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─ 回想 ─
[襲撃によって受けた損壊は激しく、復興の目途どころかまず何からしたら良いかも分からない程だった。
それでも一つ、一つと積み上げるように皆で少しでも元の生活へ近づく努力を重ねて。
ようやく集落の外へと意識を向けられるようになったのは、半月を過ぎた頃。
>>22交流のあるいくつもの集落が魔物たちによって壊滅したという不幸を知ったのも、その中にイェンスの住む里も含まれていたことも]
……ゆくえ、ふめい…?
[壊滅前に逃がされたはずのイェンスの消息が、知れぬものとなっていることも。
既に手を尽くせぬ段となった頃合いに、知ることとなった]
[此処だけでなく、いくつもの集落が同時に襲われたなど不自然だ、という声は郷の内外問わずにあった。
けれど、それに対して明確な答えを返せるものなどあるわけもなく。
何故を問える相手も無く、ただ喪った者、失ったものを思うことしかできない日々を重ねるしかなかった。
唯一の救いは、イェンスの亡骸を、だれも目にしていないこと。
確定していない以上、きっと生きていると、信じていられることが出来たから。
その救いが、まさか最悪の形で翳ることがあるなんて、思いもしていなかった]
[それはやはり、突然のことだった。
>>0:13あの日と同じく唐突に、集落が襲われて。
襲撃者たちの統率の取れた動きに、どこかの部隊のものだとはすぐに分かった。
ならばこの者たちを指揮している長がいる、それを叩けば統率を崩せて被害を押さえられるだろう───その狙い自体は、想定通りに事が進んだ。
想定外だったのは、その長の姿が、見覚えは無いはず、けれど面影が]
…………いぇんす、くん…?
[あの日の、あの幼い彼と、重なるものだったから。
襲撃者の長なんて、刃を向けるに迷いなど抱いてはいけない最たる相手だというのに。
あの日と同じ、泣いてしまいそうな顔を向けてしまった。
向けられた刃と表情、そのどちらも私の知る彼であるならあり得ないはずなのに。
幸か不幸か、ほどなく撤退していったから対峙の時間自体は短いものだったけれど。
私の大切なあの人と重なる顔で、私の大切な場所を侵してきた彼を。
どうしても私は、許すことが出来ないまま。*]
─ 『神魔の領域』・外周の森 ─
[鬱々とした気持ちを映しているのか、鬱蒼とした森は中々抜けられそうになかった。
けれど、ふと何時の間にか傍ら、視界を掠めるようにひらひらと>>0:125蝶が舞っていて。
敵意は宿していないものの、纏う気配は自然には在り得ぬものだったから]
……何らかの誘い、と見た方が良いのかも、な。
[罠の可能性もあるけれど。
あてもないまま歩き続けて一向に変化の無い風景はもう満腹で。
多少の危険であろうと、変化がある方がまだマシだと、蝶が飛ぶ方へと付いて歩くことにした。
すると、途端に景色は変化を見せ始めて。
木立から射し込む光はおろか、向かう先から差す光はどんどん広がっていき。
ほどなく、私自身も開けた場所へと辿りついた]
─ 平原 ─
……………ここ、は。
[思わず後ろを振り返ってしまったのは、此処まで歩いていた森とこの場所があまりに違っていたから。
広さもそうだが、鬱屈とした森から抜けたにしては随分と穏やかな平地。
神魔の領域というものは常識の外にあるのだな、と今更ながらに思いながら、さて此処まで導いてくれた蝶は何処に───と視線を巡らせて。
>>111視界に入った黒髪、得物を握るその姿に、目を見開いた*]
─ 平原 ─
[その姿を、見間違えるはずもない。
もう二度と会いたくないと思っていた、でも忘れることも出来なかった姿、だから。
凍り付いたように目が離せないまま、呆然と見つめて。
けれど、向けられた視線、投げられた言葉はやはり私の知っている彼では有り得ないものだったから、呪縛は解かれて]
……それは此方の───…
って。
なんで、あなたがその、花を。
[そちらこそ何で此処に、と問い返そうとしたところで、胸に揺れたその花に気が付いた。
まさか、彼が私の相まみえるべき相手なのか、と。
現状を鑑みればそうだと理解するべきと、わかってはいても。
己の胸ポケットに挿した紫羅欄花をそっと手で隠しかけたのは、無意識の内*]
─ 平原 ─
[花を隠そうとしたのも無意識ならば、なんで、と紡いだのも半ば無意識。
だから、>>137答えが返ってきたのに少し驚いて。
簡素なその答え自体に、もっと驚いた。
驚いたというよりも、信じたくないという方が正しいかもしれないけれど]
……よりによって、なんで、貴方が。
[絞り出すように紡いだ声は、幾つもの思いが重なったもの。
>>138相まみえるべき相手が彼だったことも。
あの人と重なる面影を持つ相手が、よりによってあの人を重ね見た花を持っていることも。
どちらも受け入れ難い事とは、言葉にせずとも表情で相手にも伝わっただろう。
ぐ、と長柄を握っていた左手に力が籠ったのは仕切り直しという言葉を受けて、ではなかったけれど。
相手にとっては、その意図として受け取られたのかもしれない。
>>139得物を握る左手、込められた力を感じた刹那、その火蓋は切って落とされた*]
[>>*0宣と程なく蹴られた地、急襲とも言える動きはただ速く。
けれど、私にとっては応じられないものではなかった。
この間合い、距離の詰め方は人との打ち合いを最初に覚えた3年間で慣れていたものだったから]
……くっ!
