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― 平原 ―
[眼前への道を開けさせた男は、こちらへ何を思ったのか>>14。
一瞬の表情の変化は読めなかったが、素直との評と問い掛けには、ぎ、と眼差しを強める]
――それでも構わない。
いや、やることは同じだからだ!
[立ちはだかる者が大将だろうが一兵卒だろうが、退けて前進することに変わりはないから。
仮にそれが叶わなくても、とは、口には出さなかったが]
[こちらの問いに相手の名乗りが返る>>15。
ケファラスの名は寡聞にして知らなかったが、名のある軍人であることは理解する]
……セルウィン・アルニムだ。
[名を問われれば、礼儀として返すことに躊躇はない。
しかし真に答えに窮する質問はその次に来た]
…………!
[どんな糾弾でも受けるつもりではいたが、それに乗じたまさにその相手から問われるのは痛烈だった。
そもそも答えるべきなのか、とも思う]
[背後に控える仲間たちは無言だった。
隊長がどう反応するかを彼らも見ていると、そうも思えた]
――警戒すべき相手を見誤ったからだ。
[ようやく、といった様子で目を開いて、セルウィンは答えた]
"何をするかわからない"奴の方が危険だと、そちらを抑えるべきだと思っていた。
こっちだって実力差はある。それでも、
[まだ槍を構えたままの右手が震える]
"見えている相手"だと……そう思っていたんだ……!
[残りは後退するだけだと、どこか油断した考えが心の底にあった。
元から均衡など、自分たちでどうにか持たせているだけに過ぎなかったというのに*]
― 平原 ―
[こちらの返答に何を言われるかとも思ったが、思案の後に返された答え>>25は肯定から入るもの]
…………。
[かと言って結果は、目の前にある通りだ。
ストレートな酷評を、身を裂かれるような思いのまま聞く]
――敵に評価されても仕方のないことだろ。
[こちらを評する言葉>>26に、どうにか返した声は掠れていた。
相手の言葉に嘘はないだろうと思うが、失策を突いた敵将にそれを言われるのは、やはり堪える]
[だからその顔に猛禽のような笑みが浮かんだ時>>27――無論恐ろしくはあったけれど――むしろ救われたような気にさえなったのだ]
当たり前だ!
このまま帰ることなんて望んでいない――
[帰らない、とは言わなかった。
虚勢だとわかっていても]
フェリクス、お前の首を獲って帰るんだ――!
[それでも、勝つために戦いを挑むのだと、そう宣するのがぎりぎりの矜持だった。
雄叫びと共に一歩を踏み込み、槍の穂先をかち上げる。
周囲の精鋭兵はフェリクスに手出しはしなかったが、他の敵兵が動くならばそれを抑えに回った*]
/*
しかし……フェリクスの中身、多分あの人で間違ってないと思うけど……
こないだからめっちゃ対戦してません!?
― 平原 ―
[揶揄う響き>>31に細めた眼差しのみを持って答える。
もう一度戦場を踏めるともわからぬ身であったから]
[決死の宣言に、フェリクスから返る楽しげな笑み一つ>>32。
先制の一撃は軽く払われ、直後に彼は馬から眼前へ降り立った]
――はあっ!
[同じ槍とはいえリーチの差は明白。
着地までの間も惜しいとばかりに、弾かれた穂先を引き戻す動きで旋回させつつ、更に一歩を相手側へ踏み込んだ]
[幸い、周囲の敵兵も対峙に手を出すことはないようだ。
こちらの兵は牽制はしつつも、無理に敵に突っかかることはしない。
一騎打ちが始まった時点で、無闇に隊長の気を散らす動きは避けているようだった*]
― 平原 ―
お前たちとは比べるべくもないが――
[基礎は押さえている>>44との評に、思わず言葉が口を衝いて出る]
俺だって、戦場へ立つ日のために鍛錬して来たんだ!
[ただ悔しさをぶつけるだけの叫びではあったが、それでも足を踏ん張るための力にはなった。
対する相手から生じたのは、攻撃を避けるのではなく迎え撃つ動き。
真っ向からの突きに背筋に冷えが駆け上る]
く……!
[退くのは間に合わないと判断し、大きく身を捩りつつ、左手の盾を腹部を守る位置に引き寄せる。
急所こそ避けたが、盾は攻撃を受け流し切れず、表面が大きく裂けた]
でも、
[無理な体勢を直すため数歩たたらを踏む。
それは相手に構えの猶予を与えることにもなろう]
望んで兵役に加わる奴ばかりじゃなかった。
それなのに、俺は……!
[震えかけた手で短槍を握り直す。
相手を責めているのではない、あくまで自分自身の悔恨。
それでもやはり、今力をぶつける先は、目の前の相手しかないのだ]
くそ……っ!
