情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
― とある異世界・??? ―
…………はぁ
[誰もいない空間で、男は一人ため息をつき]
一辺滅んだほうがいいんじゃないですかね、この世界…
[物騒にすぎる言葉を吐いた。
男が何者であるかを知る者がこの場に居たのなら、全身全霊を持ってツッコミに勤しんだ事は想像に難くないだろう]
……
[男はこの世界に住まう神の一柱であったのだから]
[机も椅子も扉も窓も、男の目の前のマグでさえも、白によって構成された空間でただ一人。黒ではないものの暗い色で構成されている男の姿は、遠目に見ればキャンパスに落とされたインクを思わせる。]
重要だっていったじゃないですか、私だけじゃなく兄さんも姉さんも言ってたんですよ。世界のバランス保つために、同質量の魂を持つ人間を呼ばなきゃなんないって話を……
今回は後始末なんですよ、後始末なんですよ?なんで邪魔しやがるんでしょうかね、あの
[白の中の異物は聞く相手もいないというのに愚痴をこぼし始める。
純粋な嫌がらせなのか、弄りのつもりなのか――…男とその兄姉達は事あるごとに他の神からの妨害を受けているのだ。
創造神から見れば遥か下。人間達に文明を起こさせるため、それらを発達させるために作られた……受ける杯、示す王冠、そして交わる金貨の四柱は、神としての干渉力はあまりないが信仰力は有り余っている。
もしかしたら件の面倒事たちはそれに対する嫉妬からのものかもしれない]
世界滅ぶって言ったんですよ、耳ついてるんですかね?脳に届いてるんですかね?
両方共怪しいので耳の神と脳の神も創りだしたらいいんですよ。申請したら通るんじゃないですかね?
[白い空間に落ちた染み、末弟である金貨の神の愚痴は……]
あれですか、世界に弓引くってやつですか?どれだけ遅れて反抗期が来てるんですかね?反抗期なら反抗期で盗んだ荷馬車で――…
[止める者がいなくなってしまった事で、外界の空に星が瞬くまで止まることがなかった。
止める者がいなくなった経緯を説明するには、金貨の神が愚痴を吐き始めるより数刻前まで遡る事になる]
― 回想・とある異世界、白の間 ―
『と、いうわけなのです。あなたにはできるだけ長く、この世界で暮らしていただきたいと――…』
[白の間には五人……いや、一人と四柱の姿があった。
金貨の姉、杯が異世界から召喚された人間へ今の世界の状態と頼みたいことを伝えているのだが、金貨は矛と杯の後に隠れる形になっているため、相手を窺い知る事が難しく、また、金貨自身それどころではなかった。
姉がしている説明も話半分しか聞こえない程、金貨は自身の思考へと沈んでいたのだ。]
……現金……は、やめときましょう…
[金貨の頭の中を占めるのは、頼みを聞いてもらう代わりに与える贈り物の内容である。兄や姉は悩むことなく恩恵を与えたらしいのだが、自分からの贈り物は決まりそうにない。
うんうんと考えこむ姿は神の姿としては少々威厳が足りなく見える為、兄達は苦笑を浮かべ金貨を隠す。
拓く矛、受ける杯、示す王冠に比べ、金貨は恩恵に関してだけ言うならば、少々どころではなく不器用なのだ。
自ら管理できない人間へ恩恵としてなにか与える事、交渉事という性質故に他者の意思決定への干渉となりかねない事を、恐れ、結局――…]
(兄さんと姉さんの与えたものを見てから考えますかね…)
[後回しにしたのだった。]
[さあ方針は決まったと]
兄さん、そろそろ私も紹……
[件の人間の姿を見たいと、視界を塞ぐ二人の兄に声をかけたのだが――…]
………兄さん?
