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―――っ
――――…ふぅ…
[適当な物陰を探し腰を下ろせば、鞄の中から水筒を引っ掴み、中身を喉へと流しこむ。
落ち着いて言葉を発せるようになるまでは、その場から動かず探し人の言葉を待つだろう**]
―――っ、――
[今度こその、本気での助けを求める声は。意思の力によって、ねじ伏せられた。見つかるわけにはいかないと、それは最早固定観念であるかのように、何故それをしなければならないかがなくなっている。
目の前の命を脅かす存在に対する恐怖。心を占めるのは、その感情だけ]
たす、けて…!―!
[その声は、今までよりもはるかに近い位置、大きくはっきりと聞こえただろう。真摯な声は迷いを断ち切って。
たすけて、の後にポチを、と続いたのまでは声になっていたかはわからないが。]
― 黒い太陽の平原から魔王城へ ―
――――っ!
[ふいに届けられた意識に含まれた捻れ、ふんだんに含まれた感情に当てられ、金貨は酷い吐き気を覚えた。この声が平原についてすぐさまの物だったなら、嘔吐の一つや二つはしていたかもしれない。
気持ち悪い、目が回る、眼球が回る、視神経切れそう、吐きそう!――…魔界の理を受けている身体の中を蠢くような不快感を無理やり抑えこみ、金貨は焦燥に任せて駈け出した。
探し人が無意識にぶつけているだろう不快感、手繰るまでもなく迷うはずもない。気持ち悪くなる方に向かえばいいと。]
― 魔王城 ―
[敷地内に入る頃には気力さえも尽きかけたけれど、新たに届いた声からは、捻れは消えてしまっていて。
あったのはただ、救いを求める声だった。
迷いない祈りの前に立ち上がれないわけがない。金貨は神としての救いを与えない変則的な存在なれど、これでも一応神なのだ。
ただ、一つだけ問題が起きている。この短時間で、吐きそうになったり気力みなぎったりと、力を削られたり注がれたりの今の状態、神力を抑える余裕はない。]
[程なくして炎と犬が向き合う場>>393へと、犬が護る聖職者が探し人かどうかはわからない。
確認するのは後でいいと、勢いを緩めないまま、硬貨が届く距離まで駆けた。
――…青や白じゃないですし、ね
犬と炎の間に撒き銭し呼び出すのは金の壁>>290
炎の色を見るにすぐには溶かされないだろうが、炎以外の攻撃手段があるなら危ういと、炎を閉じ込めきる事よりも犬を掴んで逃げ出す事を優先した]
……ちょっとすいません、よ!
[危機的状況だったというだけで本当にあっているかはわからないが、一旦離れるのがいいと、推定リヒャルトを抱えるのも忘れない。
どこまで逃げればいいのかわからないので、止められでもしない限り脇腹が悲鳴をあげるまで全力で走り続けるだろう。それこそ>>0:#02(10x1)ぐらいまで]
[そして力尽きた――]
― 記憶の書庫 ―
[案の定というべきか、魔界の風に揉まれに揉まれ、全力で走るという行動を繰り返し続けた金貨は、書庫へと辿り着くやいなや受け身も取らずに汚破損本へと倒れこんだ。
助けた仔犬が顔面に前足でてしてししてくるのは、好奇心からのものなのか、それとも倒れた金貨を心配してのことか。
肉球の感触を受けながら、身じろぎ一つせず推定リヒャルトへ声をかけた]
……リヒャルトさん、ですか?
[そうであってほしいという祈り込めて、確認のための問いを飛ばす。返答はどのようなものだっただろうか]
……リヒャルトさん、ですか?
