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神は――人々にこのように触れたりなさらない
[そうだ、目の前にいる存在は、まるで天から舞い降りた天使のよう。
――だからこそ、違うのだ]
貴女は――私の救いではない!!
[思考が急激に晴れる。指先が動き、握り締めた拳から血が流れる。歯を食いしばり、出来うる限り身をよじってその唇から逃れようと藻掻いた*]
― 牢 ―
[タルボシュ領主の城、その、牢。
傷つき囚われた近衛騎士の姿もいくつかある、その奥に黒衣の魔女はいた]
あらあら──振られてしまったようだね
[喉元でくるくると微笑んで。
壁に磔のごとく吊るした聖女の首を左手で掴んだ。
現と幻覚の狭間にいた彼女の目の奥から、紗が晴れるのを見つめ]
では、仕方がないわ
お前には"官能"を教えよう
そして堪え難い渇きと、罪の味をね
……可愛らしいこと
[彼女の指先が拳を握り、歯を食いしばり、そして身をよじってもがき尽くそうとも。
吸血鬼の牙はもう、そうと決めた通りに聖女の喉へ埋め込むばかり。
毒をもつそれは、どの糧を得るにも、
痛みではなく、心を灼くほどの快楽を与えて来た*]
[美しい肉体をもっていながら、魂がそれを拒絶していたのか。
聖女の血潮は、地表に孵ったばかりの湧き水のように澄みきって清冽。
舌に甘く喉に熱いそれをたっぷりと味わって、啄ばんだ首筋から唇を離した]
美味しいわ
夢中になって、溺れてしまいそう
[生命活動を損ねない程度の搾取にとどめたことを、褒めてあげなければ。
ふふ、と微笑んで、深い牙痕を刻んだ首筋へ甘く接吻する]
もちろん、キスをしたのだよ
渇くでしょう?欲しくなる?
血を、精を求めて体と舌とが疼き出すかしら
[乱れた息を吐く唇へ左の指を触れた]
牙を貸してあげるわ
心配しなくても、仮初めのもの
朝まで、姦淫の罪の味に耐え、人の血を啜らずに生き延びられたなら
呪いを解いてあげてもいいわ
さあ、アズリウ
ナネッテの鎖を解いてさしあげて
それに近くにいる人間の男たちもね
[近衛騎士たちの目からは既に正気が奪われている。
欲情と興奮の、獣めいた匂いが凝る牢内を見回せば、ばさりと大鴉が飛び上がって牢の鍵を開き始めた*]
厭ね
汚らしい
[騎士達の声を聞いてわずかばかり肩を竦めた。
牢の扉を開き終えた大鴉が吸血鬼の手に戻ってくると、その首を優しく撫でてやる]
なあに?どいてほしいの
いいよ
[微笑み、聖女だった女に背を向ける]
ではさようなら、ナネッテ
ご馳走様
― 城内 ―
[ドレスの裾を片手で持ち上げ、優美な螺旋を描く階段を登っていく。
鳥の羽搏きとしては不自然なホバリングでその頭上を飛ぶ鴉へと顔を向けて、ため息をついた]
どうしてかしら
私は人間を愛しているけど、人間の方はそうではないと
時々忘れてしまうの
[階下から響く人間の声>>223に、鴉は盛んに首を傾けた]
あら、大丈夫よアズリウ
あの子には牙を貸してあげたもの
私の作った白磁の牙だからね、獅子の爪より鋭──
あら……使い方、教えたのだったかしら?
まあ、ふふ
でもどちらでも構わないじゃない?
私の教えた官能が育ち花開くのもまた嬉しいこと
あの子なら、三千世界で最も美しいサキュバスになれるかもしれないね
― テラス ―
あら……絢爛公はおられないの
[声を降らせ、テラスに姿を現わす。
火傷した掌をお見せしようと思ったのに?小さく呟いて]
ねえ
お前たち
[置かれたままの金の鳥籠を覗き込んだ。
テラスの手摺に留まった鴉はのんびりと羽繕い]
此度の狼藉、お前たちはどういう企図ではたらいたの?
[ドレスと同じ生地の長手袋を出してそれへ指を滑らせながら]
だって、お隣さんだもの、気になるでしょう
私の工房は陶工たちも絵付師も、坑夫もみな人間だわ
だから、領主とはうまくやってきたのよ
……タルボシュもそうだと思っていたのだけど?
まあまあ、そんなに泣かないで
責めてるわけではないの
そう、愚かさの代償はかくも重かったということだね、可愛らしい
[可哀想と可愛いの区別がついていない物言いで優しく微笑み、鳥籠の傍を離れた]
──アレクシス
私、また教会のある方へ行きたいの
エスコートしてくださるかしら?
[テラスの手摺へふわり飛び、外へ踏み出す。
次の瞬間には密集した蝙蝠に抱かれ、街へと舞った*]
[あの教会へ。
だって、聖女は最後まで私の手をとらなかった。
その犠牲は捧げられず、盟約は結ばれていないのだから。あの聖堂へ毒を流し込んでも構わないということ]
あら
[闇は右の手袋を透かして、指の背に触れた>>238
空に舞う黒(青)い蝙蝠の風]
[儚く光が漂っては、蝙蝠の影がひとつ、ひとつ。
増えていく空。
鴉はするりと旋回して街を遠望する]
[エドマンドとアデルムンド。対にして一の者。亜麻緑。
あんなに美しくて香り高いのに、どうして好戦的なのかしら。不思議。
ウェルシュ。あの仔。美しい囀り。モーブ銅。
どうやら気を取り直したよう。幼くて愛らしい子。ああ図書館にいるのだね]
……ああ、待って
子供が泣いているの?
