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タイガは遠乗り?
いいな。後で一緒に行こうよ。
[言葉から吹いて来る風の匂いを嗅ごうと、首を伸ばす。
どこまでも続く草の海を駆け抜けるのは、きっと気持ちいい。]
お土産は塩ダラにしたよ。
かっちかちのやつ。
向こうは海が無いから、喜ぶかなって。
[兵糧の中から持ち出してきたものだ。
ちゃんと名前入りで「もらっていくよ」と置手紙したから、自分的には勝手に持ち出したわけじゃない。]
そうだ。
もう一つ伝言。
[踵を返しかけたところで、もう一度クリフを見た。]
「ナイジェル・ソン・ベルクが再会を楽しみにしている」
だって。
[確かに伝えた、と笑うと、天幕の入り口へと歩き出した。
誰かに止められない限りは、そのまま野営地の外まで出ていくだろう*]
だから、ユリハルシラに戻ったんだけどね。
定住の民をするのも、なかなか大変なんだね。
[冗談のように言う顔に、もう影はない。*]
それいいね。
どちらが先に美味しい果物を見つけるか、競争しようよ。
[楽しみだー、と声にも雰囲気にもいっぱいに乗せる。]
ねー。
ちゃんと食べ方教えた方が良かったかな。
[お土産塩ダラについては、単に珍しい方が良いだろうというくらいで、まったくもって他意はない。
酒は、持って行こうとしたら怒られたので止めておいたのだ。
あれは塩タラよりもう少し管理が厳しいから。]
そうそう。ちゃんと伝言伝えたよ。
「王子には帝王学を学ぶための家庭教師を用意しよう。
学ぶのは執政しながらでも可能だ」
だって。
[思いだしたように、お使いの成果を伝えておく。]
向こうの司令官はガルニエ騎士団のクリフ・ルヴェリエ。
隣にはリンデマンス王もいたよ。
どっちも小さいころに会ってて、びっくりした。
王様なんて、会った時はチシャの兄さんだったんだよ。
[等々、会見の様子を話しておく。
ブリュノー戦後のことなど要点は外さなかったが、それ以外のところは知り合いばかりで驚いた、という話に終始した。]
それじゃ、また。
今度会うときは踊りも見せるよ。
[敵味方に分かれているとは思えない気軽さで手を振る。
弱そうなんだから、ちゃんと後ろに引っ込んでなよ、
とは、さすがに口に出さなかった。*]
― 中央平原東側 ―
[連邦軍の野営地を出て橋を渡り、しばらく西に行った丘のふもとで《猿》たちと合流した。
舟を返しに行った連中もいれば、まだ歓楽街にいる連中もいたりして、全員ではない。戦場に陣を張るころに合流できればいい。
「なんだ無事だったんですか」と言う奴には、とーぜん!と返し、「女の子引っかけてこなかったんですかー」と言う奴には、男しかいなかったよ残念と答えておく。]
だいたい戦場に出てくるような女なんて、ばーさんみたいなのしかいないって。
[叩き返した軽口は別に特定の誰かを思い出していた訳じゃない。
いや。頭の隅にはあったかも。]
じゃ、軍の野営地まで行こうか。
ナイジェルが風呂用意してくれてるって。
[待ってるものを告げた途端、わああと猿たちが盛り上がる。
早く帰ろうと、馬ごとそわそわしだす連中を見回してから、あー、と声を出した。]
でもちょっと誰か川の方見て来てほしいんだよね。
上ぐるっと回って、合流は戦場で。
[たちまちブーイングの嵐になった。]
[レト自身も加わった熾烈な賽の目勝負の結果、6騎がしぶしぶと北に向かう。]
あとで酒用意しておくから頑張ってー。
[声掛け送り出した後、残りは真っ直ぐに東へ向かう。
街道を通らずに牧草地を抜けるのは、実際の地形を確かめておきたいからだった。
平らに見えても、僅かな起伏を利用すれば身を隠すことができる。
獅子たちが狩りをする広大な草原で学んだことだ。]
[北へ向かった小隊は、ケノワ砦から距離を取りつつも、特に身を隠すこともなく北へと進む。
