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[キアラの手料理はなかなかのものだった。
母親がしっかりと教え込んだか、逆に母親が炊事をしないのでキアラが頑張って覚えたかという正反対の予測が成り立ったが、ベリアンにとってはどうでもいいこと。
キアラの頬についたジャムを指先でこすりとり、舐めてやったらキョトンとした顔をしていたが、「美味かった」と伝えると破顔一笑した。
目を逸らすのが惜しいくらい眩しい笑顔だった。
− 回想・終わり** −]
− 魔王軍中 −
[昔の夢を見た。
怖い夢ではなかったのに、うなされた気がするのは──自分があの夢の先の”現実”を知っているからだろう。]
… …っ、
[肌に触れる掌の感触。
目覚めたベリアンが横たわった位置から視線だけをあげれば、鷹のごとく黄金の目をした女の顔が見えた。>>134>>135]
[自分はカレンの港近くへと単身進み、そこに──いたはずだ。
街に張り巡らされた光の魔力の連結を逆に利用しようとし、その制御にしくじったことは覚えている。
(キア…)
味方に回収されたのはありがたいが、やはり監視されていたのかと思う。
昨夜、餓えた魔物からベリアンを守ったのもイングリッドの鷹であった。
「せいぜい、背中に気をつけることね」と投げられた警告。>>2:506
喉が乾く。]
閣下の──、
カレンの情勢は。
[掠れた声で問えば、イングリッドの近くにいた伝令が身を強張らせる。
自分が素顔を晒していることに気づき、ベリアンは上体を起こして、フードを手繰り寄せた。
自意識過剰なのは自覚している。
罪の意識ではなく。]
ヤコブ…?
[イングリッドが教えてくれた情勢のうち、知らない名に胡乱な声をもらしたものの、「最後まで仕事をしろ」と焚き付けられば、憤りを示して手を振り払う。>>135]
言われず、とも。
水を。
[求めて水盆をもってこさせると、その中に唾を吐く。
そして、自分の周りから人を遠ざけるように、水を周囲に撒いた。]
虚の、満つる世界なり、
微塵数の、香の、ひびきの…
[詠唱の最中、今回もイングリッドに礼のひとつも言っていないことを思い出したが、もう遅い、と思う。
まだ立ち上がれない、と気づかれてはいけない。
術に専念しているふりをしなくては──**]
− 魔王軍本陣 −
[近場にいる屍鬼を召喚したら、まだ鮮血を滴らせたものが来た。
本陣付近まで騎士団が攻め上げている様子もないから、テオドールの怒りに触れて成敗されたのだろう。>>156
テオドールの苛立ちの理由のひとつは体のこと――残された時間のなさにあると思う。
その秘密を知る者は少ないけれど――]
閣下の下へ。
[骨の輿を運ばせて命じた。]
[刻々と変わりゆく戦況を伝えるだけで手をこまねいている者は無能として淘汰される。
王の前に伺候するには古来、捧げものが必要なのだ。]
次なる手を。
[移動中にカレンの状況を遠望すれば、町を覆っていた光の結界は消え、魔王軍の投石器や飛行部隊が屍鬼を送り込む作戦に従事していた。]
…砕けたか。
[ベリアンの呟きに、今更ながらイングリッドの依頼を思い出した伝令が、怠惰の魔女の名を伝える。>>2:552]
…なるほど、
[キアラの幻影を見た理由はそれで説明がつく。
屍鬼動員の裏に、死んだと思っていたベリアンの存在を察知して出張ってきたのだろうと。
だが、ガートルードのものにしては、魔法陣を探りに来た論理魔法の力は怜悧に鋭すぎたと感じた。
あれは別の術士のものだ。]
…いるのか。
[カレンを守っているのはクレイグモア騎士団だ。
彼がいても不思議はない、が。]
…騎士団が派遣されたのは町を守るため、そうだろう?
わたしを追ってではあるまい。
復讐など考えないはずだ、 あの冷淡な氷人形は。
[指を握りこんだところで、テオドールの姿が見えた。
輿を担ぐ屍鬼は拝跪し、ベリアンもまた輿の傍らに膝をつく。]
閣下、
ここで一旦、攻撃の手を休めることを進言いたします。
[前置きもなく告げたのには、テオドールがこの戦に落胆している気配も見抜いたからだった。]
攻撃を受けている間は一致団結している者たちも、一度、被害の大きさを実感すれば心に乱れが生じます。
完璧な守護者ではなかった騎士団への憤懣や、投降の損得計算をしなおす者がきっと現れます。
ゆえに、
[と攻撃の停止を提案した。]
/*
キアラ可愛いよなあ。
そして、シェットラントの若さもイイ。
キアラ挟むと乙女ゲーのイベントになるw
氷人形はビスク・ドールと迷ったんだぜ…w
/*
>>225>>241
互いの誤認識がオイシイ。
そして、(PL視点で)魔王の能力を意識しての「未来を知っていたら」「変えることができたら」という折り込みがそそる。
ベリアン>>143も(PL視点で)魔王の能力を意識しての、未来を知ってるっていいことばかりじゃないよねーという対比として書いてみた。
○月○日
屍鬼の感覚についての研究の要点。
屍鬼は見えているのか、聞こえているのか。
筋力によって支えられずに直立歩行できる理由。
記憶。言語。動き。知覚。
何に拠るのか。
生者と屍鬼の違いは奈辺にある?