[兄神二人は一点を見つめたまま、動こうとしない。どうしたことかと覗きこめば、長兄の矛の顔には怒りが浮かび、次兄の王冠の顔からは血の気が引いている。]
兄さん、一体どうし『門の子の仕業かしら?』
[どうしたのか聞き出そうと口を開けば、それに被せるような姉の声。声に釣られて姉の方を向けば、疑問形の言葉を発したにしては確信のようなものを浮かべていた。]
どこかに『ええ、飛ばされたのでしょうね』
[世界と世界を繋ぐ門をも管理している神の名を出されれば、招待したはずの人間がどうなったのか、大体の予想はついた。
滅亡しかねない世界を救う鍵が、他の神の私情でどこかの異世界に飛ばされた――…頭を抱えたくなる状態なのだと。]
――回想・了
― とある異世界、白の間 ―
生きてるといいんですけどね……
[一頻り愚痴を吐いた一柱は、まだ見ぬ召喚者の身を案じ息を吐いた。
不幸中の幸いというべきか、恩恵を与える下地を準備していながら恩恵を与えそびれたために、自分と召喚者の間には“繋がり”ができたままだという。
繋がりへと意識を集中させることで、大体の場所を知ることはできるのだが……]
間に合わなかったら、どうしよう…
[どの世界へ向かうにしろ世界を出るのであれば、門を通らなければならない為、許可が出るまで身動きがとれないのであった。
兄と姉が、持てる手段の全てを用いて“お話”をしてくるそうなので、件の異世界へ行けることは行けるだろうけれど……
先に飛ばされた客人の安否を思うともやもやとしたものが溜まるのであった。**]
異界の神 ベネディクトは、栞を挟んだ。
― とある異世界、白の間から ―
……とりあえず、泣きたい、です。
[キャンパスに浮かぶ4つの染み、その中の一つである金貨はこの世の終わりとでも言いたげな顔をしていた。
他の三柱も明るい顔とは言い難い]
……戦いは不得手、なんです、よ?
[息を吐くように言葉を紡ぎ、ちらと長兄の方を向く。
四柱の中で最も武に長けている矛は、腕を組んだままで短い謝罪を口にする。戦う力を持つがゆえに、門の神が再度暴走しないように目を光らせていなければならないのだ。
眉間に深く刻まれた皺が、ため息混じりの謝罪の言葉から、金貨一人を送り出すという事が彼にとって苦渋の決断であるという事が読み取れれば、責めることもできず]
……増員、無理、ですかね?
[助けを求めるように姉の方を向けば、返ってくるのはやはり謝罪。
四柱の中で最も知に長けた杯は、悲しげに微笑む金貨の髪を梳くように撫でる。なまじ知略に長けているが故に
…………
[無言のまま次兄へと視線を送れど、気まずそうな表情以外は何も返ってこない。
四柱の中で最も美しい王冠は、あまりにも目立ちすぎるのだ。彼が「密か」という形動詞とは無縁にすぎるということは、金貨も王冠本人も理解していたがため、そこには言葉さえも生まれない。
しばしの沈黙を経て「できるだけ神力を使えるように、こちらの世界とあちらの世界の繋ぎをする」との言葉をもらい、金貨はなんとか自分を奮い立たせた]
[たった一柱での
この双肩には世界の命運がかかっていると……それ以上にこちらの都合で巻き込んでしまった存在が危険にさらされているかもしれないという事が、なんとか金貨を立ち上がらせている]
それでは、いって、きます。
……王冠兄さん、繋ぎの件おねがいしますね。
[新たな妨害によって出発する気力をくじかれる前にと、金貨は言葉少なく門をくぐるのだった]
― 魔界の空 ―
[暗雲に覆われた魔界の空から、金貨は地上を見つめている。
一度着地したらしばらくはこの世界の摂理に縛られてしまうだろう、降りる場所は慎重に選ばねばならないと。
できるだけこの世界を統べる者に気取られないよう、場を探るべく神力を広げ……転移した者、魔界の異物を探そうとした――…]
……??