[疲労困憊の状態では、思念を切りきることはできなかったようで、音と意識で同時の質問になってしまっているのだが……
金貨は自分が話している言葉であるが故に気づかない。]
[言葉と同時、拓かれた意識で問われた言葉に、感情が流れ出す。それは直接に相手の意識へと]
――っ、…
[迷い。戸惑い。混乱]
―わたし、は
[意識が繋がるのは、>>0:56自分と相手のみだとは気付かぬままに、つい返事を返して。返事が届く、それこそが『リヒャルト』である証明だとは気付いていない]
― 記憶の書庫 ―
――…
[届けられた混乱は金貨の体力を削ったが、彼が探し人であると証明するなは充分で。]
落ち着いてから、で、いいですよ。
急かしたようですいません
[と、なれば彼からの名乗りを急ぐこともないだろうと。]
……ええと私は、ベネディクトでしたね、ベネディクト=コーカと申します。
ああ、連れ去るような真似をしてすいません、あの場でしのぎ続ける方法が浮かばなかったものですから。
[もぞもぞ起き出すと、神とは名乗らず人の振りをするための名を口にした。]
それと、すいません。
少し休ませてくださいね。
[ふらふらと本棚の裏に隠れるようにへたり込むと、鞄から水筒と食料を取り出した。
取り出した食料に干し肉が含まれてるのは、仔犬のためだったりする。探し人を護っていたのだ、魔物だろうが感謝を示さねばならないと。
まあ、そもそも金貨のいる世界での獣の類いは、害か益かでしか分類されない。
出すものを出した後は、マントを毛布がわりにして、その場で眠ろうとしただろう**]
――…。
[眠る彼に伝わるこころが、目が覚めても残るかは分からない。
こころにあるのは、不安。小さな護衛を抱えていても、仔は庇護しなければならない対象であり。
魔界でひとり、自分の身を守れるかすら分からず。ここにいれば。彼がいれば、安全かもしれないのに。自分の勝手で、離れようとしている]
……ごめんなさい…
[ぽつりと浮かんだ言葉を残す。その言葉が妥当なのかは知らない。
そうして気付く。ほとんど、言葉をかわしたこともない、のに。
どこかで頼りにしてしまっている、自身の弱さ]
……ごめんなさい。
[今度の言葉には、きちんと感情を乗せて。けれど]
――…。
[立ち上がるのは、やめない]
― 記憶の書庫 ―
[眠りについてからどれほど経っただろう]
――…
[混濁した意識は、彼の不在>>525を飲み込まず、起き上がろうとしたものの、指先に力が入らない]
……
[“彼”がいるつもりで声をかけようとするものの、震えた唇は音を送りだすまでには至らずに、言葉を紡ぐほどの力の余裕が今はない。
言葉を口に出来たなら「参りましたね」くらいは言っただろう。
こうなっている原因に、金貨は心当たりがありすぎる。]
[一言で言うならば力の使いすぎ。
二箇所で発生させた金塊>>290>>425は、発生源のほとんどが金貨自身の生み出した、本来は存在しないはずの金貨である。
一枚二枚の少数ならば世界を誤魔化すこともできるのだが、百枚千枚規模になってしまうとなんともしようがなくなってしまう。
崩された均衡は崩したものの力で補うもの。
神であるが故の不便さは世界が変わってもついてきてしまったようだ。
有り余っているはずの神力は、世界が閉ざされたことによって、取り出すには時間がかかるようになってしまったらしい。
力を使ったことによる負債を返済し終えた金貨は、動けるくらいになるまでは動こうとはしないだろう]
――…
[なんとか動けるようになったなら、この世界でも力を稼げる場所に行こうと心に決めて、金貨は再び目を閉じる。
交わる金貨の力の在りかは、金が行き交う場所、財を求める場所、交渉事が発生する場所、人々が行き交うだろう場所である。
該当するだろう市場や交易所のある街や、富と金の行き交う闘技場は、どちらも現在危険地帯になっているのだが、そんなことを知りようもなく。
彼と仔犬が居るはずの空間に物音がしない事に気づく余裕があったなら、這いずってでも探しに行っただろうけど、そこまで意識する余裕はなかったようだ。*]
[身じろぎすると何かが音を立てて床に落ちた。重くなってしまった瞼をなんとか開き、落ちたものを確認する。
それが聖印>>525であることを確認すると、視界に入れたくないと言わんばかりにマントを被ろうとしたのだが――…聖印の持ち主に思い当たれば、聖印を拾い上げようと手を伸ばす]
…………
[だが、うまく力が入らずに、聖印の上に手を乗せるだけになってしまった。]
[彼の神の人柄(神柄?)は知っているが、彼の宗教を金貨は知らない。
欲望に深く関わる神であるが故に、金貨は他の理の宗教を深く知ろうとはしない。
世界によっては、存在自体を悪と呼ばれ、存在自体を罪と呼ばれる。金貨が他の世界の宗教を見ないようにしようと考えるのは、無理もない事だった**。]
――…
[回復しかけた力は、ゆるゆると金貨の意識を流す。
不安で、不安で、溢れ出しそうなほどの感情の奔流の中にあれど、声は紡がることはない。
何かに縋りたいと思えど思っても、相手が聖印の持ち主だと考えてしまえば、言葉にすることができない。
知らない、彼のことを自分は何も知らない。
四番目の神とは名乗ってしまった、金貨であると名乗ってもいいのだろうか。
何かを言いたいような、言いたくないような、そんな意識を醸し出しつつ、不安定な状態故に再度力尽きた金貨の意識は闇に沈んだ**]
[ふと、流れ込んできた感情。なんだろう。この感情は、自分のものではない。
疲労感――不安?
