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えっ!?
ちゃんと人間だよ?
[兄から質問が飛んできて、はえぅ?!とか謎の声が漏れた。
たぶん、チシャが王様のマントを着ている謎イメージが浮かんだせい。
どちらが思い浮かべたイメージなのやら。]
昔チシャ畑で会ってさー。
野菜いっぱいくれたんだ。
野菜作ってるって言ってたのに、王様だったなんてねー。
[まさか自分のひとことが兄に突飛な想像をさせていたとは思わないまま、出会った時の話を補足した。]
― 行軍中 ―
[東を目指して馬を駆けさせる猿の親玉の手首には、カラフルな腕輪が嵌っている。
ほんのり香る小袋は、無くしちゃいけないからと懐に納めていた。
目ざとく見つけた猿の仲間から「なんすかそれ」と訊かれて、にやにや笑う。]
やー。
俺ってばモテちゃって仕方ないからなー。
[「へー」と相槌打った方もにやにや笑う。
女の子から贈り物をもらうことは多いけれど、普段は横流しばかりして、自分で身に付ける事なんてない、と知ってるにやにや笑いだった。*]
そう。 そうだねー。
あーーー……
[散々聞かされた不安やら心配やらが積もり積もって]
だあああぁぁ!
タイガも男だろぉ!?
そういう時は酒でもかっくらって、びしっとどしいっとしてればいいんだって!
ああもう、しっかりしてくれよ。
[キレた。]
― 3年前 ユリハルシラ領 ―
[このころ領内で流行っていた歌に、こんなものがある。]
その瞳は鷹よりも鋭く
その腕は獅子よりも強い
ひとまたぎで山を越え
ひとのみで海を干す
その名はタイガ タイガ
雄々しき戦士 ユリハルシラの星。
(中略)
神より授かりし馬を駆り
竜に囚われし姫君を救わん
千の海と山を越え
万の敵を打ち払う
その名はタイガ タイガ
華々しき戦士 ユリハルシラの希望
(以下冒険譚36行略)
/*
というのを思いついたんだけれども、さすがにあほすぎるので埋めておく。
なお、もちろんレト君作詞。
(兄ちゃん大好きと中二病が炸裂した結果と思われ)
― 3年前 ―
[言いたいだけを言って、黙る。
沈黙が、「やっと静かになった」から後悔に変わる一瞬の後、届いた言葉でほどけた。]
………そりゃそうだよ。
親とか子供とか言っても結局違う人間なわけだし、
触って、あったかいのを確かめて、初めて繋がるっていうか、
そういうものだろ?
ともかく、
今更ジタバタしたって始まらないんだし、
なんか平気な顔してればいいよ。
話なら聞く。
聞くからさあ。
[仕方ないなぁ、の声だった。*]
― 大街道 ―
[本隊へは割とすぐに追いついた。
歩兵も輜重隊も連れて進む大部隊と、騎馬だけの小集団では速さが違う。
本隊が野営した即席砦に翌日の昼には到達し、夜が来る前には本隊と合流する。]
ただいま、ってのも変かな。
[護衛兵と共に進む堂々たる指揮官ぶりの兄に馬を寄せ、声をかけた。]
仕込みがあるから、このまま先行するよ。
楽しみにしてて。
あと、お風呂最高だった!って言いたいんだけど、
ひょっとして、ナイジェルいない?
― 3年前 ―
[感謝なんてされると、こちらの方が恥ずかしくなる。
なんといっても、先にキレたのはこっちだし。
傷つけたんじゃないかと心配になった、なんて、言うのも恥ずかしいお年頃だけれども。]
祝福?
いいよ。もちろん。
今度の祝祭日にはそっちに行くからさ。
なにか美味しいもの用意して待っててよ。
[だから、頼み事には一も二もなく頷いた。
なんだかんだ言っても、兄の力になりたいのだ。*]
ナイジェル、王都の方に行ってるの?
