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[ 対戦も、吸血も、紅の魔性を満足させるには至らなかったのだ。
寛げられ無防備に暴かれた場所が、情欲の証で押し破られる。]
──っうあ゛ …ああぁッ!
[ さらに深く熱い部分まで抉り込まれる感触にシェットラントは声を抑えきれず、壁面タイルの目地に爪をたてる。
狭い浴室で、その声は殊の外よく反響した。]
[ 排水口に吸い込まれてゆく湯に、真紅の一筋が混じるのを見て、男にも破瓜があるものかと感じる。
経験のない行為に、どこか裂けたに違いない。
明らかに異質なものを肉体に飲み込まされ、意識が掻き乱される。
排除したいと思うのに、却って身は竦んで陵辱者を締め上げていた。
矢で射られた時、筋肉が鏃を咥え込んで抜けなくなると聞いたことがある。
それと同じ現象が起きているのだろうと思った。]
──… これが魔の本性 か
[ 弱音を吐くまい、嘆願すまいと、唇を噛んで苦鳴を押し殺す。*]
[ 透明な馬にでも跨るかのような態勢のまま、揺すり上げられる。
穿たれ軋むような鈍痛が腰骨から脳天まで突き抜け、巡り巡って膿んだ熱となる。
紅の魔性の口説き文句は、耳に入ってはいるけれど、受け入れ難かった。]
恨まれる のを、 わかって いて、 しているように、しか… 思え ぬッ
[ 少なくとも、彼の標的が姫でなかったことは不幸中の幸いだ。
そこにしか救いを見出せないでいる。]
[ 誰でも最初は痛くて辛くて泣きたくなる──それが繰り返すうちに快感を覚えるようになり、強く求めるようになる──とは、よく聞く話だ。
無理やりに抽送を繰り返されるうちに、檳榔卿の動きが次第に滑らかになっていくのがわかる。
コツを掴んだのかもしれない。
受け止めるシェットランドの方は、相変わらず、早く終われと願うばかりだ。]
わたしは騎士だ。 売春婦では…ない。
この面で相手を満足させる手管など、持たない──
[ 敏感で感じやすい肉体など──むしろ、おぞましい。
ゾクリとした震えが、爪先まで走る。*]
[ 言葉とともに律動が送り込まれる。その質量が闇の奥に刻み込まれる。
魔物は古来、人間を襲い、怖がらせ、血肉を喰らい、殺してきた。
陵辱もまた人間に対する悪事のひとつだ。]
快楽を教え…れば、 免罪、されるというものではないッ
[ 苦しい息の下で頑なに甘言を否定する。
愛撫にも似た手つきで撫でまわされるものだから、
勃起とまではいわずとも下腹部に血が集まって堅くなりかけているのはわかる。
それもまた苦悶の種だ。]
[ シェットラントの反発など意に介さぬ態で、檳榔卿は昇りつめ、吐精した。
出された瞬間はわからなかったが、動きの質が変容したことでそれと知れる。
より艶かしい、トロリとした摩擦に、身体の奥から滾るものが湧いて出て、シェットランドの先端からも透明な糸引く雫が落ちた。]
…っふ、 ぁ
[ 凶暴な質量が抜き去られ、残された空隙に、安堵より取り返しのつかなさを感じる。]
[ 堪能したか、とはこちらの台詞だろう。
排水口へと流れてゆく色を見て、無言で手桶をとり、湯を被る。
剣技で負けても相手に遺恨は覚えないが、これはその範疇ではない。
使命を果たすためとの矜恃がなければ、我を忘れてしまいそうだった。*]
[ 寝台へ上がるよう示されて、浴室の壁に背中でもたれ掛かる。]
──…、
[ 肉体がというより、精神的な疲労困憊で病み上がりのような消耗を感じていた。
だが、生半な抵抗を見せたところで、笑って引きずっていかれるだろうことは、ここまでの経験から推察するにあまりある。
もとより、限界を訴え、容赦してくれと懇願する気もない。
騎士の肉体は、それほど軟弱ではない。
投げ渡された布で、毅然と身体を拭う。
焦らすためではなく、騎士らしい体面を取り戻すのに必要なだけの時間を費やした。]
[ 目が合えば手負いの獣のように睨みつけて、籠絡されたわけではないことを教えてやる。
部屋を出て、布を投げ返し ── その一瞬の広がりを目隠しにして、祭壇の燭台を取りに駆けた。*]
[ 紅の魔性は、一歩も動くことなく、シェットラントの身体を寝台に投げ出してみせた。
かろうじて受け身をとり、枕を掴んで身構える。
対処の手荒さに反して、檳榔卿は苛立っているようには見えなかったが、向けられた言葉は辛辣なものだった。]
──ぅ、
[ 身を捧げた覚えなどない。
だが、姫の安全と引き換えに、彼の要求を飲まざるを得ないのは、己の力不足が招いた結果だった。]
[ 身体検査をするかのような指示を下されたが、ただ恭順の姿勢を取らせたいだけでないことは、今し方の経験から察してしまっている。
彼は、彼が侵略した場所を見せろと言っているのだ。
見て、それで満足するはずもない。
「まだ終わりではない」と告げた声が蘇り、シェットラントの眦に朱を刷く。
けれど、そこに葛藤を抱くのは、心に疾しいところがあるからだろう。]
── 誰がしたくて、このようなことするものか
[ 口悔しさをなけなしの文句にして吐き、重々しく身体の向きを変えて命じられた姿勢をとる。
屈辱を覚えてはいても、それゆえにこそ、整列を命じられた際のように毅然として筋肉をそびやかして心を鎧う。*]
黙れ!