[先ず狙われるのは頭、首など致命に至る箇所。
それさえ分かっていれば、その一閃を阻む手は如何様にもあるというものだ。
左腕を前に差し出しながら手首を返し、今だ刃先は皮の袋に覆わせたままの長い柄をくるりと回転させて跳躍してくる青年へと振り上げた*]
[>>*2長柄の動きに動揺しているらしきを見るに、彼はこういった長物相手には慣れていないようだ。
その割に最初の一撃への迷いが見えなかったのは戦い自体に慣れている故か。
ほんの数瞬足らずの情報から相手を分析しながら、直撃を避けて身を捻り、崩れた体勢のまま転がるところを見れば、追撃を避けてもあるだろうか。
間合いを稼いでいた方が有利なこちらが追撃する利はそも無いから、>>*3身体を起こした男の口端浮かんだ笑みまでも見遣りながら、ここからどうしたものかを考えていた]
(…しくじったな)
[頭の中でぼやくのは、持った長柄、その先の革袋を外しておかなかったこと。
これを掛けたままで戦うには限度があるが、かといって悠長に袋を外すのを待ってくれる相手でもないだろう]
(防戦しているばかりでは、力負けしてしまうだろうし。
かといって、杖術に用いるには刃の重みで力を削がれる。
どうしたものかな)
[そんな思考は、目の前の男が得物を持ち替えた手の動きに少し途切れ。
横一線に振り切られたその刃から放たれた赤い煌めきに、即座浮かんだのは直撃したらまずいということと。
これを受ければ厚い革すら焼き切れるかもしれないという閃きに。
避けるではなく、叩き斬るように。
革袋を覆ったままの刃を雷撃目掛けて振り下ろした**]
とーさん、それ、なんだ?
[未だ何も失わずにいた頃。
父が新たに鍛える刃が、いつもとどこか違う事に気づいて投げかけた問い。
それに向けられたのは、楽し気な笑みだった]
「なに、ちょっと、造ってみたい、ってぇ気になったんでな。
未来の戦乙女様への贈り物って所だ」
……みらいのいくさおとめ?
[冗談めかした言葉に素で返した言葉はちょっと棒読みで。
その反応に、父はやれやれ、と苦笑していた]
「お前のそういう所は、母さんそっくりだなぁ……」
なにそれ?
ていうか、それ、『龍爪』にちょっと似てる?
[ぼやくような言葉にも素で首を傾げつつ。
少年の好奇心は刃の形へと向けられる。
そこから、刀の種別やら何やらの話へと話題は以降して行ったから、『未来の戦乙女』が誰を示すかの追及はその場ではされぬまま。
もっとも、少年に教えれば贈る相手にもすぐバレるから、父としても仔細を説明する気はあまりなかったのだが]
[意識の奥底、帳の向こうに沈んだ記憶。
見えた刃は帳を揺らがす。
けれど、それは今だ、小さな漣にとどまるのみ。*]
[突然の襲撃に面して祖母から渡された袋筒。
襲撃当時は私が武器を取る事態には陥らず、悲惨な現状への対処に追われるのに必死で。
且つ、時を遅れて知ることとなった不幸を中々受け入れられなかったために、その封を解くまでには受け取ってから半年も過ぎてようやくだった。
開いた中から出てきたのは、祖母がまだ早いと言っていた通り私の身丈にはまだ長すぎる柄と、その先に据えられた煌めき。
それは何の見識も持たぬ身であっても、業物だと分かるものだった]
……イェンスくんのとうさま。
わたしの、ために
こんなすごいの、用意、してくれてたんだ。
[声に出せば、あの温かな笑顔が今にもすぐに脳裏に浮かぶ。
その顔も、もう二度と見ることは出来ないのだという思いも同時に浮かんで。
いわばこれが彼の人の形見の品ともなったのだと、視界が歪んだ。
溢れる涙で刃を汚さぬように、身を離して、手で顔を覆い]
なんで、こんな…
やだ、やだよ、やだ…
もうあえないなんて、やだ、やだよ…
どこいっちゃったの、ねぇ、
いぇんすくん、
いぇんすくん…!!!
