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ご覧、アズリウ。絢爛公が宴を催すそうだよ
お隣さんだもの、また顔を見せなければね
[口元に手をやってふるりと微笑う。
澄んだ蒼の羽毛を震わせて、鴉が首を傾けた]
ええ、子をいじめられて、おかんむりということかしら
──教会の子たちも困ったもの
手土産は何れにしよう
新しく調合したあの赤金の顔料をお見せする?
ルマニ公のお気に召すかしら…
[いつも少し煙と薬の残滓が漂うような住処も、吸血鬼が身動げば嫣然とした香油の薫りに塗り変わる。
褥から滑り出て、薄布を肩から落とした。
フェルクドラクの工房以外では未だ産み出されていない、硬質で透けるごとき白磁製品。
同じ重さの金よりも高値がつく真の乳白は、人ならざる者たちの肌のいろに似る]
“狩り”など久方ぶりのこと
そう、何を着て行くのが良いと思って?アズリウ
[暗闇しか映していない鏡の前に立って、ふわりとターンした*]
― タルボシュ城陥落後 ―
[山をふたつ、飛び越えるのには翼を使った。
けれど残りの道程は、ゆるりと地を駆る馬車によって]
もう近いかしら
広い街道を使うべきだったかな?アズリウ
[タルボシュ領も山岳地帯。その道を進むには些か華奢な造りの二頭立ての馬車からミリアムは顔を覗かせた。
うなじまでの長さの金髪は結い上げもせず自然に遊ぶまま。薄化粧の唇に指をあてがい、車窓を眺める。
ドレスばかりは、腰まで細やかなレース意匠の背面や袖の金刺繍が美しい。
そのドレスの布地も、車を引く馬の毛色も、宵闇にほどける漆黒だった]
[鴉羽色が、この眸には艶やかに深い青藍に映るのだと言ったとして、人間達の誰が共感するだろう]
― タルボシュの街:封 ―
まあ…着いたのだね
大きな街だこと
[馬車はやがて、雲霞のように立つ夥しい魔種の壁の前。
羽音と高い鳴き声が音色を変え>>70黒馬が嘶いた。
蝙蝠の城門が描く優美なアーチをくぐったならばそこは、街ひとつをテーブルに飾り付けた宴の膳の中]
ご機嫌麗しゅう、絢爛公
[中空に象られた公の似姿>>70に、馬車の中からふわりと手を振った]
[馬車は中央通りを、迷わず城へ向かい進む。
蹄が石畳を叩く音は軽やかで、街を覆う異様な空気など、流し目一つほども意に介さず]
折角のご招待故、フルコースで楽しみたいけれど
良い子はいるかしら
私、前菜にはうんと若い雛が好い
[そう口にはしながらも、窓から晩餐を物色はせず、招待主のある城へ真っ直ぐに視線を向け*]
― 御前 ―
──アレクシス!
[綻ぶように笑みを咲かせ、吸血鬼公の前でドレスの裾を持ち上げた。
しなやかに膝を折り、その次にはくるりと踵で円を描く]
良い夜だね
今宵も貴公の美しくあること
[ふふ、と口元に指を添えてささめくように笑う。
城のテラスからは街の様子も赤い満月もよく望めるようだった]
お土産に今回は、水瓶を持って来たのだけれど
気に入っていただけるかしら
[掌を上向けると、バサリ、羽音と共に空間を鴉翼が叩き、
白磁の瓶──水鏡を覗き込む水仙のように白く、極めて薄く焼かれてなお硬質な磁器を差し出した。
ころころと喉を鳴らす]
無地だから、華やかな貴公には退屈やも知れぬけれどね
口までを血の甘露で満たせば、薄紅に透けて模様が浮きでるように細工したの
ちょうど──
[ふわりと振り返り、黄金の鳥籠を見つめた]
満たすに良い血はあろうか
ふふ
[やんわりと優しい笑みを浮かべた]
ねえ、それで
──此度の貴公の仔はどちらにおられるのかしら?
おいたをした狩人はもう裂いてしまったの?
お会いしてみたいこと
[狩人達の一人でも、まだ城下に野放しにあろうと知れば、耀くように双眸を瞬かせるだろう*]
まあ、可哀想な雛
[かわいそう、とかわいらしい、の区別は曖昧。
連れられて来た侍童>>102に目を細めた]
お仔は?そう、繊細でいらっしゃるのだね。可愛らしいこと
[煌と眸を瞬かせ。
自らに侍るべく歩み寄る侍童に手を差し伸べた。
今しがた、絢爛公と指を交わしたように接吻を許し]
あらあら、雛が案内してくださるの?
[手を繋ぎ、くるると喉を鳴らした]
アレクシス、
貴公の興にも添えばと希っているけれど
およそ楽しんだなら、貴方自身とも遊びたいわ
逢わない時がながければ、想いは降り積むばかりだもの
雛ちゃん
まずは そうだね
この晩餐で人間が一番たくさん集まっているところへ
連れて行っておくれでないかしら?
[愛らしい侍童に微笑んだ。
すんなりと細く若木のように瑞々しい子。
手を繋ぎあって、ドレスの裳裾を引いた**]
― 城下 ―
[あの角柱の彫像は誰方かしら、街の守護聖人?
おや…誰か花売りが路傍に籠を捨て置いてしまったようだよ
ご覧、食器の店だ。素朴な木彫りだけど──ああ、閉まっているのだね]
可哀想な雛
お前の名はなんと言うのかしら?
