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……ねえ、こんなふうに、魔物も救いたい、と思う事は、
私はもう、魔物に魅入られているということかしら?
[ つぶやいた。 ]
そうだとしたら、私はもう聖女じゃないのね。
聖女じゃなかったら、尊血の力もないのかもしれない。
でもね……私は思ったの。
救世主って、救「世」主なのよ。
救「人」主でも、救「聖」主でもないわ。
かつてのあの方は、「世界」をお救いになられたの。
では、「世界」の住まう事をお目こぼしされている魔物を、
赦しの対象から外した教会のやり方が間違ってると思うの。
今の教会は、神様や救世主が望んだものとは、
少しだけやり方を違えてしまっているのではないかと思うの。
偉大にして寛大なる父よ。
あなたのいとし子に祝福を。
( ……天上におわす貴方の代わりに、
私が神の子供たちを祝い、幸福にしてもいいですか? )
我々にひとしく愛を注がれたまう父よ。
あなたの使徒に力を。
( 私がひとしく愛し、ひとしく力になってもいいですか? )
憐れみ救い絶え間なく慈しみたまう父よ。
あなたの光を求める者に赦しを。
( ……私が憐れみ、救い、慈しみ、
求める者に赦しを与えてもいいですか? )
私が見てくるわ、そこに居て。
大丈夫、何かあったらすぐ戻るから。
アデルは剣を持っているでしょう?
丸腰の私の方が、返っていいわ。
それに、私を傷つけた魔物がどうなるか、
彼らももう気づいていることでしょう。
私は赦しを……アデルは救いを……、
そのために、まずは話をしなければ。
[ つないでいた手を離して、もうちゃんと歩けるようになった足で、地下礼拝堂の外に出る。 ]
[ 天井にくっついたコウモリを、ユーリエはじっと見上げた。
夕暮れ時に飛ぶ動物。鳥のような獣のような生き物。
魔物の使いとして気味悪がられる生き物だったが、
大きな耳や、ぶら下がってゆらゆら揺れる様を、
なんて可愛いのだろうと思った。 ]
……ヴィンセント。
[ 短い文章>>100を読んで思い出した。
「氷の魔物」という記号で覚えていたその人の名前を聞いた事がある>>1:170
あれが野茨公の弟御だったのかと思い、
周りで起こるひとつひとつに無関心だったことを恥ずかしいと思った。 ]
お招きに預かるわ。
案内して。
[ アデルのことを思ったが、声はかけないことにした。
彼は希望だ。
最後まで残るべきは、自分よりも彼だ。
……もし、吸血鬼の兄弟のどちらかが父親ならば、そうそう危険もないだろうが。 ]
─ 廊下 ─
[ アデルと手をつないで交わした会話>>130>>135を思い返しながら、
コウモリに続いて小走りに廊下を行く。
遮る者はおらず、息をひそめるように静かだった。
これから何をしに行こうと言うのだろう?と思う。
自分自身でも掴みかねていた。
話をすると思う。彼らの救いはどんな形か聞いてみたいと思う。
でも、その先に何があるのだろうか?
ただ、呼ばれていると感じる。
行かねばならないと感じる。
この気持ちをなんと呼べばいいのだろう。 ]
……ここ?
[ 少し先をちょろちょろと飛んでは天井や壁にぶら下がり、
丸い大きな目で見降ろしては先導していたコウモリが、大きな扉のドアノブにとまった。 ]
[ ノックの前に、ふと自分の服装を見下ろして、
酷い格好だなと思う。
左袖に染みた血は、すでに赤黒くなっている。
バルタザールに駆け寄って血だまりに膝をついた時の、スカートの赤も酷い。
……でも、酷いとは思っても、汚いとは思わなかった。
恥ずかしい汚れはひとつもなかった。 ]
きゃ。
[ 小さく声をあげたのは、取っ手に止まっていたコウモリが、
急にふくらみの目立たない胸に飛び込んできたからだ。
目を白黒させながら、とりあえず撫でてみると、コウモリは目を閉じて丸くなってしまった。
困惑しながらも置いていく訳にもいかず、抱いたままノックをする。 ]
……ユーリエよ。
……そうだ。
ハンカチがあれば貸して貰える?