[行方知れず、けれどきっと彼ももうこの世にはいないだろうと。
そういわれた名を、何度も呼んで泣き崩れて。
けれどこの慟哭は誰に言ってもどうすることも出来ないとも分かっていたから。
私一人と、この薙刀だけの秘め事として、ずぅっと胸に、しまいこんできたものだった]
[私の中で、あの3年の歳月はとても大切だからこそ。
目の前の彼に対しての感情は、複雑な色が入り混ざる。
全くの別人だとしか思えない諸々に、もしかしたらという期待すら抱けない。
けれど、他人の空似というには面影が重なり過ぎて、刃を向けるのにどうしても払えない迷いがつき纏う。
それをも切り捨てるつもりで振り下ろした切っ先は、雷撃に焼かれた革が異臭と共に損なわれてその姿を露わにしていく。
光を受けて煌めくそれは、刀程の長さを伴った刀身で。反り込みに対して幅がやや細いそれは、知識を持つ者が見れば今の私に合わせて誂えられたものと思われただろう。
それと同時に、彼の持つ得物との相似点にも気付かれただろうが、この場には私と彼しか居らず、私にはその見識が無く]
ありがとう。
おかげで外す手間が省けた。
[だから、私は何も気が付かぬまま、皮肉めいた礼を紡いで切っ先を彼へと向けるのみ*]
[>>*22雷撃によって露わになった刃に、相手の唇が何かを紡いだのは分かったけれど。
その呟きまではこちらに届かず、代わりに届けられたのは>>*23私が紡いだ礼へと返された声。
私が彼に対して抱いているものを彼がわからぬように、彼が私を見てざわめく意識の奥に私も気付けぬまま。
両の手で支える長柄、切っ先を向けた時点でこちらの体勢は整っていたから、>>*24再度の動き自体には焦りもなかったが]
っ………!?
[間合いに入る直前、突如上がった速度に虚を突かれ。
視界から一瞬相手を見失い、左側面へと回り込まれたと気付いたのは既に手の閃きが繰り出されていて。
咄嗟、腕を交差させて柄を反転させながら身を捩り]
Ground move!
[紡いだ呪、蹴りつけた足元がぼこりと凹み、代わりに周囲の地面が一気に盛り上がる。
相手の強襲を完全に避けるまでは不可能でも、少なくとも致命を避けることはこれで叶っただろう。
とはいえ身動き自体は難しくなった状況に更なる追撃を避ける為、ぐん、と振り回した長柄、刃はどこか掠め切るくらいは果たせたか*]
[こうして戦う中、なぜか過るのは3年間の鍛錬の記憶。
それはきっと、私が初めて覚えた他人と戦う間合いだからだ。
何度も手合わせをして、何度もケガをして。
でも、その度にこうしたらいいんじゃないか、こうしたら追撃になるんじゃないか。
そんな話をして、たくさんたくさん、覚えていったから]
あのね、わたし、
とちがみさま?のかごが、つよいんだって。
だからね、いまはまだムリだけど
おっきくなったら、じめんをうごかしたりとか
もっとたくさんのつちを、もちあげたりとか
[ふいに話し始めたこちらに、彼はどんな顔をしていたか。
それに構わずに話を続けたのは、どうしてもお願いしたいことがあったから]
そしたら、もっとたくさんのたたかいかた、
できるよーに、きっとなるから
まっててね。イェンスくん。
[そう言ったのは、私との手合わせで彼が何かを使わないようにしてると気がついていたから。
それが何かまでは知らなかったけれど、なんとなく寂しかったのだ。
手を抜かれてるとまでは思わなかったけれど、でも、全力を見せてもらえる自分にはまだなれていないのだとは思えて。
いつか、全力を出してもらえる自分になれるまで。
その時も彼はいてくれるのだと、幼い私は愚直に信じていた*]
[交差の最中、繰り出される技は記憶の帳をゆらり、揺らす]
……とちがみさまの、かご?
