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ふむ。
[ふと視線を向ければ、光に焼かれる魔王の姿が見える。
ひとつ頷いてから、護りの蔦を光に弱そうな魔の前に動かした。
先ほどの、カヤの人徳分のお返し、というわけでもないけれど。**]
ふ、ふふふ。 ふふふふふ。
[守りのために編んだ魔力を維持しながら、思わずというように笑っていた。
押さえてもこみあげて来る。愉快でたまらない。]
勇者と魔王が協力するのは、きっと長老も見たことはないのじゃ。
愉快じゃのう。
[生ける防壁を操る必要が無ければ、手も叩いていただろう。]
[勇者と魔王の攻撃が連携らしきものを見せ、結果、強大な力を見せていた魔神が打ち倒される。こんな光景、おそらくこの世界始まって以来、初めてだ。
そこに立ち会っているのが、愉快でたまらない。]
結局、吾らも魔族も同じ世界の生き物で、
あやつらは外つ世界の者、ということじゃな。
[笑いを消して、ふとそんなことを呟いた。]
[魔神を消滅させたクロートが墜落するのも見えていたが]
吾らが勇者ならば、あの程度で無様は見せぬよ。
[おおむねカヤと同じことを言って、しかも手助けするでもなく見物していた。**]
吾に似ているということは、
アルフレッドの姉君は美人で万能な才女なのじゃな。
[胸張ってどや顔で言うあたり、少々変わり者なのは間違いない。
そんな遣り取りをした過去も、大切な思い出のひとつだ。*]
― 闇の扉開けば ―
もちろんなのじゃ。
[クロートの問いに、当然の声で答える。]
光でも闇でもねぶねぶした謎生物でも、
吾らがぶっとばしてやるのじゃ。
[胸張って、勇者の後に続く。
勇者が光をもって 人々の願いを集め希望をもたらすのが役目であるならば、自分は彼らが人々の期待の重さに負けぬよう、道行きの暗さに挫けぬよう扶けるのが役割だ。
と自覚しているかはともかく、不安の欠片も寄せ付けぬ顔で薄闇の中へ踏み入れた。]
― エントランスホール ―
ふむ。
闇だから暗いとはまたわかりやすいのう。
[ホールを埋める薄闇に手を伸ばすも、闇の精霊の力は感じられない。
ここはどこまでも異質だ。
奥で待ち受けていたものも、最初の魔神と属性は違えど気配は似ている。]
どうせこちらの言葉など聞きはせぬのだろう、
と言って、こちらから対話を捨てるのも難なのじゃ。
おぬしらが単なる"現象"ではなく、思考持つ者ならば
答えよ。
おぬしらは何者なのじゃ。
[声を張り、胸の内でゆっくり3まで数える。]
[もとより返答は期待していなかった。
答えがあれば、少なくとも何らかの意思疎通ができる存在と見なせる、程度のこと。
彼らの目的自体は分かりすぎるほどはっきり示されているのだから、阻止する以外の選択肢はない。
3を数え終えた後、風精の力を借りて階段の手すりに飛び乗り高さを稼ぐ。]
[術を紡ぐとともに、手を前方へゆっくりと薙いだ。]
[突風や真空の刃などはなかった。
ただ、微かに耳鳴りのような気配がして、前方に居並ぶ黒鎧の一部が内側から砕けて崩れ落ちた。
空気だけを振動させ、鎧を共振させて内側から崩壊させる。
風精の力を借りた、守りが固いもの相手の常套手段だった。
指向性の"見えない音"に晒された鎧は、砕け散らずとも脆くなっている者もいるだろう。**]
吾の里にも、あのような者どもの伝承は伝わっておらぬの。
[エルフの古老たちは、それこそ気の遠くなるような過去について語るが、その中にも今戦っている相手のようなものたちは出てこなかった。]
あやつらの言い分を信じるならば、或いは天地開闢に関わる者やもしれぬが……
否。神であれ魔であれ、吾らが滅ぼされる義理はないのじゃ。
クロートもカヤも、優しいの。
[寂しい、という感情は相手に寄り添う気持ちから生まれるもの。
彼らの心に微笑んでから、にやりと笑う。]
だがもっと気軽に考えてよいと思うのじゃ。
意思持つ者なら、吾らが力示し続ければ話し合いも考え始める。
それをせぬのなら、あやつらは嵐や地震と同じ、単なる天災ということじゃ。
相手に吾らのような意思があると思わずともよい。
おお、なかなかやるのじゃ。
[人も魔も、それぞれが危なげなく力を振るって、黒鎧の騎士を蹴散らしている。
炎の竜巻が床と天井を焦がすさまには、思わず歓声も出た。]
ふむ。
じゃがいささか鬱陶しいのう。
