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おおおおお
[がつ、と斧が地面を噛んだ。
斧頭を支点に強引に勢いを止め、正対する方へ身体の向きを変える。
同時に左手で引き付けた柄を体の前に置き、太刀の軌跡に合わせて外側へ押しやるよう受け止め、逸らす。
切っ先に触れた左腕から、ぱっと赤が散った。]
っっらあぁ!
[斧の刃に跳ね上げられた土が宙を舞う。
土ぼこりを巻き上げながら斧頭を右から左へ、低い軌道で半円に振った。
足を払うか、鉤に掛けて引き倒そうと狙う。]
[足元への一閃は空を斬り、相手の身体は刃の圏内から外れる。
と見えたのはごくわずかの間のこと。
下がったかと思えば急激に向きを変え、白刃の風はもう目の前にある。]
ちっ、
[相変わらず速い、と感心する間もあらばこそ。
迫る切っ先に、思考を飛び越えて身体が動く。]
[最初、こちらから攻めるとなった時に、決めたことがある。
今回は徹頭徹尾、攻めてやろう。
その思考の切れ端が、身体を前に押した。
風を貫く一閃など避けきれるものではない。
前に出る前傾姿勢をさらに深くすれば、狙いの中心を外せる程度。
肩から背中まで、浅いとは言い切れない程度に赤の線が入る。
それで怯むことなどなく、踏み出しながら一撃を繰り出した。
斧を振り抜く形から素早く持ち手を変え、追いかけるような軌跡で石突の側を振るう。
こちらはやや高く、脇腹のあたりを狙っていた。*]
[攻める、と決めてみたものの、速度に勝る相手に攻め続けるのは至難の業だ。
だからこそ面白い。
腕に伝わる衝撃は、クリーンヒットにはほど遠いがそれなりに重い。
もらった背の傷とどちらが上かな、なんて考えると楽しくなってきた。]
そっちも相変わらず切れ味良いな。
[背中は半ば赤く染まっているが、痛みは今は意識の外だ。
とはいえ、痛手に変わりはない。]
次、だな。
[暴風と遊ぶのは楽しいが、これ以上はいろいろとやばい。
何故かふっと、懐かしいシスターの顔など浮かんだ気もする。
あいつとボロボロになるまで打ち合って、並んで叱られたなあとか、そんな思い出。
それを記憶の棚に投げて、柄を握りなおし、
ダーフィトと視線が合って、笑み浮かべ、
互いの息が合った瞬間に、声も予備動作もなく地を蹴った。]
[斧頭を右後ろに低く構えて踏み込み、薙ぎ切るとみせる。
だが今回は奇をてらった。
踏み込みの途中で斧を地に打ち込み、身体に急制動を掛ける。
相手の攻撃をずらしつつ石突で突き上げようという試みだ。*]
[互いの息が合うこの感覚は、並の奴相手にあることじゃない。
動いたのはきっと、どちらが先でもない。>>+29
薙ぎ切りのフェイントに反応して跳んだ相手を、下から突く。
必中の形をひっくり返すなど、まず無理だろう。
その無理を、軽々とやってのける奴が、ここにいた。>>+31
身体が熱くなる。
これだからたまらない。]
ふっ、
[短く息を吐き、得物を蹴られた衝撃を押さえこむ。
振り仰げば上から雪崩れ落ちるように太刀が降る。
下手に受ければ、鋼でも両断する刃だ。
どうする、と思うより先に、どうしようもなく獰猛で楽しげな笑みが浮かぶ。]
おおおおっ!!
[肚の底から吼えて、斧槍を頭上に掲げた。
降ってくる刃に柄の中央を合わせ、押し込むのではなく柔らかく引く。
ぎりぎりまで威力を殺し両断されるのを避けながら、横へ押し倒す向きに力を加えた。
ついに耐えかねて柄が断たれるのと同時に、右手を半身の柄ごと相手に叩きつけ、地面に倒すのを狙う。
止めきれなかった刃は身体を捻ってできる限り避けたが、左肩から胸板まで長々と線が一本刻まれた。*]
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