[稽古の合間、唐突に始まった話。
言われた意味がわからず、きょとん、としたまま、話を聞いた]
……へぇ……なんかそれ、凄いなぁ。
[てか、めっちゃそれ、攻め難そう……というのまでは、言葉にはしなかったけれど。
でもなんでいきなりそんな話を、と思った所に告げられたのは、待っててね、というお願いで]
あー、えー、と。
[唐突なお願いは、なんだか色々、見透かされているような気がして、妙な声が上がった。
武術の稽古とは直接関係ないから、と使わずにいる雷の力の事とか、違う間合いでの戦い方の事とか、いろいろ。
別に遠慮しているとか手を抜いているとか、ではないのだけれど。
何かしら、気づかれているのか、と思うとちょっと後ろめたいようななんというかな気持ちになってしまうのも確かで]
……う、ん。
[それでも。
向けられる言葉と瞳が真っ直ぐだったから、返したのは頷きひとつ]
俺も、まだまだ全然足りてないから。
全力で、ぶつかれるように、がんばりながら。
まってる、な。
[そんな未来が当たり前に来ると思っていたからこそ。
返す言葉に、迷いは、なかった。*]
[下がった視界、私を守るようにせり上がった土の囲い。
それは狙った通り、相手の強襲を空振りに終わらせてはくれた。
>>*32即座の追撃を避けるため振り回した柄に返った手応えから、どこかを掠めは出来たとも分かるが安堵にまでは至らない。
土くれを利用しての高い跳躍、落下の速度と威力を味方につけての追撃は、彼の十八番だったから。
だから、それが来ること自体は、意外でもなんでもなかった、けれど]
な───…!?
[>>*33上からの突き下ろし、急所ではなく得物を手放させるための狙い。
それは、私の記憶にあるあの幼い彼の動き、そのもので。
身体が覚えている感覚は、驚きに固まる私の思考を無視して、あの頃の動きを再現し。
結果、ぎしりという音と共に刃を食い込ませた柄が、その一撃を受け止めた]
[そんな身体とはうらはらに、私の目は驚きに見開いたまま、だったけれど。
次第にそれは、怒りに、憤りに変わる。
なんでその動きを、貴方が知っているの。
なんで貴方が、動けるの。
よりにもよって、あの人の面影と重なる貴方が]
なんで…
だれから、おそわったの。
[間近にあるその顔を、瞳を真っすぐに見据えながら、絞り出すような声で問いを投げた*]
[>>*42その顔を、瞳を間近に見つめて。
ますます重なる面影、湧き上がる懐かしさにより憤りも強くなる。
この人は違う、だってあの人はこんな目で私を見なかった。
あの頃の、ほかの人たちと同じ、理解できないものを見る目なんて、あの人は絶対にしなかった。
だから、もしかしたらすらも思い浮かばないまま、相手の言葉を聞いて。
より強まった憤りに、瞳揺らがす雫が零れ落ちて]
…うそだ。
おそわらなきゃ、みにつくはず、ない。
[先よりもより低く、絞り出した声で紡いだ後。
>>*43投げられた問いに、感情が溢れて、止まらなくなった]
あ、なたこそ。
あなたこそ、なんなの。
そのうごきは、私とあの人しかしらないはずなのに。
なんであなたができるの。
どうして、どこで、
なんであなたが
イェンスくんのうごきをしってるの!!!
[叩きつけるように声を投げつけて。
振り払うように薙いだ長柄と、脇差が引き抜かれたのは同時だったか*]
[>>*50横に薙いだのは、相手への攻撃というよりも子供の駄々のような動き。
だからこそ無遠慮な振り抜きは当たっていれば結構な一撃ではあったろうが幸か不幸か避けられて。
泣きながら投げつけた言葉、それに返された>>*51答えは思いもよらないものだった]
……え…
[唯一覚えていたもの。
他の事は思い出せないというその言葉に、初めて彼の面影、その理由と可能性が重なった。
そんな、まさか、でも。
動揺はそのままひっそりと抱いていた迷いをより深める。
けれど、相手はこちらに構わず、勝負をつけるために動きを整えて]
っ…!
[気付いた時には、先と同じ、けれどより強い赤い煌めきが彼の持つ得物に宿っていた。
それを受けることは、いくら業物とはいえこの薙刀であっても危うかろう。
ならば私が取る道も、一つだけ。
たん、と足を踏み鳴らし、呼吸、鼓動を合わせ]
───Ground Emit!
[発した呪と共に振り切った刃から土礫を放ち、雷撃を迎え撃たんと──14(20x1)*]
[魔力を伴った土礫は、こちらへと翔ける赤き龍、その身可模った雷の全てを受けて打ち砕かれる。
その結果生じた土煙は、そのまま相手の視界とまともな呼吸を遮る術と変わって。
そんな状況の中、まともに応戦できる者は──それこそ余程の用心深いものや達人くらいだろう。
得物を片手に持ち替え一息に駆け、空いた右手で彼の胸倉をつかむとそのまま地へと押し倒して。
膝で胸を押さえ、身動きを取れなくして。
本来ならここで、左の手に持つそれを突き立てる、べきなのに]
……………あなたは。
ほんとに、なにも、おぼえて、ないの。
[ぱたん、と。
力なく降りた左手から、ゆっくりと離れた薙刀、長柄が立てた音が小さく響いた*]
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