[のだが、それに相当する反応が複数あり、またそれらを絞り込もうとするには更なる神力の展開が必要となってしまう。]
…許可を得て力を使うのが……でも…
[手っ取り早さで言うのなら、この世界を統べる者からの許可を得ての捜索なのだが、自身が何の神であるかを考えれば、相手の性質次第で接触する事自体が命取りとなりかねない。
こちらを統べる者の出方がわからない以上、余計な干渉は避けたい……と、なれば、とれる手段はただひとつ、「地道に頑張る」しかないのだった]
[迷い人の気配を手繰り、向かった先は――…]
― 魔界・灼熱の闘技場外 ―
[目立ち過ぎぬよう建物の影へと降り、人の多い方へ向かおうと一歩を踏み出してみたものの]
……あ
[必要なものがあった事を思いだし、足を止める]
名前、どうしましょう
[
[自分に名前を付けるべく思考に沈みつづける金貨は、何に反のうすることもなく、ぶつぶつ呟きながら考えをまとめる]
名前、名前……
私が反応できそうな、名前っぽいもの……
[そうしてどれくらい時間が経った頃であろう、思い当たるものを見つけ、金貨は思考の海から浮かび上がった。
昔、土塊の神と結託し、金貨を超える貨幣を創ろうとした結果、費用対効果が悪すぎて貨幣への転用が没になった単位の名前――…
魔力光の虹の下からとれる
うん、これにしましょう。
[軽く右手の指をこすりあわせれば、件の虹貨が一枚現れる。
金貨の髪の色のような緑、虹の名を持つはずのそれは、鮮やかさより渋みが勝る重い輝きを放っているそれを、鎖に下げて己が首へとかけた。
ベネディクト・コーカ、ベネディクト虹貨……彼の偽名は元ネタを知るものからしたら噴飯ものだっただろうけれど、残念ながらというべきか、今この場にはそのような存在はいない。
我ながらよい名前をつけた、ツッコミ不在故に金貨は上機嫌で辺りの散策をはじめるのだった。**]
― 魔界・灼熱の闘技場前 ―
―――私の声が聞こえますか?
[セルフ命名の儀で気分を一新、金貨は目を閉じ探し人へ言葉を届けようと念じた。闘技場の入り口付近……つまりは人の行き交いが激しい場所で。
何十人かにぶつかりつつも、何人かに財布を探してるのだろう探られつつも、金貨は動じることはなく、しばらく往来の邪魔になりながら返答を待ち続け――…]
……届きませんねえ、付近にいないんでしょうか。
[最初から持っていない財布を狙う掏摸の数が二十を超えた辺りで、その場で探すのを諦めた。]
意地なんですかね?意地でも財布取りたいんですかね?期待に応えて見せ財布とか用意したほうが…いいんですかね。
異性でもどうかと思うのに、同性に身体弄られる身にもなってほしいものです。……こんな世界で、大丈夫なんでしょうか、人間さん。
[何度も挑戦している掏摸の背中を見送りつつ、ため息と共にまだ見ぬ召喚者に思いを馳せ――…]
…………あ
[そこでやっと気づくことができた。
兄姉任せの弊害というべきか、相手の姿はおろか名前さえも知らなかったということを。]
[血相を変えてバレる事を覚悟しつつ兄へとつなぎを取ろうと――…]
……まあ、聖職者って事は知ってますし、なんとかなりますかね?
[思いはしたものの、“転移者且つ聖職者という条件が当てはまる者など滅多に居ないだろう”という楽観的な考えが浮かび、転移先が魔界であるという重要な前提に目をつむりつつ、それに全力で甘えることにした。
それがどれほど甘い考えであったのかは、他の神ならいざしらず、この場にいる神には知りようもなかったのであった]
[懸念に楽観で蓋をして、金貨は闘技場近辺の雑貨商に声をかけた。肩掛け鞄と鎖付きの財布をはじめ、旅装を整える。
さんざん弄られた衣服のポケットに手を入れて、金貨を一枚取り出した時の周りの空気に、思わず吹き出しそうになったのはここだけの話である。
周りの視線などお構いなしの金貨の神は、買ったばかりの財布に釣り銭を入れつつ闘技場へと視線を向けた]
探すにしても、先立つものは必要ですよね。
[貨幣とは交渉材料であるとともに潤滑油でもある。しっかり管理ができるなら、あるだけあっても困らない。
無尽蔵に貨幣を生み出してもいいのだが、金貨は文明を起こす神であり、発達を促す神の一柱なのだ、破壊となっては神としての本質から大きく外れてしまう。
ならば、元金は生み出しつつ、そこから増やすのが得策だろうと――…手っ取り早く闘技場で増やそうと考えたのであった。
言うまでもなく、参加するのは賭けの方なのだが]
― 魔界・灼熱の闘技場観客席へ ―
―――?