この子の寝床になるようなものを。
[ 胸の中で眠るコウモリを見下ろした。 ]
[ 前に置かれたカップ>>148は、いつもの通り、ごく自然に聖別の手順を踏もうとした。
吸血鬼と逆に、ユーリエは聖別されていない物を飲食したことがないのだ。
ただ、手を翳したところで、動きを止めた。
とてもいい香りがしたのだ。
……それでふと、興味を持った。
聖別されていないそのままの飲み物というのは、どういうものなのだろうと。
もし、教会のやり方に異を唱える自分がもう聖女ではないのならば、
今更、飲食を縛られることに意味があるのかと。 ]
……。
[ まるで生まれて初めてハーブティを飲むとでも言う様子で、
慎重に慎重に口元に運ぶ姿は、吸血鬼にはどう見えただろうか。 ]
……すっきりしていておいしいわ。
[ ヴィンセントの声は、教会のパイプオルガンの音を思い出した。
ずいぶん遠くへ来たような気がして、、
まだ数日と経っていないのに、と不思議を思う。
この時間だけを切り取れば、教会の書物庫で、
助祭に交じって聖人伝を読んでいる時とそんなに違わない感じがするのに、
目の前の人は魔物なのだ。 ]
……ええ。
[ 本題に、と言われて頷いた。
そうだ、話をしに来たのだ。 ]
……。
[ 再び言葉の使い方を忘れてしまったように、
ヴィンセントの顔を黙って琥珀の目で見上げる。
血の気の薄い頬やくちびる。
整えられた髪。
きれいな人だな、ともう一度思った。
指摘はそうかもしれない、と思いつつも、
自分でも驚くほど平常心だった。
もう聖女としての力はないかもしれない、というのはもっと深刻な理由で、
すでに心の準備がすんでいたから。 ]
返事の前に聞かせてほしいの。
貴方はなぜ吸血鬼になって、
何のために今も吸血鬼でいるの?
いいよ。
ヴィンセントが、命を賭けて護ろうとしている愛する誰かが居ることは分かった。
だから私も、命を賭けるね。
私がもし、聖なる力を失っていたならば、吸い殺してもいいよ。
でもそうでなければ。
滅びるのは貴方だわ。
だけど、きっともう、苦しくも痛くもないわ。
私がそう信じているから。
そうして、貴方が滅びたら……。
貴方は私の子供になって、もう一度生まれておいで。
私の母も、私を処女懐妊したそうなの。
だからきっと、私にも出来るわ。
貴方の愛する人も吸血鬼?
お兄さんのギィかしら?
……もしそうならば、ギィも私の子供になるといいわ。
ちゃんと兄弟として。
吸血鬼はやめられないけど、人間から吸血鬼になることが出来るのだから、
もう一度人間になってみてもいいでしょう。
そうして、教えて。
貴方の幸せは、生きている間には絶対に出来ないことなのかどうか。
どうしても吸血鬼じゃないといけないのか。
[ ちゃり、と指先に鎖が触れて、
ああ、と思う。
このままでは吸いにくいだろうと聖光ロザリオを外し、
膝の上で両手に握りこむ。
ちゃりちゃりと鎖がなった。
本当は手の震えが止まらなかった。
言葉ほど、冷静じゃなかった。 ]
そうね。
[ ひやり、と触れる唇に、
からめられた指を、きゅ、と握った。 ]
こんなこと聖書のどこにも書いていないわ。
[ 指は震えている。
声ほど冷静ではなくて。 ]
でも、そう思ったの。
[ 目を閉じた。 ]
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