[相手の槍を睨みつつ誘うように一歩を。
前に突き出した槍は、敵が動きを見せればその手元を狙うように軌道を変える*]
― 平原 ―
わかってるんだよ、そんなことは……!
[彼ら>>54は幼い頃から軍事教練を受け、禁欲的な生活をしているのだと聞いた。
生まれ育ちも違えば、踏んで来た場数だって大幅に違うだろう]
それでも、選んだんだ、俺は!
[ならば自ら望んで戦いに身を投じたことこそが自分の矜持だとばかりに叫んで、交錯を終えた直後の身を立て直す]
[僅かながら空いた間に、淡々と紡がれる男の声が聞こえた>>55。
それは自責の念に囚われすぎるなという、助言とも取れるもの。
今まさに戦っている相手に説く内容としては、どうかと思うが]
――ならばせめて、彼らは恥じぬ戦いをしたのだと、ここで証明しなければな。
[個々の力は及ばずとも、無為な死ではなかったのだと。
今この戦場で示す方法は、一つしか思いつかないけれど]
[こちらが踏み出し槍を突き出せば、相手も応じるように一閃を振るう。
盾を持つ左腕狙いとは見えたが、敢えて回避のための動きは取らない。
敵の切っ先が先に届くことも覚悟の上で、その手元だけに集中する]
[果たして、途中から横振りへと軌道を変えた短槍は敵の手元を捉え、その穂先に空を切らせた]
…………!
[確かな手応えに、思わず表情に高揚が浮かぶ。
眼前には、がら空きになった敵の胴が見えた。
今が好機だと告げるような光景だった]
[更なる一歩を踏み込もうとした時、項の辺りが警告するようにひりついた。
本当に、これほどの相手があっさり隙を見せるものか?
しかしその感覚を振り切って、セルウィンは動いた]
[ここで死地に飛び込まねば、どのみち勝てる相手ではない]
――そこだっ!!
[横振りしていた槍の穂先を、再び前方へ。
敵の懐へ飛び込む動きで、更に右腕を限界まで突き出す。
相手の思惑ごと貫かんとするほど真っ直ぐに、狙うのはフェリクスの喉元*]
― 平原 ―
[自ら選んだと、その言葉>>83に小さな頷きを。
軽口めいた言葉にも、今は反論することはない。
こちらを戦士として認め相対してくれているのだと、言葉の裏にも感じるものがあったから]
[手練れの戦士相手に、こちらは真っ直ぐな、真っ向からの勝負しか術を持たない。
そして全力を持って仕掛けた一撃は、楽しげな声と共に動いた男の、左腕へ突き刺さる>>84]
なっ……
[仕留めるか、かわされるか、二つに一つだと思っていた。
第三の状況を唐突に示され、手傷を負わせたにも関わらず混乱する。
そんな自分の耳に届くのは、相手の負けられぬ理由]
お前の――……
[理由など知るか、と叫ぶつもりだった。
負けられないのはこちらも同じだし、子の存在を知ったところで見逃そうとも思わない。
けれど――冷血非道と見えていた相手にも、国や子を思う感情があったのだと。
感慨のようなものを得た瞬間、振るわれた左腕により槍を握る右手が強く引かれた]
ぐっ!
[僅かでも相手に届く可能性を上げようと、無理に右手を伸ばしていたのが災いした。
右側へほぼ転がるような形で、体勢が崩れる。
そして唯一の武器である短槍も、手の内を滑り抜けていった*]
― 回想 ―
[きっと、自分は特別な存在などではない]
[次男の身の振り方として考えれば、むしろありふれたものだ。
少しばかりそこに時間と金を余分に注ぐ事情があったというだけで]
[だから、自身が一方的に敬愛するベリアンに対し、特別意識に留まるような何かがあった>>61とも思っていなかった。
相手の真の才能を見ることなく無責任な噂ばかり飛ばす輩は、自分や兄の周りにも湧いていたから、耳を貸そうとも思わなかった。
それだけのこと]
[それでも、同期相手に負けはないと思えるくらいの自負はあった。
ましてや、相手が兵役前の若者なら]
[しかし、一度だけ意表を突く一撃からの勝利をもぎ取られたことがある。
それがあの、カレルとの一戦だった>>76]
――……くそっ!
[審判役がカレルの勝利を宣言した時、思わずそう吐き捨てたのを覚えている。
基本的に、真摯で教えに忠実な印象を持っていた青年だった。
『意表を突く』にしろそれに繋がる剣技は、自分たちが教えた型の範疇に納まるはずで]
誰に教わった?
