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[一瞬だけ、ほんの一瞬だけ過ぎった思考。>>8
これだけ速ければ、時間を自在に操れそうだと。
あの頃に戻ってやり直すことも、今より先の時間を覗き見ることも出来そうだな、なんて。
夢追い人ですら鼻で笑いそうじゃないか。あまりの馬鹿馬鹿しさにひっそりと自嘲した。**]
[成績優秀。人当たりもよく、教師からの信頼もそこそこ厚い。
校内では優等生で通っている自分が、派手な外見から一目おかれている炉の目付役を自ら買って出たことを。
おそらく彼は、知らないはずだ。
素行や口調はよろしいとはお世辞にも言えないが、授業にはちゃんと出ているし、真面目に部活動に取り組んでいた一面もある。
けれど、どこにも見た目で判断する輩というのはいるもので。
修学旅行の日程が近づいた頃、問題を起こさなければいいが、と通りがかった職員室で話している声が耳に入ってしまい。
その言いぐさに、カチンときて。つい、言ってしまったのだ。
――それなら俺がついてますから、と。]
大河!修学旅行、楽しみだよな!
目一杯良い思い出作ろうぜ。
土産とか買いまくったりしてさー!
[満面の笑みを浮かべ、文庫本から自分へと意識を移そうと大河の袖を引っ張る。目が合っても袖は嬉しそうに掴んだままで。]
/*
帰ってきたらうちのこ可愛いすぎて。
いろりんって呼びたくなる。けど、それやったら殴られるだけじゃ済まない気がしてる。(まがお)
/*
あ、昨日はバタバタしていてご挨拶が遅れました。
久しぶりにenjuさんのペア村に参加させていただきます。
薔薇の下国が初めてなので発言テストはしたけどドキドキですね。慣れないと独り言すら間違えそうと言う。
イベントも楽しみだけど、他ペアもどんな展開されるのかそわり。そわり。
[窓の外を向いたまま、聞こえてくる憎まれ口。>>53
昔はあんなに素直だったのにと思わずにはいられない。
それを口に出したところで、お互い様だ、と言い返されるのが目に見えているので、黙っておく。]
足の長さと足癖の悪さに、関連性がないな。
長くても行儀のいい足を見習ったらどうだ。
[鼻で笑う気配は、恐らく身長を追い越した優越感にでも浸っているのだろう。
追い越したと言っても、たかだか1cm。誤差程度で機嫌が良くなるとは、お安いものだ。
さらりと炉の揚げ足を取りながら。
陽に透ける黄金色を追って零れた表情を、反射した硝子越しに見られているとは気づかないまま。]
[視線を文庫本へ戻しながら投げた言葉に、むっとする気配などどこ吹く風である。>>56
大袈裟なアピールを横目でちらりと見やり。
口元を本で隠したまま、欠伸を繰り返していれば目尻に涙が浮かんでくる。
不意に浅黒い指が伸びてきて本を倒され、間一髪、中途半端に開いていた口を閉じることに成功した。
横を見れば窓から此方に向きを変え、けらりと笑う顔を半目で睨み。]
そうだよ、寝不足なんだ。
昨日急に用事が入って、荷造りする時間が遅くなったからな。
眠れなかったって、遠足前の子供みたいなことするか。
……ああ、でも。
[人を指差すな、と炉の手を叩き落とし。
明らかに余計な一言を、呟いた。]
――昔のお前ならしたかもな。
なぁ、いろりちゃん?