○月○日
人間と同様の意味では、屍鬼から「感覚」は失われているようだ。
突然の物音にも反応するはない。
だが、それで「聞こえていない」と判断するのは早計だ。
追加試験 : 幻惑など、精神に影響を及ぼす魔法は無効であることが確認できた。
− 魔軍大本営 −
[テオドールに具申した後は、口を閉ざして控え、彼の決断を待つ。
ベリアンは実のところ軍の勝利に興味がない。
戦に勝っても負けても、戦などなくても人は死ぬ。
素材に関しては、テオドールが約束したとおり、彼に従っている限り、供給先に困ることはないだろう。
戦略的・政治的な深慮遠謀もなく、テオドールへの個人的な崇敬だけが、ベリアンを前線に立たせる所以だ。]
[ゆえに、ここでの攻撃停止を奏上したのはひとえにテオドールの内心を慮ってのこと。
熱意の削がれた消耗戦、残された時間。
後のちカレンで問題が生じたら、テオドールはそれをベリアンのせいにして指揮権の剥奪でもすればいい。
ベリアンにとっても痛い話ではない。
その程度の計算は、ある。
単なる屍鬼の増産には興味はない。
ましてや、「不滅の魔王」という課題を託された今は、戦闘にかかわっている時間が惜しい。]
[ヤコブが「”鍵”に選ばれた者」であると聞けば、古の伝説を記憶に手繰る。>>251
その鍵がなくば、古代の力に通じる”門”は開かないのだったか?
ならば、むしろ”門”までおびき寄せてもいい。]
──…、
[続けて、テオドールはヤゴブのことを「俺の父だ」と嘯き、追従の笑いを誘う。
いまだヤコブと戦場で相見えていないベリアンは、彼が自分と同じ年頃だとも、シェットラントの友だとも知らなかったから、魔物たちの哄笑の理由を理解してはいなかった。ただ──]
その者が閣下に縁ある者であれば、亡骸はなるべく傷つけぬまま、わたしにくださいますよう。
[屍鬼に生前の意志や経験を維持させる方法はいまだ見つけていない。
だが、血縁のある素材を使うことで、突破口ができるかもしれない。
ゆえに、真摯な口調で求めた。]
[本当はこういった依頼はファミルに話を通しておくといいのだ。
料金はふっかけてきても、了見のいく仕事をしてくれる。
今回もカレンで火事場泥棒的に書物を入手して売り込みに来ればいいとほんのり期待してもいる。
ファミルの身に起きたことは知るよしもなく。]
[片手を上げて場を収めたテオドールが命令を下す。>>252
ベリアンの提言を入れた形でありながら、それはテオドールの果断さを端的に示した方策だった。
カレンに圧をかける部隊、魔軍の故郷・モーリスへ帰還する部隊、そして、騎士団の本拠地たるペンホールドを攻略する部隊への分割。
魔王の意志をあまねく全土へ広めようとする方針と思われた。]
──御意。
[揺るぎないテオドールの声に打たれ、気力が満ちる。
ベリアンは息を整えて静かに立ち上がった。]
− 海の見える丘陵 −
[軍を動かす合図の音が小さな衝撃波となってぶつかってくる。>>266]
閣下は、騎士団を眠らせぬつもりらしい。
[今度の二正面作戦は、これまでの比ではない。
カレン、ペンホールズ──
魔王軍の行く手にある者たちは恐怖するだろう。
安全な場所などないのだと。]
[引き上げる魔物たちの移動の支援をすべく、そして、あの探知魔法のその後を知るべく、ベリアンは骨の輿を丘陵地帯へと向かわせた。
そこにあったのは──否、失われていたものは、魔法陣を描いた地表そのもの。
天からの鉄槌を喰らったごとく大地は窪み、囮の屍鬼たちは同心円上に吹き飛んで動かなくなっていた。]
……、
[歪みのひとつもないレンズで照準したような論理魔法。
ここまで純正に論理を力に変えられる術士には会ったことがない。
そう育つ可能性のあるヤツだったら、ひとりだけ知っている。]
…相も変わらず、壊すことだけは巧いですね。
[シェットラントがキアラを誘ったりしなければ、と、黒い感情は渦巻く。]
死ぬのが10年遅かったと、後悔するといい──
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