れ替わりに動こうとした足が、苛立ちを滲ませた王の言葉に止まった。>>323
同じ言葉を耳にしたジルの問い掛けと、そこに返された...むしろ吐き出されるあれこれを、振り向かぬまま、黙って聞く。 ]
(全部捨ててきた、か...)
[ 双剣揮う黒衣の剣士と、力と知恵とを振り絞り、その存在に肉薄する若き兵士の躍動...そこに視線を向け、男は一瞬目を伏せてから、止めた歩みを再開する。 ]
...まずは、アッカーマン殿、かな。
[ イングリッドは、兵士ではないとはいえ、黒狼神を敬う民だ。先に話を通しておくべきなのは、外の人間である彼のほうだろう、と、足を向ける。 ]
失礼、貴君のご出身はどこですか?
[ 唐突な問いかけに、さて、彼は何を思ったか。* ]
― 回想 ―
[ 『守護者』に初めて会ったのは、12年前、漸く一人前の騎竜師と認められ、亡き父の後継として北部師団に任命されることとなって、王都に出向いた時だった。
話には聞いていたが、一度も顔を合わせたことのなかった黒衣の剣士の姿を目にした途端、感じたことのない緊張に、体の芯が震え、身が竦んだのを覚えて居る。
周囲の人間には、王の御前で騎竜師としての誓いを述べる為の緊張だと思われていたようだが、親代わりとして同行していた師団長には、恐らく本当の理由はバレていただろう。 ]
― 神域への門 ―
まったく情けないな...
[ 王に言われるまでもなく>>357自分から避けておいて打ち明けられなかったことに不足を言うなど、無茶振り以前の問題だ。
神と呼ばれる狼の放つ、闇と焔を、文字通り突き破り、素手の拳を真正面から届かせた小さな勇者の姿を目にすれば>>374比べて己の不甲斐なさに目眩がする。 ]
勝負ありましたね。お見事です、ホーラン殿。守護者殿に拳を入れたのは、ギンセイでは、きっと貴方が初めてですよ。
[ それでも十年余の間に、内心を顔には出さぬ業だけは身につけた男は、微笑んで、賛辞を贈り、次いで決着を告げる黒衣の剣士に>>390初めて真っ直ぐに視線を向けた。 ]
おっしゃる事は、解らなくもないですが。貴殿の筋の通し方は、乱暴すぎませんか、守護者殿。
[ 「乱暴」には、物理的な意味以外も含まれるとは、伝わったか。 ]
他の守護者方も、この調子なのでしたら、良い練習にはなったかもしれませんが...
[ それはそれで、面倒だという本音は、未だ上空を舞う相棒の竜を見上げた視線に現れている。* ]
...そうですか、話したくないというなら無理には聞きません。本当に失礼しました。
[ 出自を聞いたのは、国や地方によって魔精霊や黒焔狼に対する意識に差異があるからだったが、どうやらそれが、ダーフィトの禁忌に触れる話題だったらしいと知ると>>393男は引き下って謝罪を口にする。
先刻からの彼の言動を見れば、黒焔狼を過剰に恐れ悪しきものと断ずる風には見えなかったから、それを信じることにした。 ]
あなたの素性や過去を暴こうと言う気はありません。
ただ、提案がひとつあるのです。
ダーフィト・アッカーマン殿、あなたの腕は在野に捨て置くには惜しい。
ギンセイ王国に士官する気はありませんか?
[ 真顔で告げてから、男は一転苦笑を浮かべる。 ]
......と、急に言われても、怪しいだけですね。
ですが、ギンセイ王国、北部師団副師団長として、これは本気の
この調査の間に、出来れば御検討いただきたい。
[ 口止めをするつもりが、こんな形になったのは、多分、ダーフィトという男の中に、覚えのある喪失の影を見たからだった。* ]
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