[わざと、ちゃんをつけて呼んで意趣返ししてやろうと。
あれは小学生の遠足の前日。
楽しみすぎて眠れなかったのか、行きのバスでうとうとしていた小さい炉の姿を思い出して目を細めた。
帰りのバスでは、疲れもあって互いに寄りかかりながら爆睡してしまい。
学校に着いたところで先生に起こされたのを今でも覚えている。]
[炉と出会ったのは、小学生の――まだ志水大河と名乗っていた頃のことだ。
クラスが一緒になり。出席番号順で並んだ教室内で、すぐ後ろの席に居た炉に声を掛けたのが始まりだった。
あの頃は小柄で大人しく、遊びに誘えば素直な反応を見せ。
一人っ子だったこともあり、自分の後を追ってくる姿が可愛くて、友達でありながら弟のように可愛がって。
家が近かったこともあり。気づけば学校の中でも外でも、どこに行くにも一緒だった。
そんな日々が終わりを告げたのは、突然の転校。
片親でありまだ幼い自分にとって、父親の転勤という事情は抗いようがないものであり。
急に決まったそれは、ちょうど体調を崩して学校を休んでいた炉は勿論。別れを言えず終いのものだった。]
[転校という急激な変化に、衝撃を受けなかったわけではない。
けれど子供は順応が早いものである。
新しい土地、学校でもすぐに友達ができた。目まぐるしい変化の中でも、充実した日々を送っていたと思う。
けれど、ふとした瞬間。
小学生のあの頃を思い出すのだ。弟のように可愛がっていた、炉の姿を。
高校進学と、父親の再婚を機に。それらしい理由をつけて、単身、小学校の頃に居た街へと戻ることを望んだのも。
思い出の中にずっと、燻っているものがあったからだ。
――――ただし。
年月を経て美化されかけていた思い出は、程なくして現実をつきつけられ無残に散ることとなったのだが。]
[閑話休題。
不意に、新幹線内のあちこちから声が湧きあがる。
歓声に近いそれに周囲を見れば、窓の外を見て騒ぐ姿とカメラのシャッター音がちらほら。>>51>>62]
ほら、富士山が見えるってさ。
[窓を外を指差したが。
冷ややかな目で山を見やり、感動もへったくれもない呟きに呆れつつ一瞥されれば。>>85
文庫本を置いて、よいしょ、と隣の席へと身を乗り出した。]
もうちょっと他に言うことはないのか。
っていうか俺も見るから、ちょっと頭避けろ。
……へぇ。やっぱ近くで見ると、でかいもんだな。
[炉の肩へ手をついて、流れていく絶景に感嘆の息を吐き出した。*]
[日本と中国のハーフだった炉は、同じ字で別の読みが出来るせいで家の中での呼び名は適当だった。
ローだったり、いろりだったり、父も母もその時の気分で呼んでいたが、それでは困るだろうと統一された呼び名が“いろり”。
日本人の母にベタ惚れした父は、母の『いろりの方が可愛くて良いわよね』の一言に二つ返事で応じたのだった。
幼少期はそれで構わなかった。問題は思春期に突入してから。
男らしさを求めていた炉にとって可愛い名前は邪魔でしかない。
高校に入ってからはローだと自己申請することでいろりの名で呼ばれることはなくなった。この、目の前の元幼馴染以外には。]
その名前で呼ぶなって何度言えば分かるんだ。
[幼少期の片鱗もない鋭い眼光を向け、ドスの効いた声で凄む。
大河の細められた目が、昔のことを思い出しているのだと知らせ。
神経が逆撫でされる感覚が消えず奥歯を噛み締める。
バス内で寄り掛かって眠った時、あまり家以外で眠れない炉にとって安らかな心地を与えてくれた大河には感謝していたが、口にする機会はなく。言ったところで信じて貰えないだろうと苦々しく眉を下げる。]
[ドスが効いた声。凄む眼光。
派手な色に染められた髪。背丈が伸び逞しくなった身体。
昔の面影と重ならないものばかりが目につき、複雑な胸中を隠したまま。
ふ、と余裕を見せるように小さく息を吐き。]
足だけじゃなく、手も早いことで。
生憎その脅しは俺には効かないことくらい、わかってるだろ。
[今はいろり、と呼ばれることを嫌がることを知っているからこそ。わざと「ちゃん」まで付けての確信犯。
けれど何度も呼ぶなと脅されたところで、今までもこれからも首を縦に振ることはしない。
だから怒らせておきながら、はぐらかすように応えずに。
