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― サロン ―
――……、…
[城主達には礼を払うべく「努力はする」と明言した青年は、果たして有言実行できているだろうか。
何かあれば目配せ位はする心算で、時折さりげなく視界に入れる。
彼に血の呪を強いた女に対しては、先程のような慇懃無礼でさえも珍しい>>198
皮肉たっぷりの呼び名には、珍しさの余り、常は向けることのない無防備な笑みが覗いた程に。
続く言葉>>199も、人間より遙かに敏い耳は聞き届けていたが。
彼が自分を慕う日を期待した事など、唯の一度としてなく。
そう仕向ける気も、端からない。
事実が音に成っただけの言葉には、顔色一つ変えはせず]
/*
ソマリはほんと、どうしてこう……
初っ端から格好良さを自重する気が、欠片もないのかしら…!?
誑かしポジは、こっちの筈よね…?
[役職希望を指差し確認してみる]
……でもこうなるとは思ってた。異存はないわ。
― 回想/別邸庭園 ―
[男の纏う仮面は、本性はおろか、不躾に唇へ注がれる瞳さえ隠していない。
こちらも咎める如く刺す視線を、敢えて晒して]
………。
“レディ”が、貴方の目の前に立っているのだけど。
それ以外に、紳士が紳士たる理由が御入用かしら?
[実際に、己が淑女であるかは別として。
彼が自ら口にしたからには、その認識に拠っていい筈だと]
………、
[男の咽喉から零れた笑い声に、微かに唇が尖る。
与えられた呼称が早々に取り下げられたのを聞けば、ますます淑やかに振る舞う気は失せた]
――貴方のように、不作法な人のいない場所。
[素っ気ない程、簡潔に答え]
リードがお上手な方となら、嫌いではないわ。
[貴方はどうかしら、と言外に疑問を呈した。
これだけ強引な男が、巧みに女性をリードなぞできるものかと訝しむ]
―――……、ッ
[口接の真似事に僅か息を呑み、男を見上げた瞳は、腰を支える所作に強張った。
今まで男を撥ねつけるには、言葉だけで事足りていたから、咄嗟に打つべき手も思い浮かばず。
引き寄せられるまま身体は傾ぎ、男の胸に自ら重みを委ねる姿勢]
貴方……、
よくもまぁ、慎みなんて言葉を口に出来たものね…?
[暗赤色の瞳が、仮面の奥で一瞬紅く揺らめいた]
― サロン ―
[今までのところ、シメオンの努力は実を結んでいると言ってもいい。
人間であった頃のファミリーネームを言い差し、打ち消す姿には、ほんの僅かに目を瞠った>>209
そこまでするよう強いた覚えはないが、彼にそうさせたのは、恐らく自分の存在ではないだろう。
弟の不在を説明するギィの声が届けば、緩く唇を綻ばせ>>216]
お部屋にいらっしゃるのね、良かった。
それでしたら、後でお邪魔させていただこうかしら。
また新しい本もお借りしたいし…
[几帳面な雰囲気を醸し出すヴィンセントが、グラスを割った理由。
それは、優雅にワインの香を愉しむ彼の兄に在るのではないか。
そんな確信に近い疑念を抱きつつも、彼に倣って酒香を堪能する事にする]
[男遊びに手馴れた麗人かと思いきや、中々如何して。
唇を尖らせ拗ねるように態度を変える彼女は少女のようだ。
子供染みていると考えるより先に、
彼女の反応に興を惹かれて口を開く。
鼻先をぶつけるほど近づく顔貌が、彼女の瞳を間近で覗き]
儀礼と節度ばかりを弁えた者しか居ない場所か。
それはさぞかし退屈だったろう。
ワルツの上手い男は居たかな?
口の回る男は?
―――…ああ、俺のように、自信家な男は?
[悪趣味な言葉を並べてしまう。
女性をダンスに、或いは深い夜に誘うなら、
もっと言葉で酔わせて、戯れ、一夜を強請れば良いのに。
どうしても彼女の移り変わる顔をもっと見て居たかった。]
今宵だけさ。今宵だけ。
君を口説いて連れ込もうなんて不埒は考えていない。
―――…、
[どうせ、彼女の顔も知らない。
どうせ、彼女の名も知らない。
ならば、ほんの少し、責を忘れて踊っていたかった。
彼女が子供のような顔を晒したから釣られただけ、と、
自分自身に甘い言い訳を内心で漏らす。
ふ、と双眸を撓めると、彼女と視線を絡め。]
君、怒った顔も可愛いな。
[学院時代にもこんな下手な褒め言葉を告げたことは無い。
ただ、真紅の鮮やかさを持つ瞳に微笑を映した。
まるで好きな子を茶化してしまう如くの最低な態度は、
義務を背負う貴族のそれではなく。
唯一人の、自信家で慎みを知らぬ男のものだった。]
……、……
[アレクシスとシメオンの遣り取りは、血親にとって堪え難いものだった。
喉許まで込み上げる笑いを堪えるという、唯一点において。
努めて神妙な顔を保ち、震える唇は淑やかに扇子で隠し。
ギィのもてなしの声に、漸く正当な理由を得たとばかりに微笑を見せて>>244]
……有難う、存じます。
[笑みを孕んで掠れた感謝の辞は、ごく簡潔なものに留まった。
些か芝居がかった乾杯の文句は、ギィの唇を経れば心地好い響きだけを帯びる>>246
薄らと細まる瞳を、彼へと流して応え]
――…乾杯。
[調子を合わせるアレクシスの声>>254が重なれば、わざとらしく眉を跳ね上げてから、ゆるりと口端を和らげる。
心にもない事を仰って、と言わんばかりに]
[男が距離を削るには、ほんの一瞬で足りてしまうのだと初めて思い知る。これ程人間が近くに在るのに、温かな血の流れる気配より、男の体温ばかりが意識を占めて]
……貴方程、口先ばかりで、鼻もちならない自信過剰な男は。
探しても、なかなか見当たらないと思うけど?