[ あさましい姿を晒すことに「ご褒美」などという言葉を組み合わせてくる檳榔卿に、押し殺すようにして言い返す。
マットレスが沈み込み、彼が近づいてくるという前触れを感知すれば、我知らずきつく目を閉じて身体を硬くした。]
──っ!
[ 掲げて見せるようにと命じられた場所を見られる。
観察され、評価され、予期に違わず嬲られ ── 血が迅った。]
…んッ!
[ 背中への接触に気を取られている間に、中へ挿入されたのは指か。
先ほどのような質量はない。
それならばいいというわけではないが ── 焦らされる。
シーツを握る指に力がこもった。
奥にはまだきっと、檳榔卿が放った精の残滓が溜まっていよう。
それを思うと恥辱がこみ上げてきたが──覚悟とは裏腹に、指が潜り抜ける痛みは消えてゆく。]
…何を した
[ 治癒を通り越して、活性が高まりすぎてはいまいか。
痛みに怯むべくもないのに、余計なことを。*]
[ 存分に感じるように、何をしたというのか。
指は太さでは及ばずとも、複雑な動きをして中を弄る。
濡れたような音がするのは、水薬だろうか。
痛みが溶けてゆく代わりに、もどかしいような熱を孕む。
これは、喉の噛み跡と同じだ──]
やめ…ろッ
[ 指が増やされ、さらなる惑乱を誘う。
上体を支えていることができなくなって、肩をマットレスにつけてしまった。
そうすることでより角度をつけて腰を上げることになり、深く入り込んだ指が今までとはまた異なる刺激を与える。]
──ッ
[ 声を堪えた分、腹に力が入った。]
[ 何か。 何か知らないが、そこに何かある。
目覚めさせてはいけないものだ。
これは、無理強いされた、おぞましい行為なのだから。
どうか、気づいてくれるな──。*]
[ 指で爪弾き、唇で掻き乱し。
先ほどの性急さが嘘のように、檳榔卿は時間をかけてシェットラントを調弦してゆく。
それを凌ごうとするだけで、鍛錬よりも息があがっていた。
シェットラント自身も知らない場所を隈なく弄る指が、見つからぬようにと祈っていた一点を探り当てるのは時間の問題だったというより、頑なな騎士が熟れる頃合いを見計っていたとしか思えないタイミングだった。]
ああ、あ… よせ ッ そこ、は──
[ 触れられると、体の芯が疼く。
意思に反して溶け出してしまう。
これを快感と表現したくないれど、気が遠くなるほど狂おしい。]
何も 良くなど… ! っあ、 耐え…
耐え──て、 っく 、 っう──っ
[ シェットラントは必死の思いで、自分の腕を噛んで、声を殺した。*]
[ 魔物に翻弄されて、声をあげるなど、情けない。
たかだか、肛門を加虐されているだけのことだというのに。
だが、克服の努力を禁じられ、耳に舌啜音を注がれて、息は擦れた。]
離 せ… っ く、 っンぁ…
[ 乱暴に顔を引き揚げられて、ゾクリとする。呻く声はどこかおかしい。
夢の支配下だとしても、姫にこんな音を届かせてはならないと焦る。]
[ 笑って聞き流すばかりと思っていた紅の魔性が、不意に指を抜いて身体を起こした。]
──…!