[それにアレクシス、貴方がいる。
教会へ至ろう空から、半ばで軌跡を変えて。
蝙蝠に抱かれた吸血鬼はその街角へ降りていく]
宴は楽しんでいただけていますか?
貴方の心を歓ばせるものがあれば、嬉しいのですが。
[囁く声は、コウモリを通じて響く。]
私、子供の泣く声は厭
だって悲しいのだもの
[張り裂けそうな嘆き、喪失。
それは美しいけれど、まだ
私はどうだったか。
血父が亡くなった時?
ショックだった。はず。なのに何故か、どうして彼が死んだのかも思い出さない。
ほんの最近のことに思えるのに。きっと50年もまだ経っていない。
ただ深い喪失感と、胸を満たす昏い感情があったことは覚えている]
― 街中 ―
まあ
[寄ってきたコウモリの羽ばたきを追って首をめぐらせる。
膝に乗る愛らしい仕草に、愛しい鴉へするようにその頬を指先でくすぐった。
連なる屋根の高さまで漂い、見下ろせば、その辺りには光があった>>192
崩れて醜い姿を晒す家屋の近く]
ええ、面白いわ
[コウモリの喉を撫でて、ふわふわと微笑んだ]
まだ主菜をどうするか決めかねているのだけど
……私もなにか、槍でも持参すれば良かったかしら
槍持つ貴方は麗々しくありましょう。
ですが、槍などなくとも貴方であれば、
指先ひとつで身を差し出すものもいるでしょう。
私もまた、そのひとりですよ。
[柔らかな笑い声が、コウモリの立てる音と混ざる。]
主菜、といえば。
牢に、なにかを置かれましたか?
あのあたりから、貴方の気配となにか…芳しい香りを感じるのですが。
……
[恐れ多くも絢爛公と対峙する騎士、彼が剣を振るうまでを見て。
背後。
気配もなく子供の隣に降り、薄く軽い体を抱き寄せた。
すぐ側にいた別の騎士らしき男の胸へ手を伸ばし、トンと押す。それで充分]
[まるで闇の帳の中へ引きずり込むような一瞬。
子供の泣き叫ぶ声が弱まる]
どうしたの、坊や?
[耳元に囁けば、引き攣るような呼気の音]
おや、手に怪我をしているのだね
みせてごらん、泥を流して薬を塗ってあげよう
[昏倒した男を踏み越え、瓦礫の一つに腰掛ければ、膝に子供を座らせよう。
先客のコウモリはつまみあげて、胸の間におさめた]
ねえ泣くのではないよ、坊や
あまり可愛いと裂いてしまうからね
[震え、しゃくり上げる子供をあやすように囁いた**]
あら。貴方の身なら
畏れ多くて……奪ってしまえないわ
[コウモリの被毛は軟らかい。アズリウの羽毛とはまた違う感触を愉しみ、混じり合う柔らかな声にとろりと目を細めた]
牢?
なんだったかな……
ああ、そう
味の良い処女がいたのだけど、振られてしまったの
それで、仕方がないからもう少し醸成させて美酒に仕立てようと思ったのだったかしら
[忘れるところだった、くるると笑う]
でも玉を磨くのに貴方ほどの才はおられない
お気に召しそうだったら、見てあげてくださる?
― 瓦礫 ―
[薄い磁器の小瓶を取り出して、封を切る。
与う液体で子供の手を濯ぎ、爪の間の泥も流し。
そうしていれば泣き声は掠れ、細かく震えるばかりになるよう]
まあ、弟さんがあのおうちの下に?
それで出してあげようとしていたの、可愛らしいこと
[その目には黒と白に見えるだろう、長手袋と包帯。
指先で筆をとるように、子供の手へ薄布を巻きつけていく]
そうね
そろそろ熟れて、心を開いてくれる頃かもしれないもの
[絢爛公へと花誇ろうような笑みを咲かせ>>317
騎士へはゆるり流し目をくれる。
吸血鬼の肩には鴉が留まり、首を傾げては子供の顔を上から覗き込んでいた]
[公の長身が夜へとほどけるを見送り、子供の髪を撫でる]
ルマニ公を前に、正気を失い膝を折らずにいられるだけでも感心する
けれど、お前
[言葉は、そこに立つ騎士へ向けたもの*]
おや
お前も、死ねば済むと思っているの
[重なる問いに首を傾げた。
ちょうど肩で鴉がしたのと似た仕草]
何故。いけない?宴はまだ途中だもの
まだ主菜をいただいていないのだよ
[するり、子の髪を梳いて]
坊や?
弟はやはりあの家の下にはいないよう
私たちは不思議な魔法を使えるの。だから坊やの可愛い子はとうに解放されてある
何も痛いこともなく空で遊んでいるよ
[子供の耳元に柔く囁きながら、騎士を見た*]
──逢いたい?お前の弟に
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