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―中庭―
あの不躾な侵入者の血で、地面が汚れてしまっているわ。
お掃除しておいてくれるかしら?
[アルビンの逃走を許した後、少女はどこか楽しげに
そんなのは私達だけで十分よ。
未だ渇きは癒えないが、飢餓状態が長すぎたために相対的に正気を保っていられるようだ。
ゲームが始まってすぐの時はこの程度で我を忘れてしまっていたというのに、慣れというのは不思議なものである。
少女は、波のように定期的に襲い来る食欲に時折喉を鳴らしながら、命を救い救われた
――?くれるの?
[少女の乾きに気付いたのか、先刻侵入者を捕えた触手状の蔦が少女に向かい花を差し出した。
薄紫色で、釣り鐘のような形をした可愛らしいその花は、]
ホタルブクロ、ね。
[上向きに差し出されたホタルブクロの花の中には、とろりとした蜜のような液体が入っていた。
グラスのようなその花を受け取って、少女はゆるく笑みを浮かべる]
……そう、私ちょうどのどが渇いていたの。有難う、嬉しいわ。
[花の蜜などで癒される喉の渇きではないのだけれど、少女は至極ご機嫌だ。
友人の気遣いに応えるべく、少女はホタルブクロの花弁の縁に薄い唇をつけて。蜜を一息に飲み干した。]
[瞬間、少女の周囲には柔らかくも禍々しい光が満ちて。]
――――……。
[光が徐々にその勢いを失ってゆけば、
そこに立っていたのは少女ではない。
青年は冷たい青玉の瞳をゆっくりと開いて呟いた。]
二度目の変化は最初の時ほど苦しくはなかったな。
――まったく、このガキは馬鹿なのか。文字通り鳥頭だな。
今会ったら襲ってしまうから?だから植物の奥へ引きこもることで皆を守ろうって?食欲に苛まれながら?
……阿呆らしくて笑いも出ないな。
いつまでここで痩せ我慢をしているつもりだ。
そんなんじゃあ、永久にここから出られないだろうに。
[青年は少女に対する苛立ちを露わにして悪態をついた。
苛立ちは空腹をも掻き立て、親指の爪をぎちぎちと噛む。]
オニイサマを襲いたくないのなら、オニイサマの気配を避けて探索をすればいいだろうに、……
[そう言って意識を集中させるも、兄の居場所はぼんやりと判別がつかない。
追い切れないほど弱っているのか?青年の中の少女が慌てだすのを抑えこみ、青年は大きく舌打ちをした]
っち、とにかくだ。
この城から出ないことにはずっとこのままだろうが。
それまで断食だなんて、御免だね。
[少女としての人格を振り切るように頭を掻き毟り、
青年は宣言する。]
とにかく、俺は出口と食い物ををさがすぞ。
[そう言ってしまえば少女に抗う術は無いようで。
青年はため息をつき中庭から出ようとして、]
――。
[一度振り返り、少女を護った蔦の方へと歩み寄った。]
有難うな、このガキを助けてくれて。
俺まで消滅するところだった。
[少しだけ声色を和らげて、その葉に
――これは、
[植物の種だ。]
なるほどな。中庭を離れても助けてくれるってわけか。
ふ、ならお言葉に甘えるとするかな。
[青年は苦笑し、手近な葉に種子を包んでポケットに突っ込んだ。]
[そうして、青年は友人に背を向け、中庭から出てゆく。
足と血の匂いの赴くまま、歩を進めれば。
<<碧眼 シルキー>>の気配が近づいてきた。]*
[そうして、青年は友人に背を向け、中庭から出てゆく。
足と血の匂いの赴くまま、歩を進めれば。
<<夜盲 ジャン>>の気配が近づいてきた。]*
ぐぎゃぁぁああ、、
[青年が血の匂いに誘われるままに歩んでいれば、青年は鴉の壮絶な啼き声、――いや、啼き声と言うよりは慟哭のように思えた――を聞き取る。
その声の主らしき獣は、自分のいる場所とは反対の方向へと矢のごとく飛び去っていった。
青年は眉を顰めて吐き捨てる。]
ふん、あの忌々しいお喋り大鴉か。
人を煽るだけ煽っておいて、ざまあないな。
まあ、何者かと一戦交えて考えるべきかな。
彼奴が勝ったのか、それとも負けて逃げ出したのかは知らないけれど。
[いつでも使えるよう、ポケットに片手を入れて種子の包まれた葉を軽く握り。青年は鴉の去ったバルコニーを陰からそっと窺った。]
――!!