[ 異変か。救援か。
反撃の機会があれば、逃さないつもりだった。
這うことを強制されていた身体を横ざまに倒して、わずかな解放を得る。
攻め手を止められても、触れられていた場所が名残のように熱くひくついていた。
そればかりを意識してしまう。]
[ 檳榔卿が手を止めたのは、仕上がり具合を見るためだったのか、あるいは嗜虐の手管なのか、いずれにせよ外因による中断ではなく、シェットラントに次の指示がくだされる。]
──…っ
[ 慎みのない姿勢はもとより、恥辱に染まる顔を見られることがいやだ。したくない。]
そんな、もの… せずとも、 できるのだろう。
[ さっきは背後から襲って目的を達したはずだと、苦しい理屈を述べてみる。*]
わたしを喜ばせようとは、笑止。
[ 引きつった笑みを頬に押し上げる。]
あなたは、脅迫紛いの言動で己の望むことを押し通しているだけだ。
[ そんな批判を投げても、彼は動じないのだろう。
触れてくる手は、ベルベットの優雅さを失わない。
「私を、見て」と、命令よりは柔らかな懇願を思わせる囁きに、上目遣いに紅の魔性を見上げた。]
──…、
[ 檳榔卿は、彼自身が主張したように、初めから「おまえが欲しい」と言い続け、問答無用でシェットラントを殺さないよう、たいそう手間隙をかけているのは事実だ。]
そんなことをして何の得があるのか。
夜が明ければ、立ち去るものを。
愛 ? これが ?
わたしに愛のなんたるかを語る資格はないだろうが、それでも、まるで共感できない。
[ 反論のさなかに唇を盗まれて、目を見開き、顔を背ける。]
わたしが、あなたを忌避する気持ちも止めることはできないようだ。
[ 脅さずに済むうちに──とは脅していることに他ならないのをわかっていてやっているのか。]
あなたに、そのつもりはなくとも、人間は傷つく。
痕跡を残さなければいいというものではない。
[ 顔を背けたまま苦言を呈す。
檳榔卿が催促するように手を伸ばしてきたが、仰向けになれば、否応なしに刺激に反応している器官を見られてしまう。
それを揶揄されるのが嫌で、シェットラントの動きは鈍かった。*]
[ 紅の魔性は再び背後をとって、堕落への誘いを囁く。
離れろ、といちいち言葉に出してやるのも、相手の手の中で踊らされているようで、シェットラントは押し返す動きだけで意思表明をした。
檳榔卿はそれを抱擁で拘束しながら、息で、唇で、指で ── そして得体のしれないものを駆使して、全身でもつれ合う。]
[ 股間へ伸びてきたものは、指よりもずっと深くまで到達して、しなやかにのたうった。
頭髪と同じく淡い金色をした陰毛の中を、掻き分け、包み込み、貫く。]
── っな… くッ
[ その間も、檳榔卿の玩弄は止むことがない。
首を、背中を、胸乳にいたるまで同時に愛撫されて、どこを守ればいいのか。
爆発しそうに熱いものが堰上げてくるのに、逃げ場がない。
シェットラントは身を捩り、足で蹴り除け、苦悶を緩和しようと──気持ちよくなろうと──焦れる身体を開いた。*]
[ 檳榔卿の指が深く分け入ってきた。
それまで蠢いていた無機質なものとは違う感触に、陶然として痺れたようになる。]
んッ う… は
[ 欲しいかと問う声に、頑なに首を振った。
全力で拒んでいるというのに、どうして身体は花開いてしまうのか。]
[ 切れ切れに喘ぐ中で、紅の魔性が唇を寄せてくる。]
…──ッ
[ 彼を求める言葉を口にしろと、そんな勧誘に目眩がする。
この上、まだ辱めようとするか。]
そんな ことを、する くらい ならッ
[ 歯噛みするが、彼の言うことを聞かなければ、姫の身が危険にさらされるのだ。
彼は莞爾として笑い、何も言わなかったが、いつでもそのカードを切れることを散々、チラつかせてシェットラントに忍耐をしいてきた。状況は今も変わっていない。]
…くッ
[ 睨んで灼き殺せるなら、とうに灰になっているだろうに。]
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