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おにいさま?なにが、――きゃ、
[握っていた手がするりと解け、少女は突き飛ばされる。
慌てて振り返れば、ぐにゃりと手応えなく歪む床、下に吸い込まれてゆく兄の姿。]
!!おにいさま、まって、――
[慌てて手を伸ばすも、少女の掌は無為に空を掴み。
為す術なく、消えてゆく兄の姿を見守るしかなかった。]
おにいさま、いや、ひとりにしないで、
[脳裏に甦る絶望に目を見開いて。
少女は兄の帽子を抱きしめ、バルコニーの床にへたり込んだ。*]
[どれくらいそうしていたか。]
おにいさま、何処?
[大事なものを再び失ってしまう恐怖にがたがたと震える少女は、弱々しく呟く。先程に増して顔色は悪い。]
……探さなくっちゃ。
約束、約束をしたんだもの。
[己を叱咤しよろよろと立ち上がると、兄の帽子を大事に抱えたままにバルコニーを後にする。空いた手が壁のある部分に触れた、その時だった。かちり、と何かを押してしまったような音が響き、]
――!!
[どすっ、
少女にはそれは鈍い音となって聞こえた。
兄と離れ離れになったことによる動揺と、吸血されたことで少々貧血気味になったこと。それらの要因が重なって、少女の判断力は低下してしまっていたのだ。普段の状態ならばやすやすと躱せたであろうその一撃を、少女はマトモに受けてしまったのである。]
あー、……これは、ちょっと、拙い。
[小さく血を吐き出して、少女は自嘲の笑みを零した。
壁に隠れたボタンを押してしまったことで発動したトラップ。
魔力により何処かから飛んできた包丁程度の大きさの銀の短剣は、少女の胸近くを刺し貫いた。――抱えていた兄の帽子ごと。
短剣は少女と壁とを縫い付ける。
少女は崩折れそうになるのを歯を食いしばって踏み留まる。
壁に短剣が固定されたままで崩れ落ちれば、傷口が広がりかねない。
自分がナイフに施すのと似た魔術がこの剣にもかけられているらしく、その刃が触れる部分は焼けるように熱い。]
[少女は、息を止めて短剣の柄を握りしめた。
今の出血量は然程でもないが、剣を抜いた瞬間に大量の血が失われるだろう。その瞬間に備え、持てる力を回復へと集中させようと目を閉じる。
――しばらくそのまま微動だにしなかったが、ある一瞬。
一息に、短剣を引き抜いた。]
――……ひ、ぃ、……っ!!
[耐え切れずに悲鳴を漏らし。
回復が間に合わなかった分の血液と、引きぬいた際に飛び散る返り血が一気に失われ、床と衣服、そして胸ポケットの濃紫の花を赤く染める。
漸く膝をつくことを許された少女は再び床の上に座り込み、荒い息を繰り返しついた。]
[少女は透き通った声でそう言うと、幽霊のように立ち上がる。
穴の開いてしまった帽子をかぶり、腹部をそっと撫でた。]
食事をしにいかなきゃならないわ。
何処かに美味しい
[不気味なほどの笑顔でぎしり、と首を傾げる。
食事をするための体力を温存するためにゆっくりと歩み、辿り着いたのは<<夜盲 ジャン>>のいる場所。]
碧眼 シルキーは、ランダム を投票先に選びました。
―廊下―
[傷はとうにふさがっていたが、血の跡や破けた衣服まで修復している余裕はなかった。力を無駄に使ってはならぬ。
壁に手をついて体重を支えながら、曲がり角を曲がると。
視線の先に小柄な少女を見つける。]
あらあら、
[黄金に輝く長い髪に、黒いワンピース。
身の丈はちょうど同じくらいだろうか。
少女は喜色を表に出して、口を開けて笑った。
蒼白な肌に、舌だけが赤く。]
御機嫌よう。良い晩ね?
[少女はすました笑顔に戻るとその相手に、愛しい兄に声をかけた。
自分の胸から引き抜いた短剣は右手に持ったまま。
どう見ても異様なその風体に彼女は、いや彼は、どのような反応をするだろう。]
[飢えに邪魔されてぼんやりと定まらぬ思考は、目の前の少女を兄であると認識できない。]
「お嬢様」?
ふふ、おにいさまみたいなことを言うのね。
[上品に笑えば一歩、
小柄な少女に近付いて。
首を傾げればまた一歩。
短剣を逆手から順手に握り直す。]
あら、どうして謝るの?
謝らなければならないのは、わたし、なのに。
[既に視線は相手の首元から離れることはなく。
感情を露わにする目の前の少女に不思議そうに訊ねる。]
酷いことをするのは、わたしなのに。
[少女は恍惚とした表情で、兄の喉笛に唇をつける。
恋人同士の触れ合いのように舌を這わせれば、脳髄が痺れるほどの甘美な味が舌下に広がった。
兎の血を味わった時とは比べ物にならないほどの甘露だ。
兄の血に混じり気の少ないことも多少は影響しているのだろうが、それよりずっと強い要因がある。
『渇き』。
取り込んだ命の水、それは漏れなく少女自身の命になる。
少女は全てを奪い尽くさんばかりに喉笛に小さな牙を突き立てた。
もっと。もっとだ。まだ足りない。
少女の中の獣がそう囁く。
本能の命ずる声に従って、少女は愛しい兄を喰らう。]
[そうして、本当に全てを吸い尽くさんばかりになった時。
思考を遮断していた『飢え』が癒やされた時。
少女の脳裏に過るのは、三日月形にゆるく弧を描く口元であった。]
―――…おにい、さま?