[放り投げられた小瓶を、蔦は確かに受け止める。
青年はぎり、と奥歯を噛み締め、怒りを露わにした。]
気付いていやがった!
――「"当て"にしていただいて構いません」だと?
本当にそのとおりになっているじゃないか、っ……くそ。
『そうよ、だってそういうひとだもの』
[敗北感のような、罪悪感のような。
どろりとした固まりかけた血のような感情が青年の内を巡る。
青年は、蔦が持ってきた小瓶をひったくるようにして取り、一気に飲み干すと。つかつかとバルコニーへと足を踏み入れて。]
――馬鹿だな、お前。本当に馬鹿だ。
[己の内に血が満ちる感覚を味わいながら、青年は蔦をバルコニー全体へと広げて、彼と狐を守るように配置した。
そして、ぐったりと眠る狐を抱え上げ、膝の上へと横たえた。]
なぁ、いい加減、面倒くさいだろう?
こんなガキを背負うのは。
[親指で狐の目元を優しく撫でてやりながら話しかける。
いつか友人であった彼女がやってくれたように。]
――良いんだぜ。
お前が居なくなってからずっとひとりだったんだから。
「壊れてしまう」だなんて、泣きべそかいて言ったけど。
きっと、平気なんだ。痛みはそのうち薄れるから。
[低く抑えた声は、バルコニーを浸してゆく。]
だから、お前の生きたいように生きればいいよ。
ローレル、とか言ったか?
大事なひとができたなら、そちらを大事にしてやればいい。
ひとつ分の陽だまりにふたつは入れないから。
……そうだな、まず手始めに。
目が覚めたら、俺の血でも喰らうといいさ。
蔦で邪魔は入らないようにしてやった。
獣の身体じゃあ、小瓶の形では取り入れづらいだろう?
それに、「その方が美味しい」だろう?
[はは、と乾いた笑い声を上げた。
狐に届いているかなんて、どうでも良かった。
全ては、自己満足だから。*]
[無意味な独白が終われば、青年は漸く狐が意識を取り戻していたことに気付いた。]
やあ、起きたか。
俺の友人が燃えてしまうから、その焔は控えめにしてくれ。
綺麗だけど。
[くすりと笑うと、頬を舐める舌も特に抵抗無しに受け入れる。青年は揺れる尾をじいっと見つめながら言った。]
躊躇うことはないよ。
言った筈だ、「あなたが危ない目にあったら駆けつける」と。
お前は何も悪くない。おいで、可愛い子。
[それを言い終わるやいなやであったか。青年の首元に牙が突き立てられるのは。]
(さて、オニイサマに血をあげるのは二度目だけれど。)
[青年は不思議なほど冷静に、その状況を受け止めた。
前回は「快楽」が勝っていたが、今回青年の心を占めるものは、
不思議な「充足感」。
血が抜かれていくことは「充足」とは程遠いはずなのに。]
(あげるよ、この血は元々、お前のものだ。)
[酔い痴れるように目を閉じて、狐の柔らかい背をそっと撫でれば。
青年としての自我は溶けるように消えてゆき。あとには小さな少女だけが残った。
二人の姿が変ずるのは殆ど同時だったようで。少女が再びやってきた渇き眉を寄せつつ目を開けると、そこには見慣れた兄の姿があった。]
[おにいさまが狐の姿だから言えたけれど、こうして面と向かうと少し恥ずかしいわ、なんて思いながら誤魔化すように笑ってみせれば。突然に肩を掴まれる>>93。]
お、おにいさま、…?
[驚きに目を見張って、目の前の兄の口から紡がれる言葉を聞く。
常日頃の、滅多に崩さない優しい笑顔からは打って変わった様子にも戸惑いを隠せない様子で少女は兄の空色を見つめた。
「誤解」「正気」「大切」「一人だけ」。
――「君だけ」。
一番聞きたかった言葉が少女の胸を突き刺す。]
でも、だって、――、他に大事な人ができたって…
[少女もまた震える声で言葉を発するけれど、その返事は聞けたかどうか。兄が気付くのとほぼ同じタイミングで、此方に近付いてくる妙な気配>>90を感じ取ってしまったから。]
だれか、来るわ。気をつけて。
[五月蝿く悲鳴を上げる飢えの声を必死で無視して、少女は兄と友人に注意を促した。]
――!!