それは、今更ローと呼びたくない。
ただそれだけの、意地だった。]
[外見だけを見てるわけではないし。
どちらも、炉の名であることに違いはないことだってわかっている。
けれど。
その名で呼ぶと、まるで知らない誰かを相手にしてるようだ、なんて。
喩え、奥歯を噛みしめて苦々しい顔をされようとも。
近付いて肩に触れるだけで、嫌そうに顔を引きつらせようとも。
憎まれ口を叩かれようとも、凄まれようとも。
それが、炉にとって迷惑であろうとも。
思い出の中の炉を忘れられない自分が、
どんなに滑稽であろうとも――。]
[どうぞ、と気を利かせられて続けられるものでもない。
毒気を抜かれ、はぁ、と息を吐き出し。
炉の方へと視線を戻せば、胸ぐらを掴む手を離させようと、トン、と目の前の肩を軽く押した。]
……先生が見回りに来る前に、離せ。
それと旅行中、こんな風に他の奴には手を出すなよ。
一緒にいて問題を起こされたら、連帯責任になるんだ。
[怒らせた原因をわざと作ったことは、棚にあげた。**]
[いくら睨みを効かせようと、声に怒気を混ぜ込もうと。
それがただの虚勢だと見破ってか余裕のある態度を見せられ、
まるで相手にされていないようで小さく舌打ちした。]
掴んでいるだけで、まだ何もしちゃいねぇだろ。
殴られたいってんならいくらでもやってやるけどよ。
[家族には呼ばれ慣れた名前であっても、大河となれば話は別だ。
呼ばれる度にむず痒さを覚え、自分が自分でなくなるような。
昔の大人しい、誰かの後を追うだけの子供に引き戻されるような。
たった三音だというのに、後頭部や背後がざわついて仕方なかった。]
……人前では、あんま呼ぶなよ。
[お互い頑固な性格なことくらい熟知している。
だからこそ、低い声でギリギリの妥協策を提示して。
睨みつけていた視線を緩めると、長く長く溜め息を吐いた。]
[もし、自分が昔のような性格に戻ってしまったら。
大河があの頃の時の様に突然いなくなってしまうのでは、という想像が付き纏って消えない。
通信手段が発達したこのご時世だろうと、今度こそ出会うことは二度となくなるだろう。
再会した今であっても、卒業が近付いている以上別れが間近にある事実は変えようもなかったが。
表札のない玄関。呼び鈴を鳴らしても誰も出て来ない家。
つい数日までそこに在った日常が、前触れなく忽然と消えた絶望感。
もうあの感覚は、味わいたくなかった。
だというのに、こうして掴み掛かっている愚行を簡単には止められない自分。
子供時代よりよっぽど子供ではないか、と。
大河を目の前にしただけで、そんな一面を引きずり出される優位性に歯噛みした。]
/*
くっ……戻ってきたら炉に倍返しされてる…!!(ダンッ
>お互い頑固な性格なことくらい熟知している。
……ですよねー。
(俺なんかじゃ、まともに隣にいることも出来ねぇんだな。)
[ずっと前から、再会した時から分かり切っている事実。
腹を割った親友でもない。気心の知れた幼馴染でもない。
腐れ縁と呼ぶにも希薄な、今にも消えそうな弱い関係性。
今までがそうだったように、そう簡単に変わりはしないだろう。
何か劇的な切っ掛けでもない限りは──…]
[引き寄せられ、近づいた距離。
苛立ち舌打ちする音ははっきり聞こえて、肩を竦めて見せる。]
すぐに力で訴えようとするからだろ。
お前に殴られたらシャレにならないことになるな。
[胸倉を掴むのは、空手部で鍛えられた手だ。
素人にその拳を奮うことはしないだろうが。一応、遠慮しておくポーズを見せ。
低い声で差し出された妥協策に、目を見開いた。]
…………どこか調子でも悪いのか。
[再会してからというもの。
その名を呼ぶことを譲歩する言葉は、初めてかもしれない。
嬉しさよりも、驚きが勝ったのは仕方のないことだ。
当然。長い溜息を吐き出すその心中など、知る由もなく。]
[手を離すよう仕向けたのは自分なのに。
実際に離れ、引き寄せられていた距離が隣の座席の位置へ戻っていくことに。
ほんの少しだけ覚えた寂しさを、飲みこんで。]
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