[突き立てていた牙を離して茫然と呟いた。
全てのピースが繋がって、少女は頭が真っ白になる。
愛しいひとを、自らの手で喰らい尽くしてしまったかもしれない。
少女は恐怖に慄く。]
いや、おにいさま、ごめんなさい、
……誰か、誰か!
[誰か、おにいさまを助けて。
小さな兄を抱きかかえ、少女は掠れた声をあげた。]
/*
おにーさまマジ……こんなへっぽこに長い間付きあわせてほんとすいません…苦痛になってないといいなあ、駄目だよなあ(´;ω;`)
―廊下―
……あ、
[突然背後からかけられた、薄らと聞き覚えのあるその声に。
少女はびくりと肩を震わせて振り向いた。]
あなた、あの時の?
[自分が言えたことではないのだが、随分と雰囲気が異なる。
先刻取り込んだ獣の血液と同じ匂いであることも分かるのに、それでも同一人物だと確信することができずに、少女は恐る恐る訊ねた。]
……?
[とぼけた返答なのか、それとも素なのか。
少女は訳がわからないといった風に首を傾げたが、]
――!!
違うわ、ころしてなんて、ジャンは死んでなんていないわ、
[その問いには、願望含みで必死に否定をする。
いやいやと首を振って、己の髪をぐしゃりと握りしめた。
「閉じ込められちゃう」
その言葉の意味は測りかねたけれど。
そうして少女は、恐る恐る腕の中の小さな兄の様子を窺った。]
[「死んでいない」。
少女は心の底から安堵して、青玉を潤ませた。]
良かった、わたし、おにいさまを喰らい尽くしてしまったかと、……
恐ろしくて恐ろしくて、身が裂けてしまうかと思った、
[耐え切れずに涙を零して目を閉じれば、すん、と鼻を近づけられて匂いを嗅がれたことを知る。
目を開けると差し出される、両手いっぱいのプレゼント。]
……これをくれるの?
これは、……栄養剤みたいなものかしら。
[小瓶から微かに香る薔薇と血の匂い。
少女は睫毛を震わせて、兎に訊ねる。腕に抱いた小さな兄を床へと横たえると、両手をお椀のように差し出して。
受け取りきれなかった大理石の欠片が幾つか地面に落ちたか。]
有難う、これでおにいさまを回復してあげることができるわ。
[少女は小瓶を大切そうに胸の前で握りしめる。
小さな兄が身を起こすのにも気付かず、眼前の兎と向き合って]
「齧る」?
よだれが垂れているわよ、私の血が欲しいの?
[拭ってやろうとハンカチを探そうとして、神父服の男の傷を手当するのに使ってしまったのだったと思い出す。]
/*
3人までなら多角じゃないってえらいひとが言ってたけど、私にとっては多角以外のなにものでもありませんです…(;ω;)
上手く出来てるかなあもう不安で仕方がない
/*
兎さん→「小瓶あげるから血吸わせろ。小瓶の使い道はすきにしろ」
シルキー→「血はあげるからこの小瓶をおにいさまに渡さないと」
おにーさま→「兎の血が欲しいから、小瓶で回復させてから分捕ってやらあ」
こうですかね…?目的が三者三様でなんか面白い
碧眼 シルキーは、夜盲 ジャン を能力(守る)の対象に選びました。
あ、おにいさま……
[少女は、兄が吸血を行いそして元の姿にもどる、その一部始終を茫然と見守った。自分にもつい先刻に同じことが起きていたのだが、やはり実際に目撃するのは衝撃を与えるに十分なもの。
……同時に。少女が愛しい人を喰らってしまったのだということが、実感を伴って少女の心に重くのしかかる。こころの痛みに苦しげに眉を寄せ、元の姿に戻った兄に声をかけようとしたが]
―――〜〜!!
おにいさま、血が、
[兄が傷つけられたことがわかれば声にならない悲鳴を上げる。
兎の様子の変化など知ったことではない、とばかりに男の怪我に意識をやる。逃走するか否かの判断は、男に任せることになろう。]
―廊下―
[兎が倒れこむのを横目で見ながら、少女は男の手を握って走り去る。]
有難う、おにいさまを助けてくれて。
[途中、後ろ髪を引かれるように後方を振り返り。
小さくお礼を言った。脳震盪を起こしているらしい相手に聞こえたかどうかは定かでないが。
ごたごたで、大理石の欠片は貰いっぱなしになっているのだが、すっかり頭の隅に追いやられてしまっていた。*]
[男の足が止まればそれに従って足を止める。
思いもよらぬ謝罪の言葉>>277に、少女は俯いて答える。
睫毛が頬に影を落とした。]
……謝らなければならないのは、私のほう。
ごめんなさい、我を忘れるほど飢えたことがなかったの、よりにもよってあなたを傷つけるなんて。
[その言葉は言外に「あなた以外なら傷つけても良かった」と聞こえるであろうものだが、構いもせず。
唇を噛んで、涙を押しとどめようとした。]
こんなに悪趣味な余興だとは思わなかったわ。
早く出ないと。
[男の話を聞いているんだかいないんだか。
自分自身に言い聞かせるように呟いた。]
追いかけて?
[体格の不利をカバーし、持ち前のすばしこさを活かす。
ヒットアンドアウェイで戦うのが少女の元来のスタイルであった。
流石に大の男に真っ向から勝負を挑まれれば勝てる気はしない。]
ええ、逃げましょう。
[少女は兄の言葉にこくこくと頷いて、導かれるまま駆け出す。]
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