そっか。
[囮、というのが時に危険というのは知っているから、少し神妙な顔で彼の無事を願う。
これから自分がやろうとしているのも、囮役の際たるものだったが。]
風呂ね!最高だったよ!
タイガは入ってないの?入ればよかったのに。
あれ、いろいろ改造したら、もっと面白くなると思うんだよね。
[入浴施設について、ひとしきり語った後]
― 大街道/開戦前 ―
[タイガの側を離れた後は速度を上げ、先頭を進む部隊へ近づく。
部隊長が見えれば大きく手を振った。]
ノーラ!久しぶり!
[声を上げて、近づいていく。]
ミーネちゃんのプレゼント、ちゃんと受け取ったよ!
なんかお礼になるものでもあればいいんだけど、手持ちが無いからさ。
これが終わったら会いに行くよって伝えておいてよ。
あと、ほら、イルフェもすっかり大きくなってさ。
最近じゃ、そこらの馬との競争なら負け知らずだよ。
今度、時間があったらひとっ走りしようよ。
[自慢と感謝を纏めて伝えて、そのまま追い抜くように馬の足を速める。]
それじゃ、また戦いが終わったらねー。
[言うだけを言って、南へと馬の頭を向けた。*]
― 中央平原 ―
[本隊から離れた後、
本隊と歩調を合わせて東進しながら、なるべく離れていた。
こういう時、本隊が高く掲げている旗は遠くからも良く見えて助かる。
いよいよ敵軍との接触が近いとなれば、隊をさらに4つに分けて、それぞれ事前に目を付けておいた窪地に潜んだ。
そこで工作物の最後の仕上げをする。
もしも敵の先行部隊に見つかれば危険なこと極まりないが、その時は何もかも投げてさっさと逃げることになっていた。]
― 中央平原/戦場の南方 ―
[双方の先鋒同士がぶつかり合い、矢が驟雨となって降り注ぐ。
戦塵立ち込める人馬の轟きを、遠くから見つめる目があった。
悪戯は、時と機を選ばなければただの悪戯だ。
戦場の熱気がさらに上がるのを待って、猿たちは息をひそめる。]
[やがて、両軍の本陣からも矢のアーチが掛かり、騎馬隊がそれぞれ動き出す。
敵騎馬隊の一隊が南に向かってきた時には見つかったかとぎょっとしたが、どうやらそうでもないらしく、途中で方向を変えていった。
思わず胸をなでおろすが、これこそ機だろう。
犬笛の音を合図に、猿たちはいっせいに動き始める。
盛大な太鼓や喇叭の音と共に、窪地から次々と月と波の軍旗が立ち上がった。]
騎乗ーーーっ!
突撃ーーーっ!
[草原の真ん中から軍が湧きだしたような、そんな効果を狙いつつ、総数100名弱の三分隊が動き出す。]
[伏せている間の姿は、なかなか見られたものではなかっただろう。
人間はおろか、馬まで横倒しにさせた常識外れっぷりだった。
騎兵の一隊にでも先に発見されたら一瞬で部隊壊滅間違いない。
駆ける様子も非常識というか、突飛なもの。
先頭の5騎くらいが両手に木の枝を持ち、土煙を立てながら疾走する。
後方に続く者たちは、馬っぽい形の板を長い棒に4つほど固定したものを持って走っていた。
一人ラインダンスならぬ、1騎で5騎分の騎馬突撃である。
もちろん、普通に見ればすぐに見破れるようなものだが、戦場という混乱状態の中、土煙の中に紛れていれば、或いは大軍に見えるかもしれない。]
― 3年前 ―
えっ?
[しばらく静かになったあと、唐突な言葉が飛んでくる。
驚きは、すぐに嬉しさに変わった。]
そっか。
そっかあ。よかった。
あは。俺も叔父さんかぁ。
[嬉しい。くすぐったい。
踊りだしたい気持ちは多分、タイガの気持ちが伝わってきているせいだ。]
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