[事前に
少女は突然の訪問者の動きにどうにか対応することが出来た。
一見快活そうに見えるその男の視線、狙った先が自分であることに気付けば少女は不快そうに片頬をひくつかせる。
直ぐさま重心を低くし、鞄から短剣を抜いた。
同時に動いた蔦が男の足を取ろうと動き、男の手がまさに少女に触れんばかりになったその時に、片足を掬い上げて逆さ吊りに。それ以上の抵抗を許すまい、と、抜いた短剣を少女にとって丁度いい高さになった首元につきつけた。]
動かないで。
妙なことをすれば首を刎ね飛ばすわ。
[目を細めて首を傾げる]
……随分とご挨拶じゃない。
あら、よく見ればあなた、ぼろぼろじゃない。
大変だったのね?
[状況にそぐわぬ優しい声音で話しかけた。]
動きがとっても速くてびっくりしてしまったわ。
間に合って良かった。また砂漠のミミズみたいにからっからになるのは御免だもの。
[少女はほうっと息をつきながらそう言った。
悔しそうにこちらを睨みつける男>>112からは目線を離さずに、背後の兄の言葉>>111を聞いた。]
あら、あなたおにいさまのおともだちなの。
私のこともご存知なのね。はじめまして。
私もあなたとおんなじくらい死にかけたわ?
お互い大変ね!
[口元にあるものすべてを食い破ってしまいそうな、がちがちと鳴る牙の音など気にもとめず、少女もまた朗らかに笑った。]
でもね、おいたはだめよ。だから、
[友人だった彼女の真似っ子をして少しだけ気取ってみるけれど、目の前に無防備に晒される首元から目を離すことはできない。
ごくり、
周りにも聞こえるほどの音を立てて唾液を嚥下して、口を開く。]
「おにいさまとのお話を邪魔してごめんなさい」の証があってもいいわよね?
――ねえ、私今とってもお腹がすいてるの。
きっとあなたとおんなじね?
食べてもいいかしら?
[犬歯は濡れた光を放ち。
少女は不躾な訪問者へとその口を近づけてゆく。]
ああ、私の血は残念だけど差し上げられないわ。
私にもそれほど余裕はないのよ。
誠に遺憾ながら、ね!
[囁き声には隠しきれぬ喜色が混じっていたはずだ。]
拒否権?あるとお思い?
[軽く笑い声を上げれば、喉元に小さな傷をつけられたことに気付いてその瞳を凶暴な色に歪めた]
あは、痛いわ!
[有無をいわさず男の首筋に噛み付く。
普段とは上下逆向きなので少しやりにくいけれど、そんなものは些事。
少女は逆さまになった男の髪を撫ぜながら命を吸い上げていった。
乾きの癒えてゆく感覚、相手の命をかんなのように削ってゆく感覚に恍惚としながら。
吸うだけ吸って満足すれば、
蔦の拘束を緩めてバルコニーの床に横たえてやった。]
/*
狼吊っちゃって続いてたら白目だなあ、
というかそもそも。ここまで狙撃手だらけの編成なのにどうして今までの死体が一見普通の死体ばっかなんだ…裏で何が起きてるんだ…w
/*
RP村の狼って大変なイメージがあったからビビって狙撃手希望したけど、これは狼引いてたほうが何が起きてるのか分かりやすくて面白かったかもしれないわね。襲撃ロールとかもいらないし赤ログもないし、そうすればよかったかもw
[訪問者の男を横たえてやってからすぐだったか、バルコニーの入り口に見覚えのある人影を認めたのは。]
あら、またお客様だわ。また血を吸いに来たの?
[にこにこと問うが、
相手にその気がないことを悟れば肩の力を抜いて。]
リエヴル、書斎、……私にはわからないことばかりだけど。
[そう言って背後の兄を見やる。彼の反応はどうだったか。]
…そこに、出口がある可能性が高いのね。
なら、お伴しますわ。
身代わりになってやる義理はないけれど、ここからとっとと出たいのは私も同じだから。
…ああもし、最初の一人だけが合格になるのなら。
私は出られさえすればそれでいいから、「餞別」とやらはあなたに譲るわ。おにいさまは、どうかわからないけれど。そちら様で決めて頂戴な。
[もう一度兄のほうを見て、少女は大鴉の後をついて歩を進めた。
もし兄もついてくるというならば、その手をそっと握って。]*
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