[鎧戸を固く閉ざして息潜める気配の大通り。
侍童と指を繋いで、街散策の歩調はアダジェット程度。
紗の幕がかかった双眸を覗き込めば、まだ幼年期の音色を保つ声がその名を囀る]
では、朽葉のペテルと呼ぼう
[柔らかな髪を指で撓め、産毛の光る頬を撫でた*]
― 教会前広場 ―
[大聖堂前。
くすんだ石畳の広場には人口の泉、整えられた花壇。外で食事をしたい客のためのテーブル席。
それでもまだ十分に広いスペースに、今は影が二つ。
夜の帳に封鎖された街にあって、吸血鬼の姿はそれ自体が鬼火のように明瞭な輪郭で在った]
…着いたね
人間がたくさん、ふふ、怯えているの?可愛らしい
[聖堂の扉は、締め切っていない。
神の宮は人を拒まないのだから。
広場に立つ影──金髪黒衣のミリアムと、寄り添うように侍る少年の姿は、望めば彼らの目にも窺い知れるもの。そして]
──耳のある者は聴け
[聖堂の中。
羽撃音と共に、声が降った。
窓からの侵入ではなく。
その宙の吊り照明の腕木に直接、大鴉が現れて留まる。
蝋燭の灯が揺れた]
[より集まる民を睥睨し、鴉の嘴が鳴る]
聴け、儚い者達
お前達の中から一人、選び出して私の前に捧げよ
神の宮から放逐するひとつの犠牲を以て
他の者達については今この時、見逃そう
最も弱い者、最も老いた者
最も醜い者、最も愚かな者
最も罪あるべき者──
誰を第一に殺すのか、お前達自身で選ぶ自由を与える
[話し終えた鴉はゆったりと黒羽を広げ、羽繕いの仕草**]
ねえ、朽葉のペテル、
彼らはどうするかしら
[金髪──私の眸には燻んだ褐色に見える──を撫でると、侍童は短く囀った]
そう?ふふ、お前は賢いのだね
誰も聖堂から出て来ないのなら
あれの中に鍛冶の精霊を投げ込んで、大きな石窯にしてしまおう
ちょうど鐘楼が煙突になってくれそうだよ
[だって、この宴は街ひとつが舞台。
落城篇は観ていないけれど
……コロスが斯様に群れ隠れていては、姫役も騎士役も褪せてしまうもの]
ただ待つのも無聊だこと
ペテル、お前は円舞は踊れて?
[男童の薄い腰を抱き寄せ、片手だけを重ね合わせる。
いとけない曲線を描いた背を支え、踵を石畳に滑らせた]
[深く、クローズドチェンジ。
ナチュラルターン、クローズドチェンジ。
導かれてステップを奏でる少年の頬に淡い血色が宿る。
無音の三拍子
リバースターン、ホイスク。シャッセ、ナチュラルターン。
くるり、ゆるりと花畑を踏むように]
[舞の中。
いつの間に魂を啄み荒らされたのだか、彼は気づかないままかも知れない。
あるいは、弱く甘く、細く鳴いたから、恍惚の在処を識ったのか]
ああ……愛いこと
[幼い繭から醒めて、慄きながら翅を展げる蝶のよう。
首筋を血紅に染めた瑞々しい少年は、腕の中で廃頽へと羽化していく。
覚束なげにもつれる下肢を捌き、ふわりステップ。
優しく背を支えてひとつ、ふたつ。
雛がターンするごとに、血の雫が石畳に散って彩りを遺す。
くるり、ゆらゆら*]
/*
ちなみに前学んだけど2IDの人が入っている村、
「あいつとあいつをぶつけよう」みたいな動きかたすると、中身が同一人物で申し訳ない感じになったりするので気をつけなければならない
……
[無音の管楽が途切れる。
ふ、と脚を止めて手を離せば、体を重ねて踊っていた少年の躰がドレスの足下へ崩れ落ちた。
晒された白い喉は深く広く裂けて、溢れ出るものももう、枯れるところ。
既にほとんど息が残っていないと知れる。
聖堂から飛び来た鴉が愛らしい侍童の上を翼で覆い、そのまま影へ溶けるように消え去れば、残るのは広場一面に散った夥しい流血の残滓]
あらあら、まあ
自ら身を擲ってしまうの? うつくしいひと
[ミリアムは指をそっと口元に宛てがって、くるくると微笑った>>147]
他の子たちは、是としたかしら?
だめだよ、一夜の間を自分が生き延びるために他人を差し出すのだ、と
そう、きちんと理解させてあげなければ躾にならぬのだから
[胸の前で両手を合わせ、]
ええ……誓うとも
今この時、お前ひとつの犠牲によって
この教会の建物と人間には手を出さないと──
おや、聖女様と言った?
[莞爾と笑み、手をやわく広げたまま>>159]
人間は、群れてこそ更に弱いもの
聖女なればお前は精神的な支柱、目の前で無惨に喪っても、今宵正気を保てようかしら
いいの?彼らの心は、護らなくても?
[ふと、開いたままの入り口の方へ視線を流した。
僅かに左の眉を上げる]
……優しいこと。ありがとう聖女
けれど交渉事は苦手なのかしら
[魔物との取引は忌むように躾けられているの?と囁いて。
指し示す形の指を再び開いて、掌を差し伸べた]
盟約
契るならばこの手を──
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