[また叱っていると誤解されるだろうかとも思いつつ、そう問いかけた*]
― 回想 ―
[この男が、感情を――特に、悔しさを――表に出すことなど早々ないというのは、既にトルーンの民たちも知る所だろう。
思わず零れたその声に、無邪気に喜ぶカレル>>93を見て。
やれやれと浮かべた笑みは、ごく小さなもの]
[剣技を教えた人間について問えば、遭難した人>>94と返って来る。
何処の誰かは想像もつかなかったし訊かなかったが]
随分と……実戦的な剣技だな。
俺も子供の頃から剣を習ってたが、その時教わったのとは違う――
[殺すための技術だ。
とは、口に出しては言えなかった。
救助の礼とはいえ、子供にこれを教えたのか、とも]
――昔のことなのに、よく覚えていたな。
身に染み込ませるには、相応の鍛錬が必要だろう。
[しかし、結局はそこを問うことはなく。
予想外の勝利を捧げた相手に、賞賛を投げ掛けるのだった*]
― 平原 ―
…………。
[槍を受け止められてから次の動作までの、一瞬の間に放たれた言葉>>95。
怯むべきではなかったのかとも、そもそも仕留められなかった時点で同じだとも思う。
いずれにしろ、考えても詮無いことだ]
[得物を奪われ、体勢を崩したこちらに、容赦なく槍が襲い掛かる。
周囲の精鋭兵たちの動揺の声が聞こえたが、手出し無用の一騎打ちではどうすることも出来ない]
ぐ、う……!
[突き上げる一撃を、それでもただで喰らうつもりはなかった。
槍を諦めた右手と、まだ辛うじて盾の残る左手を交差し、体幹部を守る。
しかしそれは、どうにか致命傷を避けた、という程度の役にしか立たず]
[穂先は両の前腕を、骨に達するほど深々と切り裂いていった*]
― 平原 ―
う、……
[痛みに対する悲鳴はどうにか飲み込んだ。
命は辛うじて繋いだものの、両の手がまともに動かなくては、もう何を為すことも出来ないだろう。
膝を着き見上げた先に、フェリクスのこちらを評するような、しかし酷薄な笑みが見えた>>113]
『セルウィン!』『隊長!』
[フェリクスが槍を高く掲げる>>114のに、叫びを上げた味方の兵を視線で制した]
すまない、だが……。
俺の失態を恥じるなら、どうかお前たちが、皆の誇りになってくれ。
[それの意図する所を、説明する時間はないだろう。
必殺の一撃が、こちらの胸を目掛けて、落ちる]
[冷たい刃が、こちらの胸から背へ通り抜ける。
突き抜ける痛みと同時に、酷い悪寒が全身を駆け巡り、視界が急激に暗くなる。
しかし眼差しは、最期の瞬間まで己を討った相手を捉えようと、彷徨う]
――い、つか、兄に……。
セドリック・アルニムに会うことがあったら……。
弟は、望むままに生きた、と……。
[軍人、しかも現時点で敵対している相手が、兄と会う機会があるとも思えない。
それでもいつか、これを耳にした誰かから伝わることがあればいい、と。
意識が途切れる間際の、縋るような願いを託す]
お前、は……この生き方、望んで……ごほっ!
[取り留めのない問い掛けの言葉は、水音のような咳で途切れた。
既に生まれつつあった血溜まりは、槍が抜かれればあっという間にその面積を増し、セルウィンの身は力なくそこへ倒れ込む]
…………兄さん……。
[小さな呟きと共に呼吸は途切れ、眼差しはただ虚空を見詰めていた*]
[カレルはあの剣技を、己の望みのために生かせるだろうか。
自分へ強さの一端をくれたベリアンに、僅かでも恩は返せただろうか。
ギデオンは犠牲になった兵たちを、勇敢だったと評してくれるだろうか]
[――ミヒャエルには嘘をついてしまった、本当はあの時もう――]
[取り留めもなく考えるが、全てはもう伝える術のないことだ]
[部隊長の死を見届けた精鋭兵たちは、僅かな黙礼の後、敵兵へ向けて武器を構えた。
牽制でなく、戦闘の意志と共に]
『我々は敵陣を打ち破り帰還する。それが隊長命令だ』
[しかしその前にはゼファー軍騎兵隊が、圧倒的な数で立ち塞がっていた――*]
/*
ガチ死亡シーンは久々に書いた気がする。
フェリクスさんが冷徹かっこよくて死ぬのに悔いはなかった()
しかし本当は熱いというか、突き放すのではなく受け入れられた部分こそセルウィンを揺らがせたように思えたので、なんというか上手いな、と。
/*
カレルとはもっとわいわい?したかったよー!
なんか盛り上がるエピソードが作れなくてごめん。
共闘しつつ散るみたいなのがしたかったけど、こればっかりは状況によるので…。
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