こんな風に、だれかの心が流れ込んでくるなんて。ただひとりしか、知らない]
―…、ベネディクト、さん?
[目を覚ましたのだろうか。目が覚めて、自分がいなくて…こんなに、不安で。
試しに彼が名乗った名を呼んでみるけれど、こころが繋がったのはほんの短い間]
大丈夫ですか?なにかありましたか?
[呼びかけてみるけれど、眠る神には届いていない。彼が一度目を覚まして、すぐに眠ってしまったなんて知らない。かえらなきゃ。焦燥感は募る]
…ごめんなさい。
[無理を、させて。]
ありがとうございます…
[こんな自分でも、探してくれて。]
[多分、今なら気付かれない。額に触れた手を滑らせてもう一度垂れた髪を耳にかけなおし]
あなたが神としておわす世界なら、わたしは喜んで参りましょう。あなたがわたしを、いらないと告げるまで。
[ずっと迷っていた。けれど。いつか>>0:41を、もう一度]
――
[その小さな頭がマントを羽織った肩の上に落ちたのは、眠りに落ちる前か無意識の産物か――*]
― 記憶の書庫 ―
――く、ぁ…
[欠伸を噛み殺しながら目を開いた金貨の目に、真っ先に飛び込んだのは真っ黒い大きな双頭犬の眠る姿。]
…………育っ…た?
[肩の重みに視線を向ければ、探し人だった聖職者の眠る姿があり……となれば、真っ先に思いつくのは聖職者と共にいた仔犬の姿で。]
魔界の生き物って成長早いんですねぇ
[故にこの勘違いは、親犬の毛皮に潜り込んでいた仔犬が抗議の声をあげるまで続くのだった*]
[思ったよりもだいぶ調子がいいのは、彼の祈りによるものだろうか?
見返りを求めない祈りなど金貨は向けられたことはなく、その心地よさに微睡みそうになるのだけれど]
――…名乗りたくなくなってきました。
[それは“何の神か”を未だに伝えてない状況で向けられた祈りなのだ、名乗ってしまえば終わってしまうのではないかと。
遠くない未来に訪れるだろう喪失に、金貨の心は粟立つのだった*]
[眠る聖職者の髪をあやすように梳いてから。炎によってこげた毛先、頬に走る真新しい傷、返り血と泥で汚れた衣服へ視線を落とす。
何故、彼がこんな目に合わねばならなかったのかと思わずにはいられない。
元の世界から連れて来られ、神々のくだらない争いに巻き込まれ、魔界などに落とされて……]
――…ここから出られたら、元の世界に返しましょう。
[彼の祈りはとても綺麗なのだ。自分の世界可愛さに、汚していいものではない。我欲にまみれた神の世界など見せたくはない。
覇権を争う
見せたくない、巻き込みたくない。
そうしなきゃ保たない世界なら、それこそ滅んでしまえばいいのではないかと。奇しくも、聖職者の決意とは真逆のものを、金貨は心に抱くのだった。]
[飽きるまで彼の髪を梳いた後、そっと頬に舌を這わす。
なぞった跡は静かな光を湛え、鋭い爪でつけられただろう傷を塞いでいく]
……借り物の力ですいません
[借りた力は便利とはいえ、相手が起きている時にはちょっとどころではなく使いにくい力だった。
見える範囲の傷を癒やせば、またうとうとしはじめるだろう。
いつの間にか増えていた傷のこともある、今度はぼんやりしながらも、目を閉じようということはない**]
……、
[温かいものがふわりふわりと触れる気配に、未だ目は開かないまま甘えるよう身を摺り寄せる。体は思うよう動かないけれど、意識は次第に浮き上がり]
――…。
[膝の上から落ちた手のひらが、床の上置かれた聖印を持つ手の上落とされた。
眠る前にはあった筈のピリピリとした痛みがなくなっていることには、怪我をしたことさえ忘れていたために気付かない]
[意識がはっきりしていれば、ここまで躊躇いなく甘えたりはできないかもしれない。なにせ彼は神で、自分は神を称える聖職者。
けれど目が覚めきっていないからこその素直な行動。自分とは違う体温にくちびるの端に笑みが浮かぶ]
―、…
[呼ぶ声は、ほとんど言葉にならないまま呼気だけが吐き出される]
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