[さあ早速対戦カードを確認しようと闘技場へと向かう途中、緑の髪>>100が目に留まったのは、血の匂いのせいか、迷い人の気配のせいか。
腰に下げた剣の使い込まれた様子から「聖職者ではない」とすぐに視線を外した。]
……参加者、なんでしょうか。
[とはいえ、興味はもったらしい、誰に話すでもなくポツリとこぼす。
転移者という事をおいておいても“迷い子”という印象を抱かせた存在。そんな迷い子が富や名声、血に飢えた者達を降す様は考えただけで面白そうだと。
少なくとも、使い込まれた剣や筋肉のつき方を見るに、実現不可能というわけではなさそうに感じられ――…
参加するなら神力を使わず賭けてみようと、金貨に思わせるには十分だった。]
― 魔界・闘技場観客席 ―
――…まあ、それとは別に稼ぎもしますけどね。
[心の中で呟いて、勝ちと負けを交えつつ最終的には20枚ほど稼がせて貰おうと、見つけた椅子へと滑り込み、闘技場へと視線を注いだ]
― 闘技場の観客席 ―
[何戦かを経、先程の迷い子が闘技場へと降り立った>>307。その外見が功を為したか災いしたか、大戦予想は荒れに荒れている。
金貨は迷うことなく迷い子へと。ちなみに、彼?が勝ったとしても金貨の総取りにはなりはしない。
他の対戦より荒れているとはいえ、野次るためだけに大金を賭けるものや、倍率故に勝ったら儲けとして小銭を賭けるものもそれなりにいたからである。
思い思いに賭けたなら、あとは結果をご覧じろと、金貨は席へと腰をおろした。
負けたのならば目標額、勝ったのならば予定を遥かに超える稼ぎとなるだろう。神力を使わぬ賭け故に、この賭けで勝ったとしてもその分負けで返そうとは思わない**]
― 闘技場内 ―
[緑の髪の迷い子は負傷をものともせず牛頭を降す様子>>326に金貨はゆるりと目を細める。
金貨は武の神とは不仲であるが、彼の性格が気に食わないだけで、兄を始めとした武の神の部下や武力そのものを嫌ってはいない。
闘ってる本人からしたら冗談ではないかも知れないが、迷い子の軽業を思わせる闘いぶりは見ているだけで楽しかったと、席が隣になっただけの客と件の試合の話題で盛り上がった。
辺りで聖職者を見なかったかと、本来の目的も織り交ぜてはみたものの、それについては有力な情報は得られずに]
――――貨?――聞こえ――
[先程の呼び掛けへの反応もなかったし、この近辺での捜索を切り上げて次の場所のあたりをつけようと……
空に居た時の記憶を元に、何があったのかを思い返していると、ふいに、声が降ってくる。]
…王冠兄さん?
[ノイズが激しくとぎれとぎれにしか聞こえない声は聞き覚えがありすぎて、名前をぽつりと口にした。]
―あぁ―そう――世界が――閉じ――
―――声――――なんとか―
[答えると共に、言いたいことを捲し立てているのだろうが、捲し立てた分だけノイズが激しくなり、耳に優しくなくなる仕様らしい。
それでも、世界が閉じるという事は聞き取ることができたので、真剣な顔をして頷き――…]
まあ、なっちゃったものは仕方ないですよね。
あ、兄さん、探し人の名前教えてください。ついでに空間の神に、後払いで空間魔法貸してくださいって伝えといてください。報酬は山岳の民の酒の十年物って事も忘れずにおねがいしますね。
[さっくり切って捨てた上で、自分の要件を伝えることにした。]
―――…………
[ドライすぎる弟の反応に空の声は絶句してしまったのだが――]
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新