[並べ立てられる言葉一つ一つに反論してやりたくとも、唇は常の半分も滑らかに動かず]
[――今宵だけ。言い含めるよう繰り返される言葉に、血に濡れた薄刃の如く、すっと真紅が細まった]
……そうでしょうね?
口説き文句にするには、拙過ぎるもの。
率直に申し上げて、下の下だわ。
[これ以上近づけば、腹立たしい男の血を身の内に取り込むかはさておき、鋭い牙に存分に頼る事にしようと心に決めて。
眼前でふっと解けた唇が、次はどんな気に障る言葉を吐き出すのかと一心に見上げ]
――………、
下の中ってところね、それも。
[細く長く溜息を紡ぎ落として、彼の言葉に逆らうべく、表情を幾分和らげる]
[彼女の辛辣な評に、また嬉しげに喉仏が揺れた。
上流階級らしい美辞麗句でも、気を損ねた女の癇癪でもない。
気位の高さの割りに、擦れていない。
ステップを誘えば、添うだけの素直さがあるのに、
口を閉じて時が過ぎるのを待つだけの退屈な淑女でもなかった。]
おや、それは嬉しいな。
上手い口説き文句なんて聞き飽きているだろう。
君が心蕩かすような男に誘われた時、
俺の顔を思い出して比較してくれるかな。
―――…その時はそんな風に怒るなよ。
聊か勿体無い。
[彼女の怒りに油を注ぎ、薪をくべて、追い風を起こす。
彼女が感情を発露するほどに笑んでしまうのは、
すっかりと本質の悪趣味を晒してしまっている所為だ。]
[なぁ、君。と囁く男の声が風に乗る。
冬は眼と鼻の先、社交の場に出るのも今後は限られるだろう。
惜しいな、と思う心が一層男を傲慢にさせた。
彼女の腰を抱き寄せ、緩やかに額を重ねて真紅の瞳を捉え]
―――…来週も此処へおいで。
今度はもう少し難しい一曲を誘いたい。
無論、自信がないと“慎む”なら別だがね?
[彼女の矜持を擽る言葉を投げて、片目を瞑る。
授業料は君の名で。と笑い、鼻先で戯れめいてこめかみを撫でた。
出逢ったばかりで彼女の唇を恋う男は五万といるだろう。
されど、己はその有象無象と同じにはなりたくなかった。
女に侮られるのも性分と笑い飛ばせる筈が、
彼女に退屈な男だと思われるのは、何故か業腹だった。]
[だから、名も聞かず、素顔も暴かず。
無音のワルツが終わりを迎えて、その手を離した。]
必ず、おいで。
――…俺に逢いにおいで。
君を忘れず、待っているから。
― サロン・少し前 ―
ギィ様、かき口説くのもお上手だけど、きちんと節操――…
慎みも、お持ちなのね。
[兄とも慕う城主の傍で寛いだ唇が、今日一番の礼を欠く言葉を滑り落とした。一瞬の間を挟み、何事もなかったかのように、然して改まってもいない表現に差し替える。
けれど添えられた笑みは、面映ゆげな色を隠すことなく]
……ギィ様に褒められるのは、やっぱり素敵ね。
[彼が聞かせてくれる色彩豊かな讃美を、昔から素直に受け止められるのは何故だろう。
美辞麗句に変わりはないのに、湧き起る感情は、口にする相手が変わればまるで違ってくるらしい。
――彼に向けたばかりの形容が、そっと揺り起した一時の記憶。
未だ覚えていた自分に、思わず顔を顰めた]
/*
…………。
え。
私、ソマリの秘話を見る前に、ギィ様と比較して思い出すの、書いたのだけど……
朝から考えてたのよ、ほんと。
何かしらこのシンクロ率。
反応まで、よくお見通しだこと…>怒るな
でもまぁ、大して驚く気も起きないのだけど。
ソマリだものね。うん。でも異常。
/*
…でもやっぱり、異常よねぇ。
ギィ様の口説き文句、聞いてみたいな(はぁと)っておねだりした時は、別にそんな心算じゃなかったのよ…?
そしてあの時眠くて、もっと可愛らしく丁寧に言葉を選んで強請れなかったのが、朝からずっと口惜しくて……
― サロン ―
[隙間なく蓋を閉めて鍵をかけ、鎖で雁字搦めにした上で海中に投じた筈の半年前の記憶。
未だ忘れえぬ己を嘲笑うかのように、軽やかに舞い戻る男の姿。
思い出す程に、滅多に人目に晒す事のない苛烈な色が滲み出る。横髪を耳に掛ける仕草に紛らせて、目には見えぬ残滓を、ぐっと掌で拭い落とす。
耳の奥で響く不躾な男の声に、落ち着いたヴィンセントの声音が重なれば、浮かべた険は溶け消えて>>333]
――…、お久しぶりです、ヴィンセント様。
[立ち上がりながら滑らせた視線の先には、見知らぬ銀髪の男。
一旦口を噤んで、会釈を返し>>370]
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