[どれだけ蹴散らされようと押し寄せては振り下ろされる剣や槍、仲間もいるというのに容赦なく降ってくる矢玉に、しばらくは回避に専念させられる。]
そうじゃ。
そこな竜巻。ちとその風借りるのじゃ。
[何本目かの矢を躱した後、側を通った炎の竜巻を指し、糸を手繰るようにくるりくるりと腕を回した。]
[術が紡がれると共に、小さな風の精霊たちが周囲を飛び回り始める。]
[風弾はタイガの脇を掠め、緩慢な動きで剣振り上げていた鎧騎士へと着弾し、吹き飛ばした。
別に手を出さずとも、彼自身が打ち倒せていただろう相手だが]
おぬしの戦い方はクロートによう似ておるのじゃ。
後先考えておらぬあたりが。
[先ほど牙剥かれたお返し、とか、勇者の背に衝撃波打ち込んだ意趣返し、とか、そんなこんなはとりあえず、白い歯を見せて笑った。]
さて。
では、吾もそろそろ本気を出すとするのじゃ。
[何が、では、というわけでもない。
単に相手の数が減ってきたので、複雑な術を構築する余裕ができただけのこと。
右手で天を指し、左手で地を指して精霊に呼びかける。]
[ふわ、と金の髪が浮きあがった。]
[呼びかけに応じた雷の精が、揚々と飛び出して騎士を撃つ。
その雷光は、一瞬ホールを眩く照らした。
騎士が密集する場所に向けて放たれた雷は、最初の騎士を貫通し、次々と周囲の騎士へと飛び移って光の網目を描く。]
うむ。
金属鎧には、やはり雷なのじゃ。
[相手の鎧が金属だったかはさておき、稲妻消えた後には焦げた騎士たちが倒れていた。]
[取り巻きもずいぶん減って、残る大物は4枚翼の魔神のみ。
未だ階段に陣取り守りを固める騎士たちを見て、にこやかに笑う。]
それ。
これをプレゼント、なのじゃ。
[戦場に残る水精の余韻を少し手繰り、己の友たる精霊の力を乗せる。
ひらひらと白い結晶が階段の方へ飛んでいった。]
[水の気を巻き込んで、氷の精が踊れば、階段が白く凍り付く。
すぐに溶けてしまうだろうが、それでも何体かの騎士が足を滑らせ、下を巻き込んで転げ落ちた。]
うむ。ストライク!なのじゃ。
[なんて、胸を張る。]
[思えば、昔もこうして遊んだと、名残の雪の結晶を掌に受け止めて思い出す。
木の枝に一緒に雪を降らせて凍らせて、魔法の杖だぞー、なんて振り回していた、他愛もない時の記憶。
昔々、自分より若いエルフの子供なんて見たことがなくて、一番近くても数百歳は離れた大人たちに囲まれていた頃のこと。
同じエルフで、年が近い子に会えただけで嬉しかった。
色の違いなんて、些細なこと。
だって、同じ木にだって、違う色の花が咲く時もあるのだから。
"かみさま"なんて呼ばれたのにはびっくりしたけれど、はしゃいでノリノリで"かみさま"していた。]
[それから、敵味方として初めて出会った時、"かみさま"なんて呼ばれた時には目を丸くしたものだけれども、結局、あのときのことを口にする機会もなく]
……ふふ。楽しいのう。
まさかこういう機会がこようとは、なのじゃ。
[残りの雪でぱっと短い杖を作り、くるり振り回す。
そのひと振りで、杖ははらはら解けて消えていった。]
ふむ?
なんと。吾らの言葉はちゃんと聞こえておったか。
[闇の魔神の言葉を聞きとがめ、なるほど、の顔をする。]
おぬしらは定められた条件で動き出す自動人形のようなものかとも思っていたが、そうでもなさそうなのじゃ。
問いかけに応えぬのであれば、口が無いも同じじゃがのう。
[珍しくも険しい声で言い、身構える。
口の中でひとつふたつ、精霊への呼びかけを紡いでいた。**]
うむ。良きなのじゃ。
[闇の魔神へ立ち向かう人と魔の連携は、先ほどよりもいくらか密に見える。
個々の力がそれぞれに振るわれ、黒き魔獣がそれを収束させて魔神討ち果たすさまを、文字通り高い位置から見ていた。
足元に芽吹かせた一本の蔓に腰掛けて、天井近くから眺めていたのである。
魔神の最後のあがき、或いは討伐の余波がこちらに及べば即座に防御を展開する構えであったが、それも必要なく終わる。]
やはりあの猛進の破壊力は見事じゃのう。
[片方が猪突ならば、片方は猛進。
なんて、一人で言葉遊びを楽しんでいた。]
[それよりも気になったのは、ふと現れて消えた妙な気配と妖魔のこと。]
ふむ。もしや、次の相手は「話の通じる奴」かもしれぬのじゃ。
まだ御主とやらは遠そうじゃがのう。
[蔦の上に座って足をぷらりぷらりさせながら、妖魔が消えたあたりを見つめていた。*]
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