見張りがいるにせよいないにせよ、武器もほとんど持たず、軍装ですらない小集団は、別に見られても構いはしなかった。
川沿いに北上し、湖の傍を抜け、王都の東の壁を見ながら南下して合流の予定だ。
一行の中には治水の知識持つものが加わっていた。**]
猿と合流した。
あとはまっすぐ帰るよー。
[帰還に先立ち、一報を入れる。]
川と湖の様子も見て来てもらうから、あとで使うなら言ってよ。
川下りでもいいし、向こうの野営地でも王都でも、水浸しにするつもりならやるよ。
[基本が放浪民なので、土地を荒らすことへの忌避はない。
許可さえあれば、水であれ火であれ、いくらでも放つだろう。*]
[兄にものを教えるのは楽しい。
他の、街の人間と違って変に偉ぶったりしないし、なにを教えても感心してくれる。
それは良いなと言ってくれるのが何より楽しい。]
じゃあ、工作兵貸してよ。
いつでもできるように準備しておくからさ。
[価値はあるとのひとことに、やる気を掻き立てられて人手を要求する。
頭の中に予定は組み上がっていたけれど、実際は現地視察している水の専門家の見立て待ちだ。]
[王都に手出し無用というのには、ふうんと頷いておいた。]
邪魔な奴ら全部たたき出して、ってわけにはいかないのか。
わかった。
[移動しない民の考え方は、まだよくわからない。
だから、そういう判断は全て兄に従うことにしている。
やれと言われれば王都を水に沈めるのだってためらわないけれど、王妃様もあの赤子も、帰る場所が水たまりになっていたら困るか、と納得した。]
[撫でてやりたいと飛んでくる思念に、はははと笑う。]
やーだーよ。
もう子供じゃないんだし。撫でられても喜ばないって。
[冗談でしょ、の調子で言うが、断固拒否というわけでもない。
撫でられたってたぶん文句は言わないし、どちらかと言えば嬉しかったりもするけれど、それを素直に認めるのも格好悪い気がする。
難しいお年頃なのだ。]
― 中央平原 ―
[全員騎乗かつ身軽な
だがそれでも中央平原を突っ切るには3、4日掛かる。
野営地につく前に軍が移動を始めていたら風呂に入り損ねるかなと思ったけれど、そんなことはないなと思い直した。
もし軍が先に発ってしまっていても、湯を浴びてから追いかければ追いつけるな、という思考である。]
[中央平原ではなるべく広がって進むようにしていた。
その方が、細かな地形が分かりやすいからだ。
地形を把握するのは、遊牧の民出身の仲間の役目だ。
人相手に稼いでいるルーリーと違って、遊牧の民は自然地形と馴染みが深い。
目印の岩だの木だのを書き留めた羊皮紙を見てもさっぱりわからなかったが、彼らはこれで地形が把握できるのだと言う。
途中、犬笛での通信用に連れている犬たちが野兎を追いかけ始める、などのアクシデントもありつつ、
― 王国軍野営地 ―
[さて。野営地に正規軍の姿はあったか無かったか。
いずれにしても
案内してくれた兵(ナイジェル麾下の部隊章を付けていた)について行った先に、目を瞠るものがあった。
川の側に設えられた広い浴場には大小の浮き台が浮いていて、滑って遊べそうなスロープまでついている。
一番高く組まれた滑り台からは、下の川にだって飛び込めた。]
おおぉ……!
[あまりの豪勢さに驚いていたら、両脇から歓声というか雄叫びをあげて猿どもが突進していった。
ぽいぽいと衣服が宙を舞い、どぼんどぼんと水柱があがる。]
こらっ!待てよっ!
俺も行く!
[咄嗟に制止じゃなくて混ぜろが出るあたり、やはり猿の親玉だった。
衣服を脱ぎ捨てて湯船に飛び込む。
既に浮き台の上で落とし合いだの、スロープから飛び込んでどちらが水柱を高くあげられるか